【医師監修】セラミックのやり直しは必要？再治療が必要なケースと注意点を解説

高額なセラミック治療を受けたのに、「噛み合わせが悪い」「見た目が気になる」「しみる気がする」と、違和感に悩んでいませんか？

違和感を放置していると、セラミックの下で虫歯が進行したり、土台の歯が割れたりするなど深刻なトラブルへ発展する可能性があります。そのため、早期の受診と診断が重要になります。

この記事では、再治療が必要になるケースや危険なサイン、注意点まで詳しく解説します。ご自身の歯を守るために、正しい知識を身につけていきましょう。

目次

• 1 この記事を監修した医師
• 2 セラミックのやり直しが必要になるケース
• 3 セラミック再治療の流れ
• 4 セラミックのやり直しで知っておきたいこと
• 5 後悔しない歯科医院の選び方
• 6 まとめ
• 7 参考文献

この記事を監修した医師

清水歯科 歯科医師

明石 陽介
Akashi-Yosuke

愛知学院大学歯学部卒業

口腔外科、一般歯科診療に携わり
現在は、愛知県内の歯科医院にて訪問歯科診療を中心に活動。通院が難しい方にも安心して歯科治療を受けていただけるようサポート。
義歯治療や摂食嚥下の支援にも力を入れ、患者様一人ひとりの生活に寄り添った診療を大切にしている。

セラミックのやり直しが必要になるケース

セラミックの違和感に自覚症状がないまま、定期検診で問題が見つかることも少なくありません。セラミックのやり直しが必要な主なケースは以下のとおりです。

強い痛みや腫れがある、あるいはセラミックが完全に外れてしまった場合は、放置せずにできるだけ早く歯科医院へ相談しましょう。

破損・脱離（割れ・欠け・外れ）

セラミックは陶器の一種であるため、歯ぎしりや転倒による強い衝撃などが加わると割れたり欠けたりすることがあります。セラミックの適合精度が低い場合や、接着が不十分な場合に外れやすくなります。

万が一、セラミックが欠けたり外れたりした場合は、取れた破片や被せ物をティッシュなどに包んで保管し、歯科医院へお持ちください。ご自身で瞬間接着剤などを使って戻そうとすると、歯や歯ぐきを傷つけ、再治療が困難になるためおやめください。

見た目の不一致（色・形・サイズが合わない）

見た目でやり直しになるケースを以下の表にまとめました。

見た目の問題は、機能に直接影響しないこともありますが、患者さんの満足度が低い場合はやり直しの対象となります。再治療を判断する際は、見た目の満足度だけでなく、発音への影響や清掃のしやすさなども含めて総合的に検討します。

歯ぐきとの境目の隙間・黒ずみ

セラミックと歯ぐきの境目に隙間ができたり、黒ずんで見えたりすることがあります。これは見た目の問題だけでなく、口の健康を損なうサインの可能性があり、注意が必要です。

隙間や黒ずみが起きる原因を以下の表にまとめています。

こうした隙間を放置すると、細菌の温床となり、虫歯（二次カリエス）や歯周病、口臭のリスクが高くなります。^（※1）セラミックの縁が歯ぐきにとって不適切な位置にあると、慢性的な炎症を引き起こし、やり直しの原因となることもあります。

痛み・噛み合わせの違和感が続く

セラミック治療後に軽い違和感を覚えるのは、噛み合わせや神経が慣れるまでによくある反応です。しかし、痛みや違和感が数日経っても続く、あるいは強くなる場合は注意が必要です。

セラミックの高さがわずかに合っていない、土台の歯や神経に炎症が起きているなど、内部でトラブルが進行している可能性があります。慣れようと放置してしまうと、被せ物の破損や神経の壊死につながることもあります。

少しでも違和感があれば、早めに歯科医院で噛み合わせのチェックやレントゲン診断を受けましょう。

二次カリエス（虫歯の再発）

セラミック自体は人工物なので虫歯にはなりませんが、土台となっている歯は虫歯になる可能性があります。被せ物をした歯が再び虫歯になることを二次カリエスと呼び、セラミックやり直しの主な原因の一つです。

二次カリエスは、セラミックと歯の境目にできたわずかな隙間から起こります。そこから虫歯菌が内部に侵入し、被せ物の下で虫歯が進行します。

セラミック再治療の流れ

セラミックの再治療は、現在の問題点を解決し、より長持ちする状態を目指して計画的に進められます。治療の全体像をあらかじめ知ることで、安心して治療に臨むことができます。

ここでは再装着に関連する以下のポイントを解説します。

カウンセリングから再装着まで

セラミックの再治療を成功させる鍵は、最初のカウンセリングで患者さまと歯科医師が治療のゴールを共有することです。どのような点にお悩みで、最終的にどのような状態を目指すのか、丁寧なすり合わせから治療は始まります。

カウンセリングから治療までの流れは、以下の表を確認してください。

治療時の痛みを減らすポイント

苦痛をできる限り和らげるためのポイントを以下の表にまとめました。

治療への不安が強い場合は、お気軽にスタッフに相談してください。治療後に痛みが出た際は、我慢せず早めに受診しましょう。

再治療に必要な期間と通院回数の目安

セラミック1本をやり直す場合の目安は、口の中に大きな問題がない場合、通院は2～4回程度、期間は2週間〜1か月半ほどです。ただし、セラミックの再治療に必要な期間や回数は、口腔内の状態によって大きく変わります。

セラミックの下で大きな虫歯や歯の根の治療が必要な場合、歯周病の治療が優先される場合などでは、その分全体の期間も長くなります。

ご自身の歯の状態に基づいた具体的な治療計画と、おおよその期間・回数の見通しについては、初回のカウンセリング時に歯科医師に確認しましょう。

セラミックのやり直しで知っておきたいこと

セラミックのやり直しは、見た目や機能を回復させる大切な治療です。ここでは、セラミックの再治療で知っておくべき内容を解説します。どのようなリスクや費用が伴うのかを正しく理解しましょう。

素材ごとの特徴を理解する

一口にセラミックと言っても、その種類にはいくつかあります。セラミックのやり直しを行う前に、代表的なオールセラミックやジルコニアセラミック、やe.maxなどの素材の特徴を理解しておくことが重要です。

上表のように素材によって特徴やメリット・デメリットは異なります。見た目と耐久性を踏まえ、どの素材がいいかを相談してみましょう。

追加切削・歯の寿命への影響

セラミックをやり直す際、多くの場合で歯をさらに削る必要があります。歯は一度削ると元に戻らないため、歯の寿命に影響を与える可能性がある行為です。

再治療で歯を削る主な理由は以下のとおりです。

歯を削る量が増えるほど、歯の神経（歯髄）に刺激が伝わりやすくなり、治療後に痛むリスクが高まります。歯質が薄くなることで、歯そのものが将来的に割れやすくなる可能性もあります。

場合によっては、単純に外れたセラミックを再接着するだけで済むこともあります。再治療の際は、より耐久性の高い材料を選ぶことも、将来のリスクを減らすうえで重要です。

費用の目安

一般的な費用の相場は、1本あたり10～20万円程度です。基本的に健康保険が適用されず、自費診療です。

費用が変動する要因には、以下のようなものがあります。

土台（コア）の除去や根管治療が必要な場合、さらに費用が加算される可能性があります。費用は歯科医院や治療内容によって異なるため、事前に見積もりを確認しましょう。

定期的な検診とクリーニングを受ける

セラミックの再治療として、定期的に健診を受け、クリーニングを実施することが重要です。自分では気づけない小さな変化を早期に発見し、問題が大きくなる前に対処できます。

健診で行う内容を以下の表にまとめました。

健診頻度の目安は口の状態にもよりますが、一般的には3〜6か月に一度の受診がおすすめです。歯科医師と相談し、あなたに合った間隔を決めましょう。

噛み合わせや歯ぎしりを早期に調整する

セラミックは、「歯ぎしり」や「食いしばり」のような強い衝撃で破損することがあります。治療後に、少しでも噛み合わせの違和感があれば、放置せずすぐに調整を行うことが大切です。

睡眠中の歯ぎしりには、ナイトガード（マウスピース）の装着が推奨されます。無意識に歯を接触させる癖にも注意し、顎の疲れなどを感じる方は早めに相談しましょう。

硬い食べ物や歯への過度な力を避ける

過度な力が加わると、欠けたり割れたりする可能性があります。セラミックは天然歯よりも硬い反面、粘り強さが少ないため、一点に強い力が集中すると割れてしまうことがあります。

素材によっては力に強いものもありますが、どんな材料であっても、過度な力は避けましょう。

セラミック周囲を清潔に保つブラッシングを徹底する

セラミックを支えている土台の歯や、周りの歯ぐきが病気になってしまうと、やり直しの原因となります。

セラミックを長持ちさせる清掃のポイントは以下の3つです。

毎日の丁寧なセルフケアで、セラミックのやり直しにつながる虫歯や歯周病を徹底的に予防しましょう。

口腔内の変化を感じたら早めに受診する

口の中の小さな変化は、歯からの重要なサインです。痛みや違和感が続く場合や、見た目の変化がある場合は、歯に問題が起きている可能性があります。

セラミックのやり直しを避ける、あるいは治療を最小限に抑えるためにも、症状に気づいたら、なるべく早く歯科医院を受診してください。

治療しない場合のリスク（破折・色調不良・むし歯進行）

セラミックに生じた小さなひび割れや、歯ぐきとのわずかな隙間などを放置すると、口全体の健康を脅かすトラブルに発展する可能性があります。

治療せずに放置した場合の主なリスクは以下のとおりです。

問題を放置しても、自然に良くなることはありません。セラミックのやり直しを避ける、あるいはより簡単な治療で済ませるためにも、早期の対応が何よりも重要です。

後悔しない歯科医院の選び方

セラミックのやり直しは、費用や時間がかかるだけでなく、精神的な負担も大きいものです。だからこそ、信頼できる歯科医院を慎重に選ぶことが何よりも重要です。

再治療を安心して任せられる歯科医院を選ぶためには、次の3つのポイントを押さえておくことが大切です。

①再治療症例が豊富な医院を選ぶ

再治療の経験が豊富な医院を選ぶことは、治療の成功に直結します。以下の点を確認してみましょう。

カウンセリングの際に、実際の症例写真を見せてもらいながら、具体的な治療方針について説明を求め、ご自身の歯を安心して任せられるかじっくり見極めることが重要です。

②マイクロスコープやCTを導入しているか

精密なセラミック治療を行ううえで、先進的な医療機器の活用は不可欠です。特に、肉眼では見えない部分まで詳細に観察・診断できるマイクロスコープや歯科用CTは、治療の精度を大きく左右し、結果的にご自身の歯の寿命を守ることにもつながります。

医療機器の詳細について以下の表にまとめています。

これらの設備があるかどうかだけでなく、どのように活用して治療の精度を高めているのかを、カウンセリング時に質問してみることが大切です。

③説明が丁寧で相談しやすい雰囲気があるか

満足のいく再治療を受けるためには、技術や設備だけでなく、歯科医師との信頼関係が何よりも大切です。ご自身の希望や不安をしっかりと伝え、納得したうえで治療に進めるよう、コミュニケーションを重視してくれる医院を選びましょう。

初回のカウンセリングは、ご自身が安心して治療を任せられる医師かどうかを見極めるための大切な機会です。

まとめ

セラミックのトラブルで大切なのは、破損や痛み、見た目の違和感といった歯からのサインを見逃さないことです。放置すればトラブルが進行し、再治療の負担も大きくなってしまいます。

早めに受診し、原因を正しく見極めることで、歯の寿命を守りながら美しい状態を取り戻すことは十分可能です。不安を一人で抱え込まず、経験豊富で信頼できる歯科医院に相談してみましょう。大切な歯を長く守り、自然な笑顔で過ごせる日々へとつながります。

参考文献

Khalid A Alwazzan, Adeeb M Almotairi, Abdullah K Alwazzan, Faisal A Albesher, Feras E Tawhari, Nawaf A Alhumizi.Effect of fitting procedures on the marginal gap of all-ceramic crowns: an in vitro study.Saudi Dent J,2025,37,4-6,p.9.