歯周病は治る?自分で治せない原因と痛みに配慮した治療法を解説

「歯磨きのときに血がにじむ」「歯茎が赤く腫れている気がする」 などは、歯周病によく見られる症状です。

厚生労働省や日本歯科医師会によれば、歯周病は風邪のように自然治癒することはなく、放置すれば進行するリスクがあり、重度の場合には抜歯を検討するケースもあります。

「歯周病用の歯磨き粉を使って自分で治せるのでは」と考える方もいらっしゃいますが、セルフケアには限界があるため、なるべく早く歯科医院を受診することが推奨されます。

本記事では、自力で歯周病が治せない原因や、進行度別の治療法、再発リスクを抑えながら痛みにも配慮したマイクロスコープでの精密治療についてお伝えしていきます。


歯周病は自然に治る?自力で治せない原因とセルフケアの限界

歯茎の赤み程度の症状であれば、放っておけば自力で治ると考える方は多いでしょう。

しかし、歯周病の原因となる「バイオフィルム」や「歯石」を自宅でのセルフケアのみで除去することは困難であり、歯茎の健康を取り戻すには歯科医院での治療が重要です。

※歯科医院でのプロフェッショナルケア(メインテナンス)については後述します。

原因①歯磨き粉やうがい薬で落ちない「バイオフィルム」

「バイオフィルム」とは、歯周病の原因となる細菌が寄り集まってできた粘着性の高い多糖類の膜のことです。

お口の中の食べかすと細菌の集合体を「歯垢(しこう)」または「プラーク」と呼び、歯垢(プラーク)の中の細菌がバリアのような膜を形成することでバイオフィルムになります。

殺菌・抗炎症成分が含まれた市販の歯周病向け歯磨き粉やうがい薬(洗口液)は、お口の中の浮遊細菌を減らして「バイオフィルムを作りにくくする」、つまり「歯周病の予防・進行を抑制する」ことは可能です。

しかし、すでに固着したバイオフィルムの除去は自力では困難とされています。

原因②家庭用水流洗浄器でも歯周ポケット奥の「歯石」は取れない

「歯石(しせき)」とは、バイオフィルムが唾液に含まれるリンやカルシウムと結合して石灰化した(石のように固くなった)ものです。

歯石は歯磨きでのブラッシングやうがい薬では除去できず、家庭用高圧水流洗浄器(水流による口腔洗浄器)を使用しても、歯と歯茎の境目(歯周ポケット)の奥に形成された歯石にアプローチすることは困難です。

【POINT】
家庭用高圧水流洗浄器(水流による口腔洗浄器)は、歯と歯の隙間に詰まった食べカスや、歯の表面のまだ柔らかい歯垢(プラーク)を洗い流すための補助として役立ちます。

歯周病の治療にはなりませんが、予防には効果があるとされています。

「治ったかも?」は要注意|歯周病による出血や腫れが一時的に引く理由

歯周病には「しばらく様子を見ていたら、自然に歯茎の腫れが引いた」といったケースがあります。

日本歯周病学会によると、歯周病は一定のスピードで悪化し続けるのではなく、身体の免疫力が低下したときなどに強い腫れや出血が生じる「活動期(急性期)」と、一時的に症状が静かに姿を消す「休止期(慢性期)」を繰り返す性質を持っています[参考文献2]。

たとえば、体調を崩した際に歯茎が腫れ、数日休んだら引いたという経験を持つ人は多いでしょう。

これは「歯周病が治った」のではなく、単に「活動期」から「休止期(慢性期)」に移行したと判断されることが一般的です。

なお、休止期の間、表面的な自覚症状こそ消えてはいますが、歯周病の原因菌により、歯槽骨(しそうこつ:歯を支える骨)の破壊は続いています[参考文献4]。

とくに、歯の表面からは見えない、歯周ポケットの奥深くで炎症が続いているリスクがあるので、歯茎の腫れや出血を繰り返す方は、一度歯科医院での歯周病の検査を受けることを推奨いたします。

【進行度別】歯周病の治療方法・治療費・通院回数・治療期間の目安とリスク・副作用

歯周病の治療は、進行度合いによって、治療のアプローチや治療期間(通院期間・通院回数)が大きく異なります。

【進行度別の歯周病の治療法に関する目安】

進行段階軽度(歯肉炎)中等度(歯周炎)重度(歯槽膿漏)
主な治療方法スケーリングSRPフラップ手術、歯周組織再生療法
費用の目安 (3割負担)約3,000円〜5,000円程度約1万円〜3万円程度約3万円〜10万円程度
リスク・副作用一時的な知覚過敏、処置中の軽い痛み・出血など。処置後数日間の痛み・出血、知覚過敏、歯肉退縮(歯の隙間が広がる)など。術後の痛み・腫れ・出血、知覚過敏、歯肉退縮、一時的な歯のグラつきなど。
通院回数の目安1~2回3~6回6~10回
治療期間の目安数週間数か月半年~1年以上

治療費用は一般的な保険診療(3割負担)の場合の目安です。
自由診療(自費診療)は、医院ごとに費用が大きく異なりますので、詳細は各歯科医院へお問い合わせください。

なお、患者さん一人ひとりで症状や口腔環境が異なってくるため、実際に適応となる治療法、治療期間(通院期間・通院回数)は、上記の目安とは異なることもあります。

軽度(歯肉炎):数週間の通院で歯茎を健康な状態へ導く治療

軽度の歯周病である「歯肉炎(しにくえん)」は、細菌による炎症が歯茎の表面だけに留まっており、歯を支える骨が溶けていない状態です。

歯肉炎の治療には、歯科医院での「スケーリング(歯肉より上にある硬い歯垢・歯石の機械的除去)」と、丁寧な歯磨き指導(セルフケアの強化)が中心になります[参考文献3]。

歯肉炎の場合、毎日のブラッシングと比較的短期間(数週間置きに1〜2回)の通院による治療で、健康で引き締まった状態の歯茎に導くことが期待できます。

中等度(歯周炎):痛みに配慮した麻酔下でのルートプレーニング(SRP)

中等度の歯周病である「歯周炎(ししゅうえん)」は、歯周ポケットの内部に歯周病の原因菌が侵入し、顎の骨が溶け始めた段階です。

目安として、歯と歯茎の境目である歯周ポケットの深さが4〜6mmに達した段階の状態を指します。

歯周ポケットの奥、歯茎の下にこびりついた歯石を「縁下歯石(えんかしせき)」と呼びますが、これを除去するには「スケーリング・ルートプレーニング(SRP:Scaling and Root Planing)」を行う必要があります[参考文献3]。

これは前述の「スケーリング」と、「ルートプレーニング」と呼ばれる歯の根元の汚れを除去し滑らかにして再び汚れや歯石が付着しにくくするための処置の組み合わせのことです。

SRPは歯周ポケットの奥深くに専用の器具を入れるため、治療中の痛みを和らげる目的で、多くの場合に局所麻酔を使用し、痛みに配慮しながら治療を進めます。

お口の中を数ブロックに分けて慎重に行うため、通院期間は数ヶ月、通院回数は3~6回程度が目安となります。

重度(歯槽膿漏):外科治療と再生療法

重度の歯周病である「歯槽膿漏(しそうのうろう)」は、顎の骨が半分以上溶け、歯がグラグラと動いてしまう(歯の動揺が見られる)深刻な段階です。

重度まで進行した歯周病では、器具を歯周ポケットに入れるSRPでは汚れを取り切ることが難しくなります。

そのため、局所麻酔を施した上で歯茎を切開し、直接目で確認しながら感染組織を除去する「フラップ手術」が必要になるケースがあります[参考文献3]。

また、条件が整っていれば、失われた骨の再生を促す薬剤を塗布する「歯周組織再生療法(ししゅうそしきさいせいりょうほう)」を並行して検討します。

重度の歯周病の場合、外科治療(外科手術)を伴うケースでは、治療期間は半年から1年以上におよぶこともあり、身体的・費用的な負担も大きくなります。

痛みに配慮した歯周病治療|マイクロスコープの重要性

歯周病が進行し、中等度~重度となった歯周炎・歯槽膿漏を治療する上で、マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)は非常に重要です。

なぜなら、歯周ポケットの内部は暗く狭いため、肉眼や歯科用ルーペ(一般的に拡大率は2~10倍)のみでは、どうしても細部まで確認することが困難なケースがあるからです。

視覚的な限界から手探りのアプローチでは、複雑な形をした歯根の奥にこびりついた微細な歯石を取り残してしまうリスクや、逆に健康な組織まで過剰に触ってしまい痛みを引き起こすリスクがあります。

しかし、マイクロスコープは肉眼と比較して20倍ほど視野を拡大できるため、歯科医師や歯科衛生士が歯周ポケットの奥の縁下歯石や汚れを直接確認しながら、より精密で低侵襲(ていしんしゅう)な処置を目指せます。

つまり、健康な歯茎を傷つけるリスクを抑え、痛みに配慮した上で、極微細な歯石やバイオフィルムの除去を行うことが期待できるのです。

さらに、フラップ手術などの歯科治療における外科的処置においても、歯茎の切開をできる限り抑えて緻密な縫合をする際に役立つため、早期の回復や傷が目立ちにくくなるとされています。

歯周病の再発を防止するには?治療後の健康な状態を保つ4つの具体策

一度歯科医院で治療を受け、炎症が収まった良好な状態(寛解:かんかい)に達した後も、再び歯周病になるリスクはあります。

そこで再発リスクをできる限り抑えるため、「日々の生活習慣」と「歯科医院での定期的なメインテナンス」に注力することをおすすめいたします。

1. 補助清掃用具(フロス・歯間ブラシ)を用いた徹底ケア

歯ブラシによるブラッシングだけでは、お口の汚れである歯垢(プラーク)の約6割しか落とすことができないと言われています。

そこで、歯と歯の間や根元の隙間には、デンタルフロスや歯間ブラシなどの補助清掃用具を使用しましょう。

歯垢(プラーク)の除去率を高めることで、原因菌がバイオフィルムを再形成するのを防ぐことが期待できます。

2. 血行不良を隠蔽するリスク因子「喫煙」の改善

厚生労働省によると、タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させる作用があり、喫煙によって歯茎の血行不良を引き起こすことがわかっています[参考文献1][参考文献4]。

そのため、本来であれば「出血が見られる状態」まで歯周病が進行していても、気づかないうちに重症化を招く恐れがあります。

また、免疫細胞の働きも低下するため、治療後の再発リスクを抑えるには禁煙や減煙が強く推奨されます。

3. 糖尿病など全身疾患との相互関係を意識した血糖値管理

厚生労働省・日本歯科医師会によると、歯周病と糖尿病は、互いに悪影響を及ぼし合う関係にあることが分かっています。

高血糖状態は歯周病を悪化させやすく、逆に歯周病の炎症物質はインスリンの働きを阻害して血糖コントロールを難しくします。

歯科医院で歯周病を治療し、お口の炎症を抑えることは、全身の健康状態を保つ上でも重要です。

4. 再発リスクを低減させるプロによる「定期メインテナンス」

どれほど丁寧に自宅でケアをしていても、数ヶ月が経過するとセルフケアでは落としきれないバイオフィルムが形成されてしまうことがあります。

歯周病の再発リスクを低減させるには、3〜6ヶ月に1回のペースで歯科医院を受診し、専用の器具を用いたプロフェッショナルケア(定期メインテナンス)を継続することが有効です。

よくある質問と回答(Q&A)

ここでは、歯周病に関する治療でよくある質問と回答を記載します。歯科医院を受診する際の参考にしてください。

Q1. 歯周病の治療には、健康保険は適用されますか?

A1. 歯周病の基本的な検査や、スケーリング、SRP(ルートプレーニング)などの標準的な治療は、原則として健康保険が適用されます。

一方で、より高度な精度を求めるマイクロスコープを用いた精密治療や、特殊な薬剤を使用する一部の歯周組織再生療法などは、自由診療(自費診療)となる場合があります。

歯科医院では、患者さんのお口の状態やご希望に合わせて治療計画をご提案しますので、まずは一度歯科医師にご相談ください。

Q2. 歯石を取る治療は痛いと聞いて、受診が怖いです。痛みを抑えることはできますか?

A2. 軽度の歯周病である「歯肉炎」における表面の歯石除去(スケーリング)では、チクチクとした軽い刺激を感じる程度で、強い痛みを伴うことはほとんどありません。

中等度以上の「歯周炎」に進行し、歯茎の奥深くにこびりついた歯石を除去する際(SRPなど)は、事前に局所麻酔を使用してから処置を行うため、痛みに配慮した治療が一般的です[参考文献2]。

Q3. 歯周病の手遅れ(末期)とはどのような状態ですか?

A3. 歯を指で押したときに大きくグラグラと揺れる、歯茎から膿が出る、硬いものが噛めないといった症状があると歯周病が重度まで進行していると考えられます。

歯を支える顎の骨(歯槽骨:しそうこつ)が大きく溶けていると抜歯の可能性が高まりますが、精密な治療や再生療法によって歯を維持できるケースもあるため、自己判断せずに早期に歯科医院へ相談することが大切です。

Q4. 歯周病が治っていく過程で、どのような症状が現れますか?

A4. 治療によってお口の中の細菌が減少し、炎症が収まってくると、「起床時の口内のねばつきが減る」「歯磨きのときの出血がなくなる」「腫れていた歯茎が引き締まる」といった前向きな変化が現れることが一般的です。

これらは健康な状態へ向かっている時によく見られる状態であり、日々のケアを続けるモチベーションにもつながります。

まとめ

歯周病は、一時的に症状が軽くなることはありますが、放置して自然治癒することはありません。

日々の歯磨き(ブラッシング)やうがい薬など市販のケア用品でのセルフケアには限界があり、歯周病の根本的な原因であるバイオフィルムや歯石を取り除くには、歯科医院でのプロフェッショナルケア(スケーリングやルートプレーニング)が重要です。

とくに中等度~重度の歯周病(歯周炎~歯槽膿漏)の場合、マイクロスコープを活用した痛みに配慮した精密な治療が期待できます。

歯周病は、毎日の正しいセルフケアと歯科医院での定期的なメインテナンスを両輪で継続することで、再発リスクを抑えて予防することが可能です。

歯周病は早期治療で早期回復が期待できる病気ですので、「もしかして」と気づいた今が、治療を始めるタイミングと言えるでしょう。


出典・参考資料

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、医師の診断や治療に代わるものではありません。お口の症状がある場合は、速やかに歯科医師の受診をお勧めします。