編集部コラム | 【これが原因】風邪をひいた時に歯が痛くなる仕組み

公開日: / 最終更新日:

風邪を引いた時、発熱や鼻づまり、咳、体のだるさ(倦怠感)などの症状を経験すると思います。

その他にも、歯が痛い、という症状がでる方もいらっしゃるかもしれません。

風邪をひくと、なぜ歯が痛くなるのでしょうか。

そのメカニズムを説明します。

 

目次

風邪で歯が痛い時の症状
風邪をひいた時に歯が痛くなる仕組み
歯と副鼻腔炎の関係
副鼻腔炎以外に考えられる要因
風邪が治っても歯が痛い場合

 

風邪で歯が痛い時の症状

 

頬に手を当てる女性のイラスト風邪をひいた時に出る歯の痛みは、虫歯による痛みとは原因がかなり異なります。
 
以下にその特徴を示します。

 

(1)ほぼ同時期に複数の歯に痛みが出る

虫歯や歯周病で痛みがある場合は、原因となる歯が限定されることがほとんどです。

しかし風邪をひいた時は、左側上顎の半分が痛い、もしくは両方の上あごの歯が痛いといった感じで、広範囲に痛みを感じます。

 

(2)虫歯や歯周病が無くても痛みを感じる

後で説明しますが、歯そのものに問題がなくても痛みを感じる、という特徴があります。

 

(3)上あごの歯だけに見られることがほとんど

風邪をひくと鼻に炎症が起きることが多く、その影響を受けやすいことから、上あごの歯に痛みが出やすい特徴があります。

下あごの歯に痛みが出ることはほとんどありません。

 

風邪をひいた時に歯が痛くなる仕組み

 

副鼻腔の図解人の顔にはいくつかの空洞があり、副鼻腔と言います。
 
この副鼻腔に起きる炎症を総称して、副鼻腔炎と呼ばれます。

 

副鼻腔にはそれぞれ、どこか外に抜ける穴があり、その1つとして、鼻の通り道(鼻腔)の外側、目の下あたりの位置に、上顎洞とよばれる空洞があります。

この上顎洞は鼻腔とつながっていて、上顎洞に炎症が起きると上顎洞炎となり、そこに膿が溜まると蓄膿と言われます。

 

上顎洞の底の部分には、脳から出た神経の1本が、上あごの歯に向かって伸びるように枝を出しています。

その神経には、歯の痛みや噛みごたえを感じるセンサーの役割があるのですが、天気の変化や、飛行機に乗った時の急激な気圧の変化、上顎洞に炎症が起きた時など、この神経を圧迫してしまうことがあります。

それが刺激となり、歯に痛みを感じるとされています。

実際に歯に問題があるわけではないのですが、同じ時期に多数の歯に痛みを感じることがあります。

この上顎洞炎も副鼻腔炎の1つです。

 

歯と副鼻腔炎の関係

 

ウイルスを鼻から吸い込む人のシルエット副鼻腔炎は様々な原因から発症します。
 
鼻から上顎洞に細菌やウイルスが入り込むことが多いため、風邪の他に、アレルギー性鼻炎、花粉症、鼻茸などのアレルギー性疾患が原因であることが多いです。

 

こうした、鼻に原因がある場合には鼻性上顎洞炎と言われます。

一方、上あごの歯の虫歯をこじらせたり、歯周病を放置したままにすると、これも上顎洞に炎症が広がります。

歯に起因する炎症ということで、歯性上顎洞炎と言います。

 

これらの慢性炎症のために、鼻の通り道と上顎洞との間の穴が塞がってしまうと、膿が溜まって蓄膿となります。

以前はこの上顎洞炎の根治的な治療として、全身麻酔下で上顎洞根治術という手術がよく行われていました。

手術では、炎症で腫れた上顎洞の粘膜を取り除き、鼻の通り道と上顎洞とが繋がる穴を再度開けていたのです。

最近では、鼻から内視鏡で手術する、侵襲の少ない手術方法に変わってきています。

慢性炎症を治療、または軽減させれば、歯の痛みも解消していくことが多いです。

 

副鼻腔炎以外に考えられる要因

 

では、副鼻腔炎以外で、歯に痛みが出ることはあるのでしょうか?

脳から出ている神経の1つに、三叉神経という神経があります。

 

では、副鼻腔炎以外で、歯に痛みが出ることはあるのでしょうか?

脳から出ている神経の1つに、三叉神経という神経があります。

 

顔面の触った感じや、痛みを感じることなどを主に担当する神経です。

この三叉神経の枝分かれした1本が、上あご全体に細かく枝分かれしています。

 

この神経のどこかの部分で神経を圧迫する、もしくは障害されると、それより末梢の範囲に痛みを感じます。

神経を圧迫する、もしくは障害される例としては、

  • ・ヘルペスによるもの
  • ・ボールが当たったり、転倒して顔面を強打するなどの外傷によるもの
  • ・腫瘍などの病変が出来て神経を圧迫すること

があります。

 

(1)ヘルペス

ヘルペスは、疲労や栄養不足などで体力が低下し、普段は免疫力で抑え込まれていたヘルペスウイルスが活性化したものです。

片側に起きることが多く、両側に出ることは少ないです。

 

(2)外傷によるもの

外傷は、神経そのものに何か物がぶつかることよりも、神経の周囲で骨折を起こしたために神経が圧迫される、ということがほとんどです。

 

(3)腫瘍によるもの

腫瘍は良性、悪性ともに、CTやMRIなどの画像診断により初めて見つかることが多いです。

 

風邪が治っても歯が痛い場合

 

風邪をひいてから上の歯が痛くなり、それが長く続く場合や、風邪が治っても歯が痛い場合は、歯科医院を受診して相談しましょう。

まず、歯そのものに問題がないかを確認しておきます。

ヘルペスであれば、栄養補給と安静、そして必要に応じて抗ウイルス薬を処方したり、感染対策に抗菌薬、うがい薬などを使うこともあります。

 

また、必要に応じて、耳鼻咽喉科、脳神経内科での診察やCT、MRIなどの画像検査を勧められるかもしれません。

腫瘍が見つかることもありますので、ただ漫然と経過観察をすることは避け、医療機関で相談して確認しておくべきでしょう。

 

「予防歯科」についての関連記事

マイクロスコープ導入歯科医院のご紹介