裏側矯正はおすすめしない?後悔する理由と失敗をできる限り防ぐ医院選び

「歯並びが気になるけど周囲にバレずに矯正したい」と考える方は多く、「裏側矯正(うらがわきょうせい)」という選択肢があります。

しかし、インターネットやSNSで「やめとけ」「おすすめしない」などのネガティブな口コミが散見されるのも事実です。

治療費用や通院期間の目安、痛みなどの不安を抱えている状態で治療を受け、「こんなはずではなかった」という後悔をなるべく防ぐには、事前の情報収集が重要です。

本記事では裏側矯正のデメリットやリスク、「ご自身のライフスタイルに合っているか」を判断するためのチェック項目をお伝えします。 

合わせて、納得のいく医院選びの基準や、精密な適合を目指すアプローチとして注目される「マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)」についても解説しますので、大切な歯を守るための検討材料にしてください。


なぜ「裏側矯正はおすすめしない」と言われるのか?|治療後の後悔につながりやすい5つのデメリット

「裏側矯正」は、歯の裏側に「ブラケット」や「ワイヤー」などの矯正装置を装着し、歯並びを整える治療方法です。
「舌側矯正(ぜっそくきょうせい)」や「リンガル矯正」とも呼ばれます。

歯の裏側に矯正装置を付けている画像

※裏側矯正を始めとする矯正治療は、原則として公的医療保険が適用されない自由診療(全額自己負担)です。
治療にかかる標準的な費用相場、治療期間や通院回数の目安、および矯正治療全般に伴うリスクや副作用については、後ほど詳しく解説します。

裏側矯正は、歯の表面につける表側矯正と違って「周囲に気づかれにくい」というメリットが強調されがちです。

治療後に後悔しないよう、納得のいく選択をするために、代表的なデメリットも確認していきましょう。

デメリット①費用が表側矯正よりも高額になる傾向がある

裏側矯正の費用は、一般的な表側矯正と比較して約1.2倍〜1.5倍ほど高額になる傾向があります。

たとえば、「お口の全体の歯並びを整えたい」と考える場合、上下すべての歯に矯正装置を装着する「全体矯正」が必要です。

表側矯正の費用の相場が約60万〜100万円であるのに対し、裏側矯正の費用の相場は約100万〜150万円以上となるのが一般的です。

※矯正治療は、原則としてすべて健康保険が適用されない自費診療(自由診療)であり、治療費は全額自己負担です。

【裏側矯正の費用が高くなる理由】

歯の裏側は表側と異なり、一人ひとり複雑で不規則な形状(デコボコ)をしています。

 

そのため、既製品のブラケット(歯に接着する装置)をそのまま使用することが難しく、コンピューター上で3D設計を行い、オーダーメイドの装置を作製する必要があります。

お口に合わせた装置を作るため、技工費用や材料費として費用がかさみがちです。

 

また、狭く暗い口腔内で小さな鏡越しにワイヤーなど矯正装置を調整する歯科医師の高度な技術(ミラーテクニックなど)が求められ、1回あたりの診療時間が長くなることも治療費に反映されることが一般的です。

デメリット②装置が舌に触れることによる痛み・違和感

裏側矯正は、舌の可動域である歯の裏側に装置を装着するため、舌への強い違和感や擦れによる痛み、口内炎が生じやすくなります

口腔内の粘膜は非常に敏感であるため、とくに装着直後は「常に異物が触れている状態」に慣れておらず、ストレスを感じやすくなります。

また、食事中や無意識に舌を動かした際に、装置に舌が引っかかって傷つくことがあります。

日本舌側矯正歯科学会によると、近年は装置の小型化が進み、違和感を軽減するための可撤式(取り外し可能)トレーによる事前トレーニング等の研究も進められていますが、違和感(異物感)に慣れるまでに通常数週間から1ヶ月程度の時間が必要となるのが一般的です。

デメリット③慣れるまでサ行・タ行などが発音しにくい

裏側矯正は、滑舌(かつぜつ)に影響が出やすく、一時的に喋りづらさを感じるケースが比較的多いとされています。

特に日本語の「サ行」「タ行」「ナ行」「ラ行」などは、舌の先を上の前歯の裏側や上顎に当てて音を作ります。裏側矯正ではまさにその位置に装置があるため、舌の動きが制限されたり、空気が漏れたりして発音が妨げられやすいです。

たとえば、コールセンターなど電話応対が多い方を始めとして、人前でしゃべることが前提の接客業、営業職、教師、アナウンサーなどの方がデメリットを感じやすい傾向にあります。

裏側矯正を続けていくうちに発音のしづらさは改善される(舌が装置の環境に慣れる)ことはありますが、日常的に明瞭な会話が求められる職業の方は注意が必要です。

デメリット④歯磨きが難しく、虫歯や歯周病のリスクが高まる

歯の裏側に装置を装着する、という治療の特性上、どうしても毎日の歯ブラシによるセルフケア(歯磨き)がしづらくなります。

歯の清掃が不十分な状態だと、食べかすが歯垢(しこう、プラーク)となり、虫歯や歯肉炎といった歯周組織のトラブルが発生しやすくなります。

裏側矯正を選択する場合、「タフトブラシ」と呼ばれる毛先が小さな歯ブラシや「デンタルフロス」、「歯間ブラシ」などを駆使した毎食後の入念なケアが必須となります。

そのため、「もともと歯磨きが得意ではない」「忙しくてケアの時間が取れない」という方の場合、治療途中で虫歯が進行し、矯正を一時中断して虫歯治療を優先せざるを得ないケースもあります。

【参考】

日本舌側矯正歯科学会の舌側矯正における歯周組織への影響を調査した臨床研究でも、装置を装着した後は歯の表面にプラークが蓄積しやすくなり、一時的に歯周病などが生じやすくなる傾向が報告されています。

 

「歯並びを整えるための裏側矯正で虫歯や歯周病のリスクが高まる可能性」を念頭に置いて、日々の入念なセルフケアなど、ご自身のライフスタイルに合うか検討してください。

デメリット⑤治療期間が長引くケースがある

裏側矯正は、表側矯正よりも治療期間が数ヶ月から半年程度長くなる可能性があります。

歯の裏側は、表側に比べて歯が並ぶアーチの幅が小さくなり、隣り合うブラケット同士の距離(ワイヤーの間隔)が狭くなります。

そのため、ワイヤーの弾力性を適切にコントロールすることが物理的に難しくなり、歯科医院での細やかな調整が求められます。

また、前歯を内側に倒しすぎてしまわないように、歯の根(歯根:しこん)の角度を細かく調整する技術(トルクコントロール)の難しさなど、矯正治療で後悔を防ぐためには時間をかけた精密な処置が必要となるケースがあります。

【参考】

毎月のワイヤー交換や調整作業自体にも時間がかかるため、1回あたりの通院時間(チェアタイム)も長くなる傾向にあります。
とくに、結婚式や留学など、特定のイベントに向けて期限が限られている方は注意が必要です。

【おすすめ度チェック】裏側矯正に向いているのはどんな人?

裏側矯正は、症状によっては100万円以上の治療費用や、数か月~年単位の治療期間・複数回の通院を要することがあります。

「後悔したくない」という強い思いをお持ちの方は、ご自身の生活習慣や職業を考慮した上で、治療法をよくご検討ください。

そこで、裏側矯正に向いている人と、治療に慎重になるべき人のチェック項目を紹介します。

裏側矯正が向いている人

裏側矯正が向いている人の傾向をまとめましたので、当てはまる項目がないかチェックしてください。

【おすすめ度チェックリスト】

 

①周囲に気づかれずに歯並びを整えたい方

(結婚式や成人式、就職活動などの大切なライフイベントを控えており、装置を見せたくない方)

 

②毎食後の丁寧な歯磨きやセルフケアを継続できる方

(タフトブラシやデンタルフロスなどの使用が苦にならない方)

 

③スポーツや楽器演奏の趣味・習慣がある方

(表側矯正に比べ、万が一の接触時に唇や粘膜を傷つけるリスクを抑えたい方)

 

④前歯の出っ張り(上顎前突)を効率的に後ろに引き下げたい方

(奥歯を支点として、前歯を後ろに引き込みやすいという裏側矯正の治療特徴を活かしたい方)

 

⑤舌で前歯を押す癖(舌癖:ぜつへき)を防止したい方

(お口の裏側に装置があることで、舌が前歯を押し出すのを物理的に防ぐ効果が期待できます)

※裏側矯正に関する治療概要(リスク等)は、次の章で説明します。

裏側矯正を慎重に検討すべき人 

一方で、裏側矯正以外の治療法も視野に入れるとよい方もいます。実際のご自身のライフスタイルと照らし合わせてみましょう。

【検討度チェックリスト】

 

①治療費用をなるべく抑え、比較的短い期間で治療を終えたい方

(表側矯正や他の治療法の方が、予算や治療スケジュールに合いやすい場合があります)

 

②治療の開始直後から、お仕事等で正確な発音や明瞭な会話が不可欠な方

(舌が装置に慣れるまでの一定期間、一時的にサ行やタ行などが喋りづらくなる傾向があります)

 

③毎食後の入念なセルフケア(丁寧な歯磨き)を継続するのが難しい方

(裏側は装置の形状が複雑で汚れが溜まりやすいため、虫歯や歯周病のリスクを高める恐れがあります)

 

④骨格的な問題が非常に大きいなど、重度の不正咬合(噛み合わせの乱れ)がある方

(お口の状態によっては、裏側矯正単独での治療調整が難しいケースがあります)

※裏側矯正に代わる治療法については、裏側矯正の治療概要の後に説明します。

裏側矯正の治療にかかる費用相場・期間・リスク

裏側矯正は、矯正そのものの治療費以外にも、事前の検査代などがかかります。

また、治療の難易度(お口の症状と経過)によって、費用だけでなく、治療期間や通院回数が変わることがあります。

なお、裏側矯正は健康保険が適用されない自由診療(自費診療)であるため、費用は目安となり、実際にかかる料金は受診する医院ごとに異なります。

【裏側矯正の治療概要】

項目内容
治療概要歯の裏側にブラケットやワイヤーなどの矯正装置を着けて歯並びを整える治療法(裏側矯正/舌側矯正)です。噛み合わせを含めて全体を治す「全体矯正」と、前歯など気になる部分の見た目のみを整える「部分矯正」があります。
費用の目安全体矯正:総額120万円~180万円程度(税込)部分矯正:総額40万〜80万円程度(税込)
※裏側矯正の全体矯正の費用の内訳矯正基本料金: 約100万〜150万円精密検査・診断料: 約3万〜5万円処置料(月1回の調整): 約5,000〜1万円/回保定装置(リテーナー)料: 約3万〜5万円
※裏側矯正の部分矯正の費用の内訳矯正基本料金:約30万〜70万円精密検査・診断料:約3万〜5万円処置料(月1回の調整):約3,000〜1万円 / 回保定装置(リテーナー)料:約2万〜5万円

※自由診療(自費診療)であり、医院ごとに費用のばらつきがあります。公的医療保険が適用されないため、全額自己負担です。
治療期間の目安全体矯正:約2年〜3年程度部分矯正:数ヶ月〜1年程度※歯の動き方には個人差があり、毎日のゴムかけの協力度などによっても変動します。また、治療終了後は、後戻りを防ぐための「保定期間(約2年〜)」が必要です。
通院回数の目安全体矯正: 3〜4週間に1回のペースで、計24回〜36回程度部分矯正:3〜4週間に1回のペースで、約3回〜18回程度※実際の回数は、動かす歯の本数や、歯の動きやすさ(個人差)によって変動します。
主なリスク・副作用歯の根が短くなる「歯根吸収(しこんきゅうしゅう)」が見られることがあります。歯茎が下がったり歯が長く見えたりする「歯肉退縮(しにくたいしゅく)」、歯と歯の間に隙間(ブラックトライアングル)ができたりすることがあります。保定装置(リテーナー)の使用を怠ると、歯が元の位置に戻ろうとする「後戻り」が起きることがあります。
歯の清掃が不十分だと、矯正装置や保定装置の周囲に汚れが溜まることによる虫歯・歯周病リスクが生じる恐れがあります。極めて稀ですが、歯の神経が死んでしまう「歯髄壊死(しずいえし)」が生じることがあります。治療中に顎の関節に音や痛みが生じる「顎関節症(がくかんせつしょう)」となることがあります。

裏側矯正以外の「目立たない矯正」の選択肢(代替案)

裏側矯正のデメリットを知り、「自分には向いていないかもしれない」と感じた方でも、目立たずに歯並びを整える方法は他にも存在します。
ここでは代表的な3つの代替案をご紹介します。

代替案①審美ブラケット・ホワイトワイヤー(表側矯正)

表側矯正であっても、装置の素材を工夫することで目立ちにくい素材を使うことが可能です。

従来の金属製(メタル)ブラケットに代わり、歯の色に馴染むセラミックやプラスチック製の「審美ブラケット」、そして白くコーティングされた「ホワイトワイヤー」などがあります。

審美ブラケット・ホワイトワイヤー(表側矯正)のイラスト

また、一般的に費用も裏側矯正より抑えられ、滑舌への影響や歯磨きの難しさといったデメリットも軽減される傾向にあります。(個人差があります)

【審美ブラケット・ホワイトワイヤーの治療概要】

項目内容
治療内容歯の表側に、歯の色に馴染むセラミックやプラスチック製の「審美ブラケット」を装着し、白くコーティングされた「ホワイトワイヤー」を通して歯を動かす治療法です。
標準的な費用全体矯正の総額:60万〜120万円程度(税込)部分矯正の総額:30万~60万円程度(税込)
※全体矯正の費用の内訳矯正基本料金:約40万〜90万円精密検査・診断料:約3万〜5万円処置料(月1回の調整):約5,000〜1万円 / 回保定装置(リテーナー)料:約3万〜5万円
※部分矯正の費用の内訳矯正基本料金:約20万〜45万円精密検査・診断料:約3万〜5万円処置料(月1回の調整):約3,000〜8,000円 / 回保定装置(リテーナー)料:約2万〜5万円
※自由診療(自費診療)であり、医院ごとに費用のばらつきがあります。公的医療保険が適用されないため、全額自己負担です。
治療期間の目安全体矯正:約2年〜3年程度
部分矯正:数ヶ月〜1年程度 ※個人差があります。
通院回数の目安全体矯正:計24回〜36回程度(3〜4週間に1回の通院)
部分矯正:計4回〜18回程度 ※個人差があります。
主なリスク・副作用歯の根が短くなる「歯根吸収(しこんきゅうしゅう)」が見られることがあります。歯茎が下がったり歯が長く見えたりする「歯肉退縮(しにくたいしゅく)」、歯と歯の間に隙間(ブラックトライアングル)ができたりすることがあります。保定装置(リテーナー)の使用を怠ると、歯が元の位置に戻ろうとする「後戻り」が起きることがあります。
歯の清掃が不十分だと、矯正装置や保定装置の周囲に汚れが溜まることによる虫歯・歯周病リスクが生じる恐れがあります。

代替案②ハーフリンガル矯正(上は裏側、下は表側)

ハーフリンガル矯正とは、目立ちやすい「上の歯」のみ裏側矯正にし、「下の歯」は表側矯正にする方法です。

上顎は裏側矯正、下顎は表側矯正のハーフリンガルの図

会話する際に目立ちやすいのは主に上顎の歯であり、下顎の歯は唇に隠れて見えにくいため、裏側矯正のデメリットを軽減させたいと考える方の選択肢になります。

具体的には、口腔内全体を裏側矯正する(フルリンガル)と比較して、舌が下の装置に触れないため違和感や発音障害が軽減されやすくなり、治療費用も低くなる傾向にあります。

裏側矯正の審美性と表側矯正の機能性の「良いとこ取り」のような治療法です。

しかし当然ながら自由診療(自費診療)であり、治療の前に知っておくべきデメリットも存在するのでご確認ください。

【ハーフリンガルの治療概要】

項目内容
治療内容会話や笑顔の際に目立ちやすい「上の歯」のみ裏側に装置をつけ、下唇に隠れて見えにくい「下の歯」には表側に装置を装着して治療を行います。
標準的な費用総額80万〜130万円程度(税込)
※自由診療(自費診療)であり、医院ごとに費用のばらつきがあります。公的医療保険が適用されないため、全額自己負担です。
治療期間の目安約2年〜3年程度
通院回数の目安計24回〜36回程度(3〜4週間に1回の通院)
主なリスク・副作用上顎の裏側装置による、慣れるまでの一時的な発音への影響(サ行・タ行などの喋りづらさ)が起きることがあります。上の装置が舌に触れることによる一時的な痛みや口内炎のリスクが高まることがあります。歯の根が短くなる「歯根吸収(しこんきゅうしゅう)」が見られることがあります。歯茎が下がったり歯が長く見えたりする「歯肉退縮(しにくたいしゅく)」、歯と歯の間に隙間(ブラックトライアングル)ができたりすることがあります。保定装置(リテーナー)の使用を怠ると、歯が元の位置に戻ろうとする「後戻り」が起きることがあります。
歯の清掃が不十分だと、矯正装置や保定装置の周囲に汚れが溜まることによる虫歯・歯周病リスクが生じる恐れがあります。

代替案③マウスピース型矯正

金属アレルギーの方や「装置を取り外ししたい」と考える方に向いているのが、マウスピース型矯正です。

前歯に矯正用マウスピースをはめる図

ワイヤーやブラケットを使用しないため、装置が粘膜に擦れる痛みが少なく、食事や歯磨きの際は自分で取り外しも可能です。

ただし、1日20時間以上の装着を自己管理で行う必要があるなど、デメリットや注意事項もあるため、確認していきましょう。

【マウスピース矯正の治療概要】

項目概要
治療内容透明で目立ちにくいプラスチック製のマウスピースを約1〜2週間ごとにご自身で交換・装着し、段階的に歯並びを整える治療法です。
標準的な費用約60万〜100万円(税込)
※自由診療(自費診療)であり、医院ごとに費用のばらつきがあります。公的医療保険が適用されないため、全額自己負担です。
治療期間の目安約1年〜2年半程度
通院回数の目安計12回〜24回程度(1〜2ヶ月に1回の通院)
主なリスク・副作用患者様ご自身での装着時間の徹底(自己管理)が仕上がりを左右するため、マウスピース装着中の飲食制限(糖分や着色汚れの防止)と、それに伴う一時的な着脱の煩わしさを感じることがあります。歯の移動に伴う一時的な痛みがあります。歯の根が短くなる「歯根吸収(しこんきゅうしゅう)」が見られることがあります。歯茎が下がったり歯が長く見えたりする「歯肉退縮(しにくたいしゅく)」、歯と歯の間に隙間(ブラックトライアングル)ができたりすることがあります。保定装置(リテーナー)の使用を怠ると、歯が元の位置に戻ろうとする「後戻り」が起きることがあります。

なお、インビザラインなどのマウスピース型矯正装置は、完成物薬機法対象外です。
※事前に治療を受ける歯科医院で説明を受けることを推奨します。

【インビザラインの注意事項】

項目詳細
①未承認医療機器である旨マウスピース型矯正装置(インビザライン)は、薬機法上の承認を受けていない未承認医療機器です。
※完成物薬機法対象外の矯正歯科装置です。 
②入手経路国内では、インビザライン・ジャパン株式会社を介して、米国アライン・テクノロジー社の製品を入手することが一般的です。
③国内承認医療機器の有無国内にもマウスピース型矯正装置として薬機法の承認を受けているものは複数存在します。
④諸外国における安全性情報インビザラインは、1998年に米国FDAより医療機器として認証。世界100ヵ国以上で使用されており、多数の治療実績があります。
リスクとして歯根吸収、歯肉退縮、顎関節症状等が報告されています。
⑤医薬品副作用被害救済制度完成物薬機法対象外の装置のため、医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。

裏側矯正と表側矯正の違いとは?比較してわかる特徴

裏側矯正の特性をより深く理解するために、一般的な「表側矯正」と比較した場合の明確な違いを解説します。

違い①装置をつける位置による「見た目」と「効果」の違い

特に大きな違いは「審美性(見た目)」ですが、歯を引っ張る方向の違いにより、得意とする歯の動かし方にも差があります。

裏側矯正は、奥歯を固定源として前歯を「後方へ引き込む」力が働きやすい構造をしています。
一方、表側矯正は装置の操作性が高く、複雑に重なり合った歯の位置を整えたいケースで選択されることが一般的です。

たとえば、重度の「出っ歯(上顎前突)」の改善においては、前歯を内側へ引っ込めやすい裏側矯正が有利に働くケースがあります。

また、見た目に関しても、裏側矯正はお口を大きく開けて笑っても正面から装置が見えにくく、周囲に気づかれずに治療を進めやすいというメリットがあります。

違い②「痛みを感じやすい場所」の違い

裏側矯正も表側矯正も、装置を装着することの違和感は伴いますが、傷つきやすい粘膜の部位が異なります。

たとえば、表側矯正の場合は、装置が「唇の裏側」や「頬の内側」に擦れて口内炎ができやすい傾向にあります。

特にスポーツなどで顔面に衝撃を受けた際、唇を切ってしまうリスクがあります。

一方、裏側矯正の場合は前述の通り「舌」に痛みが集中しやすい傾向があります。

吹奏楽で管楽器を演奏する方は、唇へのダメージがない裏側矯正を選ぶことでリスクを回避できる場合があります。

裏側矯正で後悔・失敗したくない方へ|「マイクロスコープ精密治療」を行う歯科医院を選ぶメリット

裏側矯正の日常生活における「痛み」や「発音のしづらさ」といったデメリットは、装置の構造上避けては通れない部分があります。

しかし、「見えにくい部位での装置の調整」と「虫歯や歯周病を引き起こすリスク」については、「マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)」による精密治療がデメリットの緩和に役立ちます。

① 拡大視野による「ブラケットの精密な位置決め」

マイクロスコープは肉眼の20倍ほどに視野を拡大できるため、複雑な歯の裏側であっても、0.1ミリ単位で位置調整が可能であり、ブラケットを装着しやすくなります。

肉眼や歯科用ルーペ(拡大率2倍~10倍程度)では難易度が高いとされる、歯の微細な凹凸や傾きに合わせた精密な調整をし、長引きがちな治療期間の短縮や仕上がりの向上に寄与することが期待されます。

② 見えにくい裏側の「徹底した虫歯・歯周病予防」

マイクロスコープの拡大視野下では、矯正装置の装着の際に余剰な接着剤の取り残しを防ぎやすくなります。

歯面にブラケットを接着する際、歯科用接着剤(レジン)が周囲にはみ出すこと(レジンフラッシュ)があります。

日本舌側矯正歯科学会が歯周組織的影響を調査した研究では、余剰レジンに歯垢(しこう、プラーク)が付着しやすく、虫歯や歯周病リスクを高める傾向が報告されています 

しかし、肉眼では見えにくい透明な接着剤の残りも、マイクロスコープを用いることで、余剰分を徹底して除去し凹凸の少ない滑らかな状態に導きやすくなります。

これが日々の歯磨きのしやすさ(清掃性)にもつながり、矯正期間中のトラブル予防も期待されます。

③ 装置を除去する際に「歯面へのダメージをできる限り抑える」

マイクロスコープは、矯正治療終了後にブラケットを取り外す際、大切な天然歯(エナメル質)を傷つけるリスクをできる限り抑えることに貢献します。

長期間歯に固定されていたブラケットを専用の器具で外す際、歯面には強力な接着剤が残ります。

接着剤を取り除く際、削りすぎて健康な歯面まで傷つけてしまったり、逆に取り残しがあったりすると、その後の虫歯リスクや着色汚れの原因となるので注意が必要です。

マイクロスコープによる精密治療であれば、接着剤と歯のエナメル質の境目を拡大視野で確認しながらの処置が可能になります。

せっかく手に入れた「キレイな歯並び」と「ご自身の天然歯」を大切にするためにも、マイクロスコープによる精密治療をご検討ください。

裏側矯正はおすすめできない?|よくある質問と回答(Q&A)

歯科矯正は原則として健康保険が適用されない自由診療(自費診療)であり、治療費が高額となるケースが一般的です。

治療を受ける前に一般的によくある質問と回答をチェックしておきましょう。

Q1. 裏側矯正の痛みや違和感はどのくらいで慣れますか?

A1. 個人差は大きいですが、多くの方は装置を装着してから2〜3週間、長くても1ヶ月程度で舌の違和感や発音のしづらさに慣れていくことが一般的です。

口内炎がひどい場合は、装置を覆う保護用のワックスを使用することで痛みを和らげることができます。

Q2. 裏側矯正は表側矯正と比べて仕上がりに差が出ますか?

A2.お口の状態や歯科矯正の仕上がりには個人差があるため、まずは歯科医院で検査を受けて相談することを推奨いたします。

裏側矯正と表側矯正では「歯の動かし方」が異なることから、歯科医師と相談の上、理想とする仕上がりに導きやすい矯正方法を検討すると良いでしょう。

Q3. 食事の際に気をつけるべきことはありますか?

A3. お餅やガムなどの粘着性の高い食べ物は、装置に絡みついて外れる原因となるため避けてください。

また、硬いおせんべいや氷などを前歯で強く噛み砕くことも、ブラケットが脱落するリスクがあるため注意が必要です。
とくに繊維質の食べ物は装置に挟まりやすいため、食後の念入りな歯磨きが欠かせません。

まとめ:裏側矯正は「精密な技術」を提供する医院選びが重要

裏側矯正には「費用」「痛み」「滑舌への影響」「歯磨きの難しさ」といった明確なデメリットが存在し、全ての人に「おすすめ」できる治療法ではありません。

しかし、これらの特性を正しく理解し、ご自身のライフスタイルと照らし合わせた上で選択すれば、他人に気付かれずに歯並びを整えられる非常に有効な手段の一つです。

特に、裏側矯正の難易度の高さや虫歯リスクを軽減するためには、暗く狭い裏側の視野を補う「マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)」を導入しているなど、精密治療に注力している歯科医院を選ぶことが重要です。

治療を検討される際は、日本矯正歯科学会の認定医・臨床指導医といった専門資格も一つの目安とし、メリット・デメリットの双方をしっかりと説明してくれる医院でカウンセリングを受けることをお勧めします。


出典・参考資料

[参考資料1] 公益社団法人 日本矯正歯科学会
https://www.jos.gr.jp

[参考資料2] 日本舌側矯正歯科学会
https://jloa.org/for-patient/question/

[参考資料3] リンガルブラケット矯正治療に配慮したリンガルトレーナートレーの考案 渡邉 崇 (2015)
https://cir.nii.ac.jp/crid/1390001205358659456

[参考資料4] Journal of Pioneering Medical Sciences
Evaluation of Periodontal Problems in Lingual Orthodontia: A Clinical Study (2025)
https://jpmsonline.com/article/evaluation-of-periodontal-problems-in-lingual-orthodontia-a-clinical-study-916/

※本記事は一般的な情報の提供を目的としており、特定の治療法を推奨するものではありません。実際の治療にあたっては、必ず歯科医師にご相談ください。