歯が欠けた!1週間放置しても大丈夫?期間別のリスクと対処法

「歯が欠けたけれど、痛くないから」と1週間放置してしまった、あるいは、「このまま放置していては手遅れではないか」と不安になっていませんか?

結論として、歯が欠けてから1週間程度であれば、長期間放置した場合と比べて治療の規模を小さく抑えられるケースが多いと考えられています。

ただし、欠けた歯の内部では目に見えないリスクが進行しているおそれがあります。

放置期間が長いほど症状の悪化や治療の難易度が上がることが予測され、痛みがなくても「できる限り早急に歯科医院を受診する」ことを推奨いたします。

本記事では、1週間からさらに放置を続けた場合のリスク、現状悪化を防ぐための応急処置、そして歯の欠けの精密な治療に貢献する「マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)」についても詳しく解説します。


痛みがなくても要注意!1週間放置した歯の進行度別・治療法と費用の目安

歯が欠けた大きさや症状によって、治療方法や治療費用、通院回数・期間が異なります。
ここでは、症状別に代表的な治療法と費用の目安を記載しますので、歯科医院を受診する際の参考にしてください。

【軽度】歯の表面の小さな欠け:コンポジットレジン

歯の欠けがごくわずかで、表面のエナメル質の損失にとどまっている場合は、「コンポジットレジン」と呼ばれる歯科用プラスチックを用いた修復が一般的な選択肢となります。

コンポジットレジンの大きなメリットは、「通常1日で治療が完了する」「歯の表面を整えるだけで健康な歯質を無駄に削ることがない」の2点です。

とくに、前歯などが欠けた場合、見た目への影響も大きいため、コンポジットレジンで早めに修復できることは大きなメリットと言えます。

【コンポジットレジンによる治療概要】

項目詳細
治療内容感染部分や鋭利な部分を最小限削り、欠損部に歯科用プラスチック(コンポジットレジン)を充填して特殊な光で硬化させる処置。
費用の目安保険適用(3割負担):約1,000円〜3,000円程度
治療期間通常1日
※お口の状態や噛み合わせの微調整により、再受診が必要となる場合があります。
治療回数通常1回
※お口の状態や噛み合わせの微調整により、2回以上の受診が必要となる場合があります。
リスク・副作用経年劣化による変色や着色が生じやすい点や、強い衝撃・噛み合わせの負担によって素材が欠けたり脱落したりするリスクがあります。

【中度】内部まで進行している欠け:補綴治療(インレー・クラウン)

歯の欠けが大きく、表面のエナメル質より下の象牙質(ぞうげしつ)まで露出している場合や、内部で虫歯が進行してしまっているケースでは、型取りをして作る「インレー(詰め物)」や「クラウン(被せ物)」といった補綴治療(ほてつちりょう)が選択されることが一般的です。

コンポジットレジンによる修復だけでは、歯が噛む力に耐える強度が保てないため、より強固な素材で歯全体を保護する必要があるとされているためです。

なお、自費診療(自由診療)を選択することで、インレーやクラウンに使う素材を、保険診療と比較したときに「強度の高いもの」や「天然歯の色味に近いもの」への変更が可能です。

※自費診療は公的健康保険が適用されないため治療費用は全額自己負担となり、保険診療よりも治療費が高額になる点に注意してください。

【補綴治療(インレー・クラウン)の概要】

項目詳細
治療内容虫歯になっている部分や脆くなった部分の歯質を削って形を整え、型取りをして作製した詰め物(インレー)や被せ物(クラウン)を専用の接着剤で装着する処置です。
費用の目安【保険適用(3割負担・銀歯やCAD/CAM冠など)】約3,000円〜1万円

【自由診療(全額自己負担・セラミック素材など)】税込約5万〜15万円※選択する素材や歯科医院によって料金設定が異なります。
治療期間約1週間〜3週間
治療回数約2回〜3回
リスク・副作用保険適用の金属素材は将来的な金属アレルギーのリスクがあり、自由診療のセラミックは過度な衝撃によって割れたり欠けたりするリスクが存在します。
また、コンポジットによる修復に比べて健康な歯を削る量が多くなります。

【重度】神経まで達している大きな欠け:根管治療

歯の欠けが非常に深く、炎症や細菌感染が見られる場合、根管治療(こんかんちりょう)が行われるケースがあります。

根管治療とは、歯の血管や神経組織である「歯髄(しずい)」が通る細い管である「根管(こんかん)」の内部を消毒し、必要に応じて歯髄を抜く治療のことです。

一般的に、根管治療は、「歯の根の治療」、「歯の神経を抜く治療」とも説明されます。
※できるかぎり歯の神経を残す治療は「歯髄温存療法:しずいおんぞうりょうほう」と言われます。

日本顕微鏡歯科学会等の学術機関によれば、歯の内部にある根管は、複雑な構造をしている上、1ミリにも満たない細い部分があるため、マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)での精密な治療が推奨されます。

マイクロスコープは肉眼と比較して視野をおよそ20倍拡大できるため、0.1ミリ単位(ミクロン単位)での処置を行うことに貢献します。

これが患部の取り残しをできる限り防ぎ、再発防止にも役立つとされています。

【マイクロスコープを用いた根管治療の概要】

項目詳細
治療内容マイクロスコープ等を用いて欠けた歯の内部にある感染部分を除去します。細菌感染等で歯髄の保存が難しい場合は、根管内の神経を取り除き(抜髄:ばつずい)、清掃・消毒を行ってから薬剤を詰める根管治療を行います。

※できる限り歯髄を温存する処置は「歯髄温存治療(しずいおんぞんちりょう)」と呼ばれることが一般的です。
費用の目安【保険適用(3割負担)】約2,000円~10,000円
※一般的に前歯は約3,000〜5,000円、小臼歯は約4,000〜7,000円、奥歯(大臼歯)は約5,000〜10,000円が目安となります。
※別途、治療後の土台や被せ物の費用が必要です。


【自由診療(全額自己負担)】税込約5万〜15万円
※治療する歯や歯科医院の料金設定により、費用が変わります。※別途、治療後の土台や被せ物の費用が必要です。
治療期間数週間〜数ヶ月程度
※放置期間が長く、症状が悪化しているほど、治療期間も長引く傾向にあります。
治療回数通常2回〜6回
※放置期間が長く、症状が悪化しているほど、治療回数も増える傾向にあります。
リスク・副作用症状が進行している場合は、歯の神経の保存が難しく、最終的に神経を取り除く処置へ移行するリスクがあります。
また、神経を失った歯は水分や栄養が行き届かなくなって脆くなり、将来的な破折(歯が割れる)リスクが高まります

【POINT】

マイクロスコープは原則として自由診療のみで使用されますが、歯科医院の方針や歯科医師の判断、特定の条件を満たす複雑な根管治療においては、保険診療の範囲内で使用されることもあります。

事前にカウンセリングで治療内容や費用の確認を行いましょう。

歯科医院を受診するまでの注意事項3点

連休中など歯科医院の予約が数日先になってしまう場合、症状の悪化を防ぎトラブルを抑えるための手段として、とくに注意したいポイントを3つ紹介します。

【POINT】

これらの対策は、あくまで歯科医院を受診するまでの「一時的な悪化防止策」です。

 

痛みが治まったり、特に自覚症状がなかったりする場合でも、歯の内部では目に見えないダメージが進行しているリスクがあります。
大切な天然歯をなるべく長持ちさせるためには、「歯が欠けたけど気にするほどではない」といったように自己判断せず、できる限り早めに歯科医院で詳しい診査・診断を受けることが大切です。

①欠けた部分を指や舌で気にして触らない

歯が欠けた部分は「いつもと噛み合わせが違う気がする」など、つい気になってしまいますが、指や舌で触ることは控えてください。

とくに歯の欠損が中程度以上の場合、指に付着している細菌が露出した象牙質(ぞうげしつ)から入り込み、細菌感染して炎症の原因となるケースがあります。

また、歯の欠けた断面は非常に鋭利になっていることが多く、無意識に舌で触れることで口内の粘膜を傷つけ、口内炎などの二次的な痛みを引き起こすリスクも指摘されています。

②欠けた側の歯で硬いものを噛まない

食事をする際は、欠けた歯の反対側で噛むように意識しましょう。

また、歯が欠けている状態では、咀嚼(そしゃく)による負荷をなるべく軽減させるために、硬い食べ物は避けることが一般的です。
歯が欠けているのに硬いものや咀嚼回数が多くなるものを食べると、噛む際に歯に加わる衝撃が歯の根元に向かって広がると言われています。

これにより、歯にひびが入ったり、破折(はせつ:歯が割れること)を引き起こしたりする原因になり得ます。

③歯ぎしりや食いしばりの対策をする

無意識に行う「歯ぎしり」や「食いしばり」は、歯に強い負荷をかけるため、欠けた歯の症状を悪化させたり、さらなるヒビや欠けを引き起こす原因となり得ます。

日中であれば、上下の歯が触れ合わないように意識的に離すよう心がけましょう。

また、夜間、寝ているときの歯ぎしりが疑われる場合は、歯科医院を受診した際にその旨を伝え、歯を守るために「就寝中専用のマウスピース(ナイトガード)」を作製する、といった対策を講じてもよいでしょう。

欠けた歯を1週間以上放置するとどうなる?期間別のリスク進行

歯が欠けたときに「痛くないから」と受診を先延ばしにすることは、ご自身の歯を守るために避けることが大切と考えられています。

これまでお伝えしてきたように、歯が欠けた直後は痛みがなくても、時間が経つにつれて目に見えない部分で状況が進行していくリスクがあるからです。

放置する期間が長くなるほど、結果として治療の難易度が上がったり、費用がかさんだりする傾向にあります。

ご自身の歯やお口の健康を長く維持するためにも、歯の欠けに気づいた段階で、できる限り早めに歯科医院で詳しい診査・診断を受けることが大切と言えます。

欠けた歯を放置した期間と、症状のイラスト

【2週間~1ヶ月】虫歯の進行と知覚過敏の悪化

欠けた歯の放置期間が数週間に及ぶと、虫歯が進行しやすくなり、知覚過敏の症状が強く出やすくなる傾向があります。


歯の表面のエナメル質の下にある「象牙質」は酸に弱く柔らかいため、一度虫歯菌が侵入すると、内部へ進行しやすい性質があるためです。
甘いものや冷たいものを食べたときに、ピリッとした鋭い痛みを感じるようになるおそれがあります。

【数ヶ月~半年】神経の炎症と痛みのリスク

欠けた歯を数ヶ月放置すると、虫歯菌が歯の神経(歯髄)にまで到達し、強い痛みを伴うおそれがあります。

これは、神経が細菌感染によって炎症(歯髄炎:しずいえん)を起こすためです。
「何もしていなくてもズキズキと痛む」「夜眠れなくなるほどの激しい痛み」といった症状がある場合、神経を取り除く根管治療が必要となる傾向があります。

【1年以上】歯の根元からの破折と抜歯のリスク

欠けた歯を長期的に放置し続けると、最終的に歯を残すことが困難になり、抜歯に至るケースがあります。

歯が欠けた状態では、噛み合わせの負担がかかり続けることで、歯に深いひびが入り、根元から割れてしまう(歯根破折:しこんはせつ)ことがあるためです。

その場合、天然歯を抜歯して義歯(人工歯)を装着する治療法が検討されることが多いとされています。

歯が欠けて放置したときのよくある質問と回答(Q&A)

ここでは、歯が欠けて放置してしまっている方のカウンセリングの際によくある代表的な質問と回答を記載します。
実際に歯科医院に行く前の検討・判断材料として役立ててください。

Q1. すでに1ヶ月放置してしまったのですが、もう手遅れですか?

A1. 自己判断で手遅れと決めつけず、まずは早急に受診して適切な診査を受けることが大切と言われています。

歯が欠けてから1ヶ月程度が経過していても、特に痛みなどの自覚症状が出ていなければ、お口の中の状況によっては歯の神経を残せる選択肢が残されているケースもあります。

長期間の放置は症状悪化のリスクに繋がることがあるため、できる限り早めに歯科医院を受診することが一般的です。

Q2. 歯医者に行くまでの間、歯が欠けた部分も歯磨きしていいですか?

A2. はい、お口の中を清潔に保つために、日々の歯磨きは丁寧に行ってください。

歯が欠けた部分は汚れ(プラーク)が溜まりやすく、虫歯菌などの細菌が繁殖しやすい状態になっているからです。
歯を磨く際は、柔らかめの歯ブラシを使い、欠けた断面や歯茎を強くこすらずに、優しく磨いて清潔を保つよう心がけることが大切です。

Q3. 欠けた歯の破片は捨ててしまったのですが、治療できますか?

A3. 歯の破片が手元に残っていなくても、治療は可能であるケースが一般的です。

歯科用プラスチック(コンポジットレジン)や、お口の状態やご希望に合わせた各種の詰め物・被せ物を使用して、元の歯の形に合わせて修復する処置が広く行われています。

なお、万が一破片が綺麗に残っている場合は、乾燥を防ぐために牛乳や生理食塩水に浸して保管しておくと、お口の状況によっては接着を検討できるケースもあります。

まとめ:歯が欠けて1週間放置したなら早めの受診を

この記事では、歯が欠けてから放置した期間が1週間程度であれば、長期間放置した場合と比較して軽度な治療で済むことが一般的とお伝えしました。

しかし、自己判断で「少し欠けただけ」「歯は痛くないから」といってそのままにするのではなく、できる限り早めに歯科医院を受診して適切な診査を受けることが大切です。

歯科に関する多くの学術機関等において、欠けた歯を放置する期間が長引くほど治療は複雑になり、将来的に歯を残すことが難しくなる可能性が生じると示唆されているからです。

ご自身の歯を長く健康に保つために、まずは歯科医師へ相談しましょう。

また、長期間放置してしまったからといって、歯の保存をただちに諦める必要はありません。

「できるかぎりご自身の歯を削りたくない・歯の神経を抜きたくない」とお考えの場合は、肉眼の最大20倍の拡大視野を可能とする「マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)」を用いた精密治療を行っている歯科医院への相談も検討してみてください。


出典・参考資料

  • [参考文献1]
    Eur J Dent. 2021 Jun 25;15(4):694–701. doi: 10.1055/s-0041-1728842
    『Characteristics, Treatment, and Prognosis of Cracked Teeth: A Comparison with Data from 10 Years Ago』
    (歯のひび割れの特徴、治療、および予後:10年前のデータとの比較)
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8630975/
  • [参考文献2]
    Aust Dent J. 2009 Dec;54(4):306-15. doi: 10.1111/j.1834-7819.2009.01155.x.
    『Predictable management of cracked teeth with reversible pulpitis』
    (可逆性歯髄炎を伴う歯のひび割れに対する予測可能な治療法)
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20415928/

  • [参考文献3]
    兵庫県保険医協会 2010.08.27 講演
    『歯根破折の処置とその予防 ―歯科臨床の奥深さと面白さ― [歯科定例研究会より]』
    https://www.hhk.jp/gakujyutsu-kenkyu/shika/100827-170021.php

※本記事は一般的な情報の提供を目的としており、特定の治療法を推奨するものではありません。実際の治療にあたっては、必ず歯科医師にご相談ください。