差し歯の値段は1本いくら?保険・自費の相場と前歯・奥歯の違い

「食事中に突然差し歯が取れてしまった」「被せ物(詰め物)が外れたら治療費はいったいいくらかかるのか……」と、今まさに強い不安を抱えていませんか?

差し歯1本あたりの費用相場は、保険診療(3割負担)で約3,000円〜9,000円、自費診療(自由診療)で税込約5万円〜20万円が目安とされています。

保険診療と自費診療(自由診療)の費用の違いは、「治療の目的(最低限の機能回復か、審美性や耐久性の追求か)」や、「使用できる道具・素材などに制限があるか」によって生じます。

本記事では、ご自身のお口の状況(症状)や予算に合わせた選択肢について、保険診療と自費診療の双方を解説します。

また、「マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を用いた精密治療」についてもお伝えしますので、天然歯や差し歯をできる限り長持ちさせるための選択肢としてご検討ください。

※本記事は、歯科治療について迷われている一般の方向けの情報コラムです。
そのため、歯科医学上の厳密な「差し歯(被せ物=クラウン)」の定義にとどまらず、歯の詰め物(インレー)も含めて、「分かりやすさ」を優先して包括的にお伝えしています。


差し歯を1本入れると値段はいくら?|おおよそのトータルコスト

先ほどお伝えしたように、差し歯(人工歯)本体の値段は、1本あたり3割負担の保険診療で約3,000円~9,000円、全額自己負担の自費診療(自由診療)で税込約5万円~20万円です。

しかし、治療の際にはレントゲン検査等の諸費用がトータルコスト(総額料金)に加算されます。

差し歯1本を治療し終えるまでの総額料金のおおよその目安は、以下の通りです。

保険診療で差し歯を1本入れるときの値段の目安

保険診療(3割負担)で差し歯を1本入れる場合、総額の値段は7,000円〜18,500円程度です。

【項目ごとの値段の目安(保険診療・3割負担)】

項目値段の目安
検査・診断・レントゲン代約1,000円〜2,000円
土台(コア)代約1,000円〜3,000円
仮歯(かりば)の費用約500円〜1,000円
被せ物(クラウン)本体約3,000円〜9,000円
再診料・処置料(通院3回分の目安)約1,500円〜3,500円
総額約7,000円〜18,500円


※仮歯の費用は前歯のみ保険適用となります。

また、総額は記載の項目にかかる料金の目安です。
その他、装着後のメインテナンス費用(1回あたり約3,000円〜4,000円)が加算されます。

虫歯や歯周病、歯の神経組織(歯髄:しずい)が通る管(根管:こんかん)の治療が必要な場合、その治療費も別途加算されます。

自費診療で差し歯を1本入れるときの値段の目安

健康保険が適用されない自費診療(自由診療)で差し歯を1本入れる場合、全額自己負担となり、総額の値段は7万円〜25万円(税込)程度です。

【項目ごとの値段の目安(自費診療・全額自己負担)】

内訳値段の目安(税込)
検査・診断・レントゲン代約5,000円〜15,000円
土台(コア)代約10,000円〜20,000円
仮歯(かりば)の費用約3,000円〜10,000円
被せ物(クラウン)本体約50,000円〜200,000円
再診料・処置料(通院3回分・調整代の目安)約2,000円〜5,000円
総額約70,000円~250,000円

自費診療(自由診療)の場合、歯科医院ごとに料金体系が異なりますので、事前のカウンセリングの際に総額の見積もりを出してもらうことを推奨いたします。

なお、土台(コア)はファイバーコア、被せ物(クラウン)はセラミック・ジルコニアなど、保険適用外の素材の選択が可能です。

※差し歯の人工歯本体以外に発生する「周辺費用の詳細(精密検査や仮歯など)」については、この直後のセクションで詳しくご紹介しています。

また、差し歯の標準的な治療内容・費用の目安・通院回数・通院期間・主なリスクや副作用は、「【保険適用】治療の選択肢と差し歯1本あたりの値段の目安」と「【自費診療】治療の選択肢と差し歯1本あたりの値段の目安」にて詳しく解説します。

差し歯の治療を選択される際、値段以外にも気になる点があると思いますので、参考にしてください。

差し歯本体以外にかかる費用|保険診療と自費診療の値段の比較

差し歯本体以外にかかる主な費用は以下の6つです。

なお、自費診療(自由診療)の場合、「他の項目と合算した料金の提示」など、必ずしも以下の項目や料金が請求されるわけではありません。
あくまで「各項目の値段の目安」として捉えてください。

差し歯本体以外にかかる主な費用のイラスト

①検査・診断料・レントゲン代

保険診療の料金の目安:1,000円~2,000円程度(3割負担)
自費診療の料金の目安:5,000円~15,000円程度(税込・全額自己負担)

レントゲン撮影や歯科用CTといった事前検査等の費用は、歯の内部にある根管の状態や、歯の土台を支える骨の厚みなどを把握するためにかかる料金です。

また、虫歯や歯周病など、他に治療すべき箇所がないかの確認のためにも必要とされます。

② 歯の根の治療(根管治療)の費用

保険診療の料金目安約1,000円~5,000円程度(3割負担)
※治療する歯の部位(前歯か奥歯か)や治療回数によって異なります。

 

自由診療の料金目安:約30,000円~100,000円程度(税込・全額自己負担)
※マイクロスコープやラバーダムを使用する精密根管治療の場合。

検査の結果、虫歯が神経まで達している場合や、過去に入れた古い差し歯の根に膿が溜まっている場合、被せ物(クラウン)を装着する前に「根管治療(根管の消毒や神経の処置)」を行う必要があり、その治療費が発生します。

 もし根管治療を怠ったまま差し歯を被せてしまうと、後から痛みや腫れが生じ、せっかく入れた差し歯を壊して再治療しなければならなくなるため、非常に重要な治療です。

③ 土台を形成する費用 

保険診療の料金目安:約1,000円〜3,000円程度(3割負担)
※金属製の「メタルコア」や、プラスチック製の「レジンコア」などを使用します。

 

自由診療の料金目安:約10,000円〜20,000円程度(税込・全額自己負担)
※歯の根である歯根(しこん)が折れるリスクをできる限り抑え、審美性に優れた白い「ファイバーコア」などを使用します。

歯を根元から治療して全体に被せる「クラウン(いわゆる差し歯)」の治療を行う場合、この人工歯の代金に加え、歯の根を補強して人工歯を支えるための「土台(コア)」の費用が別途かかります。

根管治療で歯の神経組織(歯髄:しずい)を抜いたり、大きく虫歯を削ったりした歯は、中が空洞になって非常にもろくなっています。

そのため、土台を立ててしっかりと補強しなければ、差し歯を安定して装着することができないからです。

④ 仮歯(かりば)の費用

保険診療の料金の目安:約500円〜1,000円(3割負担)
自由診療の料金の目安:約3,000円〜10,000円(税込・全額自己負担)

歯の型取りをしてから最終的な差し歯が完成して装着するまでの間、歯茎のラインを美しく整えたり、噛み合わせや歯並びを維持したり、むき出しの歯を保護するために装着する、仮のプラスチック製の歯の費用です。

⑤ 再診料・処置料(調整代)

保険診療の料金の目安:約1,500円〜3,500円(3割負担)
自由診療の料金の目安:約5,000円~15,000円(税込・全額自己負担)

歯科医院に通院するごとの基本料金(再診料)や、歯の形を微調整して型取りをしたり、完成した差し歯の装着時に噛み合わせの細かな調整(咬合調整:こうごうちょうせい)を行ったりする技術手数料です。

差し歯の治療が完了するまでの一般的な通院回数として3回分の合算料金を目安として記載しています。

⑥ 装着後のメインテナンス(定期検診)費用

保険診療の料金目安:1回あたり 約3,000円〜4,000円程度(3割負担)
※歯周病治療等の保険管理計画に基づくクリーニングなど。

 

自由診療の料金目安:1回あたり 約5,000円〜15,000円程度(税込・全額自己負担)
※専用の機器や薬剤を用いた専門的なお口のクリーニング(PMTC)など。

差し歯を長持ちさせ、差し歯の周囲の歯茎が歯周病になる(差し歯が抜け落ちる最大の原因)のを防ぐために、治療完了後も定期的に通う検診・クリーニングの費用です。

【POINT】

自由診療(自費診療)で治療した差し歯そのものの維持管理や、審美・予防を目的としたクリーニング・検診自体は、原則として保険適用外(自由診療)となります。

 

しかし、差し歯の装着後、お口全体の健康を維持する上で「歯周病」や「新たな虫歯」の治療・検査(保険診療で認められている歯周病安定期治療など)が必要と歯科医師に診断された場合は、公的医療保険が適用されるケースもあります。

 

差し歯を入れた後のメインテナンスがどのような扱い(自費か保険か)になるかは、お口の状態や歯科医院の治療方針によって大きく異なります。

差し歯の治療を後悔しないためにも、治療を開始する前のカウンセリング時に、装着後のメインテナンスにかかる値段や保証条件についても詳しく確認しておくことが大切です。

それでは、保険診療と自費診療で、素材による違いやメリット・デメリットを詳しく解説していきます。

【保険適用】治療の選択肢と差し歯1本あたりの値段の目安

保険診療で差し歯の治療をするには、主に「CAD/CAM冠(キャドキャムかん)」と「硬質レジン前装冠(こうしつレジンぜんそうかん)」と「銀歯(FMC:メタルクラウン)」の3つの選択肢があります。

CAD/CAM冠の治療概要と値段の目安

CAD/CAM冠(キャドキャムかん)とは、プラスチックとセラミックを混ぜた白い素材の被せ物(クラウン)です。

人の目につきやすい前歯と小臼歯、そして一定の条件を満たせば奥歯にも保険適用できるため、「料金は抑えながら自然な見た目に近づけたい」という方に選ばれる治療法です。

金属を使用しない「メタルフリー治療」でもあるため、金属アレルギーの方でも差し歯治療ができるのがメリットです。

目立ちにくいCAD/CAM冠(キャドキャムかん)の特徴を表すイラスト

【 CAD/CAM冠の治療概要(保険診療・3割負担)】

項目内容
治療内容歯科用プラスチックにセラミックの微粒子を混ぜ合わせた「ハイブリッドレジン」のブロックを、コンピューター制御の機械(CAD/CAMシステム)で削り出して作製する、金属を一切使用しない白い被せ物です。
標準的な費用①差し歯本体の費用:約5,000円〜9,000円
②検査や一般的な処置に必要な費用:約4,000円~9,500円
③総費用(①+②の合算):約9,000円~18,500円
※お口の状況や同時に行う根管治療などの処置代により多少前後します。
治療期間の目安約1週間〜2週間程度(歯の根の治療や土台の治療が完了した後の期間)
通院回数の目安計2回程度(型取りで1回、装着で1回)
主なリスク・副作用プラスチック成分が含まれているため、年月の経過とともに水分や着色を吸収し、変色(黄色っぽくなる)や光沢の減少が起きることがあります。
オールセラミックや金属製の差し歯に比べると強度が劣るため、歯ぎしりや噛み合わせの強さによっては、割れたり外れたりするリスクがあります。保険適用できる歯は、前歯・小臼歯・特定の条件を満たした大臼歯です。

硬質レジン前装冠の値段の目安

硬質レジン前装冠(こうしつレジンぜんそうかん)とは、前歯(中央から数えて1〜3番目の歯)の差し歯治療で主に選択される治療法です。

中身は金属(金銀パラジウム合金など)で、正面から見える表側だけを白いプラスチックで覆った被せ物であり、「差し歯としての強度をしっかり保ちつつ、前歯を白く綺麗にしたい」という方に広く検討される治療法です。

硬質レジン前装冠の特徴を表すイラスト

【硬質レジン前装冠の治療概要(保険診療・3割負担)】

項目内容
治療内容金銀パラジウム合金などの金属で裏打ち(フレーム)を作り、正面から見える表側の部分にだけ、白い歯科用プラスチック(硬質レジン)を焼き付けた差し歯です。主に前歯(犬歯から犬歯までの6本)に適用されます。
標準的な費用①差し歯本体の費用:約5,000円〜8,000円
②検査や一般的な処置に必要な費用:約4,000円~9,500円
③総費用(①+②の合算):約9,000円~17,500円
※お口の状況や同時に行う根管治療などの処置代により多少前後します。
治療期間の目安約1週間〜2週間程度
(歯の根の治療や土台の治療が完了した後の期間)
通院回数の目安計2回程度(型取りで1回、装着で1回)
主なリスク・副作用表側のプラスチック部分は経年劣化によって黄色く変色しやすく、表面の摩耗によって裏打ちの金属が透けて灰色に見えてくることがあります。
歯の裏側や根元付近は金属が露出するため、お口を大きく開けた際や角度によっては金属色が目立つことがあります。
金属を使用するため、経年変化による金属成分の溶出で歯茎が黒ずむ(メタルタトゥー)リスクや、金属アレルギーを引き起こす可能性があります。

銀歯の治療概要と値段の目安

銀歯(FMC:メタルクラウン)は、保険診療において、強度を重視する場合に選択される治療法です。
全体が金属なので目立ちますが、強い力がかかる奥歯(特に大臼歯)の治療に使われることが一般的です。

銀歯の特徴を表すイラスト

【銀歯(FMC:メタルクラウン)の治療概要(保険診療・3割負担)】

項目内容
治療内容金銀パラジウム合金などの金属のみで作製された、全体が金属の被せ物です。非常に強度が高いため、強い力が加わる奥歯(小臼歯・大臼歯)の治療に広く用いられます。
標準的な費用①差し歯本体の費用:約3,000円〜6,000円
②検査や一般的な処置に必要な費用:約4,000円~9,500円
③総費用(①+②の合算):約7,000円~15,500円
※使用する金属の量や、その時々のパラジウムの地金価格(保険点数)によって変動します。
また、お口の状況や同時に行う根管治療などの処置代によっても、費用は多少前後します。
治療期間の目安約1週間〜2週間程度
(歯の根の治療や土台の治療が完了した後の期間)
通院回数の目安計2回程度(型取りで1回、装着で1回)
主なリスク・副作用金属特有のギラギラとした色合いであるため、大きく口を開けて笑ったときなどに非常に目立ちやすいです。
金属が唾液によって徐々にイオン化して溶け出すことで、将来的に金属アレルギーを引き起こすリスクや、歯茎が黒ずんでしまう「メタルタトゥー」を招く可能性があります。
経年劣化により、銀歯と歯を接着しているセメントが微細に溶け出すことで、その隙間にプラーク(歯垢)が溜まり、銀歯の内部で虫歯が再発する「二次虫歯(二次カリエス)」のリスクが、自費診療のセラミック等に比べて高くなります。

なお、近年では、金属アレルギーのリスクが比較的低く、パラジウム等の高騰に影響されにくい金属素材として、奥歯(大臼歯)限定で保険適用される「チタン冠(チタン製の金属冠)」を選択できる歯科医院も増えています。

【自費診療】治療の選択肢と差し歯1本あたりの値段の目安

自費診療(全額自己負担)で差し歯の治療をするには、主に「 オールセラミック(e.max等)」「ジルコニア(フルジルコニア/ジルコニアセラミック)」「メタルボンド(クラウン)」の3つの選択肢があります。

オールセラミックの治療概要と値段の目安

オールセラミック(e.max等)とは、金属を一切使用せず、高強度のセラミック(歯科用陶器)のみで作製される白い被せ物です。

天然の歯の色味に近く、光を透過する美しい「透明感」を再現できるのが強みで、前歯(中央から数えて1〜3番目の歯)など、お口を開けたときに人目に触れやすい部位の差し歯として選択されています。

オールセラミックの特徴を表す図

【 オールセラミック(e.max等)の治療概要(自由診療・全額自己負担)】

項目内容
治療内容金属を一切使用せず、100%高強度のセラミック(歯科用陶器)のみで作製される白い被せ物(クラウン)を歯に装着する治療法です。光を透過する天然歯のような高い審美性があるとされています。
標準的な費用① 差し歯本体の費用:約80,000円〜150,000円(税込)
② 検査や一般的な処置に必要な費用:20,000円~50,000円(税込)
③ 総費用(①+②の合算)約100,000円〜200,000円(税込)
治療期間の目安約1週間〜2週間程度
(事前に必要な歯の根の治療や土台の治療が完了した後の期間です)
通院回数の目安計2回〜3回程度(型取りで1回、装着・調整で1〜2回)
主なリスク・副作用衝撃を吸収するクッション性が天然歯より低いため、極度の歯ぎしりや食いしばり、強い衝撃が加わった場合、稀に割れたり欠けたりすることがあります。
歯の表側を全周にわたって一定量削る必要があります(状況により事前に神経の処置が必要な場合があります)。

ジルコニアの治療概要と値段の目安

ジルコニアとは、「人工ダイヤモンド」とも呼ばれるほどの硬度と耐久性を兼ね備えた、極めて頑丈な白いセラミック素材です。

従来のセラミックよりも「比較的割れにくい」素材であり、食べ物を強く噛みしめる奥歯(小臼歯・大臼歯)や、寝ている間の歯ぎしり・食いしばりの癖がある方でも、破損のリスクを抑えることに貢献します。

ジルコニアの特徴を表すイラスト

【ジルコニアの治療概要(自由診療・全額自己負担)】

項目内容
治療内容「人工ダイヤモンド」とも呼ばれる酸化ジルコニウムを主成分とした非常に頑丈な白い被せ物(クラウン)を歯に装着する治療法です。割れにくく、噛む力の強い奥歯に適しているとされています。
標準的な費用① 差し歯本体の費用:約100,000円〜180,000円(税込)
② 検査や一般的な処置に必要な費用:20,000円~50,000円(税込)
③ 総費用(①+②の合算)約120,000円〜230,000円(税込)
治療期間の目安約1週間〜2週間程度
(事前に必要な歯の根の治療や土台の治療が完了した後の期間です)
通院回数の目安計2回〜3回程度(型取りで1回、装着・調整で1〜2回)
主なリスク・副作用素材が極めて硬いため、噛み合わせの調整が不十分な場合、噛み合う相手の天然歯(対合歯)を磨耗させてしまうリスクがあります。
強固に歯と接着するため、装着後に万が一再治療が必要になった際、取り外し(除去)が困難なケースがあります。

メタルボンドの治療概要と値段の目安

メタルボンド(クラウン)とは、中身(裏打ちのフレーム)を強固な耐久性を持つ金属で作製し、正面から見える外側の目立つ部分にだけ美しいセラミックを焼き付ける治療法です。

「金属ならではの強度」と「セラミックの美しさ」の両立を目指し、1本だけでなく複数本の歯を繋ぐ大きな「ブリッジ治療」や、奥歯の強い噛み合わせの力に耐えつつ美しい見た目に仕上げたいときに広く選ばれています。

メタルボンドの特徴を表すイラスト

【メタルボンドの治療概要(自由診療・全額自己負担)】

項目内容
治療内容「金属ならではの優れた強度」と「見た目の美しさ」の両立を目指し、中身(裏打ちフレーム)を強固な金属で作製し、その正面の目立つ部分にのみセラミック(歯科用陶器)を焼き付けた被せ物(クラウン)を歯に装着する治療法です。
標準的な費用① 差し歯本体の費用:約80,000円〜150,000円(税込)
② 検査や一般的な処置に必要な費用:20,000円~50,000円(税込)
③ 総費用(①+②の合算)約100,000円〜200,000円(税込)
治療期間の目安約1週間〜2週間程度
(事前に必要な歯の根の治療や土台の治療が完了した後の期間です)
通院回数の目安計2回〜3回程度(型取りで1回、装着・調整で1〜2回)
主なリスク・副作用フレームに金属を使用するため、経年変化(数年〜十数年後)により金属成分が溶け出し、歯茎との境目が黒ずむ「メタルタトゥー」が起きるリスクや、金属アレルギーを引き起こす可能性があります。
内側に金属のフレームがあるため、100%セラミックの素材に比べると透明感が劣り、角度によっては裏側の金属色がのぞくことがあります。

前歯と奥歯で何が違う?部位別・素材別の特徴と値段

差し歯の値段や素材選びは、治療する部位が「前歯」か「奥歯」かによって大きく変わります。

 前歯には周囲の歯と調和する「見た目の自然さ」が強く求められ、奥歯には食べ物をしっかり噛み砕くための「十分な強度」が求められるからです。

前歯の差し歯(審美性重視)の選択肢

結論として、会話や笑顔の際に目立つ前歯には、周囲の天然歯と馴染む自然な色合いと透明感が求められることが一般的です。

保険診療のプラスチック(硬質レジン前装冠・CAD/CAM冠など)は、「差し歯の見た目を白くすること」は可能ですが、吸水性があるため、時間の経過とともに変色しやすいという弱点があります。

一方、自費診療のセラミックは、陶器と同じ性質を持つため、長期間にわたって美しい白さを保つことが期待されます。

具体的に前歯を治療する場合、初期費用を抑えるなら保険の硬質レジン前装冠、将来的な変色を防ぎ、歯茎との境目の黒ずみ(メタルタトゥー)を回避したい場合は、自費のオールセラミックが選択される傾向にあります。

奥歯の差し歯(強度重視)の選択肢

結論として、体重ほどの強い噛み合わせの力がかかる奥歯には、割れにくい頑丈な素材が求められます。

 保険診療の銀歯(金銀パラジウム合金など)は強度面では優れていますが、口を開けた時に目立ちやすく、長年の使用で金属アレルギーのリスクがあります。

一方で自費診療のジルコニアは、金属に匹敵する硬さと「見た目の目立ちにくさ(白さ)」を兼ね備えているため、奥歯の治療によく選ばれます。

また、近年の公的医療保険(診療報酬)の改定により、一定の条件を満たせば、奥歯にも保険適用で白いプラスチックの歯(CAD/CAM冠)を入れることが可能になりました。

ただし、銀歯やジルコニアと比較すると割れやすい傾向があるため、噛み合わせの強さなどを歯科医師と診断した上で判断する必要があります。

保険と自費で差し歯の値段に差が出る3つの理由

保険と自費の差し歯で値段に大きな差が出るのは、単に「見た目が白いか銀色か」という違いだけではありません。素材の機能性や、長期的な歯の寿命に影響を与える3つの理由が存在します。

理由①素材の「耐久性」と「変色」のリスク

自費診療で選択できる素材の方が経年劣化しにくく、長持ちしやすい傾向があります。

 保険診療で使われるプラスチックは、毎日の食事で水分を吸収しやすく、徐々に削れたり黄色く変色しやすいからです。

また、銀歯も少しずつ酸化していきます。 それに対して、自費のセラミックは陶器と同じで表面が滑らかであり、差し歯の変色や劣化が起きにくいのが特徴です。

理由②虫歯の再発(二次カリエス)リスクの違い

自費診療で使用されるセラミックやジルコニアは、保険診療の素材と比較して、将来的に被せ物の内側で虫歯が再発する「二次虫歯(二次カリエス)」のリスクが低いとされています。

たとえば、保険の金属(銀歯)は熱いものや冷たいものを口にした際の温度変化によって膨張と収縮を繰り返すため、歯と金属を接着しているセメントが徐々に破壊され、目に見えない微小な隙間ができやすいという弱点があります。

その隙間にプラーク(歯垢)や虫歯菌が入り込むことで、銀歯の下で虫歯が再発してしまいます。

一方、セラミックなどの自費素材は、歯と分子レベルで強固に一体化する精密な高性能セメントを使用でき、適合精度も極めて高いため、細菌が入り込む隙間ができにくい構造になっています。

【POINT】
どれほど適合精度の高い精密な差し歯であっても、毎日の丁寧なセルフケアや歯科医院でのメインテナンスを怠れば、虫歯が再発するリスクはあります。

治療後の良好な状態を維持するためには、日頃の予防管理が不可欠です。

理由③金属アレルギーへの配慮

自費診療の差し歯で使用される素材の多くは、金属を一切使用しない(メタルフリー素材である)ため、金属アレルギーの方でも治療可能です。

なお、保険の銀歯等はお口の中の唾液によって長い年月をかけて金属イオンが溶け出し、体内に蓄積されることで、新たに金属アレルギーを発症するリスクや、歯茎の黒ずみを引き起こすリスクが報告されています。

将来的なお口の健康を考慮し、金属を使用しない材料を選択される方も少なくありません。

なお、人工歯を歯に接着する際に使用するレジン系セメントやプラスチックの土台など、金属以外の化学物質に対するアレルギーが起こることもあります。

差し歯を長持ちさせるための「マイクロスコープによる精密治療」の重要性

高い費用をかけて自費のセラミックを選んだとしても、「数年で差し歯が取れてしまった」「詰め物や被せ物の下の虫歯が再発して抜歯になった」というケースは少なくありません。 

米国国立衛生研究所(NIH)が提供する文献データベース(PubMed)に登録されている学術論文(※)によると、差し歯を長持ちさせるためには「被せ物の素材選び」だけでなく、土台となる歯の「根管治療」の精度や「差し歯の適合性」の向上が重要です。

※参考文献:『Impact of the Quality of Coronal Restoration versus the Quality of Root Canal Fillings on Success of Root Canal Treatment (Gillen et al., 2011)』

なぜなら、歯の内部に虫歯菌(患部)の取り残しがあった場合は、そこから細菌が侵入して虫歯の再発(二次カリエス)の原因となることがあるからです。

さらに、ご自身の歯と差し歯の境目に隙間がある場合、接着用のセメントが唾液で溶け出して脱落するリスクが高まります。

この「再発」や「脱落」のリスクを抑え、差し歯と天然歯を長持ちさせるためのアプローチとして、マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を用いた精密治療があります。

差し歯治療におけるマイクロスコープを活用する主なメリット3つ

差し歯治療におけるマイクロスコープのメリットを表した図

マイクロスコープは、およそ20倍ほど視野を拡大でき、肉眼では見落としてしまうような細部や、暗く細い根管(1ミリ以下)の内部にある患部の取り残しをなるべく防ぐことに貢献します。

最終的な差し歯を接着(装着)する際も、拡大視野下であれば、歯と差し歯の間にできる限り段差や隙間が生じないよう、ミクロン単位(1000分の1ミリ単位)での精密な適合調整が期待できます。

また、噛み合わせや見た目の調整のために歯を削る処置が必要な場合でも、できる限り健康な歯質を残す低侵襲な治療(MI治療=Minimal Intervention:ミニマル・インターベンション)を目指すことができます。

なお、MI治療は国際歯科連盟(FDI)が提唱する治療哲学であり、日本の歯科医師会や歯科医院の多くでもこれを原則として治療を行っています。

なるべく大切な歯と新しい差し歯を長持ちさせるためにも、低侵襲な治療に貢献する「マイクロスコープ」を導入し、精密治療に注力している歯科医院での受診を推奨いたします。

【POINT】

マイクロスコープを用いた精密治療は、原則として自費診療(自由診療)において広く用いられますが、歯科医院の治療方針や、歯科医師が臨床上必要と判断した場合には、公的保険診療の枠組みで使用されることもあります

 

マイクロスコープによる精密処置自体に別途費用が発生するか、あるいは自費の被せ物・根管治療の基本料金に含まれているかは歯科医院の料金体系によって異なるため、カウンセリングの際に確認しておきましょう。

差し歯治療の料金の負担を抑える方法

保険診療・自費診療(自由診療)ともに、差し歯治療の料金の負担を軽減する手段として「医療費控除」が利用できます。

医療費控除とは、1年間に支払った医療費の総額が一定額(一般的に10万円)を超えた場合、確定申告を行うことで所得税や住民税の一部が還付(または減税)される国の税制上の制度のことです。

歯の治療に関しては、保険適用外となるセラミックやジルコニアなどの高価な材料を使用した場合でも、単なる見た目の美しさ(審美性)の向上だけではなく、「噛む機能の回復(一般的な歯科治療)」が目的であると認められれば、原則として医療費控除の対象となります。

詳しくは、本コラムの末尾に記載している「出典・参考資料」の「国税庁 No.1128 医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例」をご覧ください。

【POINT:通院のための交通費も対象に!

通院のために公共交通機関(電車やバスなど)を利用した際の往復交通費も、医療費控除の対象に含まれます。

ただし、自家用車のガソリン代や高速道路代、駐車場代などは対象外です。

 

電車やバスなどは領収書が出ないため、「通院した日付」「利用した路線名」「往復運賃」を家計簿やメモ帳に記録しておくだけで申請が認められます。

 

また、小さなお子様や高齢の親御様など、お一人での通院が難しく付き添いが必要な場合、同行した保護者・介護者の往復交通費も医療費控除の対象として合算可能です。

【自費診療向け】デンタルローンや分割払いの利用

健康保険が適用されない自費診療(自由診療)の場合、一括での支払いが難しい場合、歯科治療に特化した「デンタルローン」や「クレジットカードの分割払い」という選択肢があります。

これらは治療費そのものを安くするわけではありませんが、月々の支払いを数千円〜数万円程度に抑えながら、ご自身が希望する耐久性や審美性に優れた差し歯(オールセラミックやジルコニア等)の治療を受けることを可能にします。

自費診療を幅広く扱っている歯科医院の多くは、信販会社と提携したデンタルローンの申し込み窓口を設けています。まずは治療を開始する前のカウンセリング時に、分割支払いの相談をしてみるとよいでしょう。

【POINT】

デンタルローンのご利用には、事前に信販会社等による審査が必要となります。

また、分割回数に応じて金利の手数料が発生し、一括払い時よりも総支払額は高くなりますので、月々のシミュレーションを行った上で計画的な利用をお勧めいたします。

差し歯の値段に関するよくある質問と回答(Q&A)

差し歯での値段でお悩みの方によくある質問と回答を記載しますので、治療方法の検討に役立ててください。

Q1. 差し歯が取れてしまった場合、付け直す値段はいくらですか?

A1. 差し歯本体やその土台(コア)に破損・割れがなく、歯の内部に問題がなければ、保険診療(3割負担)の場合、約1,000円〜2,000円程度(再装着費用と再診料、処置料の合算)で付け直すことができるケースが多いです。

ただし、差し歯が取れてしまった原因が「内部での虫歯の再発(二次カリエス)」や「土台の破折」である場合は、そのまま付け直すことはできません。

その場合は、虫歯の再治療や土台の作り直し、あるいは新しい差し歯の再作製が必要となるため、追加の治療費用と期間がかかります。

Q2. 前歯4本をまとめて自費の差し歯にする場合、少し安くなりますか?

A2. 歯科医院の料金体系によりますが、基本的には「1本あたりの単価 × 本数」で計算されることが一般的であり、一括治療による「まとめ割」や「セット割引」のような優遇制度を設けている歯科医院は極めて少ない傾向にあります。 

複数の歯を治療する場合は、事前に総額の見積もりを出してもらうことをお勧めします。

Q3. 保険の白い差し歯(CAD/CAM冠)は奥歯にも使えますか?

A3. はい、公的医療保険の改定により白い被せ物(CAD/CAM冠)の適用範囲が拡大され、現在では一定の条件を満たせば奥歯(小臼歯や大臼歯)にも適用可能になっています。

ただし、大臼歯(最も奥にある大きな歯)に保険診療でこの白い被せ物を使用するためには、健康保険法上、以下のような厳格な条件が定められています。

【大臼歯(奥歯)へ適用するための主な条件】

①上下顎の第二大臼歯(一番奥の7番目の歯)が4本ともすべて残っており、左右の噛み合わせ(咬合支持)がしっかり維持されている場合に限り、その手前の「第一大臼歯(6番目の歯)」に保険で白い歯を入れることができます。

 

②歯科用金属に対する「金属アレルギー」であると皮膚科等の医師に診断され、紹介状(診断書)がある場合に限り、第一・第二大臼歯(6番・7番の奥歯)すべてに保険で白い歯を入れることができます。

なお、真ん中から数えて4番目・5番目の歯(小臼歯)については、上記の条件に関わらず、保険診療で白いCAD/CAM冠を選択することが可能です。

ただし、保険の白い差し歯はプラスチック成分を含んでいるため、自費診療のジルコニアやセラミック、あるいは金属製の差し歯(銀歯)に比べると強度が劣ります。

噛み合わせが著しく強い部位では、割れたり外れたりするリスクがあるため、ご自身の噛み合わせの状態を担当の歯科医師にしっかり診断してもらった上で選択しましょう。

まとめ

差し歯の値段は、保険診療と自費診療で大きく異なり、素材や治療する部位(前歯か奥歯か)によって最適な選択肢が変わります。

初期費用の安さだけでなく、素材の耐久性や将来的な虫歯再発リスク(二次カリエス)、金属アレルギーへの配慮など、長期的な視点で考えることが大切です。

また、どれだけ優れた被せ物を選んでも、土台となる歯根の治療(根管治療)や被せ物の適合精度が伴わなければ、差し歯を長持ちさせることはできず、再治療のコストがかかってしまいます。

そこで、歯科医院探しの際は、「マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を導入しているか」を基準にするのも良いでしょう。

ご自身の歯の状況と予算に合わせて、歯科医師としっかりと相談した上で治療方針を決定してください。

なお、ご自身の歯の根を残すことができず抜歯が必要と診断された場合は、インプラント等の選択肢についても比較検討することをお勧めします。まずは精密な診断を受けるためにも、早めに歯科医院へご予約のうえ相談してみましょう。 


出典・参考資料

※本記事は一般的な情報の提供を目的としており、特定の治療法を推奨するものではありません。実際の治療にあたっては、必ず歯科医師にご相談ください。