「何度も通っているのに、治療が終わらない」「いつまで続くのか分からなくて不安」
根管治療が長引くと、そんな気持ちになるのも無理はありません。
実は、歯の根の形が複雑だったり、感染の範囲が広かったりする場合、どうしても治療に回数と時間がかかることがあります。この記事では、根管治療がなかなか終わらない主な原因と、通院前に見直しておきたいポイントをわかりやすく解説します。
不安な気持ちを少しでも軽くし、大切な歯をしっかり守るために、今できることを一緒に確認していきましょう。
根管治療が終わらない主な原因

根管治療が終わらない原因には、以下があげられます。
- 根管の形が複雑・細くて処置に時間がかかる
- 炎症や膿がなかなか治まらない
- 感染の再発が起きている・・再治療に時間がかかる
- 通院間隔が空いて治療が中断気味になっている
根管の形が複雑・細くて処置に時間がかかる
歯の根の中にある「根管」は、実はとても複雑な形をしています。水道管のようにまっすぐで単純な管ではなく、その形は一人ひとり、そして歯の種類によっても全く異なります。
特に、治療が長引きやすい根管には、以下のような特徴があります。
- 根管が大きく曲がっている(湾曲根管)
- 根管が途中で網の目のように枝分かれしている(側枝・副根管)
- 根管が非常に細い・塞がっている(石灰化根管)
- 根管の本数が通常より多い
このような複雑な根管では、ファイルという細いヤスリのような器具や消毒薬が、根のすみずみまで届きにくくなります。
感染した部分を完全に取り除き、きれいにする作業は、歯科医師が目に見えない迷路を手探りで丁寧にお掃除していくようなものです。そのため、どうしても治療回数が増え、期間が長くなってしまうのです。
炎症や膿がなかなか治まらない
根管治療が長引くもう一つの大きな原因は、根管の中や、その先の顎の骨にまで広がった炎症や膿が、なかなか治まらないケースです。虫歯を長期間放置してしまった場合など、細菌による感染が重度になっていると、治療はより困難になります。
- 膿の袋(根尖病巣)
根の先端に膿がたまり、治癒に時間がかかることがある。 - 体調・免疫力
疲労や持病などの影響で炎症が治まりにくくなる。 - フレアーアップ
治療による刺激で一時的に痛みや腫れがより増すことがある。
このように、感染の程度やご自身の体調によって、回復にかかる期間には個人差があるのです。
感染の再発が起きている・再治療に時間がかかる
一度根管治療を受けた歯が再び痛み、再治療が必要になる場合も、治療期間が長くなる傾向にあります。再治療は、初めての治療よりも複雑で難しい工程が必要になるためです。
再治療では、まず根管に入っている古い治療材料の除去から始まりますが、材料が硬く除去が難しい場合は時間がかかります。
また、過去の治療で見逃された細い根管に細菌汚染物質が残っていると、痛みの再発につながることがあります。
さらに、治療中に唾液が入り込んだり、仮の蓋が外れたりすると再感染が起き、治療がやり直しになることもあります。こうしたリスクを防ぐには、適切かつ丁寧な処置が欠かせません。
通院間隔が空いて治療が中断気味になっている
お仕事の都合や体調不良などで、どうしても予約通りに通院できないこともあるかと思います。しかし、根管治療は計画的に段階を踏んで進める治療であり、通院間隔が空きすぎてしまうと、治療が長引く大きな原因になります。
治療中は仮の蓋(仮封)をしますが、一時的なものです。時間が経つと劣化し、隙間から細菌が侵入して再感染を招くことがあります。
また、根管治療中に根管内に入れた消毒薬も時間が経つと効果が薄れ、細菌が再び増える可能性があります。痛みがなくなっても治ったとは限らないため、治療スケジュールを守って通院を続けることが大切です。
根管治療を途中でやめるとどうなる?

「何度も通院するのは大変…」「痛みがなくなったから、もう大丈夫かな?」根管治療が長引くと、このように感じて通院から足が遠のいてしまうことがあるかもしれません。
しかし痛みが消えたのは、あくまで治療によって一時的に症状が抑えられている状態に過ぎません。根管内の細菌が完全にいなくなったわけではないのです。ここでは、治療を途中でやめた場合に起こりうる、以下の3つの深刻なリスクについて解説します。
- 中断による再感染や痛みの再発
- 歯を残せなくなるリスク
- 将来的な治療の選択肢が狭まる可能性
中断による再感染や痛みの再発
根管治療を中断してしまった場合に、まず直面する問題が細菌による「再感染」です。治療途中の歯には、内部を保護するために「仮封(かふう)」と呼ばれる仮の蓋をします。
しかし、この蓋は歯科用のセメントなどで作られた、あくまで一時的なものです。食事や歯磨きですり減ったり、唾液で少しずつ溶けたりするため、長期間の耐久性はありません。
治療を中断し、仮の蓋のまま放置してしまうと、以下のようなことが起こります。
- 仮の蓋の劣化と細菌の侵入
- 痛みの再発と悪化
- 治療のやり直し
痛みがぶり返し、治療期間がさらに延びてしまうのは、心身ともに大きな負担です。せっかくここまで頑張ってきた治療や時間を無駄にしないためにも、計画通りに完治させることが何よりも大切です。
歯を残せなくなるリスク
根管治療の最大の目的は、大きく広がった虫歯でも歯を抜かずに残すことにあります。しかし、治療の中断は、その歯を残せる可能性そのものを著しく低下させてしまいます。
治療を中断した歯の内部で再感染が起こると、細菌は歯の中だけにとどまりません。歯の根の先端からあふれ出し、歯を支えている周りの顎の骨へと感染が広がっていきます。
膿の袋(根尖病巣)が大きくなると、歯を支えている顎の骨が徐々に溶かされていきます。また、治療中の歯は神経や血管を失って脆くなっており、仮の蓋のまま強い力が加わると、ある日突然、歯の根が割れてしまうこともあります。
こうした状態になると、残念ながら現在の医療技術では歯を元に戻すことは難しく、最終的には抜歯を選ばざるをえなくなるかもしれません。大切な歯を残すためにも、根管治療は途中でやめず、最後まできちんと受けることが重要です。
将来的な治療の選択肢が狭まる可能性
もし治療を中断した結果、抜歯に至ってしまった場合、そこで終わりではありません。失った歯の機能を補うために、ブリッジ・入れ歯・インプラントといった治療が必要になります。
しかし、根管治療を中断したことで顎の骨が大きく失われていると、これらの治療の選択肢が狭まったり、治療がより複雑で大掛かりになったりする可能性があります。
【抜歯後の治療法と中断による影響】
治療法 | 起こりうる影響 |
ブリッジ | 抜歯で骨が痩せてしまうと、両隣の歯に負担がかかり、結果的にその歯の寿命を縮めるおそれがあります。 |
インプラント | 顎の骨が溶けていると土台が足りず、骨造成などの手術が必要になり、治療期間や費用が増えることがあります。 |
入れ歯 | 骨が痩せていると安定せず、痛みや外れやすさ、噛みにくさといった問題が起こりやすくなります。 |
今、目の前の治療を最後までやり遂げることが、ご自身の歯を守り、将来の治療の選択肢と健康な生活を守ることにつながるのです。
根管治療が終わらない場合の3つの選択肢

根管治療が終わらない場合は、以下の3つの選択肢も検討してみましょう。
- 再根管治療
- 歯根端切除術
- インプラントなど
それぞれの治療法を詳しく解説します。
再根管治療
再根管治療とは、以前に根管治療を受けた歯で、再び痛みや腫れが出た場合に行う「やり直しの治療」です。根管治療は、細菌の取り残しや被せ物のすき間などが原因で、炎症が再発することがあります。
再び根の中を清掃・消毒し、薬を詰め直すことで、歯を抜かずに治療できます。初回よりも難易度が高く、精密な設備や高い技術が求められる治療です。
歯根端切除術
再根管治療でも症状が改善しない場合に選択されるのが「歯根端切除術」です。局所麻酔のうえで歯ぐきを開き、骨をわずかに削って、炎症の原因となっている歯の根の先端と膿のかたまりを取り除く処置です。
通常の治療では届かない深部の感染源に、外側から直接アプローチできる点が特徴です。歯を残すための外科的な選択肢のひとつとして検討してみましょう。
インプラントなど
歯の根が深く割れていたり、周囲の骨が大きく失われている場合は、保存が難しく、抜歯が必要と判断されることがあります。自分の歯を残せないですが、炎症の広がりを防ぐための大切な処置です。
抜歯後には、インプラント・ブリッジ・入れ歯などの選択肢があり、機能を補うことができます。
- インプラント
顎の骨に人工歯根を埋める方法 - ブリッジ
両隣の歯を土台にし、その上に連結した人工歯を固定する方法 - 入れ歯
取り外し可能な人工の歯を装着する方法
それぞれに特徴があるため、歯科医師と相談しながら自分に合った方法を選びましょう。
まとめ
今回は、根管治療がなかなか終わらない原因と、その際の確認ポイントや選択肢について解説しました。
治療が長引くのは、歯の根が複雑な形をしていたり、感染が大きく広がっていたりする場合がほとんどで、決して珍しいことではありません。
しかし、最も大切なのは、自己判断で治療を中断しないことです。痛みが消えても、途中でやめてしまうと再感染を起こし、最悪の場合は歯を失うことにもつながります。
不安な気持ちのまま治療を続けるのはつらいものです。まずは主治医に現在の状況や今後の見通しを遠慮なく質問してみてください。大切なご自身の歯を守るため、納得のいく形で治療を最後までやり遂げましょう。
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