【医師監修】セラミックと銀歯どっちがいい?見た目や強度、費用を徹底比較

「保険の銀歯と自費のセラミック、どちらにしますか?」と尋ねられると、つい費用だけで選びがちです。しかし、その選択は10年後の口元の印象や、口全体の健康に大きな違いをもたらす可能性があります。

両者の違いは、費用が数十倍に開くだけではありません。虫歯の再発リスクや金属アレルギーの危険性など、すぐには見えない重要な違いが数多く存在します。

この記事では、費用・見た目・耐久性・体への影響などの視点から、セラミックと銀歯を比較しています。後悔しない治療をするために、ご自身の基準を明確にし、最善の選択肢を見つけるきっかけにしましょう。

この記事を監修した医師

脇田奈々子
Wakita-Nanako

大阪大学歯学部卒業後、同大学予防歯科学教室にて医員として勤務。

現在は大阪市内の歯科医院で、予防歯科からインプラント、矯正治療まで幅広く対応している。治療の先の心のケアにもつながる“医療としての美容歯科”として、ボツリヌス治療、ヒアルロン酸注入、リップアートメイクにも注力している。
「口元の健康と美を通じて、最後まで美味しく食べ、自信を持って笑える人生」をサポートすることを理念としている。


セラミックと銀歯のどっちがいい?

セラミックと銀歯の主な特徴は、以下の表のとおりです。

項目セラミック銀歯
審美性天然歯に近く自然金属色が目立つ
変色のしにくさ変色しにくい変色しやすい
寿命強度が高く、比較的寿命が長いセラミックより寿命が短い傾向
金属アレルギー発症リスクなし発症リスクあり
虫歯リスクリスクが低いリスクが高い
費用(被せ物)約80,000~150,000円約4,000~5,000円(3割負担)

それぞれの特徴について後述するため、参考にしてください。

セラミックと銀歯の見た目・寿命・健康に関する違い

セラミックと銀歯の違いを理解しやすくするために、以下の5つのポイントを解説します。

  • 見た目の美しさ(審美性)
  • 変色のしにくさ
  • 強度(耐久性)
  • 平均的な寿命年数
  • 体への影響(金属アレルギーのリスク)

見た目の美しさ(審美性)

見た目を重視するなら、セラミックのほうが銀歯よりも優れています。天然の歯に近い白さや透明感を再現でき、周囲の歯と自然に調和するため、治療跡がほとんど目立ちません。

銀歯は金属色が口を開けた際に目立ち、笑顔や会話の印象を損なう場合があります。それぞれの審美性の違いは以下のとおりです。

項目セラミック銀歯
色合い天然歯の白さや透明感を再現金属色で口を開けると目立つ
自然さ隣の歯と見分けがつかないほど自然周囲の歯から浮いて見える
適応部位前歯はもちろん奥歯にも適応主に奥歯の機能回復に使用
印象への影響笑顔や会話に自信を持てる口元が暗い印象になることも

セラミックは、前歯だけでなく笑ったときに見える奥歯にも適しています。日常的に人と接する機会が多い方や、見た目を大切にしたい方にはおすすめです。

銀歯は噛む機能の回復を優先した素材で、コスト面の利点はあるものの、見た目に関してはデメリットが目立ちます。

変色のしにくさ

セラミックのほうが変色はしにくいです。セラミックは陶器のような材質で水分をほとんど吸収せず、経年による変色がほとんど起こりません。

表面が滑らかであるため、コーヒーやお茶、カレーなど色の濃い飲食物を摂っても色素が付着しにくいです。そのため、治療直後のような透明感のある白さを長期間維持できます。

銀歯は、口の中で常に唾液にさらされる環境にあり、金属が酸化や硫化を起こすことで徐々に黒っぽく変色していきます。銀を含む歯科材料では、時間の経過に伴う変色が避けられないことが研究でも示されています。(※1)

歯と銀歯の境目には汚れが溜まりやすく、そこから変色することもあります。長期間にわたって見た目の美しさを維持したい場合は、セラミックが有利といえます。

強度(耐久性)

噛む力に耐えられるかどうかは、詰め物や被せ物を選ぶうえで欠かせない視点です。銀歯もセラミックも十分な強度を備えていますが、性質には違いがあり、口の中での影響の仕方も異なります。

両者の特徴をまとめると次のようになります。

項目セラミック銀歯
強度陶器のため硬く摩耗しにくい金属特有の粘り強さで割れにくい
デメリット衝撃で割れるリスクがある硬すぎて噛み合う歯をすり減らす恐れ

銀歯は丈夫で安心感があるものの、天然の歯より硬すぎるため、長期的にはかみ合う歯を摩耗させるリスクが残ります。

セラミックは、素材や製法の進歩により耐久性が向上し、強い力がかかる場面でも安心して使えるようになっています。見た目の美しさと強度の両立が可能になり、セラミックの中で特にジルコニアという種類は歯ぎしりや強い噛みしめがある方でも選択肢にしやすい素材です。

平均的な寿命年数

銀歯は5〜7年程度で再治療が必要になるケースが多いのに対し、セラミックは10年以上もつことも珍しくありません。

銀歯は数年単位で劣化が進みやすく、寿命が短いのが特徴です。表面が傷つきやすく、汚れが付着して虫歯リスクが高まることに加え、経年的な摩耗や変色も避けられません。そのため、見た目や機能の面でも「長持ちしにくい素材」といえます。

セラミックは水分を吸収せず、変色や摩耗に強いため、見た目と機能を長期にわたり維持できます。寿命は材料そのものだけでなく、歯科医師や歯科技工士の技術、適切な噛み合わせの調整など複数の要因が関わっています。

体への影響(金属アレルギーのリスク)

口に入れるものは長期間使い続けるため、体への影響も軽視できません。特に金属アレルギーのリスクに関しては、銀歯とセラミックで大きな違いがあります。

それぞれの特徴を以下の表でまとめています。

項目セラミック銀歯
材質金属を含まないオールセラミック金銀パラジウム合金(複数の金属を含む)
リスク金属アレルギーの心配がないパラジウム・ニッケル・クロムがアレルギー原因になる可能性

銀歯は、唾液により金属イオンが微量に溶け出すことで、口内の炎症や全身のかゆみ・かぶれなどの症状を引き起こす場合があります。オールセラミックは金属を一切含まず、生体親和性が高いため、アレルギーを持つ方やリスクを避けたい方におすすめの素材です。

セラミックと銀歯の費用・治療期間に関する違い

銀歯とセラミックの保険適用の有無や、治療完了までの期間にも違いがあります。ここでは、「保険適用と費用の目安」と「治療にかかる期間」を解説します。

保険適用と費用の目安

治療方法を決める際に、気になるのが費用です。銀歯は健康保険が適用されるため安価に治療できますが、セラミックは自費診療となり、高額になりやすいです。

セラミックと銀歯の費用の違いを以下の表にまとめています。

項目セラミック銀歯(金銀パラジウム合金など)
保険適用なし(一部例外あり)あり
費用目安(詰め物)約40,000~70,000円約2,000~3,000円(3割負担時)
費用目安(被せ物)約80,000~150,000円約4,000~5,000円(3割負担時)

銀歯は国民皆保険制度のもと、最低限の機能回復を目的とした治療として位置づけられているため、数千円で治療を受けられます。セラミックは見た目や生体親和性など、質の高さを追求できる反面、費用は数十倍に及ぶこともあります。

セラミック治療は医療費控除の対象です。そのため、年間の医療費が一定額を超える場合は確定申告で税金の還付を受けられる可能性があります。費用はあくまで目安であり、クリニックや使用する材料、治療部位によって変動します。

治療にかかる期間

銀歯は短期間で治療が完了するのに対し、セラミックはオーダーメイドの工程が加わる分だけ時間がかかります。治療開始から最終的な詰め物・被せ物が入るまでの流れに違いがあります。

銀歯は、保険診療のルールに沿って規格化された工程で進められるため比較的スムーズです。大きなトラブルがなければ、1〜2週間ほどで治療が完了するのが一般的です。

セラミックは、精密な型取りを行い、歯科技工士が患者さんごとにオーダーメイドで製作する工程が必要です。治療完了までに2〜3週間かかることも多く、治療の間は仮歯を入れて過ごすケースもあります。

近年では3Dスキャナーを使って設計・製作を行う「CAD/CAMシステム」を導入する歯科医院も増えています。(※2)

セラミックと銀歯を比較するときの注意点

銀歯とセラミック、どちらを選ぶか考える際、見えにくい部分にも目を向けることが大切です。セラミックと銀歯を比較するときの注意点として、以下の3つを解説します。

①虫歯の再発リスクと適合精度の違い

②歯茎の変色(メタルタトゥー)のリスク

③治療で歯を削る量の違い

④セラミックにも種類がある

①虫歯の再発リスクと適合精度の違い

セラミックのほうが適合精度が高いため、虫歯の再発リスクを低く抑えられる傾向があります。

銀歯はセメントで歯に固定しますが、経年劣化や温度変化による膨張・収縮で微細な隙間が生じやすく、そこから細菌が侵入します。さらに金属表面は傷がつきやすく、プラークが付着しやすいです。

セラミックは隙間がほとんどなく、寸法の安定性や表面の滑らかさから汚れが付着しにくいです。近年の研究では、辺縁隙間が数十マイクロメートル単位で精密に管理されることも示されています。(※2)

ただし、削り方や型取り、設計など多くの工程に左右されるため、技術力のある歯科医院を選ぶことが重要です。

デンタルマイクロスコープを導入している歯科医院では、肉眼の数倍〜数十倍に拡大した精密な視野で歯の形成や接着を行えます。デンタルマイクロスコープによりセラミックの適合精度が向上し、虫歯再発のリスクを低減することが期待できます。

②歯茎の変色(メタルタトゥー)のリスク

銀歯は歯茎の黒ずみを引き起こすリスクがありますが、セラミックにはその心配がありません。特に口元の見た目を重視する方にとって、大きな違いであり、以下のような特徴があります。

項目内容
原因銀歯の金属(銀・パラジウムなど)が唾液で溶け出し、歯茎に沈着する
見た目歯茎が黒っぽく、または青紫色に変色する
影響口元の審美性を損なう 金属アレルギー物質が体内に蓄積される可能性
対処法自然には消えず、レーザー治療など特別な処置が必要

一度沈着すると自然に元の色には戻らないため、銀歯を選ぶ場合は長期的なリスクを理解しておく必要があります。金属を含まないオールセラミックは、生体親和性が高いことから歯茎を変色させることはありません。

口の中で成分が溶け出すこともなく、長期的に歯茎の健康と美しさを保てるのがメリットです。前歯の治療を考えている方や、体への影響を避けたい方にとって、セラミックは安心して選べる選択肢です。

③治療で歯を削る量の違い

治療で歯を削る量は、一般的にセラミックのほうが銀歯よりやや多い傾向があります。セラミックは割れを防ぐために一定の厚みが必要で、その分削る量が増えます。銀歯は金属ならではの強度により薄く作製でき、削る量を比較的少なく抑えられるのが特徴です。

歯は一度削れば二度と元に戻らない大切な組織です。治療を受ける際には「どの程度削るのか」を歯科医師に確認し、納得したうえでの選択が重要です。

④セラミックにも種類がある

セラミック治療は1種類ではなく、以下のようなタイプがある点に注意が必要です。

種類審美性強度費用目安(税込)
オールセラミック天然歯に近い透明感通常使用で問題ない約10〜20万円/1本
ジルコニアセラミック種類により透明感に差があり非常に強い約10〜20万円/1本
ハイブリッドセラミックほかの種類よりもやや劣る経年で劣化の可能性あり約5〜15万円/1本

耐久性が求められる奥歯には、強度の高いジルコニアセラミックスが適しているでしょう。前歯には、審美性に優れたオールセラミックスがおすすめです。少しでも費用を抑えたい方は、ハイブリッドセラミックが選択肢の一つになります。

セラミックと銀歯のメリット・デメリット

セラミックと銀歯のメリット・デメリットを以下の表にまとめたので、参考にしてください。

項目セラミック銀歯
メリット・審美性が高い
・変色しにくい
・硬くて摩耗しにくい
・金属アレルギーの心配がない
・虫歯の再発リスクが低い
・割れにくい
・費用が安い
・治療が比較的短い
デメリット・割れるリスクがある
・費用が高い
・治療に時間がかかる
・口を開けると金属色が目立つ
・黒っぽく変色するおそれがある
・噛み合う歯がすり減る可能性がある
・金属アレルギーになるおそれがある

セラミックと銀歯の選び方

比較ポイントが多くて、「どちらが合っているのだろう?」と迷ってしまう方もいることでしょう。治療を受けるうえで、後悔しないための選び方として、以下の4つを解説します。

  • 費用を優先する場合:銀歯
  • 見た目を優先する場合:セラミック
  • 健康面を優先する場合:セラミック
  • 歯科医院で確認すべきこと(保証・メンテナンス)

費用を優先する場合:銀歯

治療費をできるだけ抑えたいなら、保険が適用される銀歯が現実的な選択肢です。国民健康保険などの公的医療保険を利用できるため、自己負担を軽減できます。

費用の目安は、3割負担で以下のようになります。

治療内容銀歯の費用(1本あたり)
詰め物(インレー)約2,000〜3,000円
被せ物(クラウン)約4,000〜5,000円

セラミックが数万〜十数万円かかるのと比べると、費用面での差は大きいです。

見た目を優先する場合:セラミック

自然な仕上がりを求める方や、治療跡がわからないほどの美しさを大切にしたい方にはセラミックが適しています。天然歯の色や質感を忠実に再現できる点が大きなメリットです。

セラミックが選ばれる理由として、以下が挙げられます。

  • 色調の再現性が高く、隣の歯と見分けがつかないほど自然
  • 水分を吸収せず、コーヒーやカレーでも変色しにくい
  • 治療直後の白さや透明感を長期間維持できる
  • 表面が滑らかで、汚れやプラークが付着しにくく清潔を保ちやすい

銀歯では笑ったときに金属の色が目立ち、コンプレックスを感じる方も少なくありません。セラミックは口元の印象を損なわず、見た目を気にせずに笑えるようになります。

人前に立つ機会が多い方や、第一印象を大切にしたい方にとって、セラミックは生活の質を高める選択肢です。

健康面を優先する場合:セラミック

「金属アレルギーを避けたい」「虫歯の再発リスクを減らしたい」など、健康を第一に考えるなら、セラミックがおすすめです。健康面でのメリットは以下のとおりです。

  • 金属を一切使わないためアレルギーの心配がない
  • 歯と強固に接着するため二次虫歯のリスクが低い
  • 表面が滑らかで汚れが付着しにくく清潔を保ちやすい
  • 金属イオンが溶け出さないため歯茎が黒ずまない

セラミックは体に優しい素材で、歯茎や口腔内の健康を損なう心配がなく、治療した歯を長持ちさせます。1本でも多く自分の歯を守り、長期的な健康を維持したい方におすすめの選択肢です。

歯科医院で確認すべきこと(保証・メンテナンス)

素材選びと同じくらい、どの歯科医院で治療するかが結果を左右します。自費のセラミックは、特に事前確認が重要です。

まず保証の有無と内容を確認し、期間だけでなく適用条件や再製作・修理費の自己負担なども把握しておきましょう。メンテナンス体制として、定期検診・クリーニングの間隔、個々に合ったセルフケア指導などが整っているかも確認します。

治療の精度は歯の寿命に影響します。だからこそ、不安や疑問を気軽に相談できて、きちんと説明してくれる医院を選ぶことが大切です。

セラミック・銀歯だけでなくCAD/CAM冠もある

虫歯で削った歯の治療法には、セラミックや銀歯だけでなく、CAD/CAM冠もあります。

CAD/CAM冠は、プラスチックとセラミックを混ぜた素材を歯の補修に使う治療で、銀歯より審美性が高いことが特徴です。金属を使用しないため、金属アレルギーの心配もありません。

CAD/CAM冠の治療の多くは、保険適用されます。セラミックよりも自己負担額が低く、安価で治療を受けられるメリットがあります。ただし、セラミックよりすり減りやすく、汚れの付着や再発のリスクがある点には注意してください。

まとめ

銀歯とセラミックには特徴があり、費用を重視するなら銀歯、見た目の自然さや長期的な健康を優先するならセラミックが選択肢となります。

銀歯は保険が適用されるため経済的に治療を受けられる一方で、見た目や再発リスク、金属アレルギーの懸念があります。セラミックは費用が高額になりますが、審美性や耐久性に優れ、体にもやさしい素材です。

どちらが優れているわけではなく、何を優先するかによって答えは変わります。短期的な費用を優先するなら銀歯も選択肢の一つですが、虫歯の再発リスクの低さ、金属アレルギーの心配のなさ、長期的な美しさを考慮すると、セラミック治療の多くのメリットがあることも事実です。

この記事で得た知識をもとに、自分の価値観やライフスタイルに合った治療法を検討し、信頼できる歯科医師に相談してみてください。


参考文献

  1. Parthasarthy Natarajan, Seenivasan Madhan Kumar, Shanmuganathan Natarajan, K S Sridharan, S Narayana Kalkura. Nano-particle coated or impregnated acrylic resins in dental applications: A systematic review of in Vivo Evidence on mechanical properties, biocompatibility and clinical performance. J Oral Biol Craniofac Res, 2025, 15(6), p.1190-1199.
  2. Xiaoyun Liu, Andrew B Cameron, Ketil Hegerstrøm Haugli, Adriane Andersen Mougios, Nicholas C K Heng, Joanne J E Choi. Accuracy of lithium disilicate and polymer-infiltrated ceramic-network (PICN) ceramic restorations fabricated from subtractive manufacturing: A systematic review of in vitro studies. J Dent, 2025, 161, p.105872.