「歯並びが気になる」「出っ歯や前歯のすき間をなんとかしたい」と思っていても、歯科矯正するためには「まとまったお金がない……」と、諦めかけていませんか?
口元の見た目の改善(審美性の向上)を目的とした場合、歯科矯正は原則として「保険適用外の自費診療(自由診療)」であり、数十万円から100万円を超える費用が必要なケースが一般的です。
しかし、「デンタルローン」などの分割払いや、「前歯だけの部分矯正」などの治療範囲の絞り込みによって、月々の負担を数千円~数万円程度に減らしながら治療をスタートするという選択肢もあります。
本記事では、歯科矯正にかかる費用の相場や、お金がない状態でも治療を始めるための具体的な方法に加え、「安さだけで歯科矯正を選んではいけない理由」までお伝えしていきます。
目次
歯科矯正の費用の目安はいくら?見落としがちな「追加費用」も解説
歯科矯正は原則として保険適用外の自費診療(自由診療)であるため、歯科医院によって「矯正治療にかかる費用」にバラツキがみられます。
そこで、代表的な歯科矯正の治療法と費用の目安をお伝えし、「実際にいくらお金があれば始められるのか?」という検討に役立ててください。
① 表側矯正(ワイヤー矯正)の費用目安と特徴
ワイヤー矯正は、歯の表面に装置を取り付け、歯並びや噛み合わせなどお口全体にアプローチが可能であることが特徴の治療方法です。
費用の目安は約60万円~100万円と幅がありますが、これは矯正装置に使用する素材(金属製・目立ちにくいセラミック等)、「部分的な矯正か」「お口全体の矯正か」といった矯正範囲で変動します。
【表側矯正(ワイヤー矯正)の治療概要】
| 項目 | 詳細 |
| 治療内容 | 歯の表面に「ブラケット」と呼ばれる小さな装置を取り付け、そこにワイヤーを通して適切な力をかけながら、少しずつ歯を動かして歯並びや噛み合わせを整える治療法です。 |
| 費用の目安 | 約60万円~100万円程度 |
| 治療期間・通院回数 | 治療期間の目安:約1年~3年程度 通院回数の目安:約12回~36回程度(月1回程度の調整) ※歯の動き方や元の歯並びの状態によって個人差があります。 |
| 主なリスク・副作用 | ・装置の装着直後やワイヤー調整後に、歯が浮くような痛みや違和感が生じる場合があります。 ・装置が粘膜に擦れることで、口内炎ができやすくなる場合があります。 ・装置の周りに食べかすが溜まりやすいため、虫歯や歯周病のリスクが高まるおそれがあります。 ・歯を動かすことにより、歯根吸収(歯の根が短くなること)や歯肉退縮(歯茎が下がる現象)が起こる可能性があります。 ・治療終了後、保定装置(リテーナー)の着用を怠ると、歯並びが元の位置に戻る(後戻りする)可能性があります[参考文献2]。 |
② 裏側矯正(舌側矯正)の費用相場と特徴
裏側矯正(舌側矯正)は、歯の裏側に装置を取り付けるため、「周囲から矯正していることがわかりにくい」ことが特徴です。
ただし、同じワイヤーを用いた矯正でも、表側矯正と比べて高度な技術が求められ、一人ひとりの歯の裏側の形に合わせて装置を調整しながら作成することが多いため、費用の目安は約80万円~150万円と高くなる傾向があります。
また、表側矯正と同様、部分矯正か全体矯正かといった矯正範囲によって、装置の作りが変わってくるため、実際に必要な費用(治療費)に幅があります。
【裏側矯正(舌側矯正)の治療概要】
| 項目 | 詳細 |
| 治療内容 | 歯の裏側(舌側)にブラケットと呼ばれる装置を取り付け、ワイヤーを通して歯を動かしていく治療法です。外から装置が見えにくいのが最大の特徴です。 |
| 費用の目安 | 約80万円~150万円程度 |
| 治療期間・通院回数 | 治療期間の目安:約1年半~3年程度 通院回数の目安:約18回~36回程度(月1回程度の調整) ※歯の動き方や元の歯並びの状態によって個人差があります。 |
| 主なリスク・副作用 | ・装置が舌に触れるため、発音しにくくなったり、舌に口内炎ができやすくなったりする場合があります。 ・装置の周りに食べかすが溜まりやすいため、虫歯や歯周病のリスクが高まるおそれがあります。 ・歯を動かすことにより、歯根吸収(歯の根が短くなること)や歯肉退縮(歯茎が下がる現象)が起こる可能性があります。 ・治療終了後、保定装置(リテーナー)の着用を怠ると、歯並びが元の位置に戻る(後戻りする)可能性があります[参考文献2]。 |
③ マウスピース矯正の費用相場と特徴
マウスピース矯正は、透明で目立ちにくいマウスピース型の装置を段階的に交換しながら歯を動かす治療法です。
ワイヤー矯正(表側矯正・裏側矯正)と異なり、ご自身で矯正装置の取り外しができるため、食事や歯磨きが普段通りに行いやすいというメリット・特徴があります。
費用の目安は約30万円~100万円と、やはり矯正範囲によって金額が変動します。
【注意事項】
マウスピース型矯正装置の多くは、患者さんごとに作製されるオーダーメイド品であるため、薬機法上の承認・認証を受けた既製品ではありません(完成物薬機法対象外)。
そのため、ワイヤー矯正とは異なり、医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。
【マウスピース矯正の治療概要】
| 項目 | 詳細 |
| 治療内容 | 透明で取り外し可能なマウスピース型の矯正装置を歯に装着し、段階的に新しいものに交換していくことで歯並びを整える治療法です。 |
| 費用の目安 | 約30万円~100万円程度 |
| 治療期間・通院回数 | 治療期間の目安:約半年~3年程度 通院回数の目安:約3回~18回程度(1~3ヶ月に1回程度など) ※歯の動き方によって個人差があります。ワイヤー矯正と比較して通院頻度が少なくなる傾向があります。 |
| 主なリスク・副作用 | ・1日20時間以上など、規定の装着時間を守らないと計画通りに歯が動かない(治療期間が延びる)可能性があります。 ・装置を装着したまま糖分を含む飲み物などを摂取すると、虫歯のリスクが高まるおそれがあります。 ・歯を動かすことにより、歯根吸収や歯肉退縮が起こる可能性があります。 ・治療終了後、保定装置(リテーナー)の着用を怠ると後戻りする可能性があります[参考文献2]。 |
【要チェック】見落としがちな「追加費用(諸費用)」について
歯科矯正では、矯正装置そのものの費用(基本料金)以外にも、治療の段階に応じて「追加費用(諸費用)」が発生するのが一般的です。
「治療の予算をオーバーしてしまった」「追加費用分のお金が足りない」といったリスクを低減させるため、検査費や調整料などの諸費用が追加でかかるのか、あるいは基本料金にすべて含まれている「トータルフィー制度」なのかを、事前のカウンセリングで必ず確認しておきましょう。
【矯正治療で必要な諸費用の目安】
| 費用の種類 | 金額の目安 | 詳細・特徴 |
| 初診相談・カウンセリング料 | 無料~5,000円程度 | 歯並びの悩みや治療方法、おおよその費用について歯科医師に相談するための費用です。無料で実施している医院も多くあります。 |
| 精密検査・診断料 | 1万円~5万円程度 | レントゲンや歯科用CT撮影、歯の型取りなどを行い、具体的な治療計画を立てるための費用です。 |
| 処置料・調整料 | 3,000円~1万円程度 / 回 | 通院ごとのワイヤーの調整や、お口の中のクリーニング(メンテナンス)にかかる費用です。毎月通院する場合、治療期間が長くなるほど総額が膨らみます。 |
| 保定装置(リテーナー)代 | 1万円~6万円程度 | 矯正治療終了後、歯が元の位置に戻るのを防ぐため(保定期間)に使用する装置の費用です。 |
まとまったお金がない!支払い負担を減らす・見通しを立てやすくする3つの方法
歯科矯正の治療費の総額が仮に100万円以上になったとしても、「全額を一括払い」する必要は原則としてありません。
現在手元にまとまったお金がない方、「毎月少しずつなら支払っていける」という方に向けて、月々の支払いの負担を減らしたり、総額の見通しを立てやすくしたりする方法をお伝えします。
① デンタルローン(医療ローン)を活用する
デンタルローンとは、歯科治療費の支払いを目的としたローン契約のことです。
「歯科医院と契約している信販会社(しんぱんがいしゃ)のデンタルローン」や「銀行など金融機関独自のデンタルローン」があります。
デンタルローンは、およそ6回から120回(最長10年程度)の返済計画を結ぶことで、毎月の支払い額を減らし、「手元にまとまったお金がない」という状況でも矯正治療をスタートすることに役立ちます。
また、デンタルローンの場合は「歯科治療(矯正治療)」という明確な目的のもと返済契約を結ぶので、一般的なクレジットカードの分割払いや消費者金融のカードローンと比較して金利が低めに設定されている傾向があります。
【参考:各種ローンの金利の目安と特徴】
| 項目 | デンタルローン(医療ローン) | クレジットカードの分割払い | カードローン(消費者金融) |
| 金利手数料(目安) | 年3〜8%程度 | 年15%前後 | 年15〜18%程度 |
| 支払回数(目安) | 6回〜120回など(最長7〜10年程度) | 2〜36回程度(最長3年程度) | 借入金額により異なり、長期化しやすい傾向。 |
| メリット | 低金利で月々の負担を抑えやすい。医療費控除の対象になるケースがある。 | 手持ちのクレジットカードがある場合、ショッピング枠内であれば審査不要で利用できる。ポイントが貯まる場合がある。 | 利用目的が自由。審査が比較的早い。 |
| デメリット | 事前の審査が必要(利用までに数日かかる場合がある)。 | 金利が高く、分割回数が多いと総支払額が大きくなりやすい。 | 金利が高く、総支払額が膨らむリスクがある。 |
また、金利手数料5%で総額100万円のデンタルローンを契約した場合のシミュレーションを掲載しますので、月々の支払額の目安にしてください。
【デンタルローンのシミュレーション例(金利5%・100万円)】
| 支払い回数と期間 | 毎月の支払額(目安) | 支払総額(目安) |
| 24回払い(2年) | 約43,800円 | 約1,051,000円 |
| 60回払い(5年) | 約18,800円 | 約1,128,000円 |
| 84回払い(7年) | 約14,100円 | 約1,184,000円 |
| 120回払い(10年) | 約10,600円 | 約1,272,000円 |
※上記はあくまで目安であり、実際の金利手数料や毎月の支払額は、ローンの契約ごとに異なります。
なお、分割回数を増やせば月々の負担は1万円~2万円ほどに減らせますが、「利息が膨らんで総支払額は高くなる」「支払いが長期化する」という点には注意が必要です。
② 歯科医院独自の「院内分割払い」を利用する
歯科医院によっては、クリニックと患者の間で直接分割払いの契約を結ぶ「院内分割払い」に対応している場合があります。
たとえば、「治療期間内(例えば2年=24回)であれば、無金利・手数料なしで分割できる」といったシステムを採用している医院もあり、手元にまとまったお金がない方にとって検討しやすい選択肢です。
ただし、「対応している医院が限られる」ことと、「支払い回数がデンタルローンほど多く設定できない(月々の支払額の負担はやや多めになる)」のが一般的です。
③ 追加費用がかからない「トータルフィー制度」の医院を選ぶ
「トータルフィー制度(総額提示方式)」とは、事前の検査から、矯正装置代、毎月の調整料、終了後の保定装置代まで、矯正にかかるすべての費用をあらかじめ含んだ費用を提示する制度です。
トータルフィー制度を採用している医院を選べば、「予定より治療が長引いて調整料が毎月かさむ」「後から想定外の追加費用を請求される」といった不安の軽減につながります。
また、資金計画が立てやすいため、手持ちのお金に余裕がない方でも「ここまでならお金を用意できる」という気持ちで前向きに治療を検討できることが期待されます。
総額費用をなるべく安く抑えたい場合の3つの選択肢
支払い方法の工夫により「毎月の支払額の負担」を軽減させるのも重要ですが、治療にかかる「総額」そのものを安く抑えるためのアプローチを紹介します。
① 気になる前歯だけを治す「部分矯正」
「奥歯の噛み合わせは悪くないけれど、前歯のガタつきや、すきっ歯だけが気になる」という場合、歯並び全体ではなく特定の部位だけを動かす「部分矯正」という選択肢があります。
動かす歯が少ないため、治療期間が短く(数ヶ月〜1年程度)、費用も約20万〜40万円程度と、全体矯正の半分以下に抑えられる傾向があります。
「全体矯正ほどの完璧さは求めないが、見える部分のコンプレックスだけは解消したい」という方には有効な手段の一つです。
ただし、骨格的な問題がある場合や、重度の歯列不正には適応できないケースがあり、医師の判断によって選択できないこともあります。
② 学生・家族向けの「学割・家族割・紹介制度」があるか確認する
歯科医院によっては、費用負担を少しでも軽減するための割引制度を設けている場合があります。
【学割】
中学生、高校生、専門学生、大学生など、学生証の提示で歯科矯正にかかる治療費などが軽減される制度。
【家族割】
親子や兄弟姉妹で一緒に治療を受ける場合や、すでに家族が通院している場合に、歯科矯正にかかる治療費などが軽減される制度。
【紹介制度】
すでに矯正治療で通院している友人や知人からの紹介で、歯科矯正にかかる費用の軽減などが受けられる制度。
医院のホームページに記載されていない場合でも、カウンセリング時に確認してみる価値はあります。
なお、未成年の場合は、カウンセリング時の親権者同伴や同意書が必須になるケースが多いため、事前に保護者の方と話し合っておきましょう。
③ 「医療費控除」を活用して税金の負担を減らす
「医療費控除」とは、1年間(1月1日〜12月31日)に支払った医療費の合計が10万円(※所得によって異なる)を超えた場合、確定申告を行うことで所得税の一部が還付され、翌年の住民税も軽減される国の制度です。
大人の審美目的(見た目を綺麗にするだけ)の矯正は対象外ですが、「噛み合わせが悪く、咀嚼(そしゃく)に問題がある」「発音に支障がある」など、機能改善という医学的な治療目的であると歯科医師が診断した場合は、医療費控除の対象となります[参考文献1]。
また、生計を共にする家族の医療費と合算して申告できるため、ご自身の矯正費用だけでなく、家族の通院費や薬代などもまとめることで節税効果が期待できます[参考文献1]。
【要注意】安いからと飛びつかないで!モニター制度のリスクや注意事項
歯科矯正の費用を抑えられる「モニター制度」を採用している歯科医院もあります。
しかし、お金がないからといって安易に応募する前に、モニター制度を利用する条件やリスク・デメリットなどの注意点をしっかりと確認しましょう。
モニター制度とは?安くなる理由と一般的な条件
モニター制度とは、治療経過や結果をクリニックの広告やホームページ、SNS等に掲載するための「症例写真(術前・術後の写真など)」や「治療データ」を提供する代わりに、治療費の減額を受けられるシステムです。
歯科医院側には広告宣伝のメリットがあるため、患者さんは治療費の支払いの軽減が期待できます。
顔出しのリスクや、通院日時の制限(平日のみ等)に注意
審美目的(見た目の改善)の歯科矯正は自由診療(自費診療)であるため、「モニター制度」の内容も各歯科医院によって異なります。
たとえば、「口元の写真だけでOK」という場合もあれば、「顔全体(目線なし)の露出が必須」という条件で大幅な割引が設定されていることもあります。
ネット上に自分の顔が残り続けるリスクは慎重に判断すべきです。
また、「予約は平日の午前中のみ可能」「月に指定された回数必ず通院し、長時間の撮影に協力する」といった制限が設けられているケースもあり、学生や社会人の場合はスケジュール調整が困難になるリスクがあります。
途中でやめられない?契約内容(違約金など)は必ず確認を
歯科矯正でモニター制度を利用する際、特に注意すべきは、治療の途中で「やっぱりやめたい」「通えなくなった」となった場合の契約内容です。
モニター契約の場合、途中で条件を満たせなくなると「通常料金との差額を請求される」あるいは「違約金が発生する」といったトラブルに発展するケースが国民生活センター等でも報告されています[参考文献3]。
「歯科矯正の費用が安い」というメリットだけでなく、契約書に記載されている義務とリスクを必ず最後まで読み、納得した上で契約することが重要です。
市販のマウスピース等による「自力矯正」をおすすめしない理由
「お金がない、ローンやモニター制度もよくわからなくて怖い」といった理由から、市販のマウスピース等を使って「自力で歯を矯正しよう」と考える方もいるかもしれません。
しかし、歯科医師の診断に基づかない「自力矯正(セルフ矯正)」はリスクを伴う行為であり、推奨されません。
医学的根拠がなく、噛み合わせが悪化するリスクが高い
日本歯科医師会等の公的機関も警告を発していますが[参考文献4]、市販されている数千円程度のマウスピースは、単なる既製品であり、個人の歯型に合わせて精密に計算されたものではありません。
これを無理に装着し続けると、意図しない方向に歯が動き、かえって歯並びが悪化したり、噛み合わせが狂って顎関節症を引き起こしたりするリスクがあります。
歯の根や歯茎にダメージを与え、歯を喪失するリスクも
矯正治療は、歯に適切な力をかけ、骨の吸収と再生を利用して少しずつ歯を動かす精密な医療行為です。
自己流で過度な力をかけると、歯の根が短くなる「歯根吸収(しこんきゅうしゅう)」が起きたり、歯を支える骨(歯槽骨)が溶けてしまったりする恐れがあります。
歯を喪失するリスクがあり、結果としてインプラントなど、歯科矯正と同様に高額な治療が必要になる可能性があります[参考文献2]。
「お金がない」といって「安さ」だけで医院を選ぶと後悔する理由は?
歯科矯正は、審美目的(見た目の改善など)で治療を行う場合、原則として自由診療(自費診療)になることから、歯科医院ごとに「治療に用いる道具や材料」「料金設定」が自由になされています。
そのため、相場より極端に安いケース(例:全矯正で総費用10万円)では、費用を安く抑えるために精密検査を省略し、初期の虫歯や歯周病などの治療が必要な状態を見落としてしまうリスクがあります。
日本矯正歯科学会によると、歯科矯正中は器具の装着によって歯磨きが難しくなるため、通常よりも虫歯等のリスクが高まると指摘しており[参考文献2]、症状の進行次第で矯正治療を中断しなければならないおそれもあります。
その場合、矯正治療を中断して装置を外し、虫歯治療を優先しなければならず、追加の治療費がかさみ、通院期間・通院回数が増えることも考えられます。
【参考】マイクロスコープによる精密処置という選択肢
歯科治療に限らず「医療費を抑えたい(支払うお金を安くしたい)」と思うのは当然のことであり、「他人の目につきやすい前歯」など一部分だけの歯科矯正を検討される方も多くいます。
その場合、歯を動かす歯科矯正とは異なりますが、「マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)」を活用した「ダイレクトボンディング治療」で「前歯の隙間を埋める(すきっ歯を治す)」というアプローチも存在します。
【マイクロスコープの概要】
・肉眼と比較しておよそ20倍視野を拡大可能
・初期虫歯や微細なヒビといった症状を肉眼より発見しやすい
【ダイレクトボンディング治療の概要】
| 項目 | 詳細 |
| 治療内容 | 歯の表面に歯科用のプラスチック素材(コンポジットレジン)を直接盛り付け、専用の光を当てて固めることで、すきっ歯や歯の欠損、形や色調を整える治療法です。 |
| 費用の目安 | 1歯あたり約3万円~10万円程度 審美目的(見た目の改善など)で行う場合は、公的医療保険が適用されない「自由診療(自費診療)」となります。 ※治療範囲によって費用は変動します。 |
| 治療期間・通院回数 | 治療期間の目安:1日〜数週間程度 通院回数の目安:1回〜数回程度 ※治療本数やお口の状態によって個人差がありますが、型取りが不要なため最短で1日(1回の通院)で治療が完了するケースもあります。 |
| 主なリスク・副作用 | ・素材の特性上、経年劣化によって徐々に変色したり、着色汚れ(ステイン)がついたりする場合があります。 ・強い力や衝撃が加わったり、硬いものを噛んだりした際に、盛り付けたレジンが欠けたり割れたりするおそれがあります。 ・セラミックを用いた修復治療と比較すると、強度や耐久性の面でやや劣る傾向があります。 ・治療自体は最短1回で終了することもありますが、その後の経過観察やメンテナンスで通院が必要になる可能性があります。 |
マイクロスコープを活用したダイレクトボンディングであれば、1歯あたり約3万円~10万円程度の治療費で済むこともあり、お口の状態によっては最短で1日で治療が完了するケースもあります。
※マイクロスコープの使用料などが別途追加費用としてかかる医院もあるため、事前の確認をおすすめします。
さらに、大きなメリットとして、マイクロスコープの拡大視野によりお口の中のチェックを行いますので、虫歯や歯周病などの「歯科矯正よりも先に治療を行うべき症状」を肉眼での検査よりも発見しやすい傾向にあります。
歯科矯正を検討しているのは「自分の歯や口元をきれいに保ちたい」という願いがあってのことですので、精密な検査・処置が可能なマイクロスコープを導入する歯科医院に相談するのも一つの選択肢と言えます。
例外的に歯科矯正が「保険適用」になるケースとは?
歯科矯正は原則として自費診療(自由診療)ですが、「国が定めた特定の疾患に起因する咬合(こうごう)の異常の治療」といった条件を満たす場合は、保険適用となります。
「単に歯並びの見た目を良くしたい」という審美目的ではなく、主に以下の疾患の治療が、歯科矯正で保険適用となるケースです。
【顎変形症(がくへんけいしょう)】
顎の骨の大きさや形、位置の異常によって、重度の噛み合わせ不良や顔の非対称を引き起こしている状態。外科的な手術(顎切り手術など)を伴う矯正治療が必要とされています。
【前歯3歯以上の永久歯萌出不全】
埋伏歯(骨の中に埋まったまま生えてこない歯)を開窓して引っ張り出す治療。
【厚生労働大臣が定める各種疾患】
口唇裂・口蓋裂(こうしんれつ・こうがいれつ)やダウン症候群など、国が指定する先天性の疾患に伴う歯列異常。
さらに、「顎口腔機能診断施設(がくこうくうきのうしんだんしせつ)」などの指定を受けた医療機関で診断・治療を受ける場合のみ、保険適用となるという条件もあります。
ご自身の症状が当てはまるか気になる場合は、矯正治療に対応している医療機関(又は指定医療機関)で相談してみましょう。
歯科矯正に関するよくある質問と回答(Q&A)
ここでは、歯科矯正の費用についてお金がないと悩む方からよく寄せられる質問に回答します。
Q1. お金がない学生(高校生・大学生)でもデンタルローンは組めますか?
A1. 未成年の方(18歳未満)や、安定した収入のない学生単独でのローン契約は原則としてできません。
ただし、高校生などの未成年者が治療を希望する場合は、保護者名義でデンタルローンを組むことは可能です。
18歳以上の専門学生や大学生でアルバイト等の安定収入があれば、ご本人名義で審査に通る可能性はありますが、多くの信販会社では連帯保証人を求められたり、保護者の同意が必要になったりします。
まずはクリニックの無料相談で、支払い方法について保護者の方と一緒に確認することをおすすめします。
Q2. 格安のマウスピース矯正なら数万円でできると聞いたのですが?
A2. 「数万円で完了する」というのは、ごく軽度な前歯のズレなどを1〜2ヶ月程度の短期間で治す「部分矯正」の初期費用や、極めて限定的なケースを指していると考えられます。
歯並び全体を治したり、複雑な噛み合わせを改善したりする場合は、格安を謳うブランドであっても数十万円の費用がかかるのが一般的です。
事前の検査料や毎月の調整料を含めた「総額」がいくらになるのか、契約前に必ず見積もりを出してもらいましょう。
Q3. 医療費控除は、親(家族)の分と合算して申告できますか?
A3. はい、生計を一にする(生活費を共有している)家族の医療費であれば、合算して申告することが可能です[参考文献1]。
例えば、ご自身の矯正費用だけでなく、親の通院費、兄弟の虫歯治療費、市販の風邪薬代などもすべて1年分(1月1日〜12月31日)まとめて計算できます。
合算して10万円(※総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%)を超えた分が控除対象となるため、家族全員の領収書を捨てずに保管しておくことが大切です。
Q4. デンタルローンで支払った場合でも、医療費控除の対象になりますか?
A4. はい、対象になります。 信販会社がクリニックに立替払いをした年(ローン契約を結んだ年)の医療費控除として申告できます。
例えば、今年ローンを組んで来年以降も返済が続く場合でも、契約した「今年」の確定申告で、ローンの「全額(※金利手数料は除く)」を申告します。毎月返済する額をその都度申告するわけではない点に注意してください。
※医療費控除の詳しい適用条件や申告方法については、国税庁のホームページをご確認いただくか、お近くの税務署にご相談ください[参考文献1]。
まとめ
歯科矯正は、総額100万円以上と高額になりやすい治療であり、「まとまったお金がない」と悩む方がいるのは当然のことです。
しかし、デンタルローンの活用や、部分矯正を選択することで、費用の負担を現実的な範囲に抑え、治療をスタートできる可能性があります。
費用の安さ重視で「モニター制度」を利用して違約金を支払うことになったり、「自力矯正」で歯の健康を損なうリスクに注意してください。
また、歯科医院での矯正治療であっても、精密な検査を怠ると、虫歯の見落とし等で再治療となり、結果的にトータルコストが高くつく可能性があります。
まずは一人で悩まず、複数のクリニックの無料カウンセリングに足を運び、ご自身の症状に合った治療法と無理のない支払いプランについて相談してみることから始めてみましょう。
出典・参考資料
- [参考文献1] 国税庁『医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例』 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1128.htm
- [参考文献2] 日本矯正歯科学会『矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について』 https://www.jos.gr.jp/about
- [参考文献3] 独立行政法人 国民生活センター『歯の美容や矯正等に係る歯科医療に関する相談』 https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20160721_1.html
- [参考文献4] 日本歯科医師会『歯並び(矯正)』 https://www.jda.or.jp/park/trouble/index13.html
※本記事は一般的な情報の提供を目的としており、特定の治療法や機器を推奨するものではありません。実際の診断・治療および費用の詳細については、必ず歯科医師にご相談ください。
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