編集部コラム | 歯石取りのデメリットとメリット

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目次

そもそも歯石って?歯垢との違いとは
実は歯石にも種類があります
歯石を除去するメリットとは
歯石除去にデメリットはあるのか
歯石除去の種類とまとめ
 

そもそも歯石って?歯垢との違いとは

 
歯石とは、歯垢が石のように固くなって歯の表面にこびりついたものです。

時間の経過と共に、磨き残された歯垢に唾液中のカルシウムやリンなどミネラル成分と結合して石灰化して固くこびりつき、歯ブラシでは落とせない沈着物となってしまいます。

それに対し、歯垢とは口腔内に常在している細菌の宿巣です。食べかすの磨き残しとは違います。

食事で摂られた糖分を常在菌がエサにして産出する副産物でネバネバした性質を持ち、歯のすき間や歯と歯の間などに沈着します。そして、わずか1㎎中に約数10億個もの細菌が生息して持続的に毒素を排出します。

その歯垢の段階であれば歯ブラシで簡単に取り除くことができますが、沈着したまま時間が経過すると歯石になってしまうため、これが原因で歯周病を悪化させてしまいます。

そこで磨き残しがないよう、日常的に丁寧な歯磨きが重要になるのです。
 
 

実は歯石にも種類があります

 

歯の模型に歯石取りのスケーラーを当てる歯科医師歯石には「歯肉縁上歯石」と、「歯肉縁下歯石」の2種類があります。
 
「歯肉縁上歯石」は、歯茎よりも上の歯の表面に付く歯石で、「縁下歯石」は、歯茎の中の隠れた歯根部分に付く歯石です。

 
 
【歯肉縁上歯石について】
 
黄白色で、歯と歯の間や、歯と歯茎との境目あたりに付きやすい歯石です。歯垢が付いた状態のまま石灰化するので、肉眼でも見つけやすいでしょう。

唾液の成分で石灰化しやすいことから、唾液腺がある下の前歯の裏側や、上の奥歯の頬側に付きやすい傾向があります。

大人から子どもまで誰にでも付きやすい歯石で、早期発見・早期除去していれば、歯周病は悪化することはありません。
 
 
【歯肉縁下歯石について】
 
歯茎との境目よりも下、歯周ポケットの内部にある歯根部分まで及んで沈着してしまった歯石です。

普段見えない部分でもあるため、気づかないうちに蓄積してしまいます。歯周ポケット内に生息する歯周病菌は「嫌気性菌」と呼ばれ、空気のないところで活発に活動します。その影響や、歯周病で起こる出血などの影響で赤黒い色をしているのが特徴です。そのため、黒い歯石が付いているのは歯周病症状のひとつでもあります。

通常の歯石除去では取りきれないほど深い部分の歯石除去になる場合、麻酔をして除去を行ったり、かなり歯石付着部位が深い場合、歯肉切開して歯石除去するなどの外科手術が必要になる場合もあります。
 
 

歯石を除去するメリットとは

 

スケーラーなどの歯石取りのツールとハートマーク次に、歯石を除去することで得られるメリットを3つご紹介します。

 
 
【メリット①:歯周病の進行抑制と改善】
 
歯石除去をおこなうと、歯周病の進行を抑制し、症状の改善につながります。

歯石には歯周病菌が棲みついており、歯ブラシでは除去できないため常に歯ぐきを刺激(悪影響)し続けてしまいます。そこで根本的な原因除去となる歯石除去を行うことで、軽い歯周病であれば歯石除去とブラッシングだけで歯茎の炎症が改善されます。

また、症状が重症化している場合でも、それ以上症状を悪化させないためにも、重要な処置なのです。
 
 
【メリット②:歯茎からの出血予防と歯茎の引き締め効果】
 
歯石が沈着したままになっていると、悪い刺激を受け続ける歯茎は炎症が悪化して出血するようになります。症状が進行すると、軽く歯ブラシの毛先が触れただけでも出血することもあります!

出血が原因で歯石に赤黒く色が付いたり、歯面に沈着しやすくなる要因にもなります。歯石が無くなれば歯茎は徐々に引き締まって健康になり、だんだん出血しなくなります。また、歯茎が引き締まることで、歯周ポケットの数値が改善され、歯肉縁下歯石も付きにくくなります。
 
 
【メリット③:口臭の改善】
 
歯石除去は歯石が原因で起こっている口臭の改善にも効果的です。

口臭が強くなる要因として、歯石を宿巣としている常在菌が出す毒素の臭いや、歯周病に進行した際に起こす出血、歯周病悪化に伴う排膿臭などが挙げられます。

細菌の出す毒素は硫化水素やメチルメルカプタンなどがあり、よく「卵やタマネギが腐ったような臭いがする」と例えられます。また、出血や膿も独特の生臭さを放ちます。

根本的な原因である歯石を除去し、臭いの素が無くなれば、徐々に口臭も改善するでしょう。
 
 

歯石除去にデメリットはあるのか

 
歯石を除去することによるデメリットもご紹介します。
 
 
【デメリット①:除去後歯がしみて痛みを感じることがある】
 
歯周病が進行している方の中には、歯石除去後一時的に歯がしみるような痛みを感じることがあります。歯茎が引き締まってくれば、この症状は徐々に治まってきます。
 
 
【デメリット②:セメント質が傷つくことがある】
 
歯肉縁下歯石を除去する際、歯根を保護しているセメント質という組織が細菌感染している部分は除去が必要な場合があります。その際、明確な境界線があるわけではないので、やむを得ず、施術中にセメント質を部分的に傷つけてしまうことがあります。
 

歯石除去の種類とまとめ

 

ふきんの上に並べられた歯石取りの道具それでは、実際に歯科医院で行われる、歯石除去の種類についてご説明いたします。

 
 
【スケーリング】
 
スケーリングとは、歯垢や歯石を除去する処置のことです。ハンドスケーラーや超音波スケーラーなどの専用器具を用いて、歯の表面上に沈着した歯垢、歯石除去を行います。スケーリングを行うことで、歯垢、歯石が除去され、その部位の歯肉の腫れなどの炎症改善、つまり引き締めにつながります。
 
 
【ルートプレーニング(SRP)】
 
ルートプレーニングとは、歯肉縁下歯石も併せて除去する処置のことです。歯根表面上の歯石除去はもちろん、細菌感染を起こしたセメント質も除去し、歯根の表面を滑らかな状態に戻します。ルートプレーニングを行うことで、歯根表面をツルツルと滑らかな状態にして、剥がれた歯肉の再付着を促し、かつ歯垢が溜まりにくい状態にします。
 
 
【フラップ手術】
 
歯周病が進行し、ルートプレーニングでは取りきれない、器具の届かない深層部に沈着した歯石を除去する処置です。具体的には、歯肉を必要最小限切開し、付着した歯石を見える状態にし、その除去を行う外科手術です。歯根部を露出させて歯石除去をおこなうので、細部に渡り徹底的に取り除くことができます。
 
 
如何でしたでしょうか?ここまで、歯石の種類と歯石を除去する方法及び、メリット・デメリットをご紹介してきました。

当サイトでは、マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を活用した精密な歯科治療をご紹介しておりますが、マイクロスコープの活用は、歯石除去においても効果を発揮します。

マイクロスコープを活用した治療方法について詳しく知りたい場合や、導入されている歯科医院を探したい場合は、当サイトを是非ご活用ください。

 

この記事の執筆監修者

 
dr-wakabayashi若林 潤 先生
(医療法人社団潤優会 若林歯科医院 理事長)

■経歴

日本大学歯学部 卒業

1995年 若林歯科医院 開設

2007年 医療法人社団潤優会 設立

■所属学会

日本歯周病学会

日本歯科審美学会

日本臨床歯周病学会

日本口腔インプラント学会

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