歯が浮く感じがする違和感の原因は?放置のリスク・今すぐできる対処法

朝起きた瞬間、あるいは食事の際、特定の歯が「浮いている」ように感じたことはないでしょうか。

歯を噛み合わせる度に起こるジワジワとした不快な響きや、何とも言えない違和感は、「そのうち治るだろう」と放置されがちな症状の一つです。

しかし、「歯が浮く」という症状の裏には、進行した歯周病や歯の神経の炎症など、放置すると抜歯にもつながりかねないリスクが潜んでいるかもしれません。

本記事では、歯が浮いたように感じられる原因と放置するリスク、今すぐできる対処法を解説します。

さらに、肉眼では確認が難しい原因の特定に役立つ、マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)や歯科用CTを用いた精密検査のメリットもお伝えしますので、歯科医院を受診する際に参考にしてください。


「歯が浮く」特有の違和感の正体とは?|歯根膜炎を引き起こす主な原因と対処法

歯そのものは非常に硬い「エナメル質」で覆われているため、「浮くような感じ」がする場合、歯を支えるクッションである「歯根膜(しこんまく)」の炎症が疑われます。

歯根膜は、歯の根の周りを取り囲む線維性の薄い膜状組織であり、歯と顎の骨(歯槽骨:しそうこつ)を結びつけることが役割です。

具体的には、噛む際の衝撃を和らげるクッションのような作用(緩衝作用)や、食べ物の硬さや柔らかさを感知して噛む力をコントロールするセンサーのような機能があります。

歯根膜の炎症、「歯根膜炎(しこんまくえん)」が起きる主な原因は、以下の5つです [参考文献1]。

①ストレスや疲労(自律神経の乱れ)

ストレスや疲労によって自律神経の乱れが起きると、全身の血流が滞りやすくなるため、「なんとなくだるい」と感じることはないでしょうか?

自律神経の乱れによって生じた血行不良は、歯茎や歯根膜にも及び、「歯が浮いているように感じる」「噛むと軽い痛みを感じる」といった症状を引き起こすことがあります。

特に、長時間の緊張状態や過労を感じているときに症状が出やすいと言われています。

多くの場合、十分な休養や睡眠を取って安静にすることで、症状が軽減される傾向にあります。

②歯ぎしり・食いしばり

歯ぎしりや食いしばりも、歯根膜の炎症を引き起こし、「歯が浮く」感覚を引き起こす原因の一つです。

特に、睡眠中の歯ぎしりは無意識のうちに行われるため、日中には気づきにくく、朝起きたときに「なんとなく噛むと違和感がある」といったケースが多いとされています。

また、ストレスや過労で無意識のうちに歯を食いしばってしまうこともありますので、マウスピースを使用することで歯にかかる負担の軽減を図ることが一般的です。

③咬合(歯の噛み合わせ)

歯の噛み合わせ、すなわち咬合(こうごう)のバランスが崩れると、特定の歯に噛む力が偏り、歯根膜の炎症を引き起こしやすくなります。

ご自身の体調、そして昼夜関係なく「歯が浮くような違和感」を感じている場合、噛み合わせ治療を行うことで症状が改善されるケースが一般的です。

特に「歯そのものは痛くない」という場合、歯科医院で噛み合わせの検査をおすすめいたします。

④歯周病(ししゅうびょう)

歯周病は、初期の段階では「歯茎の腫れや出血」といった症状に留まるが一般的ですが、進行すると細菌が歯根膜と歯槽骨の間にまで及び、更なる炎症が発生するようになります。

歯根膜の炎症を引き起こし、歯が浮いたような違和感や痛みを感じるようになり、さらに悪化すると「歯茎から膿が出る」「歯がグラグラする」ような症状へと発展するリスクもあります。

歯周病は初期症状が少なく、放置されやすい病気ですが、悪化すると歯を支える顎の骨(歯槽骨)が溶けてしまい抜歯となるおそれがあるため、放置は推奨されません [参考文献2]。

初期の歯周病であれば、歯科医院でのメインテナンス(クリーニング)によって症状が改善されるケースが一般的であるため、まずは歯科医院でご自身の口腔環境のチェックを行うとよいでしょう。

⑤根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)

根尖性歯周炎は、深い虫歯によって歯の神経が死んでしまった場合や、歯の神経を抜く根管治療(こんかんちりょう)を過去に行った歯の内部で細菌が再繁殖した場合に、歯の根の先端に膿が溜まる病気です。

膿の圧力によって歯が押し上げられるため、「歯が浮く」ような浮遊感や噛むと響く痛みを伴います。

さらに、根尖性歯周炎が悪化すると、歯茎に「サイナストラクト(瘻孔:ろうこう)」と呼ばれる膿の出口(白いおできのようなもの)ができることがあります。

根尖性歯周炎は原則として自然治癒しないため、痛みや違和感を放置せず、早急に歯科医院を受診することをおすすめいたします [参考文献4]。

【今すぐできる】違和感や痛みを和らげる一時的な対処法

歯が浮くような違和感が続いているものの、仕事の都合などでどうしても今すぐ歯科医院へ行けない方に向けて、一時的な対処法を紹介します。

※あくまで「一時的な対処法」であり「根本的な原因の解決方法(治療法)」ではないため、痛みや違和感が続く場合は、早期に歯科医院の受診をおすすめいたします。

①市販の鎮痛剤を服用する

夜間など、どうしても違和感や痛みが強くて眠れないといった時は、「ロキソプロフェン」「イブプロフェン」「アスピリン」が含まれる鎮痛剤を服用するのも選択肢の一つです。

薬局で薬剤師や登録販売者に、「歯の痛みに効く鎮痛剤が欲しい」と相談して購入するとよいでしょう。

なお、市販の鎮痛剤は「痛みの緩和」が目的であり、痛みや違和感が治まったとしても「根本的な解決」ではないため、注意してください。

②食事を柔らかいものにする(物理的な圧力を避ける)

歯に違和感がある場合、お粥・うどん・豆腐など、食事は柔らかいものを中心としたメニューを選択してください。

また、痛む側の歯で極力噛まないようにしてください。ガムやするめなど、硬くて咀嚼回数が多くなるものは一時的に避けることで、歯根膜の負担の軽減につながります。

③血流や筋肉の緊張をほぐす「ツボ押し」 を行う

「歯の違和感」は、疲労やストレス、首・肩のコリが原因で起こることもあります。

そこで、東洋医学において自律神経の乱れや血行不良、筋肉の緊張の緩和に役立つとされている鍼灸治療(しんきゅうちりょう)の考え方をベースにした「ツボ押し」を、ご自宅でのセルフケアとして取り入れることもアプローチの一つとなります。

なお、当記事で紹介する「ツボ」は、WHO(世界保健機関)において、国際的に標準化・定義されているものです [参考文献5]。

以下のツボを、息を吐きながら3〜5秒かけてゆっくりと優しく押し、同様にゆっくりと力を抜く動作を数回繰り返してください。

【合谷(WHO国際標準コード:LI4)

「合谷(ごうこく)」は、手の甲側、親指と人差し指の骨が交わる手前のくぼみにあるツボです。

全身の痛みや不快感だけでなく、歯の浮くような違和感、頭痛を和らげるなど、体の緊張をほぐす役割を持つツボとして古くから重用されています。

【下関(WHO国際標準コード:ST7)

「下関(げかん)」は、耳の穴の前方、頬骨の下のくぼみ。口を開けたときに骨が飛び出る部分にあるツボです。

噛むための筋肉である「咬筋(こうきん)」の緊張をほぐす効果が期待され、食いしばりや歯ぎしりによる歯根膜への負担軽減につながります。

【頬車(WHO国際標準コード:ST6) 】

「頬車(きょうしゃ)」は、耳の付け根から顎の角(エラ)に向かって下がり、そこから少し前方の、噛み締めたときに筋肉が盛り上がる部分のツボです。

顎周辺を指の腹でなでさするようにして血流を促進させると効果が表れやすいとされています。

これって病気?歯科医院の受診を推奨する症状目安

「虫歯でもないのに歯医者に行きたくない」と考える方は多いですが、以下のような症状が見られる場合、放置すると悪化するリスクが高いとされ、歯科医院への受診を推奨されます。

  • 数日安静にしても症状が治まらず、違和感が強くなる
  • 上下の歯を噛み合わせると痛みが響く、特定の歯で食べ物が噛めない
  • 歯茎が赤くなる、白いおできや「膿(うみ)」が見られる

根本的な原因を見逃さないために|歯科医院の選びの重要な基準2つ

「歯が浮いたような違和感」の原因は複数あり、人によっては複数の原因が複雑に関係していることも考えられます。

歯科医院を選ぶ際には、単に「家から近い」「すぐに予約が取れる」という理由だけでなく、公式ホームページなどで「歯科用CT」と「マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)」が導入されているかを確認するとよいでしょう。

まずは歯の違和感の原因を精密検査で探り、原因に合わせて「歯周病の治療」「噛み合わせ治療」「より精密な根管治療」などの治療ステップへ移行することをおすすめいたします。

「歯科用CT」での立体診断と「マイクロスコープ」での拡大治療の連携のメリット

「歯科用CT」は、平面的(二次元的)なレントゲン写真とは異なり、立体的(三次元的)な精密な診断を可能とする機器です。

たとえば、歯周病が原因で顎の骨がどの程度溶けているか、どの位置に病巣があるのか、病巣の大きさはどれくらいか、歯の根が破折(はせつ)していないか、など肉眼やレントゲン写真では確認が難しい口腔の状態を診断するのに役立ちます。

また、「マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)」は、肉眼の20倍ほど視野を拡大できる機器です。

LEDライトや動画・写真撮影機能が搭載されたものもあり、狭いお口の中を照らすこと、治療前後や治療中の歯の状態を記録することを可能とします。

歯科用CTで病巣の位置を確認した後、肉眼では見落としてしまうような微細なヒビ(マイクロクラック)や、歯と歯茎の境目である歯周ポケットの奥深くの汚れを発見・処置するのに役立ちます。

なお、マイクロスコープで撮影した動画や写真は、歯科医師が経過観察の資料にするだけではなく、患者さんへの治療の説明にも用いられるため、インフォームドコンセント(医師の説明と患者の納得)に繋がりやすいというメリットもあります。

【参考情報】時間帯で歯が浮くような違和感や痛みが強くなる原因は?

「常に歯が浮く感じがするわけではない」「決まった時間帯になると違和感が強くなる」という場合、原因が絞り込める可能性があります。

歯科医院を受診する際に歯科医師に相談してみることをおすすめいたします。

【朝や寝起きに感じる場合】

朝起きた直後に口全体の重だるさや、特定の歯が浮く感覚を強く感じる場合、就寝中の物理的な負荷と血流の変化が考えられます。

具体的には、無意識下の歯ぎしり・食いしばり(ブラキシズム)が原因として可能性が高いとされています。

睡眠中は、自覚のないまま非常に強い力で歯をギリギリと擦り合わせたり(グラインディング)、ギューッと噛み締めたり(クレンチング)することがあり、それらが歯や歯根膜に強い負担をかけることがわかっています。

また、「横臥位(おうがい)」による頭部の血流変化も原因の一つです。

人間が横たわって就寝している間は、立位(りつい:立っている状態)や座位(ざい)と比較して、重力の関係から頭部へ血液が巡りやすくなります。

これにより、歯の内部にある歯髄(しずい:神経)や、歯の周囲を取り巻く歯根膜の毛細血管内の圧力(内圧)が上昇し、起床直後に歯が締め付けられるように浮く、あるいは鈍痛などの影響を及すとされています。

【日中〜夕方に感じる場合】

午後の仕事中から夕方にかけて不快感が増してくる場合は、自律神経の乱れや疲労・ストレスが影響を及ぼしている可能性が高いとされています。

疲労・精神的ストレスは免疫低下と血流障害を引き起こし、睡眠不足による肉体疲労が蓄積すると、自律神経の交感神経が優位になり続ける状態が続きます。

末梢血管が収縮して歯周組織の血流が滞り免疫力が低下することで、歯の周囲にいる微細な細菌の活動が活発化し、結果として夕方に「歯が浮く」という自覚症状となって現れやすくなります。

そして、日中の食いしばり癖(TCH:歯列接触癖)も「歯が浮くような違和感」の原因の一つとされています。

通常、人間が安静にしている時、上下の歯の間には1〜2ミリメートルの隙間(安静位空隙(あんせいいくうげき))があり、接触していません。

しかし、パソコン作業や運転、家事などの集中時に、無意識に上下の歯を持続的に触れ合わせてしまう癖(TCH)を持つ人がいます。

微弱な力であっても、数時間連続して接触が続くと、歯根膜に絶え間ない虚血(血流が止まる状態)と微小なダメージが蓄積し、夕方に強い違和感をもたらすことがあります。

【例外:時間帯に関わらず「常に」感じる場合】

時間帯に左右されず、1日中継続して特定の歯、あるいは口全体が浮いていると感じる場合は、治療が必要な状態、または治療後の一過性の炎症が疑われます。

虫歯の治療で歯を大きく削ったり、神経を除去した直後、あるいは金属の被せ物を装着した直後などは、歯の内部や歯根膜が非常にデリケートで過敏な状態になっています。

処置の物理的な刺激そのものや、噛み合わせの変化に対して歯根膜が防御反応として軽微な炎症を起こすため、数日から1週間程度は常に歯が浮くような違和感が続くことがあります。

「歯が浮く」症状でよくある質問と回答(Q&A)

歯が浮いたような違和感でよくある質問と回答を記載しますので、歯科医院の受診の検討に役立ててください。

Q1. 歯が浮いて痛むのは、何日で治りますか?

A1. 一過性の疲労やストレスが原因であれば、通常は2〜3日の十分な休養と睡眠で自然に改善することが一般的です。

しかし、4日以上経っても違和感が消えない、あるいはむしろ痛みが強くなっている場合は、歯周病の進行や根尖性歯周炎などの感染症、または歯根の微細な亀裂(破折)が疑われます。

そのため、速やかに歯科医院で精密な検査を受けてください。

Q2. なぜ風邪を引いた時や疲れた時に歯が浮くのでしょうか?

A2. 身体の免疫力が低下し、炎症を引き起こす細菌の活動が活発化するためと考えられています。また、副鼻腔の炎症が影響している可能性もあります。

お口の中には常に多くの細菌が存在しますが、健康な時は自己免疫力によってその活動が抑え込まれています。

しかし、風邪や蓄積した疲労によって免疫力が著しく低下すると、細菌の活動が一時的に活発化し、根の先や歯周ポケット周辺で微小な急性炎症(歯が浮く感覚)を引き起こすことがあるのです。

また、上の奥歯の根元は「副鼻腔(上顎洞(じょうがくどう))」という鼻の空洞と非常に近いため、風邪による副鼻腔の腫れや膿の圧力が原因で、神経が圧迫されて「上の奥歯が浮く・痛む」と感じるケースもあります [参考文献3]。

Q3. 神経を抜いた歯(銀歯など)なのに、浮くような痛みがするのはなぜですか?

A3. 痛みや浮く感覚を感じているのは、歯の神経ではなく、その周囲にある「歯根膜(しこんまく)」だからです。

「神経を抜いたからもう痛まないはず」と思うかもしれませんが、歯の内部の神経(歯髄:しずい)を抜いた後でも、歯の根の外側を覆っている歯根膜には、痛みや圧力を感知する非常に鋭敏な神経が通っています。

したがって、神経のない歯であっても、根の先に膿が溜まる(根尖性歯周炎)などのトラブルが起きると、歯根膜が直接その圧力を検知し、「浮く」「噛むと痛い」といった症状が起こることがあります。

Q4. 歯科医院でレントゲンを撮ったのに「異常なし」と言われました…

A4. レントゲンは、微細なヒビや初期の病変の確認が困難な可能性があります。

平面的な撮影を行うレントゲンでは、歯を特定の方向からしか撮影できないため、骨の影に隠れた病巣や、縦・横に入った極細のヒビ(マイクロクラック)を捉えることが困難です。

「どうしても違和感が取れない」という場合、歯科用CTによる3次元的な画像診断や、数十倍の拡大が可能なマイクロスコープを用いた精密なアプローチを行うことで、これまで隠れていた原因が見つかる可能性が高まります。

まとめ:「歯が浮く」違和感は放置せずに精密検査で原因の特定を

「歯が浮く」という、何気ない、しかし不快な違和感は、あなたの大切な歯を支える土台である歯根膜(しこんまく)が炎症している兆候かもしれません。

 

一時的な疲労やストレスからくるものであれば2~3日の休養によって改善することが一般的ですが、その裏で歯周病や根尖性歯周炎、目に見えない歯の破折といった「抜歯のリスク」が進行しているおそれもあります。

 

「ただの疲れだろう」と市販薬を服用しても違和感や痛みが続く場合は、歯科用CTとマイクロスコープを兼ね備えた歯科医院で精密な検査を受けることをおすすめいたします。

あなたのお口の健康を守るには、放置や様子見で留めずに、まずは精密検査を行い、原因を特定していくことが大きな一歩と言えるでしょう。


出典・参考資料

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、医師の診断や治療に代わるものではありません。お口の症状がある場合は、速やかに歯科医師の受診をお勧めします。

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