【医師監修】ホワイトニングはしないほうがいい?後悔につながる5つの理由と安全な歯科選びのポイント

変色した歯を白くしたいけれど、「ホワイトニングはしないほうがいい」という噂が気になって悩んでいませんか。

ホワイトニングを検討するにあたっては、その効果だけでなくデメリットや注意点について把握しておくことが重要です。

この記事では、ホワイトニングをしないほうがいいと言われる理由や、施術を受けるべきではない人、信頼できる歯科医院選びのポイントを解説します。

この記事を監修した医師

脇田奈々子
Wakita-Nanako

大阪大学歯学部卒業後、同大学予防歯科学教室にて医員として勤務。

現在は大阪市内の歯科医院で、予防歯科からインプラント、矯正治療まで幅広く対応している。治療の先の心のケアにもつながる“医療としての美容歯科”として、ボツリヌス治療、ヒアルロン酸注入、リップアートメイクにも注力している。
「口元の健康と美を通じて、最後まで美味しく食べ、自信を持って笑える人生」をサポートすることを理念としている。


ホワイトニングをしないほうがいいと言われる5つの理由

ホワイトニングには、事前に知っておくべき注意点やいくつかのリスクがあります。しかし、情報を正しく理解し、信頼できる歯科医院で適切な処置を受ければ、多くの場合、安全に歯を白くすることが可能です。

ホワイトニングをしないほうがいいと言われる理由は、以下の5つです。

①知覚過敏で歯がしみるリスクがある

②白さに限界があり効果が後戻りする

③詰め物・被せ物・神経を抜いた歯は白くならない

④虫歯や歯周病が悪化する可能性がある

⑤薬剤で歯肉炎や色斑が起きるリスクがある

①知覚過敏で歯がしみるリスクがある

ホワイトニングでは、施術中や施術後に歯がしみるような痛み(知覚過敏)が起こることがあります。これは、薬剤が歯の表面(エナメル質)に一時的な変化を起こし外部からの刺激が象牙質に伝わりやすくなるためです。そのため、冷たい飲み物や熱い食べ物で痛みを感じやすくなります。

知覚過敏の程度や頻度には個人差がありますが、多くは数時間〜数日で自然に落ち着きます。ただし、1週間以上続く場合は他の原因の可能性もあるため、歯科医院に相談しましょう。

もともと知覚過敏がある方は、事前のカウンセリングで必ず伝えることが大切です。薬剤の濃度調整や知覚過敏を抑える成分の使用など、症状を軽減する方法が用意されています。

②白さに限界があり効果が後戻りする

ホワイトニングで得られる白さは、残念ながら永遠には続きません。時間が経つと少しずつ色が戻る「後戻り」が起こります。

その理由の一つが、歯の表面を覆う「ペリクル」と呼ばれる唾液由来の薄い膜です。ホワイトニング直後はいったん剥がれますが、やがて再生し、そこに色素が付着していくことで歯は再び黄ばんでいきます。

効果の持続期間は施術方法や生活習慣によって変わり、数か月〜数年で元の色に近づいてしまうこともあります。(※1,2)特に以下のような飲食物は、後戻りの原因になりやすいです。

  • コーヒーや赤ワインなどのポリフェノールを多く含むもの
  • カレーやケチャップなどの色の濃い調味料や食品
  • タバコのヤニ

白さを長持ちさせるためには、着色しやすい飲食物を控える工夫や定期的な歯科医院でのクリーニングなどのメンテナンスが欠かせません。

③詰め物・被せ物・神経を抜いた歯は白くならない

ホワイトニングの薬剤が作用するのは、神経が生きているご自身の天然の歯だけです。

以下のような歯は、ホワイトニングを施術しても白くなりません。

  • 虫歯治療で詰めたレジン(プラスチックの詰め物)
  • 歯を全体的に覆うセラミックや金属(被せ物・クラウン)
  • インプラント(人工歯根)
  • 神経を抜いた歯(失活歯)

上記の歯がある状態でホワイトニングを行うと、周囲の天然の歯だけが白くなります。結果として、治療した歯との色の差が以前よりも目立ってしまい、かえって見た目のバランスが悪くなってしまう可能性があります。

詰め物や被せ物がある部分も含めて白くしたい場合は、まずホワイトニングで天然の歯を白くしましょう。白くなった歯の色に合わせて、詰め物や被せ物自体を新しく作り直すという治療計画が必要になります。

④虫歯や歯周病が悪化する可能性がある

虫歯や歯周病がある状態でホワイトニングを行うと、症状を悪化させてしまう危険性があります。ホワイトニングは、あくまでも健康な歯と歯茎に対して行う美容的な処置であるため、併用してはいけません。

例えば、虫歯で歯に穴が開いていると、穴から高濃度のホワイトニング剤が歯の内部に深く浸透してしまいます。浸透したホワイトニング剤は歯の神経(歯髄)を強く刺激し、歯髄の炎症(歯髄炎)につながることがあります。

歯周病で歯茎が腫れていたり、歯根が露出していたりする場合も注意が必要です。薬剤の刺激によって歯茎の炎症が悪化し、痛みや腫れがひどくなる恐れがあります。

ホワイトニング前の検査で虫歯や歯周病が見つかった場合は、虫歯・歯周病の治療が最優先です。お口の中を健康な状態に整えてから、安全にホワイトニングを始めましょう。

⑤薬剤で歯肉炎や色ムラが起こるリスクがある

ホワイトニング剤は、歯を白くする効果がある一方、歯茎にとっては刺激となることがあります。特に、歯科医院で行うオフィスホワイトニングでは、比較的濃度の高い薬剤を使用するため注意が必要です。

施術中に薬剤が歯茎に付着すると、化学的なやけどを起こす方もいます。やけどは歯茎を一時的に白っぽく変色させたり、ヒリヒリとした痛みを感じさせたりします。施術時には歯茎を保護するジェルなどを用いて、薬剤が付着しないよう対策することが必要です。

自宅で行うホームホワイトニングの場合でも、マウスピースに薬剤を入れすぎると、溢れた薬剤が歯茎に触れて炎症を起こす原因になります。必ず歯科医師から指示された量を守って使用することが大切です。

セルフホワイトニング(サロン・市販品)のリスク

近年、サロンや市販品を使ったセルフホワイトニングを利用する方が増えていますが、歯科医院で行うホワイトニングとは目的も安全性も大きく異なります。手軽に見えても、誤った方法や判断で行うと歯や歯ぐきを傷つけたり、思わぬトラブルを招くことがあります。

ここでは、歯科医院のホワイトニングとの違いと、自己判断で行うリスクについて解説します。

歯科医院のホワイトニングとの違い

セルフホワイトニングと歯科医院のホワイトニングは、使用できる薬剤や得られる効果に明確な違いがあります。手軽さだけで選ぶと、期待する白さが得られない場合もあるため注意が必要です。主な違いは次のとおりです。

  • 使用できる薬剤:歯科医院では医療機関のみ扱える「過酸化水素」や「過酸化尿素」を使用できるが、サロンや市販品では使用できない
  • 効果の範囲:セルフホワイトニングは歯の表面汚れを落とすだけで、内部の黄ばみは改善できない
  • 目的の違い:セルフホワイトニングは「汚れを落とす」、歯科医院のホワイトニングは「歯を漂白する」

セルフホワイトニングは歯を白く見せるケアにとどまり、歯科医院でのホワイトニングは歯そのものを白くする医療行為です。目的を理解したうえで、自分に合った方法を選びましょう。

自己判断で行うことのリスク

セルフホワイトニングを自己判断で行うと、歯や歯ぐきを傷つけるリスクがあります。虫歯や歯周病、歯のヒビ(マイクロクラック)がある状態で使用すると、薬剤や研磨成分が刺激となり、強い痛みや知覚過敏を引き起こすことがあります。

過度な摩擦や酸を含む製品の使用は、エナメル質を傷つけ、かえって黄ばみを悪化させる原因になります。歯の状態は見た目だけでは判断できないため、歯科医院で事前に検査・診断を受けてから行うことが安全な選択です。

短期的な効果に頼らず、長期的な口の健康を守る意識を持ちましょう。

ホワイトニングは危険?仕組みとメリット

ホワイトニングは歯科医師の適切な診断と管理のもとで行えば、歯を削ったり溶かしたりするものではありません。安全に歯を白くできる、確立された歯科治療の1つです。

歯が白くなる仕組みとホワイトニングで得られるメリットを正しく理解し、漠然とした不安を解消していきましょう。

歯が白くなる仕組み

ホワイトニングは、過酸化水素と過酸化尿素などの薬剤を使用して歯を白くする施術です。

歯自体を削ったり、溶かしたりして白くする施術ではありません。歯科医師の管理下で正しく行えば、歯に深刻なダメージを与える心配は少ないでしょう。

ホワイトニングと同様に、歯の汚れを落とすクリーニングとの仕組みの違いを以下の表にまとめました。

施術の種類目的仕組み
ホワイトニング歯そのものの色を内側から明るくする薬剤で歯の内部にある色素を化学的に分解する
クリーニング歯の表面についた汚れ(着色)を落とす専用の機械や器具で歯の表面を物理的に清掃する

ホワイトニングは、歯の表面をきれいにするクリーニングとは、目的も仕組みも異なるアプローチです。

ホワイトニングのメリット

ホワイトニングの主なメリットは、以下のとおりです。

  • 短期間で歯を白くできる
  • 見た目の印象を変えられる
  • 歯の健康維持意識が高まる

歯科医院で行うホワイトニングは高濃度の薬剤を使うため、短期間で黄ばんだ歯を白くできます。歯が白くなることで、口元が気にならなくなり、自然と笑顔が増えるでしょう。白い歯は清潔感や若々しい印象を相手に与えるため、見た目の雰囲気が大きく変わります。

また多くの方は、一度白い歯を手に入れると維持したくなります。日々の歯磨きや定期的な歯科検診などを積極的に行うようになり、虫歯や歯周病の予防への意識が高まる傾向にあります。ホワイトニングは、自身の歯の健康と向き合うきっかけとなるでしょう。

どのような人がホワイトニングをしないほうがいい?

ホワイトニングは歯を白くする魅力的な方法ですが、残念ながらすべての方に適しているわけではありません。お口やお体の状態によっては、施術自体ができなかったり、推奨されなかったり、期待した効果が得られなかったりすることがあります。

ホワイトニングを避けるべき方を3つのカテゴリーに分けて詳しく解説します。

ホワイトニングができない人

国民生活センターから注意喚起されているとおり、以下の方は健康被害のリスクがあるため、ホワイトニングができないと判断されます。(※3)

  • 妊娠中・授乳中の方
  • 18歳未満の方
  • 無力タラーゼ症の方
  • 光線過敏症の方

ホワイトニング剤の主成分である過酸化水素の安全性は、胎児や母乳を飲む乳幼児に対しては確認されていません。万が一のリスクを避けるために、妊婦や授乳中の方は施術を見送る必要があります。

胎児・乳幼児だけでなく、歯が成熟していない方もホワイトニングを避けるべき対象です。歯の表面を覆うエナメル質が薄く、薬剤の影響を受けやすいため知覚過敏のリスクがあります。原則として18歳頃まではホワイトニングの対象外です。

通常、体内では過酸化水素を分解する酵素がありますが、無カタラーゼ症の方は先天的にほとんど持っていません。無カタラーゼ症の人がホワイトニングを受けると過酸化水素が蓄積するため、深刻な健康被害を引き起こす危険性があります。

歯科医院で行うホワイトニングでは、特殊な光を照射するので、光線アレルギーをお持ちの場合も施術できないと覚えておきましょう。

ホワイトニングが推奨されない人

絶対にできないわけではありませんが、以下の方は症状を悪化させるリスクが高いため、ホワイトニングが推奨されません。

施術が推奨されない人理由
重度の知覚過敏がある知覚過敏が悪化する恐れがある
未治療の虫歯や歯周病がある強い痛みや歯周病の悪化を引き起こす可能性がある
歯の表面に深い亀裂がある強い痛みが生じるリスクがある
エナメル質形成不全症である生まれつきエナメル質が薄く、構造が不均一のため薬剤の刺激を強く感じやすい

上記の方は、ホワイトニングよりも優先すべき治療があり、歯科医師との慎重な相談が不可欠です。

ホワイトニングの効果が出にくい人

先述したとおり、以下の歯は白くなりにくいため施術を受けるか慎重な判断が必要です。

  • 失活歯
  • 詰め物や被せ物
  • レジン
  • インプラント
  • テトラサイクリン歯
  • 加齢により強く変色した歯

テトラサイクリン歯は、幼少期に抗生物質を服用したことが原因で灰色や茶色、縞模様に変色しています。ホワイトニングで内部の色素を分解しきれないため、効果が出にくい代表例です。

加齢によりエナメル質が摩耗して薄くなると、内側の黄色い象牙質が透けて見えるようになります。象牙質の黄ばみを白くすることには限界があるため、注意してください。

ホワイトニングができない場合の代替治療法

虫歯治療で詰め物や被せ物をしている歯、または神経を抜いた歯は、ホワイトニングの薬剤が効果を発揮しにくいことがあります。そのような場合でも、見た目を改善する方法はあります。

「詰め物・被せ物を白くしたい場合」と「神経のない歯を白くしたい場合」の2つのケースに分けて紹介します。

詰め物・被せ物を白くしたい場合

ホワイトニングでは人工の詰め物や被せ物の色は変えられません。そのため、周囲の歯を白くした後に色の差が目立つ場合は、セラミック治療で詰め物や被せ物を作り直す方法がおすすめです。

セラミックは天然歯のような透明感があり、白くなった周囲の歯の色に合わせて自然に調整できます。治療法には、歯の一部を覆う「インレー(詰め物)」と、歯全体を覆う「クラウン(被せ物)」があります。

どちらも金属を使わないため、金属アレルギーの心配がなく、長期間にわたって美しい見た目を保てます。見た目と耐久性の両立を重視する方に適した治療法です。

神経のない歯を白くしたい場合

神経を抜いた歯は、時間の経過とともに血液中の色素が沈着し、黒っぽく変色することがあります。このような場合には、ウォーキングブリーチという治療法が推奨されます。歯の内部に専用の薬剤を入れて数日〜数週間かけて漂白し、歯の内側から白さを取り戻します。

治療は歯を削る必要がなく、元の歯を活かしたまま色調を改善できるのが特徴です。白さの程度は調整が可能で、他の歯との自然なバランスを保ちながら仕上げられます。被せ物に頼らず、できるだけ自分の歯を残したい方に適した方法です。

後悔しないための歯科医院選びのポイント3つ

思わぬトラブルで後悔しないために、歯科医院を選ぶ際は以下の3つのポイントを確認することが大切です。

①さまざまなホワイトニングの選択肢があるか確認する

②十分なカウンセリングが行われるか

③通院がしやすいか

①さまざまなホワイトニングの選択肢があるか

ホワイトニングにはいくつかの種類があり、一人ひとりの状況に合わせた治療計画を提案できるかが、歯科医院を見極める1つの指標です。

代表的なホワイトニングの種類と特徴を以下の表にまとめました。

種類オフィスホワイトニングホームホワイトニングデュアルホワイトニング
場所歯科医院自宅歯科医院と自宅
薬剤高濃度の過酸化水素が主成分低濃度の過酸化尿素が主成分高濃度の過酸化水素と低濃度の過酸化尿素の組み合わせ
特徴短期間で白さを実感しやすい時間をかけて内部から白くする高い効果と持続性が期待できる
後戻りしやすい傾向があるしにくい傾向がある後戻りしにくい
費用10,000〜70,000円15,000〜50,000円50,000〜80,000円
知覚過敏出やすい傾向がある出にくい傾向がある出やすい傾向がある

それぞれの方法には、メリットとデメリットが存在します。選択肢が複数ある歯科医院は、各特徴を理解したうえで、患者さんの希望に合った方法を提案してくれるでしょう。

②十分なカウンセリングが行われるか

安心してホワイトニングを受けるためには、施術前のカウンセリングが重要です。カウンセリングは、インフォームド・コンセントの基本であり、歯科医師が患者さんと向き合う姿勢が表れる場面でもあります。

ホワイトニングで後悔しないためには、施術前に肉眼では見えないほどの初期虫歯や歯のヒビがないかを確認することが大切です。これらを見逃すと、施術後に強い痛みが生じる場合があります。

マイクロスコープを導入している歯科医院では、こうした微細なリスクを事前に発見し、より安全な治療計画を立てることが可能です。

信頼できる歯科医院かどうかは、以下のチェックリストを参考にしてください。

  • 精密な検査と現状説明があるか
  • リスクや副作用の説明があるか
  • 費用に関する明確な説明があるか
  • 治療のゴールを共有してくれるか

一方的に治療を勧めるのではなく、チェック項目を一つひとつ丁寧に説明してくれる歯科医院を選びましょう。患者さんがすべての情報を理解し、納得したうえで治療を開始することが施術成功への鍵です。

③通院がしやすいか

無理なく通い続けられるかという点は、ホワイトニングを成功させるための重要ポイントです。

オフィスホワイトニングであれば、希望の白さになるまで数回通院することが一般的です。ホームホワイトニングでも、マウスピースの作製や薬剤の処方、経過観察のために通院を必要とします。

治療を始めたものの、通うのが面倒になって途中でやめてしまってはホワイトニングを受けた意味がありません。中途半端な白さで終わってしまったり、かけた費用が無駄になったりするだけでなく、色ムラが残ってしまう可能性すらあります。

通院のしやすさを考えるうえで、以下の点を確認しましょう。

  • 自宅や職場からアクセスしやすい場所にあるか
  • 通える時間帯に診療しているか
  • 予約が取りやすいか
  • 長期的なサポート体制が整っているか

まとめ

ホワイトニングには知覚過敏や後戻りなどのリスクがあるため、「しないほうがいい」と言われることがあります。しかし、それは誤った方法や、不適切な状態で施術を行った場合の話です。

注意点を正しく理解し、信頼できる歯科医師のもとで、自身の歯の状態に合った適切な施術を受ければ、歯を白くできる可能性があります。不安な方はまず、この記事で解説したポイントを踏まえて歯科医院のカウンセリングを受けてみましょう。


参考文献

  1. Eenass Krayem, Avijit Banerjee, Hussam Milly.Evaluating the efficiency of two different over-the-counter tooth whitening systems: a randomised controlled clinical trial.BDJ Open,2024,10,1,p.41.
  2. Rossella Fioresta, María Melo, Leopoldo Forner, José Luis Sanz.Prognosis in home dental bleaching: a systematic review.Clin Oral Investig,2023,27,7,p.3347-3361.
  3. 国民生活センター:「審美歯科(1) 歯のホワイトニングの 施術方法・注意点