【医師監修】セラミックの寿命はどのくらい?長持ちさせるポイントや再治療の目安を解説

「セラミック治療をしたけど、いつまで持つのだろう」「高額だったのに、すぐダメになったらどうしよう」と、不安を抱えていませんか。

セラミックの歯の寿命は、一般的に7~15年ほどとされていますが、実はご自身の日常ケア次第で、この寿命は変わります。知らないうちに行っている睡眠中の歯ぎしりや、何気ない食事の癖が、高価なセラミックの寿命を縮めているかもしれません。

この記事では、セラミックの素材別の寿命から、1日でも長く美しく保つための具体的な4つの方法、再治療を考えるべき「寿命のサイン」を解説します。

この記事を監修した医師

明石 陽介
Akashi-Yosuke

愛知学院大学歯学部卒業

口腔外科、一般歯科診療に携わり
現在は、愛知県内の歯科医院にて訪問歯科診療を中心に活動。通院が難しい方にも安心して歯科治療を受けていただけるようサポート。
義歯治療や摂食嚥下の支援にも力を入れ、患者様一人ひとりの生活に寄り添った診療を大切にしている。


セラミックの寿命と素材ごとの特徴

セラミックの歯の寿命は、一般的に7~15年ほどですが、あくまで平均的な数値です。選ぶ素材の種類、お口の中の環境、日々のお手入れ方法によって、寿命は変わります。

各素材の特徴と寿命の目安について解説します。

オールセラミック(10~15年が目安)

オールセラミックは、すべてがセラミック(陶器)でできた素材で、寿命は10~15年ほどです。オールセラミックには以下のようなメリットがあります。

  • 天然の歯に近い見た目の美しさ
  • 金属不使用で体に優しい
  • 汚れが付着しにくい

上記のようなメリットがある一方で、素材がガラスに近いため、強い衝撃や過度な噛み合わせの力によっては、欠けたり割れたりする可能性がある点には注意が必要です。そのため、噛む力が強くかかる奥歯などには、より強度の高いジルコニアセラミックなどが推奨されることもあります。

ジルコニアセラミック(10~15年が目安)

ジルコニアセラミックは、「人工ダイヤモンド」とも呼ばれるジルコニアという硬い素材を土台に使ったセラミックです。寿命の目安は10~15年であり、耐久性に優れています。

ジルコニアセラミックには以下のようなメリットがあります。

  • 圧倒的な強度と耐久性
  • 優れた審美性
  • 高い生体親和性

注意点として、ジルコニアは天然の歯よりも硬いため、噛み合う相手の歯を少しずつすり減らしてしまう可能性があります。そのため、治療の際には歯科医師による精密な噛み合わせの調整が不可欠です。

ハイブリッドセラミック(7~8年が目安)

ハイブリッドセラミックは、セラミックの微粒子と、歯科用プラスチック(レジン)を混ぜ合わせて作られた素材です。寿命の目安は7~8年ほどと、他のセラミックに比べるとやや短めです。

ハイブリッドセラミックには以下のようなメリットがあります。

  • 費用を抑えられる
  • 適度な柔軟性で周囲の歯を傷つけにくい
  • 加工のしやすさ

一方で、プラスチックを含んでいるため、長期間使用していると水分を吸収して少しずつ変色したり、表面のツヤが失われたりすることがある点がデメリットです。セラミック100%の素材に比べると強度は劣り、すり減りやすいという側面も持ち合わせています。

他の素材(銀歯・金歯など)との耐久性比較

保険診療でよく使われる銀歯と、自費診療のセラミックでは、見た目だけでなく、耐久性や体への影響にも違いがあります。

以下の表で、セラミックと他の素材の主な違いを比較します。

比較項目セラミック銀歯(保険適用)
見た目天然の歯に近い白さで美しい金属色が目立つ
平均寿命7~15年以上(素材による)5~7年程度
二次むし歯リスク歯との適合性が高く、リスクは低い劣化で隙間ができやすく、リスクは高い
体への影響アレルギーの心配がほとんどない金属アレルギーや歯茎の変色のリスク
費用自費診療のため高価保険適用のため安価

銀歯は金属であるため、お口の中で唾液によって少しずつ腐食し、変形することがあります。その結果、歯と銀歯の間に微小な隙間ができてしまい、そこから細菌が入り込んで再びむし歯になる「二次カリエス」のリスクが高くなります。

セラミックは化学的に安定した素材で、お口の中で劣化しにくい性質を持っています。歯と精密に接着させることで隙間をほとんど作らず、表面も滑らかなため歯垢が付着しにくいとされています。

セラミックの寿命を左右する3つの要因

セラミックの歯の寿命を左右する主な要因は、以下の3つです。

①適合精度

②噛み合わせ

③アフターケア

①適合精度

セラミックの寿命を左右する要因の一つが適合精度です。適合精度とは、セラミックの被せ物や詰め物と歯がどれだけ精密に合っているかを示します。以下のようなトラブルを予防するために、歯とセラミックの間の隙間を小さくすることが大切です。

  • 虫歯の発生
  • 歯周病のリスク

歯とセラミックの隙間が小さいと、細菌の侵入を物理的に遮断でき、虫歯や歯周病のリスクを低減可能です。特に、患部を数倍〜数十倍に拡大しながら施術できるマイクロスコープを使えば、歯とセラミックの隙間をゼロに近づけられます。

虫歯・歯周病のリスクを抑えるためにも、マイクロスコープがある歯科医院でセラミック治療を受け、適合精度を高めましょう。

②噛み合わせ

セラミックは金属に比べて硬く、割れやすい性質があるため、噛み合わせの調整も寿命に影響します。セラミックと歯の噛み合わせが悪いと、局所的に力が集中し、セラミックの歯が割れてしまう恐れがあります。

噛み合わせの悪さにより歯全体のバランスが崩れることで、歯や顎関節への負担も大きくなるでしょう。長期間負担がかかると、歯がしみたり、顎が痛くなったりする原因となります。

セラミックの歯の寿命を長くするためには、治療時に噛み合わせを調整することが大切です。

③アフターケア

セラミックは虫歯になりませんが、周囲の歯や歯ぐきは虫歯・歯周病になる可能性があるため、日々のケアが寿命を左右します。アフターケアを怠ると、歯周病や虫歯で土台の歯が弱り、セラミックだけでなく歯そのものを失う可能性があります。

セラミック治療後は、デンタルフロスや歯間ブラシでしっかりと汚れを落とし、歯科医院での定期検診も受けましょう。後述するセラミックを長持ちさせるポイントを実践することで、寿命を延ばせる可能性が高まります。

セラミックを長持ちさせる4つのポイント

セラミックを長持ちさせる4つのポイントは以下のとおりです。

①口腔ケアを毎日行う

②硬い食べ物はなるべく控える

③歯ぎしり・食いしばり対策をする

④3~6か月ごとに歯科検診を受ける

①口腔ケアを毎日行う

セラミックを長持ちさせる基本は、毎日のセルフケアです。セラミック自体は陶器なのでむし歯にはなりませんが土台となるご自身の歯や、セラミックと歯茎の境目は歯垢(プラーク)が溜まりやすくむし歯(二次カリエス)になりやすいです。

日々のケアでは、以下の点を意識しましょう。

  • 歯ブラシの選び方と磨き方
  • 補助的な清掃用具の活用
  • 歯磨き粉の選び方

毎日の正しいケアが土台の歯を守り、結果的にセラミックの寿命を延ばします。

②硬い食べ物はなるべく控える

セラミックは見た目が自然で耐久性にも優れた素材ですが、一点に強い力がかかると欠けたり割れたりすることがあります。そのため、硬い食べ物を噛む時は注意が必要です。

氷や飴を噛み砕いたり、硬いおせんべいやナッツ、カニの殻や骨付き肉などを直接噛むことは避けましょう。こうした行為を繰り返すと、目に見えない細かなひび(マイクロクラック)が少しずつ蓄積し、後に破損の原因となります。

セラミックの寿命を縮めないためには、日常的に硬い食べ物を避けることが大切です。食事の際は、セラミック部分に過度な負担をかけないよう意識し、慎重に噛む習慣をつけることで、美しさと機能を長く保つことができます。

③歯ぎしり・食いしばり対策をする

歯ぎしりの際、歯にはご自身の体重の約2〜5倍、瞬間的には250kgもの力がかかると言われてます。このような強い力が毎日のように加わると、セラミックが欠けたり、割れたりします。土台となっているご自身の歯の根が、割れてしまうことさえあります。

以下のチェック項目で、歯ぎしり・食いしばりの癖がないか確認してみましょう。

  • 朝起きた時に、顎の関節や筋肉が疲れている、だるい
  • 歯がすり減っている、欠けていると指摘されたことがある
  • 頬の内側や舌に、歯の跡がついている
  • 日中、何かに集中している時に無意識に歯を食いしばっている

一つでも当てはまる方は、対策が必要です。歯科医院では、睡眠中に装着する「ナイトガード(マウスピース)」を作製できます。ナイトガードは歯ぎしりの力を和らげ、歯やセラミックを守るクッションの役割を果たします。

日中の食いしばり癖(TCH:Tooth Contacting Habit)がある方は、意識して改善を心がけましょう。「上下の歯を離す」と書いた付箋をパソコンなどに貼り、意識づけすることが大切です。大切なセラミックを守るため、ぜひ一度ご自身の癖を見直してみてください。

④3~6か月ごとに歯科検診を受ける

毎日のセルフケアに加えて、歯科医院での定期的なプロフェッショナルケアがおすすめです。ご自身では気づけない小さな問題を、専門家がチェックして早期に対処できます。

定期検診では、主に以下のようなことを行います。

  • セラミックと歯の状態のチェック
  • 噛み合わせの調整
  • 専門的なクリーニング(PMTC)

近年の研究では、セラミックによる修復法は品質と寿命の高さが示されています。(※2)その優れた性能を最大限に引き出し、長く維持するためには、定期的なメンテナンスがおすすめです。問題が大きくなる前に対応できれば、再治療にかかる時間や費用も抑えられます。

セラミック再治療が必要な4つの症状

セラミックの再治療が必要な4つの症状は以下のとおりです。

①見た目の変化(変色・ツヤの消失)

②ぐらつき・脱離や噛み合わせの違和感

③セラミックのひび割れや欠け

④二次カリエスの発生

①見た目の変化(変色・ツヤの消失)

セラミックの大きな魅力は、天然の歯に近い透明感と美しい白さです。長く使用していると、その見た目に変化が現れることがあります。これは、セラミックが寿命を迎えている症状の一つかもしれません。

以下の項目で、ご自身のセラミックの状態を確認してみましょう。

  • 黄ばみやくすみなどの色の変化
  • ツヤの消失
  • 周囲の歯との不調和

これらの変化は見た目の問題だけではありません。表面にできた無数の傷により、お茶やコーヒーなどの着色汚れ(ステイン)が付きやすくなり、お口の衛生環境を悪化させる可能性があります。見た目の変化が気になり始めたら、一度歯科医院で相談してみましょう。

②ぐらつき・脱離や噛み合わせの違和感

セラミックの歯が少しぐらついたり、噛んだ時に以前と違う感じがしたりする場合は、セラミック自体ではなく、土台や接着剤の問題かもしれません。

セラミックは、専用の接着剤(セメント)で土台の歯に固定されています。長い年月をかけて少しずつ劣化し溶け出すことで、接着力が弱まり、セラミックと歯の間に微小な隙間ができぐらつきます。

ぐらつきや噛み合わせの違和感を放置すると、セラミックが突然外れてしまう、外れた部分を誤って飲み込んでしまうなどのリスクがあります。土台となる歯がむし歯や歯周病になる場合もあります。

わずかな違和感でも放置せず、できるだけ早めに歯科医師に相談して確認してもらうことが大切です。

③セラミックのひび割れや欠け

日々の食事で、目に見えないほどの小さなひび(マイクロクラック)が蓄積していきます。使用期間が長くなるほど負担が蓄積し、破損リスクが高まり、ある時ふとしたきっかけで、突然欠けてしまうことがあります。

セラミックで注意したい症状は以下のとおりです。

  • 舌で触るとザラザラする、鋭い角を感じる
  • デンタルフロスが特定の場所で切れたり、毎回引っかかったりする
  • 鏡で見ると、うっすらと線(ひび)や、縁の小さな欠けが見える

小さなひび割れや欠けでも、放置しないようにしましょう。亀裂から細菌が入り込んでむし歯の原因になったり、亀裂が広がって破損したりします。作り直し(再治療)が必要なことも多く、早めの受診が推奨されます。

④二次カリエスの発生

二次カリエスは、セラミックの下のご自身の歯がむし歯になることです。セラミックと歯の境目にできたわずかな隙間からむし歯菌が侵入して発生します。

治療から時間が経ち、接着剤が劣化して隙間ができたり、歯周病で歯茎が下がったりするなど歯の根元が露出すると、むし歯になりやすくなります。二次カリエスはセラミックに隠れて静かに進行するため、ご自身では気づきにくいです。

痛みなどの症状が出た時には、むし歯が神経の近くまで達しているケースも少なくありません。神経を抜く治療や、最悪の場合は抜歯が必要になるため、注意が必要です。

以下は二次カリエスの主な原因です。

  • 接着剤の経年劣化による隙間が発生している
  • セルフケアが不十分で、境目に歯垢が蓄積している
  • 歯周病によって歯茎が下がり、歯の根元が露出している

二次カリエスを防ぐためには、毎日の丁寧なセルフケアが基本です。歯科医院での定期的な検診で、レントゲン撮影など専門的なチェックを受けることもおすすめです。

再治療の流れ

セラミックに欠けや脱離などの問題が見つかった場合は、新しいものへ交換する再治療を行います。再治療の目的は、見た目を整えるだけでなく、土台の歯や噛み合わせの健康を守ることにあります。

再治療の一般的な流れは、以下のようになります。

1.診査診断と古いセラミックの除去

2.土台となる歯の治療

3.精密な型取りと仮歯の装着

4.新しいセラミックの装着と調整

状態によっては、土台の再構築や歯の神経・血管を取り除き内部をきれいにする根管治療が必要になる場合もあります。そのため、症状が軽いうちに早めの受診を心がけましょう。

マイクロスコープを使った治療が重要な理由

マイクロスコープとは、歯科治療専用の高倍率顕微鏡で、肉眼では見えない歯の表面や境目、細かな段差まで確認できる精密機器です。歯科医師がマイクロスコープを用いることで、歯とセラミックの接着面を細部まで確認しながら治療を進めることができます。

セラミックはわずかな隙間でも細菌が侵入すると、そこから二次虫歯が発生するリスクがあります。マイクロスコープによる拡大視野のもとで装着を行えば、その隙間を極力なくし、接着精度を高めることができます。

結果として、見た目の自然さだけでなく、治療の持続性や歯の健康を長く守ることにもつながります。

まとめ

セラミックを長く使い続けるためのコツは、ご自宅での丁寧なセルフケアと、歯科医院での定期的なプロのケアを行うことです。見た目の変化や噛み合わせの違和感、小さな欠けなど、少しでも気になるサインに気づいた時は、放置せず歯科受診を検討してください。

早めに歯科医師に相談することが、再治療の負担を軽くし、何より土台となる大切なご自身の歯を守ることにつながります。この記事を参考に、美しいセラミックの歯を長く大切にしてみてくださいね。


参考文献

  1. Rhaiem M, Chalbi M, Bousaid S, Zouaoui W, Chemli MA. Dental treatment approaches of amelogenesis imperfecta in children and young adults: A systematic review of the literature. Journal of Esthetic and Restorative Dentistry, 2024, 36, 6, 881-891.