入れ歯を作ろうとした時に必ず一つの選択を行います。
それはどんな素材を使用するかです。
それぞれ素材でどのような特徴があり、どんな点に優れているのかをしっかりと理解をしておかないと、入れ歯が出来あがってきた時に後悔をしてしまうかもしれません。
歯科技術の発展により、現代では本当に多くの素材の中から自分に合ったものを選ぶことができるため、満足度の高い入れ歯を手に入れることができます。
ただし、単純に「金額が高いから良い入れ歯」「金額が安いから粗悪な入れ歯」というわけではありません。
保険が適用され安価に入手できる入れ歯であったとしても、しっかりと調整に通えば自分のお口に合った入れ歯として使い続けることも可能です。
今回は入れ歯に使える素材の中から、よく選ばれているものをご紹介致します。
保険適用の入れ歯の特徴

保険適用の入れ歯で使われる素材は、レジンという「プラスチック」です。
粘膜の上に乗る床の部分、歯茎の部分、人工歯まで全てがプラスチックでできています。
プラスチックは破損をしても修理がしやすかったり、保険適用のため費用を抑えることができます。
保険診療とはあくまでも「病気に対して必要最低限の治療」という位置づけです。
そのため、保険適用外の素材と比べると機能的に劣る部分が多く見られます。
しかし、適切なお手入れを行い、歯科医院での調整をマメに行うことで自分のお口に合った、素晴らしい入れ歯にしていくこともできます。
総入れ歯や部分入れ歯のどちらを作る場合でも、まずは保険の入れ歯を試してみて、そこから自分にとって重要な点を探ってみるのもよいでしょう。
≪プラスチックの弱点≫
プラスチックの素材は臭いや汚れが吸着しやすいといった衛生的な面や、長年使用していると擦り減ってきたり変色したりするため強度的な面が弱点と言えます。
プラスチックは割れやすい素材のため、総入れ歯の場合は床の部分を厚く作る必要があり、それが装着した時の違和感になる場合もあります。
床の部分が厚いと食べ物の温度が伝わりにくく、味覚への影響も出てきます。
また、入れ歯のお手入れの時に歯ブラシで強く磨き過ぎると、細かな傷ができてしまいます。
そこから雑菌が入り込み、繁殖してしまう場合もございます。
部分入れ歯の場合は金属のバネで他の歯に固定します。
そのため、固定する歯に負担が掛かたり傷がついてしまうことがあります。
笑ったり大きく口を開けた時に金属のバネが見えてしまうこともあるので、審美的な面で気になってしまう方もいらっしゃいます。
金属床の入れ歯は食べ物を美味しく感じる!?
金属床の特徴は熱伝導に優れているということです。
味覚は舌で感じるものが全てではありません。
食べ物がもっている「温かい」「冷たい」といった温度をしっかりと感じる事も、食べ物を美味しいと感じるためは大切なことです。
総入れ歯の場合は、上顎の広い部分が床部分によって覆われてしまいます。
そのため、どうしても食べ物の温度を感じにくくなってしまいます。
そこで、床部分を金属の素材を使用することにより熱伝導をよくすることが可能です。
熱伝導が良くなると、食事の温度を自然の感覚に近づけることができるので、美味しく食事を行えるようになります。
金属床の入れ歯の良い点は熱伝導の良さだけではありません。
金属は入れ歯で使える素材の中では最も頑丈な素材の1つなので、床部分を薄く作ることができます。
床部分が薄いということは、入れ歯をお口の中に入れた時の違和感が少なくなります。
発音もしやすくなるので、会話を行う時もストレスが少なくなります。
また、入れ歯を清潔に使用することができます。
金属の素材は歯ブラシで軽く磨くだけで多くの汚れを落とすことができます。
そもそも汚れが付きにくいので、歯ブラシなどでゴシゴシ磨く必要もなくなります。
プラスチックの素材と違い、傷が付きにくいため雑菌の繁殖も少なくて済みます。
≪金属床の弱点≫
金属床は入れ歯にとって良い面がたくさんありますが、当然弱点もございます。
それは金属アレルギーの方は使えないという点です。
金属も様々な種類がありますが、歯科医師とよく相談して体に害のないものでないといけません。
また、金属は調整が難しい素材であるため、入れ歯が合わなくなったら調整が難しくなります。
どうしても入れ歯が合わない場合は新しいものに作り直すことになります。
入れ歯を入れて歯茎が痛くなる場合はシリコン素材が最適
シリコンという素材はキッチングッズなどにも使用されているため、耳にしたことがあると思います。
シリコンは弾力性に優れた素材であるため、歯茎に当たる部分に使用することにより、入れ歯を装着して食べ物を噛んだ時の、歯茎へのダメージを小さくすることができます。
簡単に考えると歯茎と入れ歯の間に入る、クッションのような役割です。
食べ物を噛むと必ず歯に圧力が掛かりますが、自分の歯の場合は歯根膜というものがクッションの役割になります。
ですが入れ歯には歯根膜が無いので、食べ物を噛んだ時の圧力が直接歯茎に掛かってしまいます。
シリコンは歯根膜の代わりになるため、食事の際に食べ物を噛んだ時の痛みが気になる方にはお薦めです。
シリコンの弾力はクッションの役割だけでなく、入れ歯が適度に歯茎に吸着してくれます。
食事の際によく入れ歯がズレてしまうという方にも良いでしょう。
お口の中は細い髪の毛が1本入っただけでも違和感があるくらい繊細です。
入れ歯により痛みなどのストレスは、食欲にも影響を及ぼすことがあるので、違和感を少しでも小さくした方が健康にもよいでしょう。
≪シリコンの弱点≫
シリコンはプラスチックと同じく汚れが付きやすい素材です。
お手入れを怠っていると雑菌が繁殖して、健康面にも悪影響を与えてしまいます。
まとめ
入れ歯の素材にはたくさんの種類があります。
まずは安価に抑えたいという方は、保険適用のプラスチックの素材がよいでしょう。
そこから、もっと美味しく食事を行いたい場合は金属床の入れ歯にしたり、歯茎が痛くなってしまう場合にはシリコンを使用した入れ歯にしたりと、自分に合った素材を選ぶことで快適に使える入れ歯を手に入れることができるでしょう。