「家族に歯ぎしりを指摘された」「朝起きると顎が疲れている」と気になっていませんか。歯ぎしりの原因は一つに決まっておらず、寝ている間の歯ぎしりは自分の意思では止めにくいものです。この記事では、原因や歯・顎への影響、自分でできる対策、歯科で行うことと受診の目安を、公的機関や学会の情報、研究報告をもとに整理します。
この記事でわかること
- 歯ぎしりの3つの種類と、寝ている間・日中の違い
- 歯ぎしりが起こる原因として報告されていること
- 歯や顎への影響と、自分でできる対策
- 歯科で行うこと(マウスピースなど)と受診の目安
歯ぎしりとは?3つの種類と「寝ている間・日中」の違い
歯ぎしり(ブラキシズム)とは、食事や会話以外の場面で上下の歯を強く接触させることです。寝ている間に起こるものと日中に起こるものがあり、すり合わせる・食いしばる・カチカチ鳴らすの3種類に分けられます。
日本歯科医師会は、歯ぎしり(ブラキシズム)を「上下の歯が非機能的な接触を生じている状態」と説明しています※1。「非機能的」とは、食べ物をかむ・話すといった本来の働きとは関係なく、という意味です。ギリギリと音が出るものだけでなく、音がほとんど出ない「食いしばり」も歯ぎしりの一つに含まれます。
すり合わせる・食いしばる・カチカチ鳴らす|歯ぎしりの3つの種類
歯ぎしりは、歯の動かし方によって次の3つに分けられます※1。
| 種類 | 専門的な呼び方 | 歯の動き | 音 |
|---|---|---|---|
| すり合わせる | グラインディング | 上下の歯をこすり合わせる | ギリギリと音が出やすい |
| 食いしばる | クレンチング | 顎を動かさずに上下の歯を強くかみしめる | ほとんど出ない |
| カチカチ鳴らす | タッピング | 上下の歯を小刻みにぶつけ合う | カチカチと音が出る |
食いしばりは音がほとんど出ないため、周りの人から指摘されにくいタイプです。
寝ている間の歯ぎしりと日中の食いしばりの違い
歯ぎしりは、起こる時間帯によって「睡眠時」と「覚醒時(起きている間)」にも分けられます※1。日中の歯ぎしりには、強く食いしばるもの(日中クレンチング)のほか、上下の歯を触れさせ続ける癖も含まれます。この癖は「TCH(上下歯列接触癖)」と呼ばれています※1。
歯ぎしりをしている人はどれくらいいる?
成人を対象とした研究をまとめた報告では、寝ている間の歯ぎしりは約13%(12.8±3.1%)、日中の歯ぎしりは22.1〜31%の人にみられたとされています※2。ただし、多くの研究が本人の自己申告をもとにしているため、数字には幅があります※2。
歯ぎしりはなぜ起こる?考えられる原因
歯ぎしりの原因は一つに決まっていません。寝ている間の歯ぎしりは睡眠中の脳の働きと関係すると考えられ、ストレスや飲酒・喫煙・カフェインとの関連も報告されています。
歯ぎしりをする理由として挙げられるものは複数あり、それぞれ根拠の強さが異なります。まず全体を表で整理します。
| 要因 | わかっていること | 根拠の強さ |
|---|---|---|
| 睡眠中の脳の働き | 寝ている間の歯ぎしりは、基本的には脳(中枢)の問題と考えられている※1 | 公的機関が解説 |
| ストレス | ストレスを感じている人は歯ぎしりがみられやすい傾向がある※3 | 関連あり(確実性は低い) |
| 飲酒・喫煙・カフェイン | 寝ている間の歯ぎしりとの関連が報告されている※4 | 関連の報告あり |
| 噛み合わせ | 因果関係を示す根拠はないとする報告がある※5 | はっきりしていない |
| 睡眠時無呼吸症候群 | 悪化しやすいとする解説がある一方、関係は確認できないとする報告もある※6※7 | はっきりしていない |
寝ている間の歯ぎしりは睡眠中の脳の働きが関係
日本歯科医師会は、睡眠時の歯ぎしりを「基本的には中枢性の問題」としています※1。中枢とは脳のことです。眠っている間のことなので、自分の意思で止めるのは難しいものです。
一方、日中の食いしばりは「様々な条件に伴って獲得された習癖」、つまり生活の中で身についた癖とされています※1。
歯ぎしりとストレスにはどのような関係がある?
ストレスと歯ぎしりの関係を調べた研究をまとめた報告では、ストレスを感じている人は、そうでない人に比べて歯ぎしりがみられる可能性が約2倍(オッズ比2.07)という結果でした※3。ただし、この報告自体が「根拠の確実性は低い」と評価しており、ストレスだけが原因だと言い切れるわけではありません※3。
ストレスと歯の痛みの関係については、関連記事「歯の痛みとストレスの関係」もあわせてご覧ください。
飲酒・喫煙・カフェインは歯ぎしりと関係がある?
寝ている間の歯ぎしりと生活習慣の関係を調べた研究をまとめた報告では、お酒を飲む人は約2倍、1日にコーヒーを8杯より多く飲む人は約1.5倍、たばこを吸う人は2倍以上、歯ぎしりがみられやすい傾向が示されています※4。これは「関連がある」ことを示したもので、控えれば必ず歯ぎしりが治まるという意味ではありません。
噛み合わせとの関係ははっきりしていない
歯ぎしりと噛み合わせに関する研究を検討したレビューでは、現時点で両者の因果関係を示す根拠はないと結論づけています※5。噛み合わせが気になる場合は、自己判断せず歯科医師に相談しましょう。
いびき・睡眠の悩みとの関係
睡眠時無呼吸症候群(寝ている間に呼吸が止まったり浅くなったりする病気)のある人では、歯ぎしりが悪化することが多いとする解説があります※6。一方で、成人では両者の関係は確認できないとする報告もあり、はっきりとはわかっていません※7。大きないびきや日中の強い眠気など、睡眠の悩みがある場合は、医療機関に相談してみましょう。
歯ぎしりが歯や顎に与える影響
強い力がくり返しかかることで、歯のすり減りや欠け・ひび、詰め物や被せ物の破損、歯がしみるといった症状につながることがあります。顎の痛みや頭痛と関係することもあります。
| 部位 | 起こりうること | 関連記事 |
|---|---|---|
| 歯 | すり減り、欠け・ひび、しみる・痛む※8 | 歯が少し欠けたとき |
| 詰め物・被せ物 | 欠ける・割れる※8 | — |
| 顎・頭 | 顎関節症、頭痛、首やあごの痛み※6※8 | 顎がカクカク鳴る |
歯への影響|すり減り・欠け・ひび
歯ぎしりや食いしばりによって、歯の表面がすり減ったり、歯や詰め物・被せ物が欠けたり割れたりすることがあります※8。歯がすり減ると、冷たいものがしみたり、噛むと痛んだりすることもあります※8。歯が削れたと感じる場合、歯ぎしりが関わっていることもあります。
歯が少し欠けてしまったときの対処は、関連記事「歯が少し欠けたとき」で解説しています。歯が浮くような感じが気になる方は、関連記事「歯が浮く感じがする」もご覧ください。
顎や頭へどのような影響が出る?
顎関節症(顎の関節や、かむための筋肉に痛みなどが出る状態)、寝ている間の歯ぎしり、頭痛は、互いに関連があるとされています※8。歯ぎしりによって、頭痛や首・あごの痛みが出ることもあります※6。
口を開け閉めするときに顎から音がする場合は、関連記事「顎がカクカク鳴る」も参考にしてください。
歯ぎしりのセルフチェック
家族に音を指摘された、朝に顎が疲れている、歯がすり減った・欠けた、日中に気づくと上下の歯が触れている。こうした項目が当てはまる場合は、歯ぎしりをしている可能性があります。
次の項目に当てはまるものがないか、確認してみましょう※1※6※8※9。
- 寝ている間に歯ぎしりの音がすると家族に指摘された
- 朝起きたとき、顎が疲れている・痛い
- 歯がすり減った、または欠けた
- 冷たいものが歯にしみる
- 朝起きたときに頭痛がある
- 日中、気づくと上下の歯が触れている
当てはまる項目があっても、それだけで歯ぎしりかどうかを判断することはできません。気になる項目がある場合は、歯科で歯や顎の状態を確認してもらうと安心です。
自分でできる歯ぎしり対策
寝ている間の歯ぎしりは自分の意思では止めにくいため、日中に上下の歯を離す習慣、ストレスをため込まない工夫、飲酒・喫煙・カフェインの見直し、睡眠環境を整えることから始めます。
歯ぎしりの対策として、まず自分でできることを紹介します。どれも「これだけで治る」というものではありませんが、今日から始められます。
| 対策 | やり方 | ポイント |
|---|---|---|
| 日中に上下の歯を離す | 歯が触れていると気づいたら離す※9 | 気づくきっかけを作る |
| ストレスをため込まない | 強い緊張を感じる環境を見直す※9 | 休息の時間をとる |
| 飲酒・喫煙・カフェインを見直す | 量やタイミングを見直す※4※10 | 夕方以降のカフェインを避ける |
| 睡眠環境を整える | 寝る前の強い光を避け、寝室を静かで涼しく保つ※10 | 寝る前のスマートフォンを控える |
| 顎を休ませる | 硬い食べ物や長時間かむことを避け、頬杖をやめる※9 | 顎がつらいときに意識する |
日中は「上下の歯を離す」を意識する
日本顎関節学会は、顎関節症の生活指導として、仕事中や休んでいるときに上下の歯が触れていることに気づいたら、歯を離すように勧めています※9。気づくきっかけとして、パソコンの画面の横など目に入りやすい場所に「歯を離す」と書いた付箋を貼っておくのも一つの工夫です。
ストレスをため込まない
日本顎関節学会は、強い心理的な緊張を感じる環境があれば、それを改善し避けることも挙げています※9。休息の時間をとるなど、自分に合った方法で緊張をゆるめましょう。
飲酒・喫煙・カフェインを見直す
飲酒・喫煙・カフェインは、寝ている間の歯ぎしりとの関連が報告されています※4。厚生労働省の睡眠に関する資料でも、コーヒーは1日マグカップ2杯程度にとどめて特に夕方以降は避けることや、禁煙によってニコチンの目を覚ます作用を減らせることが紹介されています※10。
睡眠環境を整える
歯ぎしりへの対処として、眠りの環境や習慣(睡眠衛生)を整えることが挙げられています※8。厚生労働省の資料では、寝る前に照明やスマートフォンなどの強い光を浴びないこと、寝室をできるだけ静かに保つこと、夏はエアコンなどで寝室を涼しく保つことが紹介されています※10。
顎がつらいときは硬い食べ物や頬杖を避ける
顎に痛みやだるさがあるときは、硬い食べ物や長い時間かみ続けることを避ける、頬杖をやめる、猫背などの姿勢を見直すといった生活の工夫が挙げられています※9。
歯科医院で行うこと(マウスピースなど)
歯科では歯や顎の状態を確認したうえで、寝ている間に着けるマウスピースで歯を守る方法がよく用いられます。すり減りや欠けがあれば修復も検討します。保険が適用される場合があります。
マウスピース(ナイトガード)の役割|歯ぎしりを止めるのではなく歯を守る
歯ぎしりに使うマウスピースは、上下の歯の間にはめる樹脂製の装置で、「ナイトガード」とも呼ばれます※6。歯型をとって作り、使いながら調整していきます。主な目的は、食いしばりやすり合わせの力から歯を守ることです※8。
マウスピースの効果については、寝ている間の歯ぎしりそのものを減らすという十分な根拠はない一方、歯のすり減りを防ぐ点では役立つ可能性があるとされています※11。「マウスピースを着ければ歯ぎしりが治る」というより、「歯ぎしりが続いても歯を守るためのもの」と考えるとよいでしょう。
マウスピースや検査に保険は適用される?費用は?
歯ぎしりに対するマウスピースは、作製や装着後の調整が健康保険の診療項目に含まれており、保険が適用される場合があります※12。
また、問診やお口の状態から歯ぎしりが強く疑われる場合には、診断のために寝ている間の筋肉の活動を測る「睡眠時歯科筋電図検査」が保険で行われることもあります※12。費用は保険適用の有無や歯の状態、医療機関によって異なるため、受診時に確認しましょう。
細かいひびや欠けは拡大して確認することも
歯ぎしりでできた歯のひびは、細かいものだと肉眼では見えにくいことがあります。歯科医院によっては、歯科用マイクロスコープ(歯科用の顕微鏡)を使い、肉眼では見えにくいところを拡大して確認する方法をとっています。すり減りや欠けが見つかった場合は、状態に応じて修復を検討します。
歯科を受診する目安
歯がすり減った・欠けた、冷たいものがしみる、朝の顎の痛みや口の開けにくさが続く場合は歯科で相談しましょう。いびきや日中の強い眠気が気になる場合は、医療機関への相談も検討します。
受診するときは、次のようなことを伝えると、歯科医師が状態を把握しやすくなります。
- 歯ぎしりや顎の疲れに気づいた時期
- 気になる時間帯(寝ている間・日中)
- 家族から指摘された内容(音の大きさや頻度など)
| 気になること | 相談先 | 関連記事 |
|---|---|---|
| 歯がすり減った・欠けた、冷たいものがしみる | 歯科 | 歯が少し欠けたとき |
| 朝の顎の痛みやだるさが続く、口が開けにくい | 歯科(口腔外科) | 突然片方の顎が痛いとき |
| 大きないびき、日中の強い眠気 | 医療機関 | — |
急に片方の顎が痛くなったときの対処や受診先の選び方は、関連記事「突然片方の顎が痛いとき」で解説しています。
よくある質問(FAQ)
Q. 歯ぎしりは治りますか?
A. 歯ぎしりそのものは、必ずしも治療が必要なものではないとされています※8。歯のすり減りや欠け、顎の痛みといった困りごとがある場合に対処を考えるのが基本です※8。日中に歯を離す習慣など自分でできる対策と、歯科でのマウスピースなどを組み合わせて、歯や顎への負担を減らしていきます。
Q. マウスピースを着ければ歯ぎしりは止まりますか?
A. マウスピースは、歯ぎしりを止めるためではなく、歯を守るためのものです※8。寝ている間の歯ぎしりそのものを減らす効果については、十分な根拠がないとされています※11。一方で、歯のすり減りを防ぐ点では役立つ可能性があります※11。
Q. 噛み合わせを治せば歯ぎしりは止まりますか?
A. 歯ぎしりと噛み合わせの関係を調べた研究を検討したレビューでは、現時点で両者の因果関係を示す根拠はないと結論づけています※5。噛み合わせが気になる場合は、歯科医師に相談し、説明を受けたうえで治療を検討しましょう。
Q. 子どもの歯ぎしりは心配ありませんか?
A. 日本小児歯科学会によると、子どもの歯ぎしりのほとんどは一時的なもので、年齢とともになくなっていくことが多いとされています※13。歯並びに問題がある、歯が大きくすり減っている、あごを痛がるといった場合は、小児歯科に相談しましょう※13。
まとめ
歯ぎしりの原因と対策のポイントをまとめます。
- 歯ぎしりの原因は一つではなく、寝ている間の歯ぎしりは睡眠中の脳の働きと関係すると考えられています
- ストレスや飲酒・喫煙・カフェインとの関連が報告されている一方、噛み合わせとの因果関係ははっきりしていません
- 自分でできる対策は、日中に上下の歯を離すこと、生活習慣と睡眠環境の見直しから始めます
- 歯科で作るマウスピースは、歯ぎしりを止めるものではなく歯を守るためのものです
歯のすり減りや欠け、顎の痛みが気になる場合は、歯科医院で相談してみましょう。
※本記事は一般的な情報の提供を目的としたコラムであり、特定の治療や効果を保証するものではありません。また、医師による監修記事ではありません。具体的な症状がある場合は、医療機関を受診してください。
出典・参考資料
※1 ・日本歯科医師会(テーマパーク8020「歯ぎしり」)
※2 ・Manfredini D, et al.(Epidemiology of bruxism in adults: a systematic review of the literature. J Oral Facial Pain Headache. 2013;27(2))
※3 ・Chemelo VS, et al.(Is There Association Between Stress and Bruxism? A Systematic Review and Meta-Analysis. Front Neurol. 2020;11:590779)
※4 ・Bertazzo-Silveira E, et al.(Association between sleep bruxism and alcohol, caffeine, tobacco, and drug abuse: A systematic review. J Am Dent Assoc. 2016;147(11))
※5 ・Lobbezoo F, et al.(Are bruxism and the bite causally related? J Oral Rehabil. 2012;39(7))
※7 ・Pauletto P, et al.(Sleep bruxism and obstructive sleep apnea: association, causality or spurious finding? A scoping review. Sleep. 2022;45(7):zsac073)
※8 ・Beddis H, et al.(Sleep bruxism: an overview for clinicians. Br Dent J. 2018;225:497-501)
※9 ・日本顎関節学会(顎関節症の主な治療は)
※10 ・厚生労働省(良い目覚めは良い眠りから 知っているようで知らない睡眠のこと)
※11 ・Macedo CR, et al.(Occlusal splints for treating sleep bruxism (tooth grinding). Cochrane Database Syst Rev. 2007)
※12 ・厚生労働省(診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について 別添2 歯科診療報酬点数表に関する事項)
※13 ・日本小児歯科学会(よくある質問 就学前)
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