事故や虫歯などで大切な歯を失ってしまい、見た目や食事のしにくさにお悩みではありませんか。
歯が抜けたスペースをそのままにしておくと、隣の歯が倒れ込んできたり、噛み合う相手の歯が伸びてきたりします。噛み合わせがズレて、お口全体のトラブルにつながることも少なくありません。
ブリッジ治療は抜けた歯のスペースを埋められる方法であり、比較的短期間で治療が完了できて保険も適用できる身近な選択肢です。
この記事では、ブリッジ治療のメリット・デメリットや費用、治療後の注意点を解説します。
目次
この記事を監修した医師

谷川歯科医院 副院長
谷川 淳一
Tanigawa Junichi
歯科医師。日本口腔インプラント学会専修医。小児歯科治療や小児矯正、インプラント治療を得意とし、他の歯科医師への指導も行う。
患者様一人ひとりと真摯に向き合って治療方針を決めていくことを信条としている。
ブリッジ治療とは?

ブリッジ治療は、失った歯が数本までの場合に適用される治療法です。失った歯の両隣にある健康な歯を土台(支台歯)として削り、橋(ブリッジ)を架けるように一体型の人工歯を装着します。
ブリッジの構造は、主に以下の3つの部分で構成されます。
- 支台歯(しだいし):失った歯の両隣の歯で、ブリッジを支える土台
- ポンティック:歯がない部分を補う人工の歯の部分
- クラウン:支台歯に被せる冠(被せ物)の部分
ブリッジは、入れ歯のように毎日取り外す必要がありません。ご自身の歯に近い感覚で食事や会話を楽しめるのが大きな特徴です。外科的治療も不要で、見た目も自然なので審美性が気になる方に向いています。
一方で、健康な歯を一定以上削る必要があり、負担がかかる点はデメリットとなります。
なお、ここまでに紹介したのは従来型の一般的なブリッジ治療です。土台とする両隣の歯をほとんど削らない接着ブリッジ、ヒューマンブリッジなどの種類もあるので、それぞれ詳しく見ていきましょう。
接着ブリッジ
接着ブリッジとは、歯をほとんど削らずに人工の歯を接着剤で固定するブリッジ治療です。
歯を削る量が少ないため歯にかかる負担が少なく、前歯など噛む力が強くない部位を治療する際に用いられます。
一方で、治療する部位が多い場合はブリッジが維持しづらくなるのがデメリットです。固定力も従来のブリッジ治療と比較して弱いため、歯科医院で相談して決めるといいでしょう。
ヒューマンブリッジ
ヒューマンブリッジも接着ブリッジと同様に、ほとんど歯を削らないブリッジ治療です。
両隣の歯に特殊な構造の金属パーツを装着することで、物理的にしっかりと固定されるため簡単には外れません。
しかしあくまでも部分的な歯の欠損を補う治療なので、治療する部位が多い場合は適用されません。
また保険適用外で費用が高い点や、治療部位(奥歯など)によっては金属パーツが見えることもあります。
ブリッジ治療とインプラントや入れ歯との違い
失った歯の機能と見た目を補う治療法としてブリッジ治療を紹介しましたが、他にもインプラントや入れ歯などの選択肢があります。
インプラント・入れ歯との違い
ブリッジ治療・インプラント治療・入れ歯のの特徴は以下のとおりです。
| 治療法 | ブリッジ | インプラント | 部分入れ歯 |
| 仕組み | 両隣の歯を土台にし、固定式の人工歯を装着 | 顎の骨に人工の歯根を埋め込み、人工歯を装着 | 金属のバネなどを残っている歯に引っ掛けて固定 |
| 周囲の歯への影響 | 健康な歯を削る必要がある | 削る必要はない | バネをかける歯に負担がかかることがある |
| 噛む力(天然歯比) | 約80%(※1) | 約80%以上(※2) | 約35%(※1) |
| 見た目 | 素材によっては自然な仕上がりにできる | 天然の歯に近く自然である | 金属のバネが見えることがある |
| 治療期間 | 短い(約1~2か月) | 長い(約3か月~1年) | 比較的短い(約1か月) |
| 費用 | ・保険適用なら比較的安価 ・自費は高額になることもある | 全額自費のため高額 | 保険適用なら安価 |
| メンテナンス | ・丁寧な清掃が必要 ・ブリッジの下は汚れやすい | 毎日の歯磨きと定期検診が重要 | 毎日の取り外しと洗浄が必要 |
ブリッジ治療・インプラント・入れ歯の選び方
ブリッジ治療・インプラント・入れ歯のそれぞれの治療に適した人を以下の表にまとめたので、選ぶ際の参考にしてください。
| ブリッジ | インプラント | 入れ歯 | |
| 適した人 | ・外科手術を避けたい方 ・比較的短期間で治療を終えたい方 ・費用を抑えたい方 | ・周囲の健康な歯を削りたくない方 ・ご自身の歯と同じようにしっかり噛みたい方 ・見た目の美しさを重視する方 ・顎の骨の状態や全身疾患に問題がない方 | ・連続して多くの歯を失っている方 ・外科手術ができない方 ・費用をできるだけ抑えたい方 ・シンプルに歯を補いたい方 |
治療法は、患者さん一人ひとりのお口や健康の状態、ライフスタイル、優先したいことによって異なります。歯科医師と十分に相談し、ご自身が納得できる治療法を見つけていきましょう。
ブリッジ治療のメリット
ブリッジ治療の主なメリットは、以下の4つです。
①短期間で治療が完了する
②装着時の違和感が少ない
③保険適用で治療できる
④外科手術が不要
①短期間で治療が完了する
ブリッジ治療の大きな魅力は、治療に必要な期間が比較的短いことです。インプラントとは異なり、顎の骨に人工歯根を埋め込む手術を行わないため、歯茎や骨の治癒を待つ期間が必要ありません。
お口の状態に大きな問題がなければ、通常は2〜4回ほどの通院、期間にして数週間〜1か月程度で治療を終えられます。ブリッジ治療は、お仕事や日常生活への影響を抑えたい方にとって、大きなメリットです。
②装着時の違和感が少ない
ブリッジ治療は、ご自身の歯にセメントでしっかりと固定するため、装着した際の違和感が少ないのも大きな特徴です。
装着したブリッジは、ご自身の歯の一部になったような感覚で使えます。天然の歯が持つ噛む力を100%とすると、ブリッジは約80%の力まで回復できるといわれており、食事をしっかり楽しめます。
ブリッジと入れ歯の装着感の比較は以下のとおりです。
| 項目 | ブリッジ(固定式) | 入れ歯(取り外し式) |
| 装着感 | 自分の歯に近く、異物感が少ない | 慣れるまで異物感を感じやすい |
| 安定性 | しっかり固定され、ズレたり外れたりしない | 硬いものを噛むとズレたり浮いたりすることがある |
| 会話 | 発音への影響が出にくい | 慣れるまで話しにくく感じることがある |
| 食事 | 自分の歯に近い感覚で噛める | 食べ物の熱が伝わりにくく、味が分かりにくいことがある |
ブリッジは、治療後の生活の質(QOL:Quality of Life)を高く保てる優れた治療法です。
③保険適用で治療できる
ブリッジ治療は、一定の条件を満たせば健康保険が適用されるため、費用負担を抑えることが可能です。年齢や所得に応じて自己負担の割合が異なり、1〜3割と定められています。保険適用が難しいインプラント治療に比べて、自己負担額が安い点がメリットです。
ただし、素材によっては保険適用されず、自由診療となります。「見た目をより自然にしたい」「金属アレルギーが心配」などの希望があり、セラミックなどの素材を使う場合は自由診療となるため注意してください。
保険が適用されるブリッジの主な素材は、前歯と奥歯で異なります。前歯は、金属フレームにプラスチック(レジン)が貼られた素材が該当し、奥歯は銀歯が保険適用されます。
④外科手術が不要
ブリッジ治療は、インプラント治療のように歯ぐきを切開したり、顎の骨に穴を開けたりする外科手術を必要としません。治療は主に歯を削る処置が中心となるため、体への負担が少なく済みます。
以下のような方にとって、ブリッジ治療は大きなメリットです。
- 手術に対して恐怖心や精神的な抵抗がある方
- 高血圧や糖尿病などの持病があり、外科手術のリスクが高い方
- 骨粗しょう症の薬を服用しているなど、骨の状態に懸念がある方
- 血液をサラサラにする薬を服用している方
ブリッジ治療は、体への負担を抑えながら、確実にお口の機能回復を目指せる安心感のある方法です。
ブリッジ治療のデメリット
ブリッジ治療は多くのメリットがある一方で、長期的な視点で考えるべきデメリットも存在します。10年後、20年後のお口全体の健康を見据え、以下の4つのデメリットを理解することが重要です。
①健康な歯を削る必要がある
②支台歯に大きな負担がかかる
③ブリッジ下に食べ物が詰まりやすい
④支台歯が虫歯・歯周病になるリスクがある
①健康な歯を削る必要がある
ブリッジを安定して固定するには、支台歯に被せ物をするスペースを作らなければなりません。虫歯が全くない健康な歯であっても、その全周を一層削る必要があります。
一度削ってしまった歯の表面(エナメル質)は、二度と元には戻りません。歯を削る処置は、将来的に以下のようなリスクをもたらします。
- 歯の寿命が短くなる
- 知覚過敏が起こりやすくなる
- 歯の神経が炎症を起こす
まだ若く、支えとなる歯が健康な状態の場合、上記のデメリットは大きいです。将来的なリスクを十分に考慮し、インプラント治療など他の選択肢と比較検討することが大切です。
②支台歯に大きな負担がかかる
ブリッジ治療では、失った歯が本来担うはずだった噛む力も、すべて支台歯が受けることになります。3本あった部分を2本の歯で支える必要があるため、支台歯は常に1.5倍以上の力に耐え続けることになります。
過剰な負担が長期間にわたって続くと、歯やその周りの組織に少しずつダメージが蓄積されていきます。過剰な負担が原因で、以下のようなトラブルが起こることがあります。
- 歯根の疲労骨折(歯根破折)
- 歯の動揺(ぐらつき)
- ブリッジの脱離・破損
無意識のうちに歯ぎしりや食いしばりの癖がある方も、通常よりも強い力が支台歯にかかり、リスクが高まるため注意が必要です。これらのトラブルが起こった場合、支台歯の抜歯やブリッジの再設計などが対応の選択肢です。
③ブリッジ下に食べ物が詰まりやすい
ブリッジは複数の歯が一体となって連結された構造のため、清掃が難しく、汚れがたまりやすいという衛生面でのデメリットがあります。特に問題となるのが、歯がない部分を補う人工歯(ポンティック)と歯ぐきの間の隙間です。
人工歯と歯茎との隙間は、意識的にケアをしなければ、食べかすや歯垢(プラーク)が溜まり続ける汚れの死角となります。清掃が不十分な状態が続くと、お口の中に以下のような問題を引き起こすため注意してください。
| 問題点 | 具体的な内容 |
| 口臭の発生 | 隙間に溜まった食べかすが腐敗し、細菌が繁殖することで、強い口臭の原因となる |
| 歯ぐきの炎症 | 歯垢の内部にいる細菌が毒素を出すことで、歯ぐきが赤く腫れたり、出血しやすくなったりする歯肉炎を引き起こす |
| 審美性の低下 | 歯ぐきの炎症が続くと、歯ぐきが痩せて下がり、ブリッジと歯ぐきの境目に隙間ができて見た目が悪くなることがある |
問題を避けるためには、通常の歯ブラシに加えて歯間ブラシやスーパーフロスなどのブリッジ専用の清掃器具で清掃することが不可欠です。人工歯と歯茎の隙間は、歯ブラシの毛先が届きにくく、連結されているので通常のデンタルフロスは通せません。
④支台歯が虫歯・歯周病になるリスクがある
支台歯が虫歯・歯周病になるリスクがある点も、ブリッジ治療のデメリットです。
ブリッジの構造的な清掃の難しさは、支台歯の健康を直接的に脅かすリスクにつながります。被せ物と支台歯の境目から細菌が侵入し、被せ物の内部で静かに進行していく虫歯に警戒が必要です。
ブリッジは被せ物で覆われているため、痛みなどの自覚症状が出にくく、ご自身で虫歯に気づくことは困難です。歯科医院でのレントゲン撮影で偶然発見されたときには、すでに虫歯が神経まで達しているというケースも少なくありません。
ブリッジ周囲の歯垢を放置すれば、歯周病が進行し、支台歯を支える顎の骨を溶かしてしまいます。土台である骨が失われれば、支台歯がぐらつき始め、最終的にはブリッジ全体を支えきれなくなります。
支台歯が重度の虫歯や歯周病になると、ブリッジをすべて壊して外し、治療し直すことが必要です。支台歯の抜歯につながり、大きなブリッジや入れ歯、インプラントなどのより大掛かりな治療を検討せざるを得ません。
患部を数十倍まで拡大して見れるマイクロスコープを使えば、ブリッジと支台歯との隙間を極力抑えられ、細菌が侵入できるスペースを減らせます。虫歯・歯周病の予防につながるため、リスクを低減したい方はマイクロスコープを備えた歯科医院で治療を受けてください。
保険と自費で異なるブリッジの種類と素材

ブリッジ治療で用いる素材の選択は、単に見た目の好みで決めるものではありません。どの素材を選ぶかによって、耐久性、アレルギーのリスク、将来的なお口の健康状態までが大きく変わってきます。
ここでは、ブリッジ治療の保険適用・自由診療に関する以下の内容を解説します。
- 保険適用で選べるブリッジの素材
- 自由診療で選べる見た目・耐久性に優れた素材
- 保険適用・自費診療それぞれの費用相場
- 保険が適用される条件と制限
保険適用で選べるブリッジの素材
健康保険を適用したブリッジ治療で使用できる素材は、以下の表のとおりです。
| 素材の種類 | メリット | デメリット |
| 硬質レジン前装冠 | 正面から見たときの審美性をある程度確保できる | ・角度によっては金属色が見える ・コーヒーやカレーなどの色素が沈着しやすく、経年的に黄ばんでしまう ・細菌の温床となる歯垢が付着しやすいため、口臭や二次的な虫歯のリスクを高める可能性がある |
| 金銀パラジウム合金 | 強度が高く、強い力がかかる奥歯でも壊れにくい | ・大きく口を開けたときに審美性が損なわれる ・金属イオンの溶出で、歯ぐきに沈着して黒ずむことがある ・金属アレルギーが生じる可能性がある ・口の中だけでなく、原因不明の皮膚炎として症状が現れる |
| 高強度コンポジットレジン | 金属を全く使用しないため、審美性に優れる | ・適用が第二小臼歯欠損の場合に限られる ・歯ぎしりがある方や咬む力が強い方だとブリッジが欠けたり折れたりすることがある |
硬質レジン前装冠は、前歯から犬歯(前から3番目の歯)までが保険適用の対象です。内側が金属(主に金銀パラジウム合金)で、外から見える側だけにレジンが貼り付けられています。
一方、金銀パラジウム合金は、奥歯(4番目以降の小臼歯・大臼歯)が対象です。一般的に銀歯とも呼ばれています。
そして、高強度コンポジットレジンは、奥歯(4番目小臼歯と6番目大臼歯が支台歯で5番目小臼歯がポンティック)が対象です。コンポジットレジンと呼ばれる素材とグラスファイバーと呼ばれる天然歯に近い弾性を持ったしん棒でできていて、金属を一切含みません。
自費診療で選べる見た目・耐久性に優れた素材
自費診療(自由診療)のブリッジ治療では、保険診療よりも高品質な素材を選べます。自費診療で選べる素材の特徴は、以下のとおりです。
| 素材 | 特徴 | メリット | デメリット |
| オールセラミック | すべてセラミックでつくられている | ・天然歯と見分けがつかないほどの透明感と色調を再現できる ・変色せず、歯垢が付着しにくい ・金属アレルギーの心配がない | 強い衝撃が加わると、割れたり欠けたりする可能性がある |
| ジルコニアセラミック | 内側にジルコニアを使用し、外側にセラミックを焼き付けたもの | ・オールセラミックの美しさと金属に匹敵する強度を備えている ・奥歯にも使用できる ・生体親和性が高い | ・硬いため、噛み合う相手の歯の状態によっては慎重な適用が必要 ・費用が比較的高額になる傾向がある |
| メタルボンド | 内側は金属フレームで、外側をセラミックで覆った構造 | ・強度が高く、耐久性に優れる ・見た目が白く、変色しにくい | ・歯ぐきが痩せると、境目の金属が黒い線のように見えることがある ・金属アレルギーのリスクがある |
自費診療は、機能回復だけでなく見た目の美しさ(審美性)、耐久性、体への優しさ(生体親和性)を追求したい方に適しています。
保険診療・自費診療それぞれの費用相場
ブリッジ治療の費用は、失った歯の本数(ブリッジの長さ)や部位、選ぶ素材によって大きく変動します。失った歯1本を補うための3本ブリッジを製作した場合の費用目安は、保険診療で約2〜3万円、自費診療で約24〜60万円です。
ただし、費用は一般的な目安であり、治療内容や歯科医院によって異なります。自費診療は高額になりますが、年間の医療費が10万円を超えた場合に税金の一部が還付される医療費控除の対象です。医療費控除を使う方は、領収書を大切に保管しておきましょう。
保険が適用される条件と制限
ブリッジ治療は誰でも保険適用で受けられるわけではありません。以下のように、支台歯に大きな負担をかける治療法であり、長期的な安定が見込めるケースのみに限定されています。
- 失った歯の両隣がブリッジを支えるのに十分な強さを持つ
- 連続して失った歯は2本までである
- 一番奥の歯(第二大臼歯)が4本とも残存し、噛み合わせが安定している
保険適用の条件は複雑で、ご自身のケースで保険が適用されるかどうかは、歯科医師による精密な診断が必要です。レントゲン撮影などでお口全体の状況を詳しく確認したうえで、最適な治療法を決めていきましょう。
ブリッジ治療の流れ

治療の全体像をあらかじめ知っておくことで、不安が和らぎ、安心して治療に臨むことが可能です。ブリッジ治療の流れに関する以下の内容を解説します。
①初回カウンセリングから装着までのステップ
②通院回数と治療期間の目安
③治療中の痛みの程度
④治療後の噛み合わせの調整
初回カウンセリングから装着までのステップ
ブリッジ治療は、患者さん一人ひとりのお口の状態に合わせて、いくつかの段階を踏んで丁寧に進められます。以下のステップが、安全で長持ちするブリッジを完成させるために欠かせない大切なプロセスです。
1.カウンセリング
2.診査・診断
3.支台歯の形成と精密な型取り
4.仮歯の装着
5.ブリッジの装着と最終調整
一つひとつのステップを丁寧に確認しながら、ブリッジ治療を行なっていきます。ブリッジの装着感に少しでも違和感があれば、遠慮なく歯科医師へお伝えください。
通院回数と治療期間の目安
ブリッジ治療は、インプラント治療などに比べて、比較的短い期間で完了することが大きな特徴です。一般的な治療スケジュールは以下のとおりです。
| 通院回 | 主な治療内容 | 前回の通院からの期間(目安) |
| 1回目 | ・カウンセリング ・診査・診断 ・治療計画の説明 | − |
| 2回目 | ・支台歯の形成 ・型取り ・仮歯の装着 | 約1週間後 |
| 3回目 | ・ブリッジの装着 ・噛み合わせの最終調整 | 約1〜2週間後 |
ただし、支台歯に虫歯があったり、歯周病で歯ぐきが腫れていたりする場合には、ブリッジ治療前に事前の治療が必要です。土台となる歯が健康でなければ、長持ちするブリッジは作れないからです。基礎治療のために通院回数が増え、全体の治療期間も長くなります。
詳しいスケジュールは、初回のカウンセリング時に歯科医師にご確認ください。
治療中の痛みの程度
支台歯の内部に走っている神経が生きている場合は、局所麻酔を使用するため、患者さんが痛みを感じることはほとんどありません。麻酔の注射自体も、事前に歯ぐきに表面麻酔を使用する歯科医院が多く、痛みを抑える工夫がなされています。
ただし、治療後に麻酔が切れると、歯を削った影響で一時的に歯がしみたり、ズキズキとした痛みを感じたりすることがあります。これは、歯が受けた刺激に対する正常な反応であり、異常ではありません。
痛みは、処方された痛み止めを服用することで十分にコントロールでき、数日で自然に治まっていきます。痛みが長引いたり、我慢できないほど強かったりする場合には、神経に炎症が起きている可能性も考えられます。放置せず、遠慮なく歯科医院に相談してください。
治療後の噛み合わせ調整
ブリッジを装着して治療が完了した後は、最後の仕上げとして重要な噛み合わせの調整を行います。お口の中は敏感で、ほんのわずかな歯の高さの違いが、大きな違和感や不具合につながるためです。
噛み合わせのバランスが悪いまま放置すると、以下のような問題が起こる可能性があります。
- 頭痛や肩こり、めまいなどの不調が現れる
- ブリッジや支台歯へ過度な負担がかかる
- 顎関節症の症状を引き起こすことがある
噛み合わせを調整する際は、色のついた薄い紙(咬合紙)をカチカチと噛んでもらい、歯が強く当たっている所を特定します。少しずつ丁寧に削り、全体のバランスが均等になるように繰り返し調整が必要です。
快適な噛み心地を取り戻し、健康な食生活へと橋渡しするためには、精密な最終調整が不可欠です。マイクロスコープを使う歯科医院であれば、精密調整が可能であるため噛み合わせのバランスが整えられます。装着後に少しでも違和感が残る場合は、我慢せず歯科医師に伝えましょう。
ブリッジ治療後の注意点
ここでは、ブリッジ治療後の注意点を詳しく見ていきましょう。
仮歯の使用期間と見た目・食事の注意点
ブリッジが完成するまでの1〜2週間ほどは、仮歯を装着して過ごします。仮歯は単なる見た目を補うものではなく、支台歯の細菌感染や移動の防止、噛み合わせの維持などの役割をになっています。
大切な仮歯を守るため、装着期間中は以下の点にご注意ください。
| 項目 | 具体的な注意点 |
| 食事 | ・ナッツ類やせんべい、氷、骨付き肉などの硬い食べ物を噛む ・ガムやキャラメル、お餅などの粘着性の高い食べ物を食べる ・なるべく治療中の歯で噛まない |
| 清掃 | ・歯磨きの際は力を入れすぎない ・歯間ブラシやフロスの使用は慎重に行うか、歯科医師の指示に従う |
仮歯が外れてしまった場合は、ご自身で戻そうとせず、すぐに歯科医院へ連絡しましょう。放置すると歯が動き、作り直さなければならない可能性があります。
ブリッジの平均寿命と長持ちさせるセルフケア
ブリッジの平均的な寿命は、一般的に7〜10年ほどといわれています。(※3)一方、日々のセルフケアや定期的なプロフェッショナルなメンテナンス次第で、15年、20年と問題なく使い続けられる方もいらっしゃいます。
ブリッジをできるだけ長持ちさせるためには、以下の3つの要素が重要です。
- 毎日の丁寧な歯磨き
- 歯間ブラシやスーパーフロスの活用
- 歯ぎしり・食いしばりの対策
日々のセルフケアはブリッジを長持ちさせる鍵となります。
ブリッジと歯茎の間の清掃方法と専用アイテム
人工歯と歯ぐきの間の清掃には、通常の歯ブラシに加えて、以下のような専用の清掃アイテムが欠かせません。
| 清掃アイテム | 特徴と使い方 |
| 歯間ブラシ | ・ブリッジと支台歯の間の側面やブリッジと隣の歯の間の清掃に適している ・ご自身の歯の隙間に合ったサイズのものを使い、歯ぐきを傷つけないよう優しく挿入する |
| スーパーフロス | ・フロススレッダーという硬い先端部分をブリッジの下にとおす ・スポンジ状の部分でポンティックの底面と歯ぐきの間の汚れを絡め取るように、前後に数回動かして清掃する |
| タフトブラシ | ブリッジの付け根や、支台歯の周りなど、通常の歯ブラシでは磨きにくい部分をピンポイントで磨く |
アイテムの正しい使い方は、言葉で説明するよりも実際に見て、練習するのが良いです。ぜひ歯科医院で、歯科衛生士による専門的な指導を受けてください。
支台歯が虫歯・歯周病になるリスク
ブリッジを失う多くの原因は、ブリッジ本体の破損ではなく、土台である支台歯が虫歯や歯周病に侵されてしまうことです。
ブリッジの被せ物と歯の境目にできたわずかな隙間から細菌が侵入し、内部で虫歯が進行することがあります。被せ物で覆われているため発見が遅れやすく、痛みが出たときには神経を抜く治療や、最悪の場合は抜歯が必要になることも少なくありません。
お口の健康は、全身の健康と密接に関わっており、歯周病菌がお口の中から血管に入り込み、全身を巡ることが科学的に証明されています。細菌の出す毒素が心臓病や糖尿病、関節の不調など、さまざまな全身疾患のリスクを高める可能性が指摘されています。(※4)
ブリッジ周囲の清掃を怠ることは、お口のトラブルに留まらず、全身の健康を脅かしてしまうことになりかねません。
外れた・壊れた場合の対処法と修理費用
長年の使用による金属疲労や、不意に硬いものを噛んでしまった衝撃などで、ブリッジが外れたり壊れたりすることがあります。トラブルが起きた際は、外れたブリッジを保管し、すみやかに歯科医院に連絡してください。
修理費用の目安としては、再接着で済めば数千円程度です。作り直しが必要な場合は、保険適用で2〜3万円程度、自費診療では素材に応じて高額になります。
自費診療には、歯科医院によっては保証制度を設けていることがあります。治療前に確認しておくと安心です。
定期検診でトラブルを早期発見する
ご自身では気づきにくい初期の虫歯や歯周病、噛み合わせのわずかな変化などをチェックするためには、定期検診は欠かせません。
定期検診は、問題が起きた後に行う治療ではなく、健康な状態を維持するための予防です。専門家の目で以下の内容をチェックします。
- ブリッジと支台歯の状態
- レントゲン検査
- 噛み合わせの調整
- 専門的なクリーニング(PMTC)
お口の状態によりますが、推奨される検診の頻度は、3か月〜半年に1回が目安です。将来の大きな治療費や身体的な負担を減らすために定期検診を受け、早期の発見・治療につなげましょう。
まとめ
ブリッジ治療は、外科手術が不要で治療期間も短く、保険適用も可能な身近な治療法です。一方で、支えとなる健康な歯を削る必要があり、治療後の丁寧なケアを怠ると土台の歯からダメになってしまうリスクも伴います。
インプラントや入れ歯を含め、どの治療法が最適かは、お口の状態やライフスタイル、何を優先したいかによって一人ひとり異なります。この記事で得た知識をもとに、まずは信頼できる歯科医師に相談し、ご自身が心から納得できる治療法を一緒に見つけていきましょう。
参考文献
- Miyaura K, Morita M, Matsuka Y, Yamashita A, Watanabe T.Rehabilitation of biting abilities in patients with different types of dental prostheses.J Oral Rehabil,2000,27(12),1073-1076.
- Flanagan D.Bite force and dental implant treatment: a short review.Med Devices (Auckl),2017,10,141-148.
- Shannon Hill, Sharon Bailey, Angie Hamson.Dental Bridges for Partial Tooth Loss.Canadian Agency for Drugs and Technologies in Health,2023.
- Abiodun O Arigbede, B Osagbemiro Babatope, M Kolude Bamidele.Periodontitis and systemic diseases: A literature review.J Indian Soc Periodontol,2012,16,4,p.487–491.
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