【医師監修】ラミネートべニアとは?費用・寿命・後悔しないための注意点を解説

ホワイトニングでは白くならない、前歯のわずかなすき間が気になる。そんな悩みのせいで笑えないと感じていませんか。ラミネートベニアは、歯の表面を0.3mmほど削り、ネイルチップのような薄いセラミックを貼る審美歯科治療です。ただし、一度治療すると元に戻せないため費用や寿命が気になる点だと思います。

この記事では、ラミネートベニアの費用相場や寿命、失敗しないための注意点まで解説します。ラミネートベニアの知識を身につけ歯のコンプレックスを解消する一歩を踏み出しましょう。

この記事を監修した医師

谷川 淳一
Tanigawa Junichi

歯科医師。日本口腔インプラント学会専修医。小児歯科治療や小児矯正、インプラント治療を得意とし、他の歯科医師への指導も行う。
患者様一人ひとりと真摯に向き合って治療方針を決めていくことを信条としている。


ラミネートベニアとは

ラミネートベニアは、口元の見た目を改善するための審美歯科治療です。歯の表面にあるエナメル質を少しだけ削り、その上にセラミックなどで作られた、薄いシェル(板)を貼り付けます。

歯を大きく削ったり神経を抜いたりせずに、歯の色・形・大きさ、そして軽度の歯並びを短期間で美しく整えることが可能です。

これからラミネートベニアを5つの要点にわけて説明していきます。

①適応できる歯の悩み(すきっ歯・変色・形の改善など)

②メリットとデメリットを解説

③セラミッククラウンやホワイトニングとの違い

④治療に使われる素材の種類と特徴

⑤治療の流れと通院回数

①適応できる歯の悩み(すきっ歯・変色・形の改善など)

ラミネートベニアは、ホワイトニングだけでは白くならない歯の色や、矯正治療を行うほどではない軽度の歯並びの問題など、ピンポイントな改善を得意としています。なかでも、以下の表にあるような悩みを持つ方に適しています。

問題点詳細
歯の変色・ホワイトニングで効果が出にくい
・抗生剤(テトラサイクリン系)の影響による変色
・神経を失い黒ずんだ歯(失活歯)
・加齢による黄ばみ
歯の形や大きさ・生まれつき歯が小さい(矮小歯:わいしょうし)
・歯がすり減りギザギザになったり事故で欠けたりしている
・歯の表面にでこぼこや溝がある
軽度の歯並びの悪さ・前歯同士の間にすきまがある(すきっ歯)
・少し歯がねじれて内側に傾いている
・前歯の歯並びが少しガタガタしている

歯へのダメージをより抑えながら、歯の色と形を同時に改善できる点がラミネートベニアの特徴です。

②メリットとデメリットを解説

ラミネートベニアは、自然で透明感のある仕上がりが得られ、短期間で歯の色や形を改善できるのがメリットです。また通常、セラミック治療では被せ物を入れるために天然歯を削る必要がありますが、それと比較してラミネートベニアは削る量が少ない点もメリットにあげられます。歯の状態にもよりますができるだけ薄く削る分、歯の神経を残して治療できるため、浸潤麻酔が不要なケースも多く患者さんの負担も少なくなります。

一方で、健康な歯を削る必要があり、元に戻せないというデメリットがあります。その他、以下のようなデメリットもあります。

  • 強い衝撃や歯ぎしりによって割れたり剥がれる
  • 保険が適用されないため費用は高い
  • 加齢によって歯ぐきが下がると、境目が目立つ

治療を検討する際は、見た目だけでなく、長期的なメンテナンスも含めて考えることが大切です。

③セラミッククラウンやホワイトニングとの違い

歯の見た目を改善する治療には、セラミッククラウンやホワイトニングもあります。それぞれの治療法は目的などが異なるため、自身の希望や口の状態に最適なものを選ぶことが大切です。

これらの違いを表にまとめました。

治療法ラミネートベニアセラミッククラウンホワイトニング
目的歯の色、形、すき間など見た目を総合的に改善大きな虫歯や欠損、歯並びを改善歯を削らずに歯自体の色を白くする
歯を削る量表面を0.3〜0.8mm程度全方面にわたり1〜1.5mm程度削らない
適応範囲軽度の歯並び、変色、形の修正大きな虫歯、歯が大きく欠けた場合、歯並びの大幅な修正歯の色のみ改善
治療期間2〜3回3〜4回1〜数回
耐久性約10〜20年約10〜15年数か月〜1年程度
費用高額高額安価

歯の色だけを自然に白くしたい場合はホワイトニング、色だけでなく形やすき間も少しだけ整えたい場合はラミネートベニアが適しています。歯が大きく欠けている、または歯並びをしっかり治したい場合はセラミッククラウンが選択肢となります。

④治療に使われる素材の種類と特徴

ラミネートベニアの主な素材は、セラミック(陶材)です。セラミックにもいくつか種類があり、審美性や強度に違いがあるので以下の表にまとめています。

素材特徴注意点
ガラスセラミック(ニケイ酸リチウムなど)・天然歯にとても近い色調を再現でき審美性に優れる
・強度も十分で前歯に良く使用される
強い力がかかると歯ごと破壊される場合がある
長石系ポーセレン・昔から使われているセラミック材料
・透明度が高く色合わせしやすい
・ガラスセラミックと比較すると強度がやや落ちる
・強い力がかかると部分的にベニアが欠けることがある
ハイブリッドセラミック(レジンコンポジット混合)・セラミックとレジン(歯科用プラスチック)を混合した素材
・セラミック100%より柔らかい
・噛み合う相手の歯を傷つけにくい
長期間使用でセラミックよりも変色しやすい傾向がある

どの素材を選ぶかは、治療する歯の位置、噛み合わせの強さ、患者さんが求める審美性、予算などを総合的に判断して、歯科医師と相談しながら決める流れになります。

⑤治療の流れと通院回数の目安

ラミネートベニアの治療は、通常2〜3回の通院で完了します。

1回目はカウンセリングと診断を行い、レントゲンや写真で口内の状態を確認して治療方針を決めます。

2回目は歯の表面をわずかに削り、型取りと色合わせを行います。完成までの期間は、削った部分を保護するために仮歯を装着します。

3回目は完成したベニアを専用の接着剤で貼り付け、噛み合わせを調整して治療を終えます。短期間で自然な見た目を得られるのが特徴です。

ラミネートベニアの費用

ラミネートベニアは、審美治療が目的です。そのため、病気の治療を対象とする健康保険は適用されず、自由診療となります。ここでは、費用に関連する情報を4つ解説します。

①費用相場と内訳

②クリニックごとに費用が異なる理由

③保険適用の可否

④医療費控除の対象になる?

①費用相場と内訳

ラミネートベニアの費用相場は、歯1本あたり10〜20万円程度が一般的です。あくまで目安であり、治療する本数や使用する素材によって変動します。

費用の内訳は以下のとおりです。

  • カウンセリング・診査診断料:治療の状態やレントゲン撮影などの費用
  • ラミネートベニア本体の費用:審美性や強度に優れる素材ほど高価になる
  • 技工料:歯科技工士がラミネートベニアを作製するための費用
  • 装着・調整技術量:歯科医師がラミネートベニアの噛み合わせなどを調整する技術料
  • 仮歯作製料:ラミネートベニアが完成するまでに仮歯が必要
  • 保証・アフターケア費用:治療後の定期検診や破損した場合の保証費用

②クリニックごとに費用が異なる理由

ラミネートベニアの費用がクリニックごとに異なるのには、さまざまな理由があります。以下の表にまとめたので参考にしてください。

理由内容
使用する素材の品質・ラミネートベニアに使用されるセラミックにはさまざまな種類がある
・審美性や強度に優れた素材ほど高価になる
歯科技工士の技術力・ラミネートベニアは歯科技工士の熟練された経験に左右される
・歯科技工士の技術力が高いほど料金が高くなる
歯科医師の技術・経験と設備・歯を削る量や歯などにラミネートベニアを適合させる技術は歯科医師の経験が重要
・マイクロスコープなどの機器の設備投資も費用に反映される
接着技術の専門性ラミネートベニアの装着には接着剤の選択や技術が重要

③保険適用の可否

ラミネートベニア治療は原則、健康保険の適用外です。治療費は全額自己負担の自由診療(自費診療)となります。

健康保険制度は、虫歯などの病気の治療を目的としています。一方、ラミネートベニアは歯の色を白くしたり、歯の形を整えたりと、見た目を整えることが目的となります。そのため、病気の治療とはならず、保険は適用されません。

まれに事故で歯が欠けた場合など適用となるケースがありますが、基本的には審美治療として扱われるとご理解ください。

④医療費控除の対象になる?

医療費控除とは、年間の医療費が一定額を超えた場合に税金の一部が戻ってくる制度です。ラミネートベニアが医療費控除の対象になるかは、以下のように治療目的によって判断が分かれます。

  • 対象外となるケース:歯を白くしたいなど見た目をきれいにする美容目的
  • 対象となる可能性のあるケース:噛み合わせの改善など、歯科医師が咀嚼機能の回復に必要な治療と判断した場合

最終的には、住んでいる地域の税務署が判断します。機能回復目的での適用を検討する場合は、治療前に歯科医師に相談しておくと良いでしょう。

ラミネートベニアの寿命

ラミネートベニアの寿命は、人により異なります。患者さんの口の状態や生活習慣、治療の質によって変わるからです。ここでは、寿命に影響する3つの事柄について説明します。

①ラミネートベニアの平均寿命は?

②ラミネートベニアを長持ちさせるためのポイント

③剥がれた・寿命がきた場合の再治療と注意点

①ラミネートベニアの平均寿命は?

ラミネートベニアの平均的な寿命は、一般的に10〜20年ほどといわれています。あくまで目安であり、寿命を左右する要因は、大きく患者さん側と治療側の要因があります。

【患者さん側の要因】

  • 噛み合わせの強さ
  • 歯ぎしりや食いしばりの癖
  • 毎日のセルフケアの質
  • 硬いものを前歯で噛むなどの習慣

【治療側の要因】

  • 素材の種類と特性
  • ラミネートベニアの制作方法
  • 歯への接着技術の精度

治療側の要因は、より長期的な成功に関わります。例えば、長石系ポーセレンという素材は部分的に小さく欠けることが多いのに対し、より強度の高いガラスセラミックは、強い力がかかると歯ごと壊れてしまう傾向があると考えられています。

②ラミネートベニアを長持ちさせるためのポイント

ラミネートベニアを良い状態で保つには、日々のケアと定期的な検診が欠かせません。

自身でできる日々のケアは以下のとおりです。

  • 毎日の丁寧な歯磨き:歯とラミネートベニアの境目は汚れが溜まりやすいのでより丁寧にみがく必要がある
  • デンタルフロスや歯間ブラシの活用:歯と歯の間の汚れを取り除く必要がある
  • 硬いものを前歯で噛まない:硬いせんべいやナッツを前歯で噛むことを避ける
  • 歯ぎしり・食いしばり対策:必要であればナイトガード(マウスピース)使用を考慮する

歯科医院での定期検診は3か月〜半年に一度は受けましょう。ラミネートベニアの状態、噛み合わせの変化、虫歯や歯周病の有無をチェックします。自分では落としきれない汚れや歯石も除去して口内を清潔に保ち、トラブルを未然に防ぐことができます。

③剥がれた・寿命がきた場合の再治療と注意点

万が一、ラミネートベニアが剥がれたり、割れたりしても適切に対処しましょう。

もし剥がれたり、割れたりしたら剥がれたチップを小さなケースに入れて保管してください。ティッシュに包むと誤って捨てる恐れがあるため避けましょう。その後、歯科医院へ連絡して再装着か作り直しが必要かを判断してもらってください。

歯とラミネートベニアの両方に問題がなければ、歯の表面をきれいにし、そのまま付け直せる場合があります。ただしベニアが割れた、土台の歯が虫歯になった、歯茎が下がり境目が目立つ、などの場合は新しく作り直す必要がでてきます。

作り直すケースでは、土台となる歯の状態を改めて検査して、古い接着剤を取り除き、必要であれば虫歯治療などを行ったうえで新しいベニアを装着します。

知っておきたいラミネートベニアの注意点

ラミネートベニアには、以下に説明する事前に把握したほうが良い5つの注意点があります。

①歯を削りすぎるリスク

②リスクを最小限に抑える工夫

③白すぎる・剥がれる・割れるなどの失敗例

④治療後の痛みや知覚過敏の原因と対処法

⑤ラミネートベニアが向かないケースとは?

①歯を削りすぎるリスク

ラミネートベニア治療では、歯の表面にあるエナメル質を約0.3〜0.8mm削ります。削る量が、治療の長期的な成功を左右するポイントになります。

出っ歯を引っ込めたり、歯の向きを大きく変えたりするケースでは、削る量が通常より多くなることがあります。エナメル質を多く削り、内側にある象牙質という層が露出すると、以下のようなリスクが高まります。

  • 歯の強度が低下する:象牙質はエナメル質よりも柔らかい
  • 知覚過敏が起こりやすくなる:象牙質は神経につながる管(象牙細管)があり刺激が伝わりやすい
  • 接着力が低下し剥がれやすくなる:ラミネートベニアの接着力はエナメル質へ接着させることで力が発揮される

歯を削りすぎることは、歯がしみるだけでなく、歯の寿命自体を縮め再治療を難しくする可能性があります。

②リスクを最小限に抑える工夫

歯を削るリスクを可能な限り抑えることはできます。歯科医院では以下の表に示す工夫をしています。

工夫点内容
マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)の使用・肉眼の20倍以上に拡大できるマイクロスコープを使用することで削る量をコントロールできる
・歯を削る作業にはミクロン単位の精度が求められる
事前の精密なシミュレーション・治療前に歯の模型やデジタルデータを用いて治療後の歯の形をシミュレーションできる・モックアップという仮の歯を実際に試して仕上がりを確認する
即時象牙質シーリング(IDS)・象牙質が露出したとしても表面をすぐ専用の接着剤でコーティングする技術がある
・外部からの刺激をブロックして知覚過敏を防ぎ接着力を高める効果が期待できる

③白すぎる・剥がれる・割れるなどの失敗例

ラミネートベニアで起こりうる失敗には、見た目と機能的な問題があります。失敗例と原因・対策を以下の表にまとめたので、お役立てください。

失敗例原因対策
白すぎる・カウンセリングでの色合わせが不十分
・周囲の歯と色調や透明感が合っていない
・事前のシミュレーションで完成形を共有
・複数の照明のもとで色を確認
・経験豊富な歯科技工士との連携
剥がれる・接着作業中の唾液や水分の混入
・象牙質への接着面積が広い
・不適切な接着剤の選択
・ラバーダムで治療部位を隔離
・歯の状態に合った接着システムの選択
割れる・強い歯ぎしりや食いしばりの癖
・噛み合わせの調整が不十分
・患者さんの癖に合わない素材の選択
・ナイトガード(マウスピース)の使用
・ミクロン単位での精密な噛み合わせ調整
・素材ごとの破損パターンを考慮して選択

④治療後の痛みや知覚過敏の原因と対処法

ラミネートベニアは歯を削る量が少ないため、強い痛みが続くことはまれですが、一時的に知覚過敏が出ることがあります。知覚過敏は、歯の表面のエナメル質を削ったことで起こる正常な反応です。

多くの場合、知覚過敏は数日、長くても2〜3週間で自然に落ち着きます。症状が気になる場合は、以下の方法を試してみてください。

  • 冷たい、あるいは熱い飲食物を避ける
  • 知覚過敏用の歯磨き粉を使用する
  • 毛先の柔らかい歯ブラシで優しく磨く

もし痛みが長引いたり、徐々に強くなったりする場合は、治療を受けた歯科医院へ相談してください。

⑤ラミネートベニアが向かないケースとは?

ラミネートベニアは、すべての方に適しているわけではありません。ラミネートベニアが不向きなケースは以下のとおりで、他の治療法が望ましい場合があります。

  • 歯ぎしりや食いしばりの癖がとても強い:睡眠中は体重の数倍もの力が歯にかかることがある
  • 噛み合わせに問題がある:前の先端同士が当たる切端咬合(せったんこうごう)など特定の噛み合わせではラミネートベニアに余計な力がかかる
  • 重度の歯並びの乱れがある:歯が大きく重なり合っている場合などは見た目を整えるために歯を削る量がより多くなり神経を傷つけるリスクが高まる
  • 大きな虫歯や詰め物がある:ラミネートベニアを接着させるためには健康な歯でないと適応できない

自分がラミネートベニアに適しているかは、歯科医師による診断が必要です。

後悔しないラミネートベニアの歯科医院選び

ラミネートベニアは、一度治療すると元の歯の状態には戻せない、不可逆的な治療です。

これから伝える4つの視点を参考に、信頼できる歯科医院を見つけてください。

①技術力・経験のある審美歯科を選ぶポイント

②マイクロスコープ・拡大鏡を導入しているか

③技工士との連携・症例写真のチェック方法

④カウンセリングやシミュレーションの丁寧さ

①技術力・経験のある審美歯科を選ぶポイント

ラミネートベニアの成功には、歯科医師の技術と経験が欠かせません。

審美歯科を選ぶ際は、症例数や自分と似た事例の有無、学会所属や資格の有無、メリット・デメリットを含めた情報発信の姿勢、美的センスや考え方への共感度などを確認しましょう。これらを総合的に見て、信頼できる歯科医師を選ぶことが大切です。

②マイクロスコープ・拡大鏡を導入しているか

ラミネートベニアは繊細な処置を行うために、マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)や拡大鏡(ルーペ)の使用は、必須の設備となりつつあります。肉眼では見えないレベルまで視野を拡大できるため、治療の質が向上します。

マイクロスコープや拡大鏡を使用するメリットは以下のとおりです。

  • 歯を削る量を最小限にできる
  • 適合精度が向上する
  • 審美性と接着力が高まる

歯を削る量を少なくできるほど、健康な歯質、接着の要となるエナメル質を可能な限り温存できます。よって、歯への負担を抑え寿命を守ることに直結します。

歯とベニアの境目を、ミクロン単位で精密に合わせることで、接着剤の劣化を防ぎ二次的な虫歯のリスクをより低減できます。

歯の表面を滑らかに仕上げたり、接着剤をきれいに除去したりすることも可能で、より自然で美しい仕上がりと剥がれにくい強固な接着を実現します。

上記の精密機器を導入していることは、歯科医院が治療の精度と質に向き合っているか判断する材料になります。

③技工士との連携・症例写真のチェック方法

ラミネートベニア自体を作製するのは、歯科技工士です。そのため仕上がりの美しさは、連携する歯科技工士の技術力に左右されます。歯科医師は設計者、歯科技工士は設計図をもとに形にする職人であり、両者の密な連携が大切になります。

歯科医院によっては、歯の色合わせの際に歯科技工士が直接立ち会い、患者さんと一緒に確認する場合もあります。

歯科医院のウェブサイトで症例写真を見る際は、以下のポイントに注目してみてください。

  • 色の自然さ:周囲の歯と比べて不自然ではないか
  • 形のバランス:左右の相対する歯と比べて不自然ではないか
  • 歯ぐきとの境目:歯ぐきの境目が自然に見えるか
  • 表面の質感:天然歯が持つような光沢が再現されているか

上記のポイントは、歯科医院と歯科技工士の審美的なセンスや技術レベルを推測するヒントになります。

④カウンセリングやシミュレーションの丁寧さ

治療後に後悔しないためには、治療前のカウンセリングとシミュレーションが大切です。カウンセリングでは、自身の悩みや理想をしっかり伝え、納得できるまで質問しましょう。カウンセリングで良い歯科医院を判断するポイントは以下のとおりです。

  • 悩みや希望を時間をかけて親身に聞いてくれるか
  • 治療のメリットだけでなく、デメリットやリスクも説明してくれるか
  • 費用や治療期間・保証に関して明確な説明があるか
  • 専門用語を避け分かりやすい言葉で説明してくれるか

口頭の説明だけでなく仕上がりについてシミュレーションを行ってくれるとより良いでしょう。モックアップと呼ばれる仮の歯を実際に試すことで、認識のすれ違いを防ぐことができます。

ラミネートベニアについてよくある質問

ここではよくある質問を5つ取り上げますので参考にしていただけると幸いです。

①剥がれた場合はどうすればいい?

②再治療ややり直しは可能?

③ホワイトニングと併用できる?

④他の歯科治療(矯正・インプラントなど)との組み合わせは?

⑤マイクロスコープを使う治療のメリットは?

①剥がれた場合はどうすればいい?

ラミネートベニアが剥がれてしまっても、適切な対処をすれば焦る必要はありません。多くの場合、元通りに修復できるので、以下の手順でご対応ください。

1.剥がれたベニアを保管する

2.自分で接着しない

3.速やかに歯科医院へ連絡する

剥がれたベニアは捨てずにプラスチックケースに保管してください。ティッシュに包むと捨ててしまう恐れがあるので避けましょう。

自分で市販の瞬間接着剤などで付け直すこともおやめください。想定にない化学成分が歯や歯茎にダメージを与えるだけでなく、噛み合わせがずれ、再治療が困難になる原因となります。

保管した後は、速やかに治療を受けた歯科医院に連絡し、状況を説明して受診しましょう。放置すると、知覚過敏や虫歯のリスクが高まります。

②再治療ややり直しは可能?

ラミネートベニアの再治療ややり直しは可能です。経年変化や破損、仕上がりに満足できない場合でも対応できます。再治療が必要になる主なケースを以下にまとめました。

  • 破損・寿命:強い衝撃や経年劣化でベニアが欠けたり割れたりした
  • 審美的な問題:加齢などで歯ぐきが下がりベニアと歯の境目が目立ってきた
  • 二次的な虫歯:ベニアと歯の隙間から虫歯ができてしまった
  • 色の不調和:周囲の天然歯の色が変化してベニアの色と合わなくなった

再治療では、古いラミネートベニアと接着剤を除去します。その後、土台となる歯の状態を改めて確認し、虫歯などがあれば治療した上で、新しいベニアを作製・装着します。

③ホワイトニングと併用できる?

ラミネートベニアとホワイトニングの併用は可能ですが、美しい仕上がりを実現するためには治療の順番が重要です。

正しい順番はホワイトニング→ラミネートベニアです。この順番になる理由は、それぞれの治療対象の違いにあります。

ホワイトニングは自身の天然の歯のエナメル質に侵入してしまった色素を分解し白くする治療ですが、ラミネートベニアはセラミックなどの人工素材でできており、ホワイトニングの薬剤では白くなりません。

もし先にラミネートベニアを装着してしまうと、後から周りの歯をホワイトニングした際に、ベニアだけ色が変わらず、不揃いになってしまいます。ラミネートベニアの色は一度作製すると変更できないため、注意が必要です。

ホワイトニングとラミネートベニアを併用する場合のステップ例は以下のとおりです。

1.カウンセリング:歯科医師と相談し目指す歯の白さを決める

2.ホワイトニング:目標の白さになるまで先にホワイトニングを行う

3.色が安定するまで待つ:ホワイトニング直後は歯の色が少し後戻りする場合があるので安定するまで約2週間待機する

4.ラミネートベニア治療:安定した天然歯の色に合わせてラミネートベニア治療を行う

この順番で治療を進めることで、歯の色のトーンが統一され、自然で美しい仕上がりを実現できます。

④他の歯科治療(矯正・インプラントなど)との組み合わせは?

ラミネートベニアは、矯正治療やインプラント治療と組み合わせることで、より自然でバランスの取れた口元を目指せます。歯並びが乱れている場合は、無理にベニアで整えるよりも、先に矯正で土台を整えるのが理想です。その上で、歯の色や形をベニアで仕上げると負担が少なく長持ちします。

また、歯を失っている場合は、インプラントで補った後にベニアで周囲の歯と調和を取ると、全体の見た目と機能が整います。どの治療をどの順番で行うかは、歯科医師と相談し、納得のいく計画を立てることが大切です。

⑤マイクロスコープを使う治療のメリットは?

マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)は、肉眼の20倍以上まで視野を拡大できる装置です、以下のようなメリットがあります。

  • 歯を削る量を最小限に抑えられる
  • 適合精度が高まりトラブルのリスクが減らせる
  • より自然で美しい仕上がりになる

マイクロスコープの使用は、よく見えるだけでなく、審美性や歯の健康を長期的に守るために有効な手段となります。


まとめ

ラミネートベニアは、歯の色や形を短期間で整えることができる審美歯科治療ですが、一度削った健康な歯は元には戻せません。

だからこそ、治療の良し悪しは、信頼できる歯科医師を選ぶことに左右されます。費用だけで判断せず、カウンセリングで自身の悩みをしっかり相談してみてください。この記事が、納得できる歯科医院を選び治療することにつながり、自信に満ちた笑顔を手に入れる一助になれば幸いです。