歯髄温存療法は、歯の神経(歯髄)をできる限り抜かない虫歯の治療法です。
歯髄を抜くと歯がもろくなり、歯の割れや欠けから抜歯に至ることがあります。
自分の歯を長持ちさせたい方は、マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を導入している歯科医院の受診がおすすめです。
マイクロスコープは肉眼と比較して20倍以上も視野を拡大でき、歯髄温存療法の成功率を高めます。
当記事では、歯髄温存療法のメリットやデメリット、費用、治療の流れを解説します。
「歯の神経を抜くしかないと言われたが抜きたくない」という方に向けて、歯髄温存療法を得意とする歯科医院(都筑マイクロスコープ歯科)も紹介しますので、参考にしてください。
目次
歯髄温存療法とは?
歯髄温存療法とは、歯髄と呼ばれる歯の神経や血管などの組織をできる限り抜かずに残す治療法です。
進行した重度の虫歯や、ケガにより歯の神経が露出してしまった場合に、歯の機能を可能な限り保つために行われます。

従来では、虫歯が神経まで達した場合、歯髄をすべて取り除く「抜髄(ばつずい)」や抜髄後の根管治療が一般的でした。
しかし近年では、MTAセメント(バイオセラミックセメント)と呼ばれる歯科用の高性能な薬剤の普及により、健康な歯髄をできる限り残す処置ができるようになりました。
具体的には、虫歯を削って根管部にある歯髄を露出させ、歯髄にも感染が見られる場合は感染箇所のみを除去し、MTAセメントで残った歯髄を覆って保護します。
精密な処置を要するため、マイクロスコープ下での治療となります。
引用元:都筑マイクロスコープ歯科
歯髄の役割:温存すべき理由は?
歯髄は歯の神経や血管の集合体であり、歯の健康を保つという重要な役割があります。
自分の歯をできる限り使い続けるには抜かずに温存するべきです。
なお、歯髄の主な役割は、「歯の栄養供給と修復」「感覚の伝達」「防御・免疫機能」の3点です。
歯の栄養補給と修復
歯髄は血液を介して、歯の象牙質(エナメル質の内側)に栄養と酸素を供給しています。
そのため、歯髄を抜くと歯がもろくなり、割れやすくなってしまいます。
温度や痛みを感知する感覚の伝達
歯髄は、「冷たい」「熱い」といった、食べ物や飲み物の温度を感知して脳に伝える役割があります。
また、歯の神経である歯髄があることで「歯がしみる」「痛い」といった症状にも気づくことができ、口腔内の病気の早期発見・早期治療につながります。
細菌や外部刺激から歯を守る防御・免疫機能
歯髄には、マクロファージやリンパ球などの免疫細胞が含まれており、虫歯菌などの細菌が内部に侵入した際には免疫反応により感染の拡大を防ぐ機能を持っています。
さらに、外部から強い力が加わった際には、歯髄がクッションのような役割を果たし、歯やその周囲へのダメージを軽減します。
歯髄温存療法のメリット

歯髄温存療法の最大のメリットは、自分の歯を健康に使い続けられることです。
抜髄治療(歯の神経を抜く治療)と比較すると、具体的には以下のメリットが挙げられます。
【主なメリット】
- 歯がもろくなるのを防ぐ
- 歯の変色を防げる
- 自然な噛み心地を保てる
- 神経があるので歯の異常に気づきやすい
ほかにも、歯髄をすべて抜く治療よりも歯へのダメージが比較的少ないので、治療後の痛みや腫れを軽減できることがあるというメリットがあります。
※治療による痛みや腫れには個人差があります。
歯髄温存療法のデメリット(注意事項)

歯髄温存療法にはデメリットや注意すべき点もあるので、実際に治療を受ける前に歯科医師に相談してください。
【主なデメリットや注意事項】
- すべての虫歯で適用されるわけではない
- 自費診療のため費用が高額になる場合がある
- 治療後は定期的な経過観察が必要
- 治療後に痛みが残ることや神経が壊死することもある
歯髄温存療法に限らず全べての治療に言えることですが、治療の成功率は100%ではありません。
また、治療後は歯髄が健康な状態を維持しているかを、数か月から数年にわたって定期的に歯科医院でチェックする必要があります。
自分の歯の状態、費用、治療期間などよく考慮した上で治療を選択しましょう。
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歯髄温存療法の主な適用ケースと治療法

歯髄温存療法が適用されるのは、健康な歯髄が残っていて保存が可能な場合です。
例えば、虫歯ではなくケガで歯の神経が露出(露髄)してしまった場合や、回復力が高い若い世代(〜30代前半)の場合は、歯髄温存療法で歯髄を抜かずに残せる可能性が高いです。
なお、歯髄の炎症の状態と虫歯の進行度合いによって、適用される治療法が変わります。
間接覆髄法(かんせつふくずいほう/ Indirect Pulp Capping: IPC)
虫歯が神経のすぐ近くまで進んでいるものの、まだ神経そのものは健康な状態である場合に、その神経を守り、残すための治療法です。
神経がまだ元気で、取り除かなくても回復が見込めると判断されたときに行われます。
直接覆髄法(ちょくせつふくずいほう / Direct Pulp Capping: DPC)
虫歯の治療中や事故などで歯が折れた際に、神経が直接外に出てしまうこと(露髄:ろずい)があります。
また、歯の形を整えている最中に、意図せず神経が露出してしまうこともあります。
このような場合に、露出してしまった神経を保護し、健康な状態を保つために行われるのが、この治療法です。
ただし、この方法が成功するかどうかは神経の炎症の度合いに左右されるため、神経に大きなダメージや強い炎症がない場合に行われます。
部分断髄法(ぶぶんだんずいほう / Partial Pulpotomy)
虫歯やケガによって、神経の一部が傷んでしまった(炎症を起こした)場合に、その傷んだ部分だけを限定的に取り除き、歯の奥深くにある健康な神経は残す治療法になります。
全部断髄法(ぜんぶだんずいほう / Full Pulpotomy)
歯冠部(歯ぐきから上に見えている部分)にある神経が、虫歯によって傷んでしまった場合に、その部分の神経を歯の根っこの入り口あたりまですべて取り除きます。
そして、歯の根っこの中にある健康な状態の神経を残すという方法です。
どの治療法が適しているかは、精密な診断が重要です
虫歯の進行度、痛みの有無、神経の反応、出血状態などをもとに、どの治療法が適切かを判断します。
「本当に神経を抜くしかないのか?」と不安に思っている方は、まずは歯髄温存療法に対応した歯科医院で相談を。
歯髄温存療法が適用できない主なケース

重度の炎症や壊死などにより、保存できる歯髄がない場合、歯髄温存療法は適用できません。
不可逆性歯髄炎
歯髄の炎症が重度で、自然回復や症状の改善が見込めないと判断される場合、歯髄温存療法を行うとかえって痛みや感染が拡大するリスクがあります。
【具体的な兆候・症状例】
- 何もしなくてもズキズキとした痛みが持続する。
- 夜間に痛みが特に強くなる。
- 以前は冷たいものでしみていたが、最近は温かいもので激しく痛む。
歯髄壊死
歯髄が細菌感染や外傷で完全に死んでしまっている場合、歯髄温存療法は適用されません。
【具体的な兆候・症状例】
- 以前あったズキズキとした痛みが、最近になって全くなくなった。
- 歯の色が徐々に黒ずんできた(変色)
- 冷たいものや温かいものに対する感覚が全くない
根尖の炎症・根尖病変
歯の根の先端(根尖)に炎症が起きたり膿が溜まったりしている場合、また、周囲の骨に病変(根尖病変)がある場合は、歯髄を温存することはできません。
歯髄の除去(抜髄)と、歯の根っこの部分(根管内)の清掃や消毒を行う根管治療が必要です。
【具体的な兆候・症状例】
- 歯ぐきにニキビのようなおでき(フィステル)がある
- 歯ぐきから膿が出ることがある。
- レントゲン写真に歯の根の先端に黒い影(透過像)が映る
- 以前に治療した歯で、噛むと違和感があったり、歯ぐきが腫れたりする
歯髄温存療法の流れ

ここでは、一般的な歯髄温存療法の流れを解説します。
なお、歯髄温存療法は、歯科医師の精密な技術と経験が求められる治療のひとつで、自費診療(自由診療)でもあることから、どこの歯科医院でも対応しているわけではありません。
マイクロスコープ(歯科用顕微鏡歯科)やラバーダム、MTAセメントなど、歯髄温存療法の成功率を上げるために必要な設備が充実している歯科医院に相談しましょう。
精密な検査と診断(お口の状態を詳しくチェック)
歯の状態を把握するために、マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)やレントゲンを用いて検査を行います。
歯の神経が生きているかを確認するために、電気歯髄検査を行うこともあります。
これらの検査結果を総合的に分析し、歯髄温存療法が適切かどうかを判断し、具体的な治療計画を立てます。
治療環境の準備(クリーンな状態を整える)
治療を始める前に、お口の中を清潔な状態にするため、歯石や歯垢(プラーク)を取り除くクリーニングを行います。
その後、治療中の痛みを抑えるために麻酔をし、「ラバーダム」というゴムのシートを装着します。
ラバーダムは、治療する歯だけを露出させることで、治療中に使用する水や薬剤が喉に流れ込むのを防ぐと同時に、唾液に含まれる細菌が治療部位に侵入するのを防ぎ、より安全で清潔な環境を確保する大切な役割があります。
虫歯の丁寧な除去(感染部分を確実に取り除く)
マイクロスコープで治療部位を拡大して詳細に観察しながら、虫歯に侵された部分を慎重かつ丁寧に取り除いていきます。
この際、健康な歯質や歯髄をできるだけ傷つけないように、細心の注意を払います。
歯髄の保護とコーティング(神経を守る処置)
虫歯を取り除いた後、歯髄(神経)が露出している、あるいは非常に近接している場合に、MTAセメントなどの特殊な薬剤で歯髄を保護します(直接覆髄)。
その後、歯の象牙質の部分を歯科用の樹脂材料などでしっかりとコーティングし、外部からの刺激や細菌の侵入を防ぎます。
歯の形と機能の回復(最終的な詰め物・被せ物)
歯髄を保護する処置が終わったら、歯の状態や欠損の大きさに合わせて、ダイレクトボンディング(歯科用プラスチックを直接詰める方法)、インレー(部分的な詰め物)、アンレー(歯の一部を覆う詰め物)、またはクラウン(歯全体を覆う被せ物)などで、歯の元の形と噛む機能を回復させます。
定期検診
歯髄温存療法後も定期検診は非常に重要です。
主な目的は、治療した歯と歯髄の状態を確認し、詰め物や被せ物に問題がないかチェックすること、そしてお口全体の健康を維持し新たなトラブルを防ぐことです。
定期的な検診によって、万が一何か問題が起きた場合でも早期に発見し対応することが可能になります。
検診の頻度は、お口の状態やリスクによって異なりますが、一般的に3〜6か月に一度程度が推奨されることが多いです。
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木曜、日曜は不定期で自由診療のみ行っております。
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歯髄温存療法の費用について

費用の相場は1歯あたり以下の通りです。
歯髄温存療法の費用(1歯あたり) | 50,000~100,000円(税込み) |
※症状や治療内容により変動します。
歯髄温存療法は、健康保険の適用外であり、自費診療(自由診療)となるため、治療費が高額となることもあるので注意してください。
なお、都筑マイクロスコープ歯科の歯髄温存療法の費用は、1歯あたり税込み66,000円です。(精密虫歯治療費を含む)
※ダイレクトボンディング(精密な詰め物)を行う場合、別途費用(33,000円~66,000円)が加算されます。
治療する歯の種類や状態、治療の難易度で変わる
一般的に、前歯よりも奥歯(小臼歯、大臼歯)の方が構造が複雑で治療に時間と技術を要するため、費用が高くなる傾向があります。
また、虫歯の進行度や歯髄の状態、根管の数など、治療の難易度によって費用は変動します。
前歯 | 50,000~100,000円(税込み) |
小臼歯・大臼歯 | 100,000~200,000円(税込み) |
※上記は一般的な費用の目安です。
治療費は医療費控除の対象
歯髄温存療法にかかる費用は、医療費控除の対象なので、確定申告を行うことで所得税や住民税の一部が還付される場合があります。そのため、治療費の領収書は大切に保管しておきましょう。
歯髄温存療法の治療期間・治療回数について

歯髄温存療法の治療期間や治療回数は、歯の状態や治療法によって異なります。
【治療期間・治療回数の目安】
状態 | 治療回数 | 治療時間 |
---|---|---|
軽度(虫歯や露髄がない) | 1~2回 | 数日~2週間 |
複雑(一部に炎症、経過観察が必要) | 2~3回以上 | 数週間~2か月程度 |
※治療後は仮封して経過を観察し、最終的な処置(詰め物・被せ物)を行う場合もあります。
治療開始前に、歯科医師から通院回数や期間の目安を確認しましょう。状態によっては途中で計画が変更になることもあります。
歯髄温存療法のよくある質問

Q1. 歯髄温存療法の成功率は?
A. 100%ではありませんが、早期治療と精密な処置により成功率が高まります。
歯髄の炎症が軽度である場合や、マイクロスコープやMTAセメントの使用により成功率が高まります。
一方で、歯髄の炎症が重度であるほど成功率は低くなります。
Q2. 「神経を抜くしかない」と診断されたが、本当に抜く必要がある?
A. セカンドオピニオンを受ける価値があります。
歯科医の考え方や設備により治療方針は異なります。
マイクロスコープやMTAセメントを活用する医院なら、神経を残せる可能性が広がることも。
ただし、状態によっては抜髄がよりよい場合もあるため、正確な診断が大切です。
Q3. 歯の神経は抜くべき?残すべき?
A. できるだけ残すのが基本方針です。
神経は歯の栄養供給・感覚・免疫機能に関わる重要な組織。
ただし、重度の炎症や壊死、将来的なリスクが高い場合は抜髄(神経を抜く治療)が適切なこともあります。
Q4. 歯髄温存療法と根管治療の違いは?
・歯髄温存療法(VPT)
神経をできるだけ残す治療。虫歯部分のみを除去し、神経を保護または一部だけ除去します。
・根管治療
感染・死んだ神経を可能な限り除去し、根の中を清掃・密封する治療。神経は基本的にすべて除去します。
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神奈川県横浜市で歯髄温存療法に力を入れている【都筑マイクロスコープクリニック】では、マイクロスコープとMTAセメントを活用した精密治療で歯を残す選択肢をご提案します。
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都筑マイクロスコープ歯科(横浜市・都筑ふれあいの丘駅)
院長紹介

都筑マイクロスコープ歯科
Tsuzuki Microscope Dental Clinic
院長内田 宜孝
院長プロフィール
- 神奈川歯科大卒業
- 神奈川歯科大学附属病院 研修医
- 都内歯科医院に勤務
- 都筑マイクロスコープ歯科 院長
所属学会・スタディーグループ
- 歯内療法学会 会員
- 日本顕微鏡歯科学会 会員
- SCMD メンバー
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