虫歯治療の費用の相場|進行段階別や保険診療・自由診療に分けて解説

虫歯に気づいた時、多くの方が真っ先に心配になるのは「治療に一体いくらかかるのか?」ではないでしょうか。実は、虫歯治療の費用は進行度によって大きく変わります。

初期段階なら数千円で済む治療が、放置して神経を抜く処置や抜歯になると、総額で数十万円にのぼることもあります。

この記事では、虫歯の進行度別の費用相場から、保険適用の銀歯と白い歯(CAD/CAM冠)、自由診療のセラミックまで、素材ごとの違いを解説します。さらに、医療費控除などの費用負担を抑える方法も紹介しています。

後悔しない治療選びのために、まずは正しいお金の知識を身につけましょう。


この記事を監修した医師

明石 陽介
Akashi-Yosuke

愛知学院大学歯学部卒業

口腔外科、一般歯科診療に携わり
現在は、愛知県内の歯科医院にて訪問歯科診療を中心に活動。通院が難しい方にも安心して歯科治療を受けていただけるようサポート。
義歯治療や摂食嚥下の支援にも力を入れ、患者様一人ひとりの生活に寄り添った診療を大切にしている。

虫歯の進行度別の治療費相場【4段階】

虫歯治療の費用は、虫歯の進行度によって大きく変わります。進行が浅ければ簡単な処置で済み、費用も時間も抑えられます。

ここでは、虫歯の進行度を国際基準の「C」を用いて、以下の4段階と治療費以外の費用を解説します。

①C0〜C1(初期虫歯)の費用

②C2(象牙質の虫歯)の費用

③C3(神経まで進行した虫歯)の費用

④C4(歯根のみ残った虫歯)の費用

⑤治療費以外にかかる初診料・再診料・検査費用

①C0〜C1(初期虫歯)の費用

虫歯の初期段階(C0〜C1)であれば、削らずに経過観察できる場合や、最小限の治療で済む場合があります。この段階で治療を行えば、費用・通院回数・歯への負担を大きく抑えることが可能です。

以下の表に、C0〜C1の主な治療法と費用の目安をまとめています。

治療法内容費用目安
経過観察・フッ素塗布(C0)・歯を削らず再石灰化を促す
・歯科医院でのクリーニングと高濃度フッ素塗布が中心
1,500〜3,000円
コンポジットレジン充填(C1)・虫歯部分のみ最小限削り、白い樹脂を詰めて光で硬化
・自然な見た目で1回で完了することが多い
1,000〜2,000円

C0やC1では痛みや違和感などの自覚症状はほとんどありません。そのため、自分で気づくのは難しく、多くは歯科検診で発見されます。痛みが出る前の早期発見・早期治療こそが、簡単かつ低コストで治療を済ませるポイントです。

②C2(象牙質の虫歯)の費用

C2は、虫歯がエナメル質の下にある象牙質まで達した状態です。冷たいものや甘いものがしみる自覚症状が出やすい段階です。虫歯が広範囲に及ぶため、削った部分の型取りを行い、後日作製した詰め物(インレー)を装着します。

通院は最低でも型取りと装着の2回が必要で、C2の治療費用は4,000〜10,000円程度が目安です。虫歯の大きさや削る範囲、素材によって変動し、自由診療のセラミックなどはさらに高額になります。

保険適用の銀歯にするか、見た目が自然な白い素材を選ぶかによって、総額は大きく変動します。歯科医師とよく相談し、ご自身の希望に合った治療法を選びましょう。

③C3(神経まで進行した虫歯)の費用

C3は、虫歯が歯の神経(歯髄)まで到達した深刻な状態です。何もしなくてもズキズキと激しい痛みが続くことがあります。ここまで進行すると、歯の神経を取り除く複雑な治療が避けられません。

以下の表に、C3の主な治療法と費用の目安をまとめています。

治療法内容費用目安
根管治療(歯の根の治療)・汚染された神経を除去し、根管内を洗浄して消毒
・精密作業で複数回通院が必要
7,000〜20,000円
土台(コア)・クラウンを支えるために歯の内部に土台を作製
・保険適用のメタルコア・レジンコアやファイバーコア(自費)など種類がある
保険:数百円〜1,000円程度
自費:10,000〜50,000円程度
クラウン(被せ物)・根管治療後、土台を立てて被せ物を装着
・CAD/CAM冠など白い被せ物が保険適用になる場合あり
別途必要(種類による)

根管治療を行う場合、費用は大きく3つに分かれます。最初に「根管治療」の処置費用、その後にクラウンを支える「土台(コア)」の費用、最後に「被せ物(クラウン)」の費用です。

土台の費用は、保険診療のメタルコアで数百円〜1,000円程度、自費診療のファイバーコアでは10,000〜50,000円程度が目安です。被せ物にはいくつか種類があり、特徴や費用が大きく異なるので詳しくは後述します。

近年、CAD/CAM技術で作られた樹脂製の白い被せ物が注目されています。特に小児歯科で使われる金属製クラウン(SSC)よりも、歯との適合性が有意に高いという報告があります。(※1)

ただし、一般的な治療では通院が4〜6回程度、期間は数か月に及ぶこともあり、費用だけでなく歯の寿命にも影響する可能性があります。

④C4(歯根のみ残った虫歯)の費用

C4は、歯冠がほとんど崩壊し、根だけが残る末期の虫歯の状態です。神経が死んで痛みを感じないこともあります。しかし、根の先に膿が溜まり顎の骨を溶かす危険があるため、早急な対応が必要です。

以下の表に、C4での主な治療法と費用の目安をまとめています。

治療法内容費用目安(保険3割負担)
抜歯歯を残せないため第一選択になる3,000〜7,000円
ブリッジ両隣の健康な歯を削って土台にし、橋を渡すように人工の歯を被せる固定式の方法・保険:約20,000円〜
・自由診療:約150,000円〜
部分入れ歯残っている歯に金属のバネをかけて固定する取り外し式の装置・保険:約5,000円〜
・自由診療:約150,000円〜
インプラント顎の骨に人工の歯根を埋め込み、その上に人工の歯を装着する方法自由診療:約300,000円〜

C4まで進行すると、歯を残せず治療の選択肢が限られ、費用も時間も大きな負担になります。こうなる前に治療を受けることが、歯と費用の両方を守るために重要です。

⑤治療費以外にかかる初診料・再診料・検査費用

虫歯治療の費用を考える際、実際の治療費に加えて、診察ごとにかかる基本的な費用を知っておくことが大切です。以下の表では、保険3割負担での費用や目安をまとめています。

種類内容費用の目安
初診料・初めてその歯科医院にかかる際の基本料金
・問診や視診、基本的な口腔内検査などが含まれる
約2,600円
レントゲン検査料・目では見えない歯の根や顎の骨の中の病変を確認
・パノラマや部分的なデンタル撮影などで行う
約1,200〜1,500円
再診料2回目以降の通院時に毎回かかる基本料金約500〜1,000円
その他検査料根管治療やインプラントなど精密診断が必要な場合にCT撮影を行う検査内容による

初診時は治療費に加え、合計で3,000〜4,000円程度の基本料金がかかります。治療前に費用の内訳を確認しておくと安心です。

保険診療と自由診療の詰め物・被せ物の費用【6種類】

虫歯治療で歯を削った後は、「詰め物」や「被せ物」で形と機能を補います。保険診療と自由診療では使える素材が異なり、見た目や耐久性、体への影響も変わります。代表的な治療費用として、以下の6種類を解説します。

①保険診療:コンポジットレジン(CR充填)の費用

②保険診療:銀歯(メタルインレー・クラウン)の費用

③保険診療:CAD/CAM冠(白い被せ物)の費用

④自由診療:オールセラミックの費用

⑤自由診療:ジルコニアの費用

⑥自由診療:ゴールド(金歯)の費用

①保険診療:コンポジットレジン(CR充填)の費用

コンポジットレジン(CR充填)は、ごく初期の小さな虫歯治療で用いられる代表的な方法です。ペースト状の白いプラスチックを、虫歯を削った部分に直接詰めて、特殊な光を当てて固めます。

コンポジットレジンの費用の目安は、1本あたり2,000~4,000円程度です。コンポジットレジンのメリット・デメリットは以下のとおりです。

項目具体例
メリット・歯の色に近いため、治療跡が目立ちにくい
・虫歯の部分だけを削るため、歯への負担が少ない
・ほとんどの場合、1回の通院で治療が完了する
・金属を一切使わないため、金属アレルギーの心配がない
デメリット・時間が経つと水分を吸収し、変色することがある
・強度が金属やセラミックに劣り、欠けたり割れたりする
・大きな虫歯や、強い力がかかる奥歯には適さない
・プラスチック素材のため、表面に微細な傷がつきやすい

コンポジットレジンは、費用を抑えつつ自然な見た目を求める場合に適しています。ただし、耐久性や変色などの面も考慮し、治療する歯の場所や虫歯の大きさで、他の素材が推奨されることもあります。

②保険診療:銀歯(メタルインレー・クラウン)の費用

銀歯は、保険診療で奥歯の治療を行う際に長年使われてきた金属製の修復物です。主に「金銀パラジウム合金」という複数の金属を混ぜ合わせたものが使用されます。

銀歯の費用の目安は、以下のとおりです。

  • 詰め物(インレー):4,000~6,000円程度
  • 被せ物(クラウン):10,000円程度
  • 詰め物(インレー):4,000~6,000円程度
  • 被せ物(クラウン):10,000円程度

銀歯のメリットは、強度が高く、強い力がかかる奥歯にも問題なく使えること、そして保険適用で安価なことです。しかし、臨床現場では以下のデメリットが指摘されています。

  • 見た目が銀色で目立つ
  • 金属アレルギーの可能性がある
  • 二次虫歯が発生しやすい
  • 歯ぐきが黒ずむことがある

銀歯は目立ちやすく、接着剤の劣化による隙間から虫歯が再発しやすい点にも注意が必要です。

③保険診療:CAD/CAM冠(白い被せ物)の費用

CAD/CAM冠は、セラミックとプラスチックを混ぜた「ハイブリッドレジン」という白い素材で作ります。コンピューターで設計し、機械で精密に削り出して仕上げる被せ物です。

保険診療で白い歯を選びたい場合の選択肢になり、費用の目安は、1本あたり6,000円前後です。CAD/CAM冠の特徴と保険適用条件について、以下の表にまとめています。

項目肉眼による治療
メリット・保険適用で白い歯にでき、銀歯より見た目が自然
・金属不使用で金属アレルギーの心配がない
デメリット・自由診療セラミックより色調の再現性が低く、単調な白さになりやすい
・経年で変色や摩耗が起こることがある
・銀歯より強度が劣り、強い力で割れる可能性がある
保険適用条件・対象歯:前歯から小臼歯(前から5番目)
・大臼歯(6・7番目)は特定条件を満たす場合のみ適用
・厚生労働省が定める基準を満たした歯科医院での治療に限る

④自由診療:オールセラミックの費用

オールセラミックは、すべてがセラミック(陶材)でできた修復物です。自由診療の素材の中でも、特に「見た目の美しさ」を追求したい場合に選ばれます。オールセラミックの費用の目安は、詰め物が約55,000円~、被せ物が約90,000円~です。

オールセラミックの特徴は、主に以下の5つです。

自然な見た目

長期間色あせにくい

金属アレルギーの心配がない

歯ぐきが黒ずみにくい

汚れが付きにくい

陶材は水分を吸収せず着色しにくいため、治療直後の白さを長く保てます。金属不使用でアレルギーや歯ぐきの黒ずみも起こらず、滑らかな表面は汚れが付きにくいメリットもあります。ただし、強い衝撃や過度な歯ぎしりで割れるリスクはあります。

⑤自由診療:ジルコニアの費用

ジルコニアは、「人工ダイヤモンド」と呼ばれるほど、とても硬いセラミックの一種です。費用の目安は、詰め物で約65,000円~、被せ物で約70,000円~です。

ジルコニアの特徴として、以下が挙げられます。

  • 強度が高く奥歯にも適する
  • 長く安定して使える
  • 精密な適合で虫歯再発を防ぎやすい
  • 自然な白さを再現できる

ジルコニアは金属に匹敵する強度を持ち、ブリッジなど負担の大きい治療にも対応可能です。CAD/CAM技術で精密に作られるため適合性が高く、二次虫歯のリスクも低減できます。

透明感はやや劣りますが、奥歯を白く丈夫に保ちたい方に適しています。

⑥自由診療:ゴールド(金歯)の費用

ゴールド(金歯)は、金を主成分とした合金で作られた修復物です。見た目の印象から敬遠されることもありますが、歯科材料としては優れた性質を持っています。

ゴールドの費用の目安は、詰め物で約70,000円~、被せ物で約90,000円~です。ゴールドの特徴として、以下が挙げられます。

特徴内容
適合性が高い歯の形に精密にフィットし、隙間を最小限にできる
耐久性が高い錆びや劣化がほとんどなく、長期間安定して使用できる
噛み合わせに優しい適度なしなやかさで相手の歯を傷つけにくい
体への安全性金属アレルギーを起こしにくい素材

ゴールドは歯との隙間を極限まで減らせるため、二次虫歯のリスクを下げられます。また、噛む力が強い方や長期的な耐久性を重視する方におすすめの高い選択肢です。

見た目の金色が気にならなければ、機能面ではおすすめの素材です。

虫歯治療の費用負担を抑える3つの方法

虫歯治療の費用負担を抑える3つの方法は、以下のとおりです。

①高額な治療費を軽減する医療費控除

②デンタルローン・院内分割払いの活用

③定期検診と予防歯科で長期的な費用を削減

経済的な心配を減らし、安心して最適な治療を選択しましょう。

①高額な治療費を軽減する医療費控除

医療費控除は、高額な医療費がかかった場合に、納めた税金の一部が還付される国の制度です。ご自身や生計を共にするご家族の医療費が、1年間(1月1日〜12月31日)で合計10万円を超えた場合に利用できます。

年間の総所得金額などが200万円未満の方は、総所得金額などの5%を超えた場合が対象です。確定申告を行うことで、所得税や翌年の住民税の負担が軽減されます。

医療費控除の対象になる費用は、以下のとおりです。

  • 虫歯治療費、詰め物・被せ物
  • セラミック、ジルコニア、インプラント、矯正治療など
  • 処方された痛み止めや抗生物質などの薬代
  • 通院のために利用した公共交通機関(電車・バス)の交通費

重要なのは、「治療目的」であれば、自由診療の費用も対象になる点です。ただし、インプラントや矯正治療は美容目的の場合は対象外のため、注意してください。

②デンタルローン・院内分割払いの活用

デンタルローンとは、歯科治療費に用途を限定したローン商品です。信販会社が治療費を歯科医院に一括で支払い、患者さんは信販会社に分割で返済していく仕組みです。

院内分割払いとは、歯科医院が独自に設置している分割払いの制度です。治療期間内に支払いを終える形が一般的です。

どちらの方法も、希望する治療を受けるための選択肢になり、以下のメリット・デメリットがあります。

支払い方法メリットデメリット
デンタルローン・分割回数を多く設定でき、月々の負担を抑えやすい
・高額な治療にも対応しやすい
・利用には信販会社の審査が必要
・金利(手数料)が発生する
院内分割払い・金利がかからない場合が多い
・歯科医院で手続きが完結し、比較的簡単
・対応している歯科医院が限られる
・分割回数がローンに比べて少ない傾向がある

上記の支払い方法が利用できるかどうかは、歯科医院によって異なります。治療計画のご相談の際に、費用や支払い方法についても遠慮なく質問しましょう。

③定期検診と予防歯科で長期的な費用を削減

定期検診は、将来の高額治療を避けるための方法です。数千円の検診費用で、虫歯や歯周病を早期に発見・治療できれば、治療規模も費用も最小限に抑えられます。

予防歯科では以下のような効果が得られます。

  • 虫歯・歯周病の早期発見:痛みが出る前に見つけ、比較的簡単な治療で済む可能性が高まる
  • 専門的なクリーニング:歯磨きでは落とせないバイオフィルムを除去し、再発リスクの低減が期待できる
  • セルフケアの質向上:個々の口内環境に合わせた歯磨き法やケア用品を提案してもらえる

健康な歯を長く保つことで、結果的に将来の医療費削減につながる可能性があります。

まとめ

虫歯は初期段階であれば費用も時間も少なく済みますが、進行するほど治療は複雑になり、負担が大きくなります。

治療の選択肢は保険診療から自由診療までさまざまです。目先の費用だけでなく、見た目の美しさ、長持ちしやすさ、再治療のリスクなどの長期的な視点も大切になります。

重要なのは、痛みや違和感を覚えたらすぐに相談し、定期的な検診で虫歯を予防することです。ご自身の希望を歯科医師とよく相談し、納得のいく治療を選んで、大切な歯を守っていきましょう。


参考文献

Huang HY, Yang YT, Chuang CC, Shen YK, Chen MH, Lin WC. Evaluation of the clinical application of personalized 3D printing and CAD/CAM resin crowns to replace stainless steel crowns in paediatric dentistry. International Journal of Paediatric Dentistry, 2024, 34, 6, p.811-821.