【医師監修】虫歯が再発する原因とは?再発の予防方法や放置するリスクを解説

「治療を終えたはずなのに、歯が痛い」このような経験はありませんか?一度治療した歯でも気づかないうちに虫歯が再発することがあります。再治療を繰り返すことは、歯の寿命を縮めることにもつながるため、予防がとても大切です。

この記事では、再び虫歯になる原因から、虫歯を放置することでのリスク、再発した虫歯の治療方法、再発の予防方法まで詳しく解説します。

この記事の監修歯科医師

脇田奈々子

大阪大学歯学部卒業後、同大学予防歯科学教室にて医員として勤務。

現在は大阪市内の歯科医院で、予防歯科からインプラント、矯正治療まで幅広く対応している。治療の先の心のケアにもつながる“医療としての美容歯科”として、ボツリヌス治療、ヒアルロン酸注入、リップアートメイクにも注力している。
「口元の健康と美を通じて、最後まで美味しく食べ、自信を持って笑える人生」をサポートすることを理念としている。


再び虫歯になる原因

虫歯の再発は、一つの原因だけでなく、複数の要因が複雑に絡み合って起こります。

再び虫歯になる原因は以下のとおりです。

  • 詰め物・被せ物に隙間がある
  • 詰め物の劣化
  • セルフケア不足
  • 虫歯治療自体の難しさ

一度虫歯治療をした歯は、実は治療をしていない健康な歯よりも、再び虫歯にかかりやすい傾向があり、二次カリエスとも呼ばれています。(※1)

それぞれの原因について詳しく解説します。

詰め物・被せ物に隙間がある

虫歯治療では、削った部分を詰め物や被せ物で補いますが、自分の歯と人工の材料との境目を、完全に一体化させることは困難です。精密に治療を行っても、境目には目に見えない微細な段差や隙間ができてしまい、虫歯が再発する温床となります。

詰め物や被せ物との隙間は歯ブラシの毛先が届きにくいため、虫歯の原因となるプラークが溜まりやすく再発につながります。詰め物の下で虫歯が進行していくため、初期段階では痛みなどの自覚症状が出にくく、発見が遅れる傾向にあります。

詰め物の劣化

詰め物の劣化も虫歯再発の原因の一つです。詰め物や被せ物は、永久に機能するわけではありません。食事のたびに強い力がかかったり、熱いものや冷たいものによる温度変化にさらされたりするため、どのような材料であっても、時間とともに少しずつ劣化していきます。

詰め物の主な劣化パターンは以下のとおりです。

  • 摩耗・変形:長年使っているうちに材料がすり減ったり、噛む力で変形したりして、歯との間に隙間が生じる
  • ひび割れ・破損:硬いものを噛んだときなどに、目に見えない小さなひびが入ったり、一部が欠けたりすることがある
  • 接着剤の劣化:詰め物を歯に固定している接着剤が、唾液などの影響で少しずつ溶け出し、接着力が弱まって隙間を生じる

保険診療でよく用いられるレジンは、水分を吸収して膨張・収縮を繰り返す性質があり、金属などに比べて劣化しやすい側面もあります。

セルフケア不足

虫歯の再発は、セルフケア不足によっても起こります。自分では丁寧に磨いていたつもりでも、歯並びや歯磨きの癖によって、無意識のうちに特定の場所に汚れが残っていることもあります。

特に再発しやすいのが、詰め物や被せ物と歯の境目です。境目には、わずかな段差があるため、プラークが溜まりやすく、通常の歯磨きだけでは汚れを取り除くことが難しいことがあります。歯と歯の間も歯ブラシの毛先が届きにくく、磨き残しが多い場所の一つです。こうした磨き残しが蓄積すると、治療済みの歯であっても再び虫歯菌の温床となり、詰め物や被せ物の縁から少しずつ虫歯が進行していきます。一度治療した歯だからといって安心するのではなく、むしろより丁寧なケアが必要な場所だと認識することが大切です。

虫歯治療自体の難しさ

虫歯の再発は、虫歯治療そのものが持つ本質的な難しさに起因する場合があります。

虫歯に感染した部分は軟らかくなりますが、健康な部分との境界線は明確ではありません。虫歯検知液などを用いても、色や硬さだけで完全に見分けることが難しい場合があり、感染部位が残ることがあります。

また、歯を削ったあとの型取りや、詰め物・被せ物を作成する技工の過程でミクロン単位の誤差が生じると、歯との間に隙間ができ、そこから再び虫歯が発生してしまうこともあります。

治療後に詰め物の高さに違和感が続いたり、痛みがなかなか引かなかったりする場合は、何らかの問題がある可能性も考えられます。

再発した虫歯は放置するとどうなる?

再発した虫歯を放置すると以下のさまざまなリスクが生じます。

  • 虫歯が気づかないうちに進行しやすい
  • 神経まで達し再治療が必要になる
  • 最終的に抜歯が必要になる可能性がある

ここではそれぞれのリスクについて詳しく解説します。大切な歯を一本でも長く保つためにも、再発した虫歯を放置することの危険性を正しく学んでおきましょう。

虫歯が気づかないうちに進行しやすい

治療した歯で再発する虫歯は、詰め物や被せ物の下など、外から見えない場所で発生しやすいため、自分では気づかないうちに進行しているケースがあります。

神経を抜いている歯は、内部で虫歯がどれだけ深くなっても痛みや違和感といった警告サインが現れにくいため、注意が必要です。

虫歯が再発している場合、以下の特徴が現れることがあります。

  • 詰め物や被せ物の境目に、黒い線や影が見える
  • デンタルフロスが特定の場所で引っかかったり、糸がほつれたりする
  • 噛んだときに、以前とは違う違和感や鈍い痛みがある
  • 治療した歯の周辺の歯ぐきが腫れたり、押すと膿が出たりする

これらのサインが症状として現れていたら、放置せず、早めに歯科医院へ相談しましょう。

神経まで達し再治療が必要になる

再発した虫歯が進行し、歯の内部にある神経にまで達すると、脈を打つような痛みが現れることがあります。強い痛みは、虫歯菌が神経に感染し、内部で強い炎症を起こしているサインです。

虫歯が神経まで達すると、虫歯部分を削って詰める治療だけでは対応できないため、根管治療という、感染した神経を取り除き、歯の根の中を清掃したり消毒したりするなど、より専門的な再治療が必要になる可能性があります。

根管治療は歯を残すための治療ですが、治療期間が長くなり、通院回数も増える傾向にあります。

最終的に抜歯が必要になる可能性がある

再発した虫歯を放置し続けると、歯を残すこと自体が難しくなる場合があります。

感染が歯の根の先まで広がって周囲の骨を溶かしてしまったり、残っている歯質が少なくなって歯が割れてしまったりすると、抜歯が必要になります。

また、治療を繰り返すごとに歯はもろくなり、強度が低下していくため、再治療を重ねた歯は、最終的に抜歯に至る可能性が高まります。

歯を失うと、以下のような影響があります。

抜歯による影響詳細
噛む力が低下する食べ物をうまく噛み砕けなくなり、消化器官への負担が増えることがある
周りの歯への影響抜けた歯のスペースに隣の歯が倒れ込んだり、噛み合わせの歯が伸びてきたりして、全体の噛み合わせのバランスが崩れる
治療の選択肢と負担・ブリッジ、入れ歯、インプラントといった治療が必要になる
・治療期間や費用的な負担も大きくなる

できるだけ早い段階で適切な治療を受けることが、自分の歯と将来の健康を守るきっかけになります。

再発した虫歯の治療方法

再発した虫歯も進行度に応じた適切な治療で、治すことが可能です。治療法は虫歯の深さや範囲によって異なります。
ここでは、進行度や状態によって行う治療方法について詳しく解説します。

虫歯を除去して再度詰め物・被せ物を行う

詰め物や被せ物は、再発した虫歯の範囲が比較的小さく、歯の神経まで達していない場合の治療法です。
治療の流れとして、まず以前の治療で装着した詰め物や被せ物を慎重に外し、外からは見えない内部の状態を把握します。その後、修復物の下で広がっている虫歯の部分を専用の器具を使って丁寧に取り除きます。再発した虫歯は、見た目以上に内部で深く広がっていることがあるため、感染した歯質を残さないよう慎重な処置が求められます。虫歯を取り除いたあとは、新しい材料が適合するように歯の形を整え、再度詰め物や被せ物で修復し、機能と見た目を回復させます。

どのような材料が自分の歯の状態や再発リスクに適しているか、歯科医師とよく相談して決めることが大切です。

虫歯が深い場合は根管治療が必要になる

詰め物や被せ物の下で虫歯が静かに進行し、歯の神経にまで達してしまった場合、根管治療という、より専門的な治療が必要になります。

根管治療の目的は、虫歯菌に感染してしまった神経や血管、汚染された組織を徹底的に取り除くことです。歯の根の中にある細い管の内部をきれいに消毒し、細菌が再び侵入しないように、根管の隅々まで薬を詰めて完全に密閉します。

虫歯の再発は、根管内にわずかでも感染組織が残っていたり、薬の充填が不完全で隙間ができたりすることで起こります。根管は複雑で細かい構造をしているため、肉眼での治療には限界があります。

近年では、マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を使った精密治療が普及してきています。マイクロスコープは肉眼の数十倍の倍率で患部を拡大して見ることができるため、細かな感染部位の見逃しを防ぎ、より精密な治療が可能になり、虫歯の再発リスクの低減が期待できます。

ただし、マイクロスコープによる根管治療は自由診療で、費用が高額な点に注意が必要です。費用の目安は治療する歯の場所によって異なり、1歯あたり80,000〜250,000円かかります。1〜3回ほどの通院が必要で、治療期間は1〜3か月程度と長くなる場合があります。そして、抜歯に至る可能性もゼロではありません。

状態によっては被せ物の作り直しを行う

再発した虫歯の治療では、虫歯部分を取り除くだけでなく、被せ物自体を作り直すことが必要な場合があります。
主に以下のようなケースの場合、作り直しを行うことがあります。

  • 被せ物の適合性が悪い
  • 被せ物が劣化・破損している
  • 虫歯の範囲が広くなっている

不適合な被せ物を使い続けることは、常に再発のリスクがあります。密閉性を高め、清掃しやすい環境を整えることで、将来的な再発リスクを減らすことにつながります。

虫歯再発の予防方法

虫歯の再発を防ぐためには、日々のセルフケアと、歯科医院でのプロフェッショナルケアのそれぞれが必要になります。

これからご紹介する予防方法を毎日の生活に取り入れ、大切な歯を一緒に守っていきましょう。

正しいフロスケアの方法

詰め物や被せ物をした歯の境目は、微細な段差があるため虫歯菌の温床となりやすく、歯ブラシだけでは汚れが落ちないことがあります。細かい場所の汚れを落とすためには、デンタルフロスを使用することをおすすめします。

フロスケアは主に以下の3種類があります。

フロスケアの種類特徴
糸巻きタイプ・糸を指に巻いて使用する一般的なタイプで、必要な長さを調整可能
・新しい糸の面を使えるため衛生的で、歯茎の奥まで届きやすい
・プラークを除去できるが、指の操作に慣れが必要
F字型ホルダータイプ・持ち手がF字型で下の前歯に適した形状
・初心者でも簡単に扱え、指の力が伝わりやすい
・狭い歯間や前歯の清掃に向くが、奥歯は不向き
Y字型ホルダータイプ・持ち手がY字型で上の前歯や奥歯に適している
・持ちやすく、角度調整がしやすく多用途
・子供や握力の弱い人にもおすすめだが、交換の手間がある

フロスケアは、1日1回、唾液の分泌が減って細菌が増えやすい就寝前の歯磨き時に行うのがおすすめです。

もし、フロスが毎回同じ場所で引っかかったり、ほつれたりする場合、詰め物の不適合や、虫歯の再発が始まっている可能性があるため、無理に続けず、早めに歯科医院で相談してください。

口腔ケアグッズの使用

毎日のセルフケアの質を高めるために、自分の口の状態に合ったケアグッズを追加するのも良いでしょう。
歯ブラシとフロスを基本としながら、以下のようなアイテムを検討してみましょう。

ケアグッズの種類特徴
フッ素入り歯磨き粉(濃度:1450ppm)・歯の表面(エナメル質)を強くし、再石灰化を促進して虫歯の発生・進行を防ぐ
・使用後は少量の水で1回軽くゆすぐ程度にする
※6歳未満のお子様へのご使用はお控えください
歯間ブラシ歯と歯の間の隙間が広い方、ブリッジ治療をしている方に適している
タフトブラシ奥歯の裏側や詰め物の境目など、普通の歯ブラシでは磨きにくい場所をピンポイントで清掃する
洗口液・歯磨きの補助として、殺菌成分が口の中全体の細菌の増殖を抑える
・汚れを物理的に落とす力はないため、必ず歯磨きとフロスのあと、仕上げに使用する

口腔ケアグッズを上手に活用することで、磨き残しを減らし、虫歯が再発しにくい口内環境を目指すことができます。

食生活の改善

食生活の改善も虫歯再発予防の一つです。

虫歯の再発リスクは、何を食べるかだけでなく、食べる時間や食べ方に影響されます。
お菓子やジュースなどを、時間を決めずに少しずつ摂取する習慣は、口の中が常に酸性の状態になり、唾液が歯を修復する時間がなくなってしまうため、注意が必要です。

虫歯再発を防ぐ食生活のコツは以下のとおりです。

  • 間食は時間を決めてとる
  • 糖分の多い飲み物は控える
  • よく噛んで食べる
  • バランスの良い食事を心がける

食生活を見直すことは、口だけでなく全身の健康維持にも直接的につながります。

定期歯科検診

虫歯の再発を防ぐうえで歯科医院での定期検診を受けることは重要です。

定期検診が重要な理由は以下のとおりです。

重要な理由詳細
早期発見・早期治療につながる定期的なチェックで、ごく初期の段階で発見し、最小限の治療で済ませることができる
セルフケアでは落とせない汚れを除去できる歯科衛生士による専門的なクリーニングで、歯石や細菌の塊であるバイオフィルムを除去できる
自分に合ったケア方法がわかる磨き方の癖や、磨き残しやすい場所について、専門的な視点からアドバイスを受けられる

定期検診は、自分の口の状態に最適なケア方法を、専門家と相談できる機会です。症状がなくても、3〜6か月に1度は検診を行い、プロの目で確認してもらいましょう。


まとめ

治療で入れた詰め物や被せ物の隙間から虫歯は再発しやすく、一度治療した歯は新たなケアが必要です。治療の完了はゴールではなく、自分の歯を長く守るための新しいスタートだと覚えておきましょう。

虫歯の再発を防ぐには、フロスなどを活用した毎日の丁寧なセルフケアと、歯科医院でのプロフェッショナルケアが重要です。症状がなくても定期検診を受けることで、自分では気づけない初期の変化を発見し、歯への負担が少ない治療で済みます。大切な歯を将来にわたって守るため、定期的に歯科医院で診てもらいましょう。

参考文献

Haitham Askar, Joachim Krois, Gerd Göstemeyer, Peter Bottenberg, Domenick Zero, Avijit Banerjee, Falk Schwendicke.Secondary caries: what is it, and how it can be controlled, detected, and managed?.Clinical Oral Investigations,2020,24,5,p.1869-1876.

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