「痛くない歯医者」はどう探す?痛みや恐怖心を和らげる治療の見極め方

「過去の治療で痛い思いをしたり、叱られたりした」 「キーンという削る音や、歯科医院独特の臭いが不快で耐えられない」といったトラウマや苦手意識があり、歯科医院から足が遠のいていませんか?

また、「何をされているか分からない不安」といった精神的な恐怖心や、治療時の「嘔吐反射(オエッとなる感覚)」などの生理的な不快感も気になることでしょう。

しかし、現在では「丁寧なカウンセリング」をはじめ、肉体的・心理的な負担を減らす工夫を行う歯科医院が増えています。

本記事では、歯科治療の痛みや恐怖心を和らげる「マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)」の重要性と、歯科医院選びの基準をお伝えしますので、受診の参考にしてください。

※完全に無痛の治療を行うことは医学上困難とされていますが、本記事では痛みを最小限に抑える工夫を行っている歯科医院を指して解説します。


「痛くない(痛みに配慮した)歯医者」に共通する3つの特徴とは?

「痛くない(痛みに配慮した・怖くない)歯医者」を探す上で、歯科医院のホームページや口コミを見てもよくわからない、と悩んでいませんか。

患者さんの痛みや恐怖心を和らげることに注力している歯科医院では、以下の3つの共通する特徴があります。

  • 【特徴①】精神的な負担を和らげる「丁寧なカウンセリング」
  • 【特徴②】治療の痛みを和らげる「麻酔の工夫」
  • 【特徴③】歯をなるべく削らない「マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)」

痛みや恐怖心を和らげ、治療の負担をなるべく抑えるには、精神的なアプローチ(心のケア)と、肉体的なアプローチ(精密治療)の双方が重要です。

それでは、「痛くない(痛みに配慮した)歯医者」と呼ばれるような歯科医院では、どのような対応を行っているのか、それぞれ確認していきましょう。

特徴① 精神的な負担を和らげる「丁寧なカウンセリング」

お口の中の状態は自分で見ることが難しいからこそ、歯科医院では「インフォームドコンセント(医師の説明と患者の同意)」が重要になります。

痛みの感じ方は精神状態と密接に結び付いていると言われ、視界が遮られた状態で「今何をされているのか」「いつ痛みが来るのか」と身構えて緊張してしまうと、些細な刺激にも敏感に反応してしまうことがあります。

そのため、歯科医院では治療を行う前に「丁寧なカウンセリング」を実施し、歯科治療に関する不安やトラウマなど「配慮してほしいこと」を聞き、歯科医師と患者さんの間で信頼関係を築くことを目指しています。

必要に応じて「レントゲン撮影」や「歯科用CT」などの検査を行い、治療方針や治療費について提案し、納得できる説明を行ってくれる歯科医院を選びましょう。

【POINT】
HP上に「初めての方へ」といったページがあり、「初回カウンセリング」に注力していることがわかる歯科医院を推奨いたします。

また、「治療方針」や「院長挨拶」などのページをチェックし、直接歯科医院を尋ねる前にどのようなクリニックかを前もって知っておくことで、不安なことや不明な点を相談しやすくなります。

特徴②痛みを和らげる「麻酔の工夫」

歯科医院に限らず、痛みを和らげるための麻酔を行う際の注射にも「針を刺す際の痛み」が少なからずあるのは事実です。

そのため、「痛くない(痛みに配慮した)歯医者」と呼ばれる歯科医院では、以下のような麻酔の工夫を行っています。

針を刺す前の痛みを和らげる「表面麻酔」

表面麻酔は、歯茎に注射の針を刺す際のチクっとした痛みを和らげるため、あらかじめ歯茎の表面に行う麻酔のことです。

ジェル状の薬を塗り込むタイプや、スプレー状の薬を吹きかけるタイプがあり、数分待つことで歯茎の感覚が鈍くなります。

この一手間をかけることで、その後の注射針が刺さる際の痛みの軽減が期待できます。

痛点を感じにくい「極細の注射針」

注射針は、太ければ太いほど組織を傷つけて痛みを感じやすくなります。

そのため、痛みに配慮した歯科医院では、「33G」と呼ばれる外径が約0.26mm程度(郵便はがきの厚みほど)の極めて細い針を採用していることが一般的です。

蚊に刺されても痛みを感じにくい原理と同様に、肉眼では見えにくいほどの極細針を使用することで、歯茎の痛点を避けて麻酔液を注入することが可能になります。

冷たさによる刺激を防ぐ「温かい麻酔液」

体内に入る麻酔液が冷たいと、体温との温度差によって細胞が刺激を受け、痛みや違和感として脳に伝わってしまいます。

これを防ぐため、専用の機器(カートリッジウォーマー)を使用して、麻酔液をあらかじめ人間の体温に近い温度(約37度)に温めておく工夫がなされています。

注入スピードを一定に保つ「電動麻酔器」

注射の際、麻酔液を勢いよく注入したり、圧力が不安定になったりすると、歯茎の細胞が急激に膨張して強い痛みを伴うことがあります。

そこで、 「電動麻酔器」を使用すると、コンピューター制御によって麻酔液の注入スピードと圧力を一定のゆっくりとしたペースで保つことが可能です。

電動麻酔器を使うことで、手動の注射で起こりがちな「手ブレ」や「圧力のムラ」を抑えられるため、組織への負担が減り、痛みを最小限に抑えることが期待されます。

リラックス状態を作りやすい「笑気麻酔」

「笑気麻酔(しょうきますい)」とは、「笑気(亜酸化窒素:あさんかちっそ)」と酸素を混ぜたガスを鼻から吸入する鎮静法です。

笑気麻酔の吸入を始めると、数分でお風呂にゆっくり浸かっているようなポカポカとした気分になり、恐怖心や不安が和らぐことが期待されます。

意識ははっきりと保たれており、医師との会話も可能なので、コミュニケーションを取りながら治療を進めることも可能です。

また、笑気麻酔は吸入を止めれば比較的早期に元の状態に戻るため、「歯科医院での治療後そのまま歩いて帰宅できる」など身体的な負担を軽減でき、多くの場合保険適用で受けることができるというメリットがあります。

うたた寝しているような状態になる「静脈内鎮静法」

歯科恐怖症が重度な方や、パニック障害をお持ちの方、あるいは親知らずの抜歯やインプラントなどの大掛かりな処置の際に用いられるのが「静脈内鎮静法(じょうみゃくないちんせいほう)」です。

腕の静脈から点滴で鎮静薬を投与することで、うたた寝をしているような、うつらうつらとした深いリラックス状態へと導きます。

完全に意識がなくなる全身麻酔とは異なり、自発呼吸は保たれていますが、笑気麻酔とは異なり健忘効果(治療中の記憶が残らない効果)があるため「気づいたら治療が終わっていた」と感じる方も多いのが特徴です。

要チェック!麻酔が効きにくい条件とその対処法

歯科医院側で工夫を凝らしていても、「麻酔が効きにくい」ケースが存在します。

それは「すでにズキズキと激しい痛みがある(炎症が強い)場合」と「極度の緊張状態にある場合」です。

強い炎症が起きている周囲の組織は酸性に傾いており、麻酔薬が中和されて効果を発揮しにくくなります。

また、恐怖で体がこわばっていると痛覚が過敏になります。

このような場合、無理に治療を進めるのではなく、「痛み止めを先に処方して炎症を抑えてから後日治療する」「麻酔の量を少しずつ増やして時間を置く」といった患者さんの症状に寄り添った対処法を提案してくれる歯科医院を選ぶことが大切です。

治療中に痛みや不安を感じたら、我慢せずに歯科医師に「左手を上げる」など、予め決めておいた合図を送るとよいでしょう。

特徴③歯をなるべく削らない「マイクロスコープ」

丁寧なカウンセリングや麻酔の工夫は、痛みを和らげる効果が期待されますが、「そもそも無駄に歯を削らない、健康な組織を傷つけない精密なアプローチ」を行うことは極めて重要なポイントです。

そこで、「痛くない(痛みに配慮した)歯医者」を目指す歯科医院では、肉眼と比較して20倍ほど視野を拡大できる「マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)」を活用しているケースが一般的です。

歯や削る量を極力減らすMI治療

マイクロスコープは、国際歯科連盟が提唱する「MI治療(Minimal Intervention)」と呼ばれる、可能な限り侵襲(しんしゅう)を抑えたアプローチを可能にする設備です。

たとえば、虫歯治療において、患部だけでなく健康な歯質まで削ってしまうと、神経に刺激が伝わりやすくなり、術後の痛みの原因となるケースがあります。

また、すでに歯の神経にまで達してしまった重度の虫歯(C3以上)では、「根管治療(こんかんちりょう)」と呼ばれる歯の根の治療が必要になることが一般的です。

歯の神経が通る根管は髪の毛ほど細く(0.1ミリ以下)、複雑に入り組んでいるため肉眼では確認が困難な部分があり、患部(細菌)の取り残しが起きやすいとされています。

そこで、マイクロスコープによる拡大視野により、無駄に歯を削ることなく患部のみを処置する精密な治療を行うことが期待されます。

痛い・しみる「歯石取り」にも配慮した精密なアプローチ

「痛くない(痛みに配慮した)歯医者」を探しているという方の中には、「虫歯治療よりも、キーンとしみる歯石取り(スケーリング)の方が痛くて苦手」という方もいるでしょう。

歯と歯茎の境目にある歯周ポケットの奥にある硬い歯石を、スケーラーと呼ばれる専用の器具でガリガリと取り除く際、健康な歯の根の表面(セメント質)や歯茎の組織を傷つけてしまうことがあり、痛みを引き起こすことがあります。

また、その後、一時的に「知覚過敏」を引き起こすこともよくあるケースです。

歯周病の予防や治療には歯石取りが重要ですが、ここでもマイクロスコープによる精密な処置が期待されます。

拡大視野で患部を確認しながら処置することで、周囲の組織へのダメージをなるべく抑えることにより、痛みの軽減に繋がります。

【重要】マイクロスコープの「動画共有」で不安を減らす工夫

マイクロスコープのメリットは、MI治療(なるべく健康な歯や歯周組織を傷つけず痛みを極力抑える)だけに留まらず、「精神的な不安の解消」にも役立つことが挙げられます。

マイクロスコープは、治療前後や治療中の様子を録画し、動画や写真としてモニターに映し出すことが可能です。 治療後だけでなく、治療中の様子も患者さん自身で確認できるため、「何をされているか分からない」という恐怖を和らげることが期待できます。

また、治療後に「今日はここにあった虫歯を、これだけ削って白く詰めました」のように、動画や写真を見ながら説明を受けることは、 視覚的な納得につながるでしょう。

患者さんと歯科医師の間でコミュニケーションを取りながら治療を進めていけるのは、マイクロスコープの大きなメリットです。

【番外編】オエッとなる型取りを軽減する「デジタルスキャナー(口腔内カメラ)」

歯の型取りの際、ピンク色の粘土のような材料(印象材)を口いっぱいに詰め込まれ、吐き気(嘔吐反射)に苦しんだ経験はないでしょうか。

近年では、ペンのような小型の「デジタルスキャナー(口腔内カメラ)」を使って口の中を数分なぞるだけで、歯の形を3Dデータとして精密に読み取れる機器を導入している医院が増えています。

これにより、息苦しさや吐き気から解放されて治療を進めることが期待されます。

治療中だけでなく「治療後」の痛みにも配慮があるか

「痛くない(痛みに配慮した)」治療を受けることも重要ですが、治療後の予防はそれ以上に重要なポイントです。

なぜなら、歯は治療するたびにもろくなり、虫歯などの再発を繰り返すと、歯を失ったり大掛かりな治療を行わなければならないリスクが高まるからです。

そこで、歯科医院を選ぶ際には、麻酔が切れた後の不快感や、痛みの再発を予防するためのフォローアップ体制が整っているかどうかも確認しましょう。

麻酔が切れた後の痛みを軽減する服薬指導

処置中の痛みがなくても、帰宅して麻酔が切れた途端にズキズキとした痛みが襲ってくることがあります。

この痛みは、歯を削ったり神経を触ったりしたことによる組織の炎症反応が原因とされています。

痛みに配慮した医院では、麻酔が完全に切れて痛みがピークに達する前に鎮痛剤(痛み止め)を飲むよう、服薬指導(痛み止めの薬の処方や処方箋の発行など)を行います。

処置の侵襲度(体への負担)に応じて適切な薬を処方してもらえるよう、カウンセリングの際に確認すると良いでしょう。

治療後の再発リスクを抑える「セルフケア」と「メインテナンス」のサポート

痛みを伴う病気の再発をなるべく避けて予防するには、清潔な口腔環境を保つことが重要です。

たとえば、治療後に歯科衛生士による丁寧なブラッシング指導や、生活習慣の改善アドバイスを行っている歯科医院を選ぶとよいでしょう。

なお、多くの歯科医院では、ご自身での歯磨き(セルフケア)では落としきれない汚れを、マイクロスコープや拡大鏡を用いた精密なプロフェッショナルケア(※例:SRP=Scaling and Root Planing)で定期的に取り除くことを推奨しています。

※SRPは「スケーリング」と「ルートプレーニング」を組み合わせた精密な処置のことで、歯垢(プラーク)・バイオフィルム・歯石など、お口の中の汚れをクリーニングすることです。

【参考】患者さんが歯科治療で「強い痛みや不安」を感じてしまう理由

インターネット上の口コミなどで「信じられないくらい痛かった」といった声を目にすることがありますが、「歯科医師の技術力」が原因ではない可能性が高いです。

多くの場合、患者の心身への配慮とコミュニケーションの欠如があり、精神的な不安から不信感と痛みを増幅させていることが考えられます。

結果として患者さんが「痛いからもう歯医者に行きたくない」と思う背景には、以下のような歯科医院の対応の不足があるかもしれません。

【強い痛みや不安を感じやすくなる特徴】
①事前の説明が不十分なまま治療が進められる
②治療中の患者さんからの痛みのサインに対する配慮が不足している
③根本的な原因の解説がなく、対症療法に留まっている

とくに注意すべきなのが、「痛い部分の対症療法に留まっている」ケースです。

噛み合わせの問題や口腔内全体の細菌感染を無視して、ただ削って詰めるだけの処置を繰り返すと、虫歯や口腔内のトラブルが再発するリスクが高まるおそれがあります。

つまり、逆に言えば、「痛くない(痛みに配慮した)歯医者」とは、高度な設備や麻酔技術を持っているだけでなく、患者さんの恐怖心を理解し、原因を根本から解決するための対話を怠らない医院だと言えます。

「痛くない(痛みに配慮した)歯医者探し」でよくある質問と回答(Q&A)

「痛くない(痛みに配慮した)歯医者」を探している方でよくある質問と回答を記載するので、受診前の不安を和らげるためにご参考ください。

Q1. 麻酔など、痛くない(痛みに配慮した)治療は保険適用で受けられますか?

A1.表面麻酔や極細の注射針、温かい麻酔液、電動麻酔器を用いた痛みの緩和処置は、歯科医院によっては保険適用内で実施されていることがあります。

一方で、静脈内鎮静法(じょうみゃくないちんせいほう)や、マイクロスコープを用いた高度な精密治療などは、医院の設備や使用する材料によって自由診療(自費)となる場合があります。
治療を始める前のカウンセリングで、費用について明確に確認しておくことをお勧めします。

Q2. 「無痛治療」と書いてあれば絶対に痛くないのでしょうか?

A2.医療行為において、針を刺したり組織を処置したりする以上、「100%完全な無痛」を保証することは医学的に不可能です(厚生労働省の医療広告ガイドライン上も「絶対痛くない」「必ず治る」といった断定表現を記載することは認められていません)。

しかし、本記事で紹介したような表面麻酔や注入速度のコントロールなど、何重もの工夫を徹底することで、「痛みに配慮した治療」を提供することは可能です。

Q3. 途中で痛くなったら、麻酔を追加してもらえますか?

A3.治療中に少しでもチクッとしたり、しみるような感覚があったりした場合は、我慢せずに歯科医師に相談しましょう。「片手を上げる」など、事前に合図を決めておく事を推奨します。

痛みに配慮している歯科医院であれば、処置を中断し、麻酔を追加してしっかりと効くのを待ってから治療を再開することがほとんどです。

Q4. 激痛がある状態でも麻酔はしっかり効きますか?

A4.すでにズキズキとした激しい痛み(強い炎症)がある場合、周囲の組織が酸性に傾いているため、麻酔薬が中和されて効きにくくなることがあります。

その際は、無理に治療を強行せず、まずは痛み止めや抗生物質を処方して炎症を鎮め、後日改めて麻酔が効きやすい状態で治療を行うのが適切な判断です。

Q5. 歯医者が怖くてボロボロになるまで放置してしまいました。怒られませんか?

A5.痛みに配慮した医院であれば、過去のトラウマや恐怖心から通院できず、放置してしまった患者さんの心に寄り添ったカウンセリングを行うことが一般的です。

そのため、現状を頭ごなしに怒ったり、責めたりすることを不安に思わなくてもよいケースがほとんどです。 まずは初回カウンセリングで不安を取り除き、どのように治療を進めていけばご負担が少ないか、一緒に計画を立ててくれる歯科医院を探しましょう。

Q6. マイクロスコープを使った治療は、なぜ痛みを抑えやすいのですか?

A6.肉眼の数十倍まで患部を拡大して明るく照らせるため、健康な歯を削りすぎたり、歯茎を不必要に傷つけたりするリスクを抑えることが期待できるからです。

「MI治療」により、歯や歯周組織に余計なダメージを与えない(低侵襲な処置を行う)ことが、治療中および治療後の痛みを和らげる重要なポイントです。

まとめ

「痛い歯医者は嫌だ」という感情は、誰しもが抱く当然の心理です。

現在は、表面麻酔や極細針といった麻酔技術の進歩に加え、恐怖心を和らげる丁寧なカウンセリング、さらには健康な歯を無駄に削ることを極力抑えるマイクロスコープを用いた精密治療など、肉体的・精神的な負担の双方を軽減する選択肢が用意されています。

「痛くない(痛みに配慮した)歯医者」を探すには、ホームページ等で「麻酔の工夫」「カウンセリングの有無」「マイクロスコープの有無」をしっかりと確認することが大切です。

ご自身の不安に寄り添い、二人三脚で根本的な解決を目指してくれる、信頼できる歯科医院をぜひ見つけてください。


出典・参考資料

※本記事は一般的な情報の提供を目的としており、特定の治療法や効能を保証するものではありません。具体的な症状や治療方針については、直接歯科医院にてご相談ください。