歯の神経を抜く根管治療の必要性と、メリット・デメリットとは
目次
-1.歯の構造と神経の役割について
-2.神経を抜く根管治療とは
-3.抜歯と抜髄(歯の神経を抜く)の違い
-4.根管治療が必要となるケース
-5.根管治療のデメリットと、日頃から心がけた方が良いこと
歯の神経を抜く根管治療は、天然の歯を守るために大切な手段となりますが、同時にデメリットもあります。
今回は、根管治療の内容やメリット・デメリットについて解説します。
1.歯の構造と神経の役割について
歯には乳歯や永久歯、前歯や小臼歯、大臼歯などのさまざまな種類がありますが、基本的な構造はどれも同じです。
歯の構造は、『歯冠部』『歯根』から成り立っています。
歯冠部にあるものは、表面のエナメル質やそれに覆われている象牙質、歯の神経『歯髄』です。
歯根にはセメント質や歯根膜、歯槽骨があります。
歯の神経は、私たちの口腔内の健康状態を守るために非常に重要な役割を担っています。
重要な役割の一つが、歯に水分や栄養分を送ることです。
血管を通じ、歯に水分や栄養を届けることで、歯が割れないように保っています。
痛みや違和感を通じ、虫歯の進行を私たちに知らせることも、歯の神経の役割です。
2.神経を抜く根管治療とは
歯の神経を抜く治療のことを、医学的に『抜髄』と言います。
患部の虫歯を除去して神経を露出させ、専用の治療機器で神経を抜いていきます。
その後、消毒や形を整える処置をしてから、歯にふたをして治療が完了します。
抜髄を行うときは非常に強い痛みが出るため、局所麻酔を使うケースが多いです。
3.抜歯と抜髄(歯の神経を抜く)の違い
歯の神経を抜く抜髄と歯を抜く抜歯は、全くの別物です。
以下、抜髄のメリットと照らし合わせ、2つの違いについて解説します。
【1】天然の歯を残せる
歯を抜く治療では、天然の歯を失わなければなりません。
入れ歯やインプラントなどで補えるものの、噛み心地や耐久性においては天然の歯にはどうしても劣ります。
その分、抜髄では天然の歯を長期的に残せることがメリットです。
【2】顎の骨を守れる
抜歯をすると、患部の骨が役割を終えたと判断して溶けてしまい、外科処置をしなければ元の状態に戻すことはほとんど不可能です。
抜髄では歯を失うことはなく、顎の骨を残せます。
【3】周囲の歯の位置を維持できる
歯が抜けると、空いたスペースを埋めるために周辺の歯が移動し、かみ合わせが悪くなるケースが多いです。
そのような意味でも、神経を抜いてでも天然の歯を残す抜髄が必要になります。
4.根管治療が必要となるケース
歯の神経を抜く根管治療が行われるケースには、次のようなものがあります。
【1】食べ物や飲み物、刺激によって痛みや違和感を覚える
あたたかい食べ物・飲み物や甘いものをとったときに痛みを感じたり、刺激を受けなくても違和感を覚えたりする場合、神経が細菌による炎症を受けているサインです。
【2】患部周辺の組織が炎症を起こしている
歯の根の先端や周辺の骨に炎症が起こり、痛みや腫れ、頬のふくらみなどの症状が目立つようになります。
【3】神経が壊死している
打撲のような突発的な事故で神経が壊死したときも、歯の黒ずみや炎症につながるリスクが高いため、抜髄が必要です。
5.根管治療のデメリットと、日頃から心がけた方が良いこと
抜髄は天然の歯を残すためには必要な方法ではあるものの、以下のようなデメリットがあります。
【1】歯の色や質が変わってしまう
神経を抜くと血管を通じて歯に栄養がいきわたらなくなり、歯の黒ずみや健康状態の悪化につながり、割れやすくなります。
【2】虫歯のリスクが高くなる
痛みを感じられないことで異変に気づけず、時間が過ぎるにつれて虫歯が悪化するリスクが高くなってしまいます。
【3】場合によっては痛みが残る
根管治療の際に神経を取り切れず、神経の残骸が痛みを引き起こすケースも多いです。
痛みが気になる場合は歯科医院・クリニックを受診し、必要な処置を受けましょう。
【4】抜髄を避けるために心がけたいポイント
歯の神経を残すには、日ごろからのケア『ホームケア』と歯科医院・クリニックでのケア『プロフェッショナルケア』が必要不可欠です。
まず普段のブラッシングの見直しが欠かせません。
毎日の歯磨きだけでは歯の汚れを取り切れないため、フロスを使って歯と歯の間もきれいに掃除しましょう。
定期的に歯科医院・クリニックを受診し、異変がないか確認することも大事なポイントです。
虫歯や歯の病気を事前に防ぐことで、歯の神経にダメージを与えない環境が整っていきます。
歯の神経を抜く根管治療は、ダメージを受けた歯を守るためには必要な手段となりますが、可能であればその必要性が生じない状態を保つことが理想です。
ホームケアとプロフェッショナルケアを続け、虫歯の発症や進行を予防しましょう。