鏡で歯の細い線を見つけたり、噛んだときにピリッと痛んだりして「放置しても大丈夫だろうか」と不安に感じていませんか。歯のひび(ヒビ・亀裂)は痛みがないことが多く、自己判断で様子を見てしまうケースも少なくありません。
この記事では、歯にひびが入る原因から放置するリスク、主な症状、治療法、費用の目安まで解説します。
この記事でわかること
- 治療がいらない表面のひびと、治療が必要なひびの見分け方
- 歯科医院でのひびの調べ方
- 歯にひびが入る原因と主な症状、放置するリスク
- ひびの深さに合わせた治療法と費用の目安
この記事の監修歯科医師

西宮渡辺病院 歯科口腔外科
梨 正典(Masanori NASHI) 部長
東京歯科大学を卒業後、大学病院・総合病院において歯科口腔外科の手術、救急を中心に多岐にわたる症例を経験し、総合病院の歯科医師として地域医療を支えている。
日本口腔外科学会 認定医
日本歯科専門医機構認定 口腔外科専門医
日本有病者歯科医療学会 専門医・指導医
日本口腔ケア学会 評議員
マイクロクラック(歯の表面の細かいひび)とは?
歯の表面にみられるごく細いひび割れのうち、エナメル質(歯のいちばん外側の硬い層)に限局するものは「マイクロクラック」や「クレーズライン」と呼ばれます。多くの場合、痛みなどの自覚症状はなく、治療を必要としません。
マイクロクラックは光が透けやすい前歯で気づくことが多く、ひびにコーヒーやお茶などの色素が沈着(ステイン)し、茶色い線のように見えることもあります。
ただし、歯に一度入ったひびが自然に消えたり、元通りになったりすることはありません。冷たいものがしみたり、噛んだときに痛みがあったりする場合は、亀裂が歯の内部へ及んでいる可能性があります。なお、ほかの歯科疾患でも同様の症状が起こるため、診察による鑑別が必要です。
マイクロクラックか、治療が必要な深いひびなのかをご自身で見分けるのは困難です。歯科医院での調べ方は後述する「歯科医院ではひびをどうやって調べる?」で解説しています。
歯のひびに気づいたら、まずは自己判断で放置せず、歯科医師に相談することが重要です。
治療が必要な歯のひびはどう見分ける?
治療が必要なひびかどうかは、冷たいものがしみる・噛むと痛むといった症状の有無が手がかりの一つですが、ご自身で見分けることは困難なため、歯科医院での診察で判断します。歯のひびには、治療が必要な場合と、経過観察で済むことが多いケースがあります。それぞれの特徴を以下の表にまとめました。
| 比較項目 | 経過観察で済むことが多いひび | 治療が必要になる可能性があるひび |
|---|---|---|
| 見た目 | 細い線状のひびが見られる(茶色く着色していることもある) | 歯の一部が欠けている、亀裂が深部へ及んでいることが疑われる場合など。ただし、見た目だけで判断できないこともある。 |
| 症状 | 痛みやしみる症状がないことが多い | ・冷たいものがしみる ・噛むと痛む ・何もしていなくてもズキズキとした痛みを感じる |
ただし、歯に入ったひびが治療の必要なものか、表面的な線(マイクロクラック)なのかを、ご自身で見分けることは困難です。なぜなら、細い線に見えても、亀裂が象牙質(エナメル質の内側にある層)や、ときには歯の神経(歯髄)近くまで深く達しているケースがあるためです。
亀裂が象牙質に達している場合には、症状が乏しくても歯の内部や周囲の組織に問題が生じていることがあります。
日本歯科医師会も、歯の破折などが見つかった際は原因を問わず早めに受診することを推奨しています。(※1)歯のひびが表面的なものか、治療が必要なものかは、ご自身では判断しにくい場合があります。症状がある場合や、ひびの状態が気になる場合には、歯科医院で相談しましょう。
歯科医院ではひびをどうやって調べる?
歯のひびは、肉眼では見えにくいほど細いことがあります。歯科医院では、光を当てる検査や拡大して見る方法、噛んだときの痛みの確認などを組み合わせて、ひびの位置と深さを調べます。
肉眼では見えにくいひびを拡大して確認する
細いひびは、肉眼では見つけにくいことがあります。そのため、歯に光を当てて、光の通り方の変化からひびを探す「透照診」や、歯科用マイクロスコープ(歯科用の顕微鏡)で歯を拡大して見る方法が使われます。拡大して見ることで、ひびがどこまで続いているか、詰め物や被せ物の境目にひびがないかを確認しやすくなります。(※2)
ただし、ひびの先端はとても細く、目で見える範囲よりも深く続いていることがあります。そのため、ひびの深さは次のような検査もあわせて判断します。(※3)
ひびの深さを調べるそのほかの検査
ひびの深さや、歯の神経・根への影響は、次のような検査を組み合わせて判断します。
| 検査 | 何を調べるか |
|---|---|
| 噛んで痛みを確かめる検査 | どの歯の、どの部分で痛みが出るか |
| 冷たい刺激などで歯の神経を調べる検査 | 歯の神経(歯髄)が健康な状態か |
| 歯周ポケット検査 | 歯と歯茎の間の溝が一部だけ深くなっていないか(歯の根のひびを疑う手がかりになる) |
| レントゲン・歯科用CT | 歯の根や周りの骨の状態 |
歯にひびが入る原因
歯にひびが入る主な原因は、歯ぎしり・食いしばり、硬い食べ物、転倒などの外傷、過去の治療で歯が薄くなっていること、加齢による変化です。複数の原因が重なって起こることもあります。
①歯ぎしり・食いしばりの強い力
②硬い食べ物によるダメージ
③転倒や事故などの外傷
④過去の治療や虫歯による歯質の減少(神経のない歯のもろさ)
⑤加齢による歯質の変化
①歯ぎしり・食いしばりの強い力
歯ぎしりや食いしばりは、歯にひび割れを引き起こす代表的な原因です。
睡眠中や何かに集中しているときなど、無意識のうちに歯には、非常に強い力がかかることがあります。過剰な力が日常的に加わり続けると、歯の表面にある硬いエナメル質に目に見えないダメージが蓄積されます。
歯ぎしりや食いしばりなどによる過度な力は、歯に亀裂が生じたり、すでにある亀裂が広がったりする要因の一つと考えられています。歯ぎしりが起こる原因や対策は「歯ぎしりはなぜ起こる?原因と自分でできる対策・歯科でできること」で解説しています。
また、歯並びや噛み合わせの問題によって特定の歯にだけ力が集中してしまうことも、ひび割れのリスクを高める要因と考えられています。(※4)
②硬い食べ物によるダメージ
氷や硬いナッツ、おせんべいなどを習慣的に食べることも、歯にダメージを与え、ひび割れの原因になることがあります。
健康な歯であっても、硬いものを噛んだ際の強い力によって亀裂や破折が生じることがあります。(※1)一度の衝撃だけでなく、日常的に硬いものを好んで食べる習慣は、歯に微細なダメージを蓄積させます。
特に、過去の治療によって多くの歯質を失っている歯では、破折のリスクが高くなる場合があります。食事の際は、硬すぎるものを避けたり、小さく割ってから口に運んだりする工夫が、歯を守ることにつながる可能性があります。
③転倒や事故などの外傷
転倒やスポーツでの衝突、交通事故などの不意のアクシデントも、歯にひびが入る大きな原因です。
転倒やスポーツ、交通事故などで歯に強い衝撃が加わると、亀裂や歯冠破折などが生じることがあります。
事故直後は唇の傷や出血に気を取られがちですが、歯に目に見えないひびが入っていることは珍しくありません。
ぶつけた直後に痛みがなくても、徐々に症状が現れることがあります。口をぶつけたら、まず歯科医院で状態を確認してもらうことが重要です。
④過去の治療や虫歯による歯質の減少(神経のない歯のもろさ)
過去の虫歯治療で歯を大きく削ったり、神経を抜いたりした歯は、健康な歯に比べて強度が低下し、ひびが入りやすくなります。
特に神経を抜く治療(根管治療)を受けた歯では、もともとの虫歯や治療によって多くの歯質が失われていることがあり、歯の構造が弱くなる場合があります。破折のリスクには、神経の有無だけでなく、残っている歯質の量や修復方法などが関係します。
大きな詰め物や被せ物がある歯では、残っている歯質の量や修復物の形状、噛み合わせなどによって、亀裂や破折のリスクが変わります。
根管治療を受けた歯では、冷たいものがしみるなどの症状が出ないため、気づかないうちにひびが進行している可能性もあります。過去に大きな治療を受けた歯がある方は、特に注意深く定期的なチェックを受けることが大切です。
⑤加齢による歯質の変化
長年使い続けることで、歯にも少しずつ変化が現れ、ひびが入りやすくなることがあります。
加齢に伴って歯質の性質が変化することや、長年の咀嚼によって歯に力が加わり続けることが、亀裂の発生に関係すると考えられています。こうした歯質の変化に長年の噛み合わせの癖や歯ぎしりなどの負担が加わることで、若い頃には耐えられた力でもひび割れにつながりかねません。
年齢だけが原因ではなく、これまでの生活習慣や噛み合わせの状態も大きく影響します。日々の丁寧なケアと定期的な検診で口内環境を整えることが、歯を長く健康に保つための鍵となります。
歯にひびが入ったときの主な症状
歯のひびの症状は、ひびの深さによって変わります。表面だけのひびは無症状のことが多く、深くなるにつれて、しみる・噛むと痛む、何もしなくても痛む、歯茎が腫れるといった症状が出ることがあります。主な症状は以下の4つです。
①自覚症状のない表面的なひび(エナメル質の浅いひび)
②冷たいものがしみる、噛むと痛むなどの症状があるひび(象牙質に達するひび)
③何もしなくてもズキズキ痛む(歯髄炎)
④歯がグラグラする・歯茎が腫れる(歯根破折)
※ これらの症状は必ずしも順番に現れるものではなく、症状だけで亀裂の深さや種類を判断することはできません
ただし、痛みの有無だけで自己判断せず、少しでも気になる線や症状があれば、歯科医院で正確な診断を受けることが重要です。
①自覚症状のない表面的なひび(エナメル質の浅いひび)
歯の外側にあるエナメル質表面の亀裂は、通常、痛みなどの自覚症状がありません。エナメル質自体には知覚神経がなく、刺激が神経に伝わらないためです。エナメル質に限局したひびであれば、基本的には歯科医院での治療は不要です。
ただし、見た目だけでは、エナメル質に限局したひびか、内部まで到達したひびかを判断することはできません。症状がなくても、まずは歯科医師に相談することが大切です。
②冷たいものがしみる、噛むと痛むなどの症状があるひび(象牙質に達するひび)
歯のひびが象牙質にまで達すると、冷たいものでしみるだけでなく、噛んだときや力を抜いた瞬間に「ピリッ」と鋭い痛みを感じることがあります。これは、噛む力によって亀裂の入った歯質がわずかに動き、歯の内部に刺激が伝わることで痛みが生じると考えられています。
痛みには、主に以下のような特徴があります。
- いつも痛いわけではない
- 硬いものを噛んだときだけ痛む
- 噛んでいるときよりも、噛むのをやめた瞬間に痛むことがある
痛みが一時的であるため「そのうち治るだろう」と放置しがちです。しかし、適切な対処をしないと亀裂はさらに深くなり、症状が進行してしまう可能性があります。
③何もしなくてもズキズキ痛む(歯髄炎)
亀裂が深部へ及ぶと、細菌やその産生物などの刺激によって歯髄に炎症が生じることがあります。何もしなくてもズキズキと脈を打つような激しい痛みが生じることがあり、「歯髄炎」と呼ばれる状態です。
冷たいものだけでなく温かいものでも強くしみたり、夜間に痛みが悪化したりします。歯髄炎を放置すると神経が死んでしまい、一時的に痛みが消えることがありますが、治ったわけではなく、根の先端に炎症が広がる可能性があります。
神経が死んだあとに根の先で炎症が続く「根尖性歯周炎」については「根尖性歯周炎は自然に治る?放置するリスクと治療法を解説」で解説しています。
激しい痛みを感じた場合は、すみやかに歯科医院を受診してください。
④歯がグラグラする・歯茎が腫れる(歯根破折)
歯の根に亀裂や割れが生じる「歯根破折」が起こると、歯がグラグラしたり、特定の歯茎が腫れて膿が出たりすることがあります。噛んだときに鈍い痛みや違和感を覚えることもありますが、症状がほとんどないまま静かに進行するケースも珍しくありません。
歯根破折は通常のレントゲン検査だけでは発見が難しい場合があります。診断には、歯周ポケット検査や歯の状態の確認、レントゲン検査などを組み合わせ、必要に応じて歯科用CTを使用します。
歯根破折と診断された場合、歯を保存することが難しく、抜歯に至ることもあります。歯根破折の原因や治療法は「歯根破折の原因とは?治療法や放置するリスク、予防法を徹底解説」で詳しく解説しています。
歯のひび割れを放置するリスク
治療が必要な亀裂を「痛くないから大丈夫」と放置してしまうと、亀裂が静かに深部へと広がり、最終的には歯そのものを失う事態につながる可能性があります。主なリスクは、以下の4つです。
①歯が割れる
②内部で炎症や感染が生じる
③抜歯が必要になる可能性がある
④治療の費用と期間が増大する
①歯が割れる
歯に入ったひびは、位置や深さ、噛む力のかかり方などによって、徐々に広がる場合があります。特に深い亀裂では、歯の一部が欠けたり、大きく割れたりすることがあります。
特に、大きな修復物がある歯や多くの歯質を失った歯では、亀裂や破折のリスクが高くなることがあります。ひびが歯の深い部分にまで達してしまうと、歯を残す治療そのものが難しくなり、選択肢が限られてしまいます。
歯が欠けたり折れたりした際は、原因を問わず早めに歯科医院で状態を確認しましょう。
②内部で炎症や感染が生じる
歯のひびは、細菌が歯の内部へ侵入するための通路になることがあります。亀裂が歯の内部へ深く及んでいる場合は、そこから細菌が侵入し、歯髄や歯の周囲に炎症を引き起こすことがあります。
ひび割れが象牙質まで達すると、そこから細菌が侵入し、内部で炎症や感染が進行するリスクが高まります。見た目は小さな線でも、内部では炎症が広がっていたというケースもあります。
ただし、ひび割れが必ずしも炎症や感染を引き起こすわけではありません。しかし、ひびが炎症・感染の発生リスクを高める入り口になりうることを知っておくことが大切です。
③抜歯が必要になる可能性がある
歯根にまで達する亀裂や歯根破折では、歯の保存が難しくなる場合があります。特に歯根が縦方向に破折した場合は抜歯が必要になることもありますが、治療方針は亀裂の位置や範囲などを踏まえて判断します。8020推進財団の調査では、永久歯を抜いた原因のうち「破折」(歯が割れたり折れたりすること)は17.8%で、歯周病、虫歯に次いで3番目に多い結果でした。(※5)
④治療の費用と期間が増大する
亀裂が進展して歯髄や歯周組織に影響した場合は、より複雑な治療が必要になり、費用や治療期間が増えることがあります。
- 歯髄に不可逆的な炎症や壊死が生じた場合:神経を抜く治療(根管治療)
- 歯冠の亀裂や破折に対応する場合:歯全体を覆う被せ物(クラウン)
- 保存困難で抜歯に至った場合:インプラント、ブリッジ、入れ歯などで失った歯を補う治療(補綴)
初期のひびであれば、経過観察や簡単な補強で済むこともあります。しかし、治療が複雑化すれば通院回数は増え、治療期間も数か月単位で長引くことも珍しくありません。
早期に適切な対処をすることは、ご自身の歯を守るだけでなく、将来的な時間的・経済的な負担を抑えることにつながる可能性があります。
ひび割れの進行度に合わせた治療法
歯のひび割れの治療法は、亀裂の位置や範囲、歯髄の状態、歯を修復して残せるかを総合して判断します。主な選択肢は、以下のとおりです。
- エナメル質に限局する亀裂:経過観察など
- 象牙質に達する亀裂:ひびの修復・保護など
- 歯髄に不可逆な障害が生じた場合:根管治療など
- 保存が困難な破折:抜歯など
エナメル質に限局する亀裂:経過観察など
歯の表面にあるエナメル質にとどまる細かなひびで、痛みやしみる症状がなければ、基本的には治療を必要とせず経過観察となります。これは、治療のために歯を削ること自体のリスクを避けるという考え方です。
ただし、着色が目立つなど審美的な問題がある場合や、外傷による亀裂の状態によっては、接着性材料を用いた処置を検討することがあります。
歯科医師がひびの進行リスクは低いと判断すれば、特別な処置を行わず、定期検診で変化がないかを確認していきます。
象牙質に達する亀裂:ひびの修復・保護など
ひびが象牙質まで達し、「噛むと痛い」「冷たいものがしみる」などの症状が出ている場合、ひびが広がったり、歯が割れたりするのを防ぐ治療が行われます。治療法は、ひびの範囲や場所に応じて選択されます。
象牙質に達する亀裂では、ひびの範囲や残っている歯質の状態に応じて、レジン修復や咬頭を覆う修復物などを検討します。咬頭とは、歯の噛み合わせ面に存在する突起部分のことです。亀裂があっても、すべて削り取ることが適切とは限りません。
ひびの範囲が広い場合は、歯全体をすっぽり覆うクラウンでの保護が選択肢です。歯を削って型を取り、金属やセラミックでつくった冠を被せ、歯が割れるのを防ぐことを目指します。保険適用外になる治療の費用・リスク・期間は「歯のひび割れの治療費はいくら?保険は使える?」でまとめています。
歯髄に不可逆な障害が生じた場合:根管治療など
亀裂によって歯髄に不可逆的な炎症や壊死が生じた場合は、根管治療が必要になることがあります。ただし、歯髄の状態(生きている場合)によっては保存を目指す治療を検討できる場合もあります。
根管治療では、感染してしまった神経や血管を丁寧に取り除き、歯の根の中を隅々まで洗浄・消毒したあとに薬剤を詰めます。ただし、治療で症状の改善が期待されますが、ひびそのものが消えるわけではありません。
神経を失った歯は、もともとの虫歯や治療などによって歯質が少なくなっている場合があり、破折のリスクに注意が必要です。そのため、治療後は残っている歯質や亀裂の範囲などを考慮し、必要に応じて被せ物や特殊な詰め物などで歯を保護します。
保存が困難な破折:抜歯など
歯根が縦方向に破折した場合、特に単根歯(根が1本の歯)では保存が難しく、抜歯(歯を抜き取る行為)が必要となることがあります。複根歯(根が複数ある歯)では、破折した歯根のみを除去して保存できる場合もあります。歯根が割れると、歯茎が腫れたり、噛むと強い痛みを感じたり、歯がグラグラしたりすることがあります。
抜歯後は、失われた歯の位置や噛み合わせなどに応じて、インプラント、ブリッジ、入れ歯などによる補綴治療を検討します。
歯を補う主な選択肢は、次の3つです。
- インプラント:顎の骨に人工の歯根を埋め込み、独立した歯を再現する方法
- ブリッジ:両隣の健康な歯を土台にして、橋のように人工の歯をかける方法
- 入れ歯:ご自身で取り外しができる人工の歯
それぞれの治療法にメリット・デメリットがあるため、歯科医師とよく相談し、ご自身に合った方法を選びましょう。インプラントなど保険適用外になる治療の費用・リスク・期間は「歯のひび割れの治療費はいくら?保険は使える?」でまとめています。
歯のひび割れの治療費はいくら?保険は使える?
歯のひび割れの治療費は、ひびの深さによって必要な治療が変わるため、幅があります。保険診療(3割負担)なら約1,000円〜1万円程度が目安ですが、セラミックの被せ物やインプラントは保険適用外となり、費用が高くなります。
歯のひび割れの治療にかかる費用は、主に次の3つで変わります。
- ひびの深さ:表面だけなら経過観察で済むこともあり、神経や根まで達すると治療の工程が増える
- 保険診療か自費か:被せ物の素材や治療方法によって、保険が使えるかどうかが変わる
- 検査の内容:歯科用CTなど、詳しい検査が必要かどうか
治療内容ごとの費用目安を、保険診療(3割負担の場合)と自由診療に分けて以下の表にまとめました。
| 治療法 | 保険診療(3割負担)の目安 | 自由診療の目安 |
|---|---|---|
| 検査・経過観察 | 約1,000~4,500円 | 保険診療で行うのが一般的 |
| レジン充填(歯科用の樹脂で埋める治療) | 約1,700~2,500円 | 約3~8万円 |
| クラウン(歯全体を覆う被せ物) | 約3,000~7,000円(被せ物の工程のみ・材料費は別) | 約6~15万円 |
| 根管治療(歯の根の中の治療) | 約3,000~10,500円(治療全体。被せ物代は別途必要) | 1歯あたり10万円前後〜 |
| インプラント(人工の歯根を埋め込む治療) | 保険適用外 | 30〜50万円前後 |
※保険診療の金額は、令和8年度の歯科診療報酬点数表をもとに、初診料・レントゲン撮影などを含めて3割負担で計算した目安です。材料費や、医療機関ごとに異なる加算は含みません。(※6)
自由診療になる主な治療の内容・リスク・期間・回数は、次のとおりです。
| 治療内容 | リスク(副作用) | 治療期間 | 治療回数 |
|---|---|---|---|
| レジン充填(自由診療):保険適用外の樹脂を使い、ひびや欠けた部分を埋めて形を整える | 歯を少し削ることがある。時間がたつと変色やすり減りが起こることがある。強い力で欠けることがある | 当日〜1週間程度 | 1〜2回程度 |
| クラウン(自由診療):歯を削って型を取り、セラミックなど保険適用外の素材でつくった被せ物を装着する | 歯を大きく削る必要がある。強い力で欠けたり割れたりすることがある。しみたり痛んだりすることがある | 2週間〜1か月程度 | 2〜4回程度 |
| 根管治療(自由診療):歯の根の中の感染した神経などを取り除き、洗浄・消毒して薬を詰める | 治療中や治療後に痛みや腫れが出ることがある。症状が残ったり再発したりすることがある | 数週間〜数か月 | 2〜5回程度 |
| インプラント:顎の骨に人工の歯根を埋め込み、その上に人工の歯を取り付ける | 外科手術のため、腫れや痛み・出血が出ることがある。骨や歯茎の状態によっては治療できないことがある。インプラントの周りに炎症が起こることがある | 3か月〜1年程度 | 5〜10回程度 |
自費診療の場合、歯科医院によって違うので、受診する歯科医院のHPもしくは、直接お問い合わせください。
※上記の金額・期間・回数はあくまで目安です。治療する歯の部位(前歯か奥歯か)、使用する材料の種類、CT撮影などの精密検査の有無、医療機関によって異なります。
ひびが広がって治療が複雑になると、費用や通院期間が増えることがあります(「④治療の費用と期間が増大する」で解説しています)。正確な費用は、受診を検討している医療機関で診察を受け、ご自身の歯の状態に合わせた治療計画と見積もりを確認してください。
よくある質問(FAQ)
Q. 歯のひび割れは自然に治りますか?
A. 歯の亀裂そのものが自然に元通りになることはありません。ただし、すべての亀裂が進展するわけではなく、表面的なものは治療を必要としない場合もあります。亀裂の状態によっては治療が必要になるため、歯科医師による判断が重要です。
Q. マイクロクラックは治せますか?
A. 歯の表面だけにある細いひび(マイクロクラック)は、痛みやしみる症状がなければ、基本的には治療をせずに様子を見ます。ひびに色がついて見た目が気になる場合などは、歯に接着する材料で処置することを検討する場合があります。
Q. 歯のひび割れがあっても痛みがないことはありますか?
A. 歯にひびがあっても、痛みなどの自覚症状がまったくないケースは珍しくありません。
歯の外側にあるエナメル質には神経が通っていないため、ひびがこの範囲にとどまっていれば痛みを感じません。また、過去に神経を抜く治療をした歯は、ひびが入っても痛みのサインが出にくく、発見が遅れる原因になります。
しかし、痛みがないからといって、安全であるわけではありません。痛みがなくても、亀裂が深部へ及んでいる場合には問題が生じていることがあります。ただし、表面的な亀裂は治療を必要としないこともあります。
Q. 歯のひび割れを予防する方法はありますか?
A. 歯のひび割れは、日々の心がけや歯科医院での対策によって、リスクを減らせる可能性があります。
具体的な予防法として、主に以下の4つが挙げられます。
| 予防法 | 具体的な内容 |
|---|---|
| ナイトガード(マウスピース)の使用 | 歯ぎしりや食いしばりによる歯への負担を軽減する目的で、歯科医師の判断によりナイトガードを使用することがあります。ただし、歯の亀裂を確実に予防できるものではありません |
| 硬い食べ物を意識的に避ける | ・氷や硬いナッツ、おせんべいなどを頻繁に食べる習慣は、歯にダメージを与え、ひびのきっかけになることがある ・食べる頻度や量を減らす意識が大切である |
| スポーツ時のマウスガード着用 | ・人と接触する可能性のあるスポーツ(コンタクトスポーツ)を行う際は、専用のマウスガードを着用することが推奨される ・マウスガードは、不意の衝撃による歯の破折リスクを減らす効果が期待できる |
| 定期的な歯科検診 | 定期的な歯科検診で、歯の状態や修復物、噛み合わせなどを確認し、必要に応じて亀裂の有無や変化を評価する |
歯科医師と相談しながら、予防法を実践し、歯のひび割れが起こらないようケアしましょう。
まとめ
歯の浅いひび割れは、治療を必要としないことも少なくありません。ただし、治療が必要なひびかどうかをご自身で見分けるのは難しいため、自己判断で放置せず、一度歯科医院で確認してもらうことが大切です。
歯の亀裂そのものが自然に元通りになることはありませんが、表面的な亀裂は治療を必要としない場合もあります。一方、深い亀裂は進展すると歯の保存が難しくなることがあるため、適切な診断と対応が重要です。
見た目は小さな線でも、内部で問題が進行していることもあります。気になるひびを見つけたら、まずは歯科医院へ相談し、正確な診断を受けましょう。
出典・参考資料
(※1)日本歯科医師会(お口の何でも相談「歯がかけた」)
https://www.jda.or.jp/consultation/vol-08.html
(※2)American Association of Endodontists(AAE Position Statement – Use of Microscopes and Other Magnification Techniques, 2012)
https://www.aae.org/specialty/wp-content/uploads/sites/2/2017/06/microscopesstatement.pdf
(※3)American Association of Endodontists(Cracking the Cracked Tooth Code: Detection and Treatment of Various Longitudinal Tooth Fractures, 2008)
https://www.aae.org/specialty/wp-content/uploads/sites/2/2017/07/ecfesum08.pdf
(※4)日本歯科医師会 テーマパーク8020(お口の119「歯が欠けた、折れた、抜けた」)
https://www.jda.or.jp/park/rescue/index06.html
(※5)8020推進財団(第2回 永久歯の抜歯原因調査 報告書)
https://www.8020zaidan.or.jp/pdf/Tooth-extraction_investigation-report-2nd.pdf
(※6)厚生労働省(診療報酬の算定方法 別表第二 歯科診療報酬点数表〔令和8年厚生労働省告示第69号〕)
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