上あごの真ん中や下の歯の内側の歯茎にある硬い出っ張りは、「骨隆起」かもしれません。骨隆起は、あごの骨の一部が厚くなってできるふくらみで、良性のものとされています(※1)。この記事では、できやすい場所や原因、痛いときに考えられること、手術が必要なケースと受診の目安を、公的機関の情報や論文をもとに解説します。
この記事でわかること
- 骨隆起とは何か、どこにできやすいか
- 骨隆起ができる原因と、歯ぎしり・食いしばりとの関係
- 骨隆起が痛いときに考えられること
- 手術が必要になるケースと、手術のデメリット
- 受診の目安と、何科に行けばよいか
骨隆起(こつりゅうき)とは?口の中にできる骨の硬いふくらみ
骨隆起とは、あごの骨の一部が厚くなり、口の中に硬いふくらみとして出てきたものです。上あごの真ん中や、下の歯の内側の歯茎によく見られ、がんではない良性のものとされています。
骨隆起にはどのような特徴がある?
骨隆起は骨のふくらみなので、触ると硬いのが特徴です(※2)。表面は周りと同じ口の中の粘膜(口の中を覆っているやわらかい膜)に覆われています。上あごにできるものは真ん中にあり、表面はなめらかです(※1)。下あごにできるものは、「下あごの内側の硬い腫れ」として気づくことが多いとされています(※2)。
骨隆起は「正常」?病気との関係
骨隆起は、上あごや下あごによく見られる骨のふくらみで、良性とされています(※1)。一方で、よく見られるものであるだけに、「がんではないか」と心配になる人もいます(※1)。骨隆起かどうかは見た目や触った感じだけでは自分で判断できないため、気になる場合は歯科で確認してもらうとよいでしょう。
いつごろ気づく?年齢との関係
上あごの骨隆起は、年を重ねるにつれて現れることがあり、少しずつ大きくなるとされています(※3)。急にできたように感じても、実際には時間をかけてゆっくり大きくなっていることがあります。
骨隆起ができやすい場所は?上あご・下あごの内側・歯茎の外側
骨隆起ができやすいのは、上あごの真ん中(口蓋隆起)、下の歯の内側の歯茎(下顎隆起)、歯茎の外側(頬側)の3か所です。場所によって呼び名が変わります。

| 呼び名 | できる場所 | 特徴 |
|---|---|---|
| 口蓋隆起 | 上あご(口の天井)の真ん中 | 上あごの真ん中にでき、表面はなめらか(※1)。年を重ねるにつれて現れ、少しずつ大きくなることがある(※3) |
| 下顎隆起 | 下の歯の内側(舌側)の歯茎 | 下あごの内側の硬い腫れとして気づく(※2)。鎌倉時代や近代の日本人の骨を調べた研究では、前から4番目の歯(第一小臼歯)のあたりに最も多く見られた(※4) |
| 歯茎の外側(頬側)の骨隆起 | 歯茎の外側(頬側) | 歯茎の外側や内側にできる骨のふくらみで、良性とされる(※5) |
「歯茎の骨隆起」や「骨隆起が外側にある」というのは、多くの場合、下顎隆起や歯茎の外側(頬側)の骨隆起を指しています。どの場所にできたものも、骨のふくらみであることは共通しています。
骨隆起ができる原因は?体質と「かむ力」が関係すると考えられている
骨隆起ができる原因は、はっきりとは分かっていません。生まれつきの体質(遺伝)と、歯ぎしりや食いしばりなどの強い力の両方が関係していると考えられています。
体質(遺伝)は骨隆起に関係する?
骨隆起ができる理由は一つではなく、生まれつきの体質(遺伝)と、かむ力などの環境の両方が関わると考えられています(※5)(※6)。下顎隆起については、遺伝の影響が約3割、環境の影響が約7割とする報告も紹介されています(※6)。
歯ぎしり・食いしばりとの関係はどこまで分かっている?
歯ぎしりや食いしばりで、あごの骨に強い力が繰り返しかかることが、骨隆起に関係しているのではないかと考えられています。
韓国で顎関節症の患者77人を調べた研究では、そのうち27人に寝ている間の歯ぎしりの跡が残る装置を使ってもらったところ、跡が多い人ほど下顎隆起がある割合が高い傾向が見られました(※6)。縄文時代や鎌倉時代の人の骨を調べた研究でも、歯のすり減りが多い人ほど下顎隆起が大きい傾向が見られ、あごにかかる負担が骨隆起を大きくする一因になっている可能性が示されています(※4)。
一方で、これまでの研究をまとめて評価した報告(系統的レビュー)では、歯のすり減りが強い人は骨隆起(主に下顎隆起)がある可能性が高いとしながらも、研究の質は低く、歯ぎしりと骨隆起の関係を認めるにも否定するにも根拠が足りないと結論づけています(※7)。現時点では、「歯ぎしりが原因」とは言い切れません。
歯ぎしりの原因や対策については、「歯ぎしりはなぜ起こる?原因と自分でできる対策・歯科でできること」もあわせてご覧ください。
骨隆起は痛い?押すと痛いときに考えられること
骨隆起は良性のふくらみですが、押すと痛い、しみる、腫れているといった場合は、入れ歯の刺激による炎症や、骨隆起とは別のできものの可能性もあります。歯科で確認してもらいましょう。
骨隆起そのものは良性のふくらみとされています(※1)。ただ、口の中のふくらみに痛みがある場合は、次のような可能性も考えられます。
- 入れ歯が骨隆起に当たっている:骨隆起は、入れ歯の装着の妨げになることがあります(※3)。入れ歯が合わないと感じたら、早めに歯科で相談しましょう
- 入れ歯の刺激による炎症:上あごのできものには、骨隆起のほかに、入れ歯の刺激でできる炎症性のふくらみもあります(※3)
- 骨隆起とは別のできもの:歯茎にできる膿の袋(フィステル)や口内炎など、骨隆起と間違えやすいものもあります(次の章で解説します)
痛みがあるかどうかだけで骨隆起かどうかを判断することはできません。押すと痛い状態が続く場合は、自己判断せずに歯科を受診しましょう。
骨隆起と間違えやすい口の中のできもの
口の中のふくらみには、骨隆起のほかに、膿の袋(フィステル)や口内炎、腫瘍などがあります。見た目だけで区別するのは難しいため、気になるときは歯科で確認してもらいましょう。
たとえば上あごの真ん中のできものとしては、骨隆起(口蓋隆起)のほか、入れ歯の刺激による炎症、良性の腫瘍、悪性の腫瘍も考えられるとされています(※3)。診察では、目で見て触って確認し、必要に応じてレントゲンやCTなどの検査を行います(※3)。
骨隆起と間違えやすいものとして、次のようなできものがあります。
- 歯茎の白いできもの(フィステル):歯茎にできる白っぽいできものです。詳しくは「歯茎の白いできもの(フィステル)とは?」で解説しています
- 口内炎やそのほかのできもの:口の中のできものには、口内炎以外にもさまざまな種類があります。「口の中のできものは口内炎だけじゃない!考えられる病気」もあわせてご覧ください
骨隆起は取るべき?手術が必要になるケースとデメリット
骨隆起は、生活に困りごとがなければ治療しないことが多いものです。入れ歯が合わない、話しにくいなど生活に支障がある場合に、骨を削って取る手術を検討します。
このセクションでは、次の内容を解説します。
- ①手術を考えるのはどんなとき?
- ②手術はどのように行う?
- ③手術のデメリットと注意点
①手術を考えるのはどんなとき?
上あごの骨隆起(口蓋隆起)は、話すことや入れ歯の装着に支障がなければ、特に治療の必要はないとされています(※3)。大きくなって生活に支障が出る場合に、切除(削って取ること)を検討します(※3)。目安は次のような場合です。
- 入れ歯がうまく入らない、合わない(※3)
- 話しにくい(※3)
- 入れ歯づくりなど、歯の治療の妨げになる(※1)
入れ歯の素材による違いは、「入れ歯の素材の選び方」で解説しています。
②手術はどのように行う?
骨隆起の手術は、ふくらんだ骨を削って取り除く方法です(※3)。麻酔の方法や手術の進め方、手術後の通院などは医療機関や骨隆起の状態によって異なるため、担当の歯科医師に確認しましょう。
③手術のデメリットと注意点
米国の医療機関(クリーブランド・クリニック)の一般向け情報では、上あごの骨隆起(口蓋隆起)の手術に伴うリスクとして、次のようなものが挙げられています(※8)。
- 細菌に感染する
- 出血が多くなる
- 腫れが数日以上続く
- 上あごの骨に穴があき、鼻の空洞(鼻腔)とつながってしまう
また、治るまでには、上あごの骨隆起で最大1か月ほど、下あごの骨隆起で最大4週間ほどかかるとされています(※8)(※9)。手術のあとに骨隆起が再び大きくなることはまれですが、起こりうるとされています(※8)。手術を受けるかどうかは、メリットとデメリットを歯科医師とよく相談して決めましょう。
受診の目安は?何科に行けばいい?
骨隆起か気になるときは、まずかかりつけの歯科で相談するのが近道です。大きくなって入れ歯や話すことに困るようになった、表面の色や形が変わった、えぐれたような傷があるといった変化があれば、早めに受診しましょう。
早めに受診したい変化
次のような変化があるときは、骨隆起かどうかにかかわらず、早めに歯科・口腔外科を受診しましょう。
- ふくらみが大きくなり、入れ歯が合わない・話しにくいなど困ることが出てきた(※3)
- 表面がザラザラしている、白っぽい部分や赤っぽい部分がある(※2)
- えぐれたような傷(潰瘍)があり、その周りが硬く盛り上がっている(※2)
歯科と口腔外科、どちらに行けばいい?
まずは、かかりつけの歯科で相談しましょう。手術が必要な場合や、詳しい検査が必要な場合は、口腔外科を紹介されることもあります。口腔外科の役割や受診の流れについては、「口腔外科とは」で解説しています。
受診前にメモしておくと伝わりやすいこと
受診の前に次のことをメモしておくと、歯科医師に状況が伝わりやすくなります。
- いつごろ気づいたか
- 大きさや色が変わってきているか
- 痛み、しみる感じ、出血があるか
- 入れ歯が合わない、話しにくいなど、困っていること
よくある質問(FAQ)
Q. 骨隆起は何人に1人にありますか?
A. 「何人に1人」と言える決まった数字はありません。調べた国や年齢、調べ方によって結果が大きく異なるためです。たとえば下顎隆起は、一般の人では1.1〜9.4%とする報告がある一方で(※6)、近代の日本人の骨を調べた研究では、目で見て22.0%、触って64.8%に見られました(※4)。数字には幅がありますが、骨隆起はよく見られるものとされています(※1)。
Q. 骨隆起は自然に治りますか?
A. 上あごの骨隆起は、年を重ねるにつれて現れ、少しずつ大きくなることがあるとされています(※3)。自然に小さくなるかどうかについては、はっきりした情報がありません。話すことや入れ歯に支障がなければ特に治療の必要はないとされているので(※3)、気になる場合は歯科で経過を見てもらいましょう。
Q. 食いしばりをやめれば骨隆起は治りますか?
A. 食いしばりや歯ぎしりをやめることで骨隆起が小さくなる、という確かな根拠は示されていません。歯ぎしりと骨隆起の関係そのものも、まだはっきりしていないのが現状です(※7)。歯ぎしり・食いしばりの対策については、「歯ぎしりはなぜ起こる?原因と自分でできる対策・歯科でできること」で解説しています。
Q. 骨隆起があると入れ歯は作れませんか?
A. 骨隆起があるからといって、入れ歯が作れないとは限りません。ただ、骨隆起が入れ歯の装着の妨げになる場合は、骨隆起を切除することがあります(※3)。入れ歯を作る予定がある場合は、骨隆起があることを歯科医師に伝えて相談しましょう。
Q. 骨隆起はがんになりますか?
A. 骨隆起は良性のふくらみとされています(※1)。ただし、口の中には骨隆起に似たふくらみとして腫瘍(がんを含む)ができることもあり、自分で見分けることはできません(※3)。表面の色や形が変わる、えぐれたような傷ができるなどの変化があれば、早めに受診しましょう(※2)。
まとめ
骨隆起は、あごの骨の一部が厚くなってできる良性のふくらみで、上あごの真ん中や下の歯の内側の歯茎によく見られます。
- 原因ははっきり分かっておらず、体質(遺伝)とかむ力の両方が関係すると考えられている
- 話すことや入れ歯に支障がなければ、特に治療の必要はないとされている
- 入れ歯が合わない、話しにくいなど生活に支障がある場合は、手術(切除)を検討する
- 大きくなって困りごとが出てきた、色や形が変わった、えぐれたような傷があるといった変化があれば、早めに歯科・口腔外科へ
※本記事は一般的な情報の提供を目的としたコラムであり、特定の治療や効果を保証するものではありません。また、歯科医師による監修記事ではありません。具体的な症状がある場合は、医療機関を受診してください。
出典・参考資料
・(※1) MSDマニュアル プロフェッショナル版(顎骨腫瘍)
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/16-耳鼻咽喉疾患/頭頸部腫瘍/顎骨腫瘍
・(※2) 日本歯科医師会(テーマパーク8020「口の中の腫瘍」)
https://www.jda.or.jp/park/trouble/cancer_mouth.html
・(※3) 徳島県医師会(ドクターコラム「口内のできもの」)
https://www.tokushima.med.or.jp/kenmin/doctorcolumn/hc/1662-2018-11-22-00-38-12
・(※4) 日本人類学会(Anthropological Science (Japanese Series)「近代以前の日本人における下顎隆起の出現頻度について」2007年)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/asj/115/2/115_2_97/_article/-char/ja/
・(※5) Manosudprasit A, et al.(Journal of Clinical Orthodontics「Management of Alveolar Bone Exostosis after Orthodontic Treatment」2021年)
・(※6) Lee HM, et al.(BMC Oral Health「Associations between mandibular torus and types of temporomandibular disorders」2021年)
https://link.springer.com/article/10.1186/s12903-021-01550-y
・(※7) Bertazzo-Silveira E, et al.(Clinical Oral Investigations「Association between signs and symptoms of bruxism and presence of tori: a systematic review」2017年)
https://link.springer.com/article/10.1007/s00784-017-2081-7
・(※8) Cleveland Clinic(Torus Palatinus)
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/24829-torus-palatinus
・(※9) Cleveland Clinic(Mandibular Tori)
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/24830-mandibular-tori
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