「治療したはずの歯がまだ痛む」「歯茎に違和感がある」。そんな症状が続いている場合、根管治療がうまくいっていない可能性があります。根の中で細菌が再び増殖すると、知らないうちに炎症が広がり、歯の周囲の骨にまでダメージが及ぶこともあります。
この記事では、根管治療が失敗する原因やそのときに現れる症状、そして再治療が必要となるケースについて解説します。気になるサインを見逃さず、早めの対応につなげるための参考にしてください。
根管治療が失敗する原因

根管治療とは、歯の内部にある神経や血管をきれいにする治療です。痛みを軽減させたりご自身の歯を残したりするために重要な処置ですが、歯根は解剖学的に複雑であり、難易度が高い処置の一つです。
ここでは、根管治療がうまくいかない原因を詳しく見ていきましょう。
1. 難易度が高いから
根管治療は多くの歯科医院・クリニックで行われている処置ですが、難易度が高く失敗する可能性があります。
根管の内部は枝分かれしていて複雑であり、きちんと処置するには、熟練した技術とCT・マイクロスコープなどの設備が求められます。
マイクロスコープとラバーダムを使った精密な治療を提供する歯科医院を受診するために、歯科医師の治療実績や、歯科医院・クリニックの設備を確認しておきましょう。
2. 根管内に細菌が残ってしまったから
根管治療の目的は、内部を無菌に近い状態にすることです。
しかし、感染した組織を完全に取り除けなかったり、治療中に唾液が入り込んでしまったりすると、根管内に細菌が残ってしまいます。残った細菌が再び炎症を起こし、結果的に治療のやり直しが必要になることもあります。
3. 薬剤や被せ物に隙間があったから
根管治療では、「根管充填」と呼ばれる処置を行います。これは専用の薬剤と詰め物を使う処置で、無菌状態を維持するためには欠かせません。
しかし薬剤がすみずみまで行き渡らず、わずかな隙間が残ってしまうと、そこから細菌が増殖してしまいます。
また、治療後に装着するクラウン(被せ物)と歯の土台にすき間がある場合も、そこから細菌が入り、再感染の原因になります。
4. 治療中に根管に穴が空いたから
根管はとても狭く複雑な形をしているため、治療中に誤って根管の壁に穴を開けてしまうことがあります。これはパーフォレーションと呼ばれる状態で、この穴が見逃されると細菌が入り込み、感染が再発するリスクが高まります。
根管治療の失敗で現れる主な症状

根管治療で失敗したとき、以下のような症状が現れます。
- 噛んだときの痛みや違和感が続く
- 歯茎が腫れる・膿が出る・膿瘍ができる
- 鈍い痛みや圧迫感が治まらない
- 治療した歯の周囲が変色・臭う
噛んだときの痛みや違和感が続く
治療後、食べ物を噛んだときにズキッと痛んだり、歯が浮いたような違和感が何週間も続いたりする場合、根管の中に問題が残っている可能性があります。
治療直後の正常な経過であれば、痛みは徐々に和らいでいきます。しかし、痛みが軽くならない、あるいは一度治まった痛みがぶり返す場合は、見過ごせないサインです。
考えられる原因には、以下のようなものがあります。
- 根の先に感染が残っている
清掃しきれなかった細菌が根の先端で再び増殖し、炎症を起こしている状態 - 神経の取り残し(残髄:ざんずい)
細かく枝分かれした部分の神経が取り残されることがあり、この残った神経が炎症を起こす - 歯の根にヒビが入っている(歯根破折:しこんはせつ)
目に見えないほどの小さなヒビが根に入り、そこから細菌が侵入して炎症を引き起こしている
これらの状態を放置すると、歯を支える骨が静かに溶かされてしまうこともあります。「そのうち治るだろう」と自己判断せず、長引く痛みは早めに歯科医師へ相談してください。
歯茎が腫れる・膿が出る・膿瘍ができる
治療した歯の周りの歯茎が赤く腫れたり、ニキビのようなおできができたりするのは、根管治療がうまくいっていない典型的なサインです。
このおできはフィステルまたはサイナストラクト(瘻孔:ろうこう)と呼ばれます。これは、歯の根の先に溜まった膿が、出口を求めて骨を溶かし、歯茎まで到達してできたトンネルです。
フィステルができると、膿が排出されるため一時的に腫れや痛みが和らぐことがあります。そのため「治った」と勘違いしやすいのですが、感染源である根の内部は治っておらず、むしろ悪化している証拠です。
【すぐに受診すべき歯茎のサイン】
- 歯茎がぷくっと丸く腫れている
- 白や黄色っぽいおできができている
- おできを押すと、膿や血のようなものが出る
- 腫れたり引いたりを繰り返している
- ひどい場合は、頬やあごの下まで腫れが広がっている
このような症状に気づいたら、感染が顎の骨全体へ広がる危険なサインです。すぐに歯科医院で診てもらうことが重要です。
鈍い痛みや圧迫感が治まらない
「激痛ではないけれど、ジンジンする」「歯が押されるような感じがずっとある」といった、鈍い痛みが続く場合も注意が必要です。
鋭い痛みではないため見過ごされがちですが、これは根の先で慢性的な炎症(慢性根尖性歯周炎)が静かに続いているサインかもしれません。
自覚症状は軽くても、歯を支える骨の中では病気が進行し、骨が少しずつ溶かされている可能性があります。特に、疲労がたまっている時や体調を崩した時、睡眠不足が続いている時など、体の免疫力が落ちたタイミングで症状を感じやすくなるのが特徴です。
このような鈍い痛みや圧迫感は、レントゲン写真で根の先の状態を確認しないと原因がわかりません。我慢せずに、まずは歯科医師に相談し、正確な診断を受けることが大切です。
治療した歯の周囲が変色・臭う
根管治療をした歯は、神経や血管がなくなるため、健康な歯に比べて時間とともに色が少しずつ暗くなる傾向があります。
しかし、治療後に歯がだんだんと灰色や黒っぽく、明らかに目立つ色に変わってきた場合は、歯の内部で問題が起きている可能性があります。
考えられる原因は、内部に残った細菌の出す代謝物質や、詰め物・被せ物の隙間からの再感染です。また、根の先に溜まった膿が、強い臭いの原因となることもあります。
【注意すべき見た目や臭いの変化】
- 歯の色が灰色、黒色、濃い茶色などに変わってきた
- 治療した歯の周辺から、嫌な臭いがする
- フロスを通したときに、糸が臭う
- 家族など、周りの人から口の臭いを指摘された
歯の変色や口臭は、ご自身では気づきにくいこともあります。しかし、これらも歯が発している重要な危険信号です。何か気になる変化があれば、遠慮なく相談してください。
根管治療が失敗した場合の対応と再治療

根管治療が失敗したとき、もう一度根管治療をやり直す「再根管治療」と、外科的にアプローチする「歯根端切除術」の2つのアプローチ方法があります。
どの方法が最適かは、歯の状態を精密に検査して判断します。
再根管治療(リトリートメント)の流れ
再根管治療は、文字通り「根管治療をやり直す」治療です。リトリートメント(Re-treatment)とも呼ばれます。一度治療した歯を扱うため、初回の治療よりもさらに高い精度と技術が求められ、治療の難易度は格段に上がります。
治療の基本的な流れは以下の通りです。
- 1.被せ物や土台(コア)の除去
- 2.根管内の古い充填物の除去
- 3.根管内の再清掃・消毒
- 4.薬剤の再充填と封鎖
- 5.新しい土台と被せ物の装着
外科的処置(歯根端切除術)になるケース
再根管治療を行っても症状が改善しない場合や、そもそも根管の内部からアプローチできないケースがあります。その場合に検討されるのが、外科的なアプローチである「歯根端切除術(しこんたんせつじょじゅつ)」です。
これは、歯の根の先端にある病巣を、歯茎側から直接取り除く手術です。内側から治せないのであれば、外側から原因にアプローチする方法と考えてください。
【歯根端切除術が検討される主なケース】
- 再根管治療で治らない
- 根管の構造が複雑
- 太い土台が除去できない
- 根の先に大きな嚢胞がある
この手術は麻酔を行った後に歯茎を小さく切開し、顎の骨の病的な部分を削って、感染源である歯の根の先端と病巣を直接目で見て取り除きます。歯そのものを抜かずに、問題部分だけを解決できる有効な治療法の一つです。
抜歯が必要になるのはどんなとき?
再根管治療や歯根端切除術など、あらゆる手を尽くしても歯を救うことが難しいと判断された場合に、最終的な選択肢として抜歯が検討されます。
【抜歯が避けられない主な状況】
- 歯の根が割れている(歯根破折)
- 重度の虫歯
- 歯を支える骨の著しい喪失
- 治療による改善が見込めない
万が一、歯を抜くことになったとしても、それで終わりではありません。失った歯の機能を補うために、ブリッジや入れ歯、インプラントといった治療法があります。
まとめ
根管治療がうまくいかなかった場合の症状や、その後の対応についてご紹介しました。
根管治療は歯の根を扱う精密で難しい治療です。治療後に続く痛みや歯茎の腫れは、「もう治らないのでは…」と不安になるかもしれませんが、それは歯が発している重要なサインです。「これくらいなら大丈夫」と自己判断で我慢してしまうと、かえって状態を悪化させてしまう恐れがあります。
万が一、治療がうまくいっていなくても、すぐに抜歯となるわけではありません。再根管治療など、大切な歯を残すための選択肢はまだ残されています。気になる症状があれば、まずは遠慮なく歯科医師に相談し、ご自身の歯の状態を正しく知ることから始めましょう。
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